概要
牧師、僧侶、聖職者、祭司の事。転じて、ファンタジー作品などにおける回復役の職業として登場する。類似単語でカトリックの聖職者を示すプリースト(司祭)との使い分けが意識される事は少なく、同一作品内ではどちらかしか使わない場合が多い。しかし厳密にはプロテスタントにおける「万人祭司」思想を反映した教役者(信徒の代表、世話役)である牧師のみを指し、宗教を職とする者≒聖職者ではない(ただし実務上は聖職者と差はない)。このことを反映してか、仏教風に「僧侶」と和訳されることも多い。
回復役にして戦士同様の金属鎧を纏い鈍器でバリバリ戦うという古い版の「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(D&D)の影響か、肉弾戦には比較的強い印象がある。一方のアーキタイプである癒し手系の肉弾戦が得意でない聖職者との違いは、カール大帝(シャルルマーニュ)の伝承に登場する大司教チュルパンに代表される、「戦う聖職者」のイメージからの影響によるらしい。十字軍遠征に代表されるように、中世ヨーロッパにおいて信仰とは戦って勝ち取るものだったのだ。
また、ゲーム、NEXONのMMORPG、『TreeofSavior』に登場する クレリック系1次職目の職業でもある。
由来
ファンタジー題材のゲームにキリスト教系の宗教家が加わった例はD&D以前からあり、ゴシックホラーの影響から吸血鬼に対抗しうる存在として導入されたと考察されている(下記外部リンク参照)。このときは死霊祓い(ターン・アンデッド)が最も重要な役割であり、後のD&Dでもノーコストで行える能力であった。また普遍的な奇跡の表現として、怪我や盲目の治療などの癒やしの魔法も持たされていたが、D&Dでは他にも聖書や様々な聖人伝で描かれる「棒を蛇に変える」「イナゴの群を呼ぶ」(いずれもモーセが行った奇跡とされる)など、癒し手のイメージからすると一見風変わりな能力を魔法として行使できる。
現在は若干薄れたイメージだが、「聖職者は殺傷ができないため、刃のある武器は使えず、鈍器で戦闘する」という首を傾げたくなる設定もまた、D&Dの時代から存在する。これは一説には11世紀のノルマン・コンクエストを描いた刺繡画「バイユーのタペストリー」において、司祭にして騎士の「バイユーのオド」(Odo of Bayeux)なる人物が持つ、権威を示す棍棒ないしは戦の指揮棒が、メイスのような鈍器と誤解されたためとも言われる。宗教家がプリーストでなくクレリックだったのは、初期D&Dの製作者がプロテスタントだったからなど諸説ある。
関連イラスト
外部リンク
togetter『RPGの「僧侶職(Cleric)」はいつ回復呪文を唱えはじめ(その後さらにヒーラー役割を期待されるようになっ)たのか?』