概要
正式名称はエチオピア連邦民主共和国。
面積109万7000平方km、人口約1億1787万人(2021年)、首都はアディスアベバ。
古くはアビシニアとも呼ばれた。アフリカ諸国の中で最も早く独立した国家。
北はエリトリア、北東にジブチ、東にソマリア、南にケニア、西はスーダンと南スーダンに囲まれた内陸国。
歴史
学術的に確認できるのは紀元前5世紀ごろに興ったアクスム王国だが、一説には紀元前1000年に古代エチオピアが成立、旧約聖書に登場するシバの女王のシバ王国が古代エチオピアではないかといわれている。
アクスム王国では、王家は「ソロモン王とシバの女王の子」を主張しており、現在のイエメンにあたる地域から、紅海を超えて移住してきた者たちが建国したとされる。ただ、これは箔付けのための伝説に過ぎず、実際は古くからこの地に住んでいた者たちが興した王国という説もある。アクスムは、最盛期には紅海の対岸側にあるアラビア半島の一部をも支配下においていた。7世紀にイスラム教が興るが、アクスムは預言者ムハンマドとその一派を庇護したため、その後、勢力を拡大するイスラム教国家に圧迫されながらも、滅ぼされることなく存続した。
しかし、アクスムは12世紀頃、ザグウェ王国に滅ぼされる。ザグウェもまたキリスト教国家であったとされるが、ザグウェは歴史書などを残さなかったため、実態が良く分かっていない。ただ、現在、世界遺産となっている「ラリベラの岩窟教会群」は、ザグウェの王ラリベラが建設したものとされる。
ザグウェは1270年にイクノ・アムラクによって滅ぼされ、イクノ・アムラクはアクスム王国と同じく「ソロモン王とシバの女王の子」を名乗り、ソロモン王朝を名乗り、エチオピア帝国を築いた。
周囲を様々な列強勢力に囲まれながらも、エチオピア王家は幾度かの断絶や追放などを受けながら、その度に不死鳥の如くエチオピアの国主の地位に舞い戻り、ハイレ・セラシエ1世が1974年に軍部により廃位させられるまで、エチオピア王家は世界最長の王家として存在しつづけた。なお、ハイレ・セラシエ1世の直系は今でも健在である。
地理
国土の大部分が高原に位置するため、気候は涼しい。また降雨量が多く、農業に向いた土地柄となっている。なお降った雨は青ナイル川の水源となり、青ナイル川はやがてナイル川へと流れ込むので、ナイル川の水の一部はエチオピアに由来していることになる。
現在のエリトリアの領域も、過去はエチオピアの領土であったが、もともとエリトリアの住民は、エチオピアとは異なる文化を持っており、1961年から激しい独立運動が展開された。1991年、エリトリアは独立。その結果、エチオピアは内陸国となった。また、エリトリアとの国境付近に位置する都市バドメを実効支配している(国際的には、この都市はエリトリア領と認定されている。ただし、都市住民の多くがエチオピアへの帰属を求めているなど、複雑な都市である)
宗教
主にエチオピア正教会といわれるキリスト教の一派を信仰している。ただし、カトリックや東方正教会とは異なり、非カルケドン派と呼ばれる他にエジプトやアルメニアにも広まっている別教義の教会である。
現在では政教分離によって国教は存在しないものの、かつてアクスム王国時代の350年から1995年の現行憲法制定までの間キリスト教を国教と定めていた。尚、キリスト教を国教とした国としては古代アルメニアに次いで2番目に古く、現存する国家としては最古の国である。
ただ、周囲のすべてがイスラム教の国であることから、国内には歴史的にイスラム教徒も多かった。帝政時代においては、皇族の中にも、イスラム教徒がいたとされる。
文化
コーヒーの原産地とされており、客を招きコーヒーを淹れてもてなす茶道ならぬ「コーヒー道(コーヒーセレモニー)」がある。
エチオピア音楽は日本と同じ五音音階が使われているため日本の演歌や民謡とよく似ている。
国際関係
- 日本
1956年に戦後初の国家元首としてエチオピア国王が訪日。1958年に両国に大使館が開設された。
1964年に開催された東京オリンピックマラソンでエチオピアのアベベ・ビキラが裸足で金メダルを獲得し、日本でもスター選手となった。
- イスラエル
エチオピアには多くのユダヤ人がおり、イスラエルのユダヤ人帰還作戦・モーセ作戦により多くのエチオピア系ユダヤ人がエチオピアへ帰還した。
エチオピアとイスラエルは繋がりがあり、新約聖書にエチオピアの宦官がイエス・キリストの弟子・ピリポ(12使徒ではない)から、聖書の解説を受け、その後洗礼を授かるという話がある。
渡航
目的に応じた査証が必要だが、ボレ国際空港到着時に限り30日の観光申請が可能(手数料は米ドル現金かクレジットカード)。
しかし、民族対立が激しく国境地帯では政府との武力衝突もしばしば発生。
そのため日本の外務省は国境には絶対に近づかないようにと勧告。