概要
この言葉は英語でPseudepigraphaと呼び、元の意味としてはギリシャ語の「 ψευδεπιγραφία( 偽りの著作名 )」というものであり、実際にはユダヤ教およびキリスト教の文書のうち、正典とされないもの、かつ正典から除外された文書群である外典( Apocrypha )を除外したものを指し、異端の文書ともされる。
詳細
旧約聖書の外典の場合、ユダヤ教では正典とされないものの、カトリックや正教会などキリスト教の大手教派では第二正典として扱われるもが存在している。
ところが偽典の場合、エチオピア正教( 5世紀に正教会から異端とされ分離された非カルケドン派の最大グループ、エチオピアを中心として信徒がおりエチオピア十字と呼ばれる十字架を用いることでも有名 )における、ヨベル書( 天地創造から族長時代の末期までの経緯を懐述するという形で記述された書であり、ほかにエチオピアユダヤ教徒が正典として扱い、『小創世記』とも呼ばれる )とエチオピア語エノク書( 預言書に分類され、黙示録に類する書籍。天使や悪魔が多数登場 )を除いて、正典として扱われることはない( 当然であるがこの文書を正典とする者にとってはこれらの文書は「偽典」とは扱われない )。
また、一部文書においては一部宗派において外典として扱われるが、その他の宗派については偽典扱い文書も存在する。
これらの文書には正典とされるダニエル書やヨハネの黙示録、あるいは新約外典のように黙示思想を盛り込んだ書物も存在しそれらの文書と性質は似通っている。
なお、これらの文書のうち一部は異端であるとされ、特に「内容に問題がある」とされたものは教会により研究が禁止され焚書の対象となったため、現在ではそれらの文書は失われ、過去に引用されたもののみが残っていたり、そもそも残存していないなど、研究が進んでいないものも存在する。
偽典という分類は成立年代の遅さ、あるいはその後のキリスト教における異端認定などによるもの、現在まで生き残った教派における扱いによるものであり、実際には偽典に分類される書のリストは流動的である。例えば第三マカベア書( プトレマイオス朝エジプトにおける神の奇跡を描く物語 )は一般的に偽典とされることがあるが、正教会では正典とされている。
正典と外典
現在聖書正典( カノン )として認められるのは、律法の記述がある5書、預言者について記述された8巻、そのほかの記述とされる諸書11巻である。
ちなみに外典( 読み:がいてん英語:Apocrypha )とは、ユダヤ教やキリスト教関係の文書の中で、聖書の正典に加えられなかった文書を指す。
また、偽典に分類される書物は、旧約聖書の登場人物や、新約聖書以前の時代を扱うものに限られており、その結果「新約聖書偽典」なるカテゴリーは存在せず、正典から除外された新約聖書に関する文書はすべて新約外典と称される。
外典詳細
旧約聖書の外典のうち、主たるものは聖書のギリシャ語の翻訳であるとされた七十人訳聖書に記述されたもののうち、ユダヤ教側がヤムニア会議において「マソラ本文」、すなわち「ユダヤ教社会に伝承されてきたヘブライ語聖書のテキスト」を正典としたため、それ以外の文章は外典、ちなみにカトリック等では第二正典とよばれ、現代では旧約聖書続編と呼ばれることがある。
また、新約聖書においては2世紀においてマルキオンという人物が「それまでのキリスト教の考えとは異なる思想、例えば旧約聖書の神及びイエスが伝える神の相違など、をもとに聖書の「正典」を編纂」しようとするなどの動きがあり、教会も正典を定める必然性が存在し、現在の4つの福音書と使徒たちの活動、そして使徒などが書いたとされる書簡類とヨハネの黙示録のみを正典とした。それ以外の文書は外典とされ、特に使徒教父文書の一部など内容に問題のないものは残されたが、内容に問題がある、例えばグノーシス主義の影響がみられる一部の文書は偽書として焚書の対象となった。現在残存するのは内容に問題がないものの使徒による記述ではなかったもの、異端とされる以前に保管されたものが後に発見されたものである。
注意
ちなみに外典を「げてん」と呼ぶと仏教の用語で儒教や道教など仏教以外の教えを説いた所を指す意味となるため、注意が必要である。
こちらの外典には「仏教の価値観からして間違っているもの」から「仏教以外の教えが説かれているが、一般教養として読んでおくべきもの」「仏教そのものではないが、仏教の下位互換と見做し得るもの」まで広い範囲のものが含まれる事になる。