キリスト教における司祭
司祭という語は、カトリックや正教会において教会を運営する中位の聖職者「プリースト」の訳語である。一般信徒が受けるであろう儀式を授ける、ないし指導するのが役割である。一般信徒は司祭までは必ず顔を合わせるが、司教には必ずしも会うことはない。また司祭個人に対して「○○神父」と呼ぶことが一般的に行われる。これは教師(職名)に対して「○○先生」と呼ぶ関係に近い。
カトリックや正教会では司祭以上しか執り行えない儀式(サクラメント;秘跡・機密)があり、大雑把に言えば入信を受け付ける、懺悔を受け付ける、病人のために祈って聖油を塗るといったことがそれに該当する。それ以外にも冠婚葬祭や毎日の祈祷の司式を行う、ないし教会運営や布教活動の諸事も行う。プロテスタントでは司祭を置かず必須の儀式も少ないが、似た立場の牧師は入信、祈祷、冠婚葬祭の儀式や教会運営や布教活動など同じような活動を行う。
カトリックでは司祭は男性のみで、妻帯不可である。正教会では男性のみ、叙聖前に結婚していた場合のみ妻帯可だが、実際はほとんど結婚している。聖公会では妻帯可であり、女性を認めることもある。
司祭の衣装
西方教会
カトリックや英国国教会では、ミサなど儀礼時にはアルバと呼ばれる白いくるぶし丈の衣装を着用する(アルバという言葉自体がラテン語の「白」という単語に由来する)。アルバの基本構造は修道服のトゥニカと同じであり、Tシャツのように被るようにして着用する。ただ、修道服より身体にフィットする外形のことが多い。アルバの上から儀礼用の飾り衣装を羽織る。飾り衣装はTPOによって異なり、ストラやダルマティカといったものがある。
平時はキャソックと呼ばれる(日本ではフランス語由来の「スータン」と呼ばれることも多い)衣装を着ける。教派や地方によって詳細は異なるが、基本は立襟でくるぶし丈の飾りのない黒い衣装であり、白いチョーカー状の詰襟を着けて着用する。これも基本構造はアルバと同様にトゥニカだが、普段着であるだけに着用の便宜から前開き形状になっている。またボタンの数が非常に多いものが目立つが、これは教義的な理由から33個のことが多い。サブカルチャーでは、映画マトリックスリローデッド・レボリューションズのネオがキャソックを着用している。
ただ現代ではキャソックを着用する機会は目立って多くはなく、代わりにブレザーを羽織っている事が多い。というか、日本だとキャソックを着用する機会は、それが求められるようなフォーマルな場にほぼ限られる。
東方教会
正教会においても儀式時と普段着がある。儀式用の衣装はステハリと呼ばれ、西方教会のものより刺繍などの飾りが多く見られる。ステハリの上には、オラリやエピタラヒリなどの飾り衣装を羽織る。普段着はカソック同様の黒い衣装で、リヤサと呼ばれている。西方教会との大きな違いは帯をしないこと、詰襟を入れないことである。
キリスト教以外の司祭
漢字の字義通り「(冠婚葬)祭を司る」のであればどのような宗教でも通じる言葉ではあるが、キリスト教以外の聖職者の呼称に流用されることはそれほど多くはない。
ファンタジーでの司祭
Pixivにおいては(主にファンタジー系の世界観で)架空の宗教の聖職者を描いたイラストにこのタグがつけられることの方が多いようである。ファンタジー職業としての司祭は、キリスト教の司祭のうち、神に祈祷する、病人のために祈り塗油する、悪霊を除ける儀式をする、といったモチーフが拡大された物が多数を占める。またファンタジーでは女性のプリーステスが頻繁に見られるが、現実には女性司祭は極めて稀(というか、カトリックなどの一部の教会では女性の司祭自体が認められていない。)
ファンタジーを含めた司祭・神官系の内容についてはプリーストを参照のこと。