概要
マハー・イーシュヴァラ(偉大なる主宰神)が縮まったもの。漢訳仏典においては「大自在天」と表記された。
音を移した表記は「摩醯首羅(まけいしゅら)」。
サンスクリット語ではイーシュは「支配者、所有者、主」を指す。リグ・ヴェーダ以外のヴェーダにおいて「行える、可能である」という意味でも使われている。古代インドの文法家パニーニは神、最高の存在、の意であるとした。
ヴァラは「希望、恩恵、贈り物、祝福、選択」そして「求婚者、恋人、若い婚約者の女性」を意味する。
マヘーシュヴァラとは、シヴァがそうしたヴァラなるものに対して、マハー(偉大)なるイーシュである事を示している。
これはシヴァの名前の意味が「吉祥」であること、彼が常若なる配偶神を持つ事と一致している。
イーシュヴァラ
イーシュヴァラの語は前述のパニーニのように哲学的、抽象的な意味にも解され、万物の源、第一の原因、万象を司る超越者という意味として解された。
しかしこの考え方は、業(カルマ)という考え方と衝突する。全てを創り全てを左右する主宰神がいるのなら、別に衆生たちの未来を決定するカルマを想定する意味がなくなってしまうため。
逆もまた然りでカルマによって運命付けられているのなら、衆生たちがイーシュヴァラから「主宰」されているとは言えない。
このためイーシュヴァラの概念について、業の教義を持つ仏教のような他宗教から批判されたり、ヒンドゥー教内でも様々な神学的論議がなされた。
今日でもシャイヴァ派(シヴァ派)ではシヴァは破壊神であるだけでなく、創造神かつ維持神でもある。破壊神としてのシヴァはルドラと呼ばれ、ブラフマーとヴィシュヌはシヴァが持つ相として一体化されている。
シャイヴァ派におけるシヴァは、世界と万物を創造し、維持し、破壊する、まさにマヘーシュヴァラとされている。
ヒンドゥー教以外でも用いられ、大乗仏教における観世音菩薩の梵名アヴァローキテーシュヴァラは名前にイーシュヴァラを含む。そのため「観自在菩薩」とも漢訳された。