概要
ユダヤ教とキリスト教の教典、正典集。ローマ共和国(ローマ帝国)での普及を契機に人類の国家・文明・歴史の成り立ちに欠かせない文献の一つ。
旧約聖書と新約聖書の2つがあり、ユダヤ教では旧約聖書のみを、キリスト教では旧約聖書と新約聖書の両方を聖書としている。旧約聖書は21世紀現在、世界中のユダヤ教徒とキリスト教徒の双方が挙って購入する性質から国際ベストセラーの地位を独占し続けている。ちなみに新約聖書は第三位であり、両者の間に位置する第二位に、イスラム教の聖典たるクルアーンが入ってくるとされる(正確な発行部数が現状不明のため異論もある)。
厳密には一連の啓示物として、新約聖書の啓示後にさらに追加で啓示された新・新約聖書も存在するが、後述のように旧約聖書と新約聖書の双方の一部に誤謬や改竄のあることを主張する内容を含んでいた経緯から、一般に聖書として数えられることはない。
なお、「旧約」とはキリスト教側からの呼び名であり、ユダヤ教徒が自分達の聖書を「旧約聖書」と呼ぶことはない。彼らは旧約聖書のことを「タナク」「タナハ」と呼ぶ。これは聖書を構成する「トーラー(モーセ五書)」「ネビイーム(預言書)」「ケスビーム(諸書)」の頭文字を組み合わせたものである。
イスラム教においても過去に旧約聖書の預言者たちやイエスに神から啓示が下されたと説くが、同時に「今現在伝わっている聖書はユダヤ教徒とキリスト教徒によって捏造・改竄・歪曲されてしまったもの」と教えるため、ユダヤ教とキリスト教が用いる聖書はイスラム教においては「正典」としての位置を占めてはいない。
ユダヤ教やキリスト教ではどれが聖書正典であるかのリストを定めているが、これ以外にも、旧約・新約の両方に選定から漏れた「外典」や「偽典」が存在する。
(ただし、偽典というカテゴリは旧約系の文書にのみ存在し、新約聖書偽典というものはない)
当然ながらそれらの外典や偽典も、編纂した人々にとっては正典であった。現在でも他教派では外典・偽典であっても、別の教派ではそうではない、という例がある。
例えば、プロテスタントやユダヤ教で否定される旧約外典をカトリックや正教会は採用し、ユダヤ教やキリスト教他教派から偽典とみなされるエノク書やヨベル書はエチオピア正教においては正典である。
新約聖書部分については、採用する全27巻の正典は、現存する全キリスト教教派で共有されている。各教派における正典の違いについてはこちらを見た方が早いだろう(→英語版wikipediaの正典リスト)。
書籍として販売される場合には、非常に嵩張る性質上辞書などに多用されるインディア紙を用いて印刷される場合が多く、インディア紙の別名としてバイブル紙との用語も存在する。
イラスト
・St. Michael the Archangel