曖昧さ回避
- カトリック教会で悪魔祓い(もしくは悪霊祓い)を行う聖職者。祓魔師。本項で解説。
- 上記役職を主題にした、ウィリアム・フリードキン監督の映画作品。
- また2の様な創作作品などのファンタジーでは、悪魔と戦う勇敢な戦士として描かれるが、実際には交渉人のような、非常に地味で根気のいる説得を主体とした作業を用いる。
- 青の祓魔師(あおのエクソシスト)。加藤和恵による漫画作品。
- D.Gray-manに登場するAKUMA祓い「エクソシスト(D.Gray-man)」のこと。
カトリック教会の「エクソシスト」
カトリック教会でエクソシスム(ギリシア語で「厳命により追い出すこと」の意)を行う人のこと。
専門職としてのエクソシストは、カトリックの下級叙階(各教会で奉仕する補助職)としてかつて存在していた。
16世紀に設定され、19世紀半ばにはほぼ形骸化し、20世紀中葉に正式に廃止されている。現在のローマ典礼における「悪霊祓い(祓魔式)」は司祭の行う準秘蹟になっている。
16世紀に成立したプロテスタントでも悪霊祓いは儀式として取り入れられており、そちらでは主に牧師の職務とされている。
正式な悪霊祓いの方法はローマ典礼で定められており、洗礼時に行われる簡単なお祓いのようなものと、エクソシストという言葉でイメージされる大がかりなものがある。後者を行う前には対象が普通の病気かどうかよく確かめ、そのうえで悪霊祓いをせよとしている。
エクソシスムの原語である「ἐξορκισμός」は「誓言する」「厳かに呼びかける」というような意味であり、立てこもり事件を起こした犯人を説得するかのように、悪魔や悪霊に対してただ昏々ととりついた人間から出ていくよう諭し続ける――という非常に地味で根気のいる作業を要する。
神やキリスト、天使、聖者(凡そは聖母マリア)をたたえる聖句を唱え、悪魔や悪霊が屈服して逃げていけば悪魔祓いは成功となる。カトリックでの一般的な理解では、これを完遂するには毎年、数週間にわたる悪霊祓いを何年も続ける必要があると考えられている。用いるものもイコンや十字架、聖別された聖水やお香など至ってシンプルである。
新約聖書において、イエスが悪霊を祓う話が複数回出てくること(『レギオン』など)、またイエスが弟子に悪霊祓いの力を授けたとする直接的な記述がある(ルカ9:1)ことから、キリスト教では悪霊祓いを正式な教義としている。
ただしエクソシストという職が作られたのが16世紀と遅く、地位も補助職にとどめていることから、教会にとって重要な業務であるとは考えられていなかったようである。
エクソシストが正式に設置されていた16~19世紀は魔女狩りが盛んだった時期とほぼ一致し、「ルーダンの悪魔憑き(Loudun possessions)」のような事件も起きていることから、この期間は悪魔憑きが比較的信じられていたことがうかがわれる。
現代でも完全に廃れきったわけではなく、2005年にはルーマニアで(統合失調症が疑われる)修道女が3日3晩飲まず食わずで悪霊祓いの儀式を受け死亡するという事件が起きており、『汚れなき祈り(原題:După dealuri)』という題名で映画化されている。
映画「エクソシスト」
エクソシストを題材にしたホラー映画のシリーズ。
またはその第一作(監督:ウィリアム・フリードキン)。
少女に取り憑いた悪魔とエクソシストの壮絶な戦いを描いたオカルト映画の傑作で、「エクソシスト」という言葉を世に広め、同ジャンルを開拓した。
ウィリアム・ピーター・ブラッティの同名小説を原作とし、作者本人が脚色を行っている。
悪魔に取り憑かれた娘(リーガン・マクニール)のグロテスクな外見や挙動をはじめとして、リアルに描かれたショックシーンが話題を呼び、世界中で大ヒットした。またアカデミー賞でも脚本賞を獲得している。
悪魔の勝利と神の敗北を匂わせるストーリーは敬虔なキリスト教徒たちにとってあまりにも衝撃的であり、公開された当時は劇場で失神する者が続出した。悪魔パズズに取りつかれた少女(リーガン)が、首を180°回転させたり、ブリッジしたまま家中を徘徊したりという常軌を逸した奇行を繰り返すさまは、多くの創作作品に多大な影響を与えることとなった。
不安を煽る不気味なテーマ曲は「チューブラー・ベルズ」(マイク・オールドフィールド)のイントロを「MYSTIC SOUNDS」名義で編集・演奏したもの。
続編が『2』『3』『ビギニング』まで作られているが、第一作と比べて影が薄い。
エクソシストシリーズで資産を得たノエル・マーシャル(製作総指揮)は1981年、映画「ロアーズ」で監督、脚本、共同制作、主演を務め、家族を出演させた。
150頭の猛獣とアフリカで一緒に暮らすという極めてカオスな映画だったが、1,700万ドルの制作費に対し興行収入は200万ドルで、借金を抱えることとなった。
無名時代のヤン・デ・ボンも参加していた、ある意味曰く付きの映画である。
余談だが、『ウォーリーを探さないで』に出てくる顔の画像はこの映画のパズズである。
創作における「エクソシスト」
現実世界では非常に地味な戦いを続ける彼らではあるが、ファンタジーなどでは武器を手に真っ向から悪魔を屠る戦士として描かれることがほとんどである(同時に悪魔も血肉を持ち、殺すことが可能だったりする)。またエクソシストを大雑把に「退魔師」として扱うことで、悪魔のみならず吸血鬼などの不死者をも浄化・討伐の対象としたり、それらの人ならざる勢力と対立しているパターンも多い。
登場する武器のバリエーションや戦闘スタイルも豊富で、杖やナイフといった割と地味なものから、剣やハンマー、昨今では銃やパイルバンカーまで持ち出したり、それこそ魔法ならぬ奇跡を操って戦うものまで「なんでもアリ」の様相を呈している。悪魔って何だっけ……。
近年では、『D.Gray-man』や『青の祓魔師』といった、エクソシストを主題とした漫画も興隆を見せている。
ただ海外メディアの作品では、どちらかというとイカれた主人公の活躍を引き立てるための噛ませ犬として、悪魔にあっさりと殺される場合がほとんどで、『コンスタンティン』のように型破りなエクソシストでもない限りは、基本的には物語から即退場させられることが多い。
エクソシストを題材とした創作
日本国内
海外
- 『エクソシスト』シリーズ
- コンスタンティン