概要
司教(英:Bishop)とは、ローマ・カトリック教会をはじめ伝統的な職制を保有するキリスト教会で、信徒を監督、指導し司祭や長老以下の聖職者を叙階する権限を持つ役務者である。
司教区における監督する聖務職のことで、最高教導権を有している。位階としては、司祭の上に位する。語弊を恐れずに喩えれば、教会をキリスト教を教える学校とすれば、司祭は教師、司教は教育委員会である。
日本において、正教会や聖公会などでは、司教に相当する役職を主教と訳している。またカトリック教会でも中国や台湾などで「主教」の訳語を採用している地域がある。
なおキリスト教系以外の宗教団体でも「司教」の語を採用している場合があるが、本項では割愛する。
キリスト教における司教の立場
「司教」"bishop"という言葉はキリスト教特有のもので、他の宗教の大神官を指すのにこの語は使われない傾向がある(比してプリーストやモンクは他宗教の聖職者を指すのに頻繁に使われる)。その理由を簡単に言えば、原始キリスト教では教義そのものがあまりはっきりしていなかったのでそれを整理して統一見解を出す必要があり、それをする役割の人間として司教(主教)が置かれた、という経緯がある。司教(主教)に指導されない教会は(異端となる可能性があるので)認めない、というのがこの時代からの伝統的な立場となっている。
なお、原始キリスト教で教義どのくらいはっきりしていなかったかと言うと、
- 「ユダヤ教イエス派」を超えてギリシャ人やローマ人に布教する際、彼らから辺境のユダヤ人の野蛮な風習とみなされていたいくつかの要素(例えば割礼)を止めようという意見が多く、ユダヤ人寄りのエルサレム教会とギリシャ人寄りのアンティオキア教会でそれぞれ司教を置いて干渉しないようにした。
- 新約聖書の正典が現在の形に決まるまでにおおよそ300年くらいかかっている。
- 「ナザレのイエスとは一体何だったのか」「イエスの弟子、孫弟子が書いた新約聖書の権威」を三位一体で結論するのに381年の第1コンスタンティノポリス公会議までかかっている。
- 「聖書の正しい読み方」について787年年ごろまで議論している。
と、最終的に教義が安定するまでには800年近くかかっている。
また、司教(主教)は「聖書の正しい読み方」を議論して異端を排斥してきたという実績を持っており、司教に指導されて正統な(Orthodox=正教会)キリスト教、普遍的な(Catholic=カトリック)キリスト教となる、というのがカトリック・正教会の認識となっている。
こういった過程を経ているため、司教は神学論争のできる学者肌であることが要件となり、例えばカトリックの司教は聖書原典が読めるようラテン語・ギリシャ語・ヘブライ語に通じた「神学博士」の資格を要求される。すなわち、司教は単に年長の司祭がなるようなものではなく、キャリアやエリートと言った側面を持つ。
具体的な役割など
カトリック教会では司教の印として、司教冠やカロッタや司教杖を使用する伝統がある。司教が長を務める教会の聖堂を、カトリック教会では司教座聖堂(Cathedral)と呼び、司教座聖堂において司教が司式時に着席する椅子を司教座という。
司教の特徴的な権限は、助祭、司祭および司教の叙階を行うことである。司教には、一定の教区の配慮をゆだねられている教区司教と、一定の教区の配慮をゆだねられていない名義司教などの分類が設けられている。首都などには「大司教」が置かれていることがあるが、職務範囲の広さの違いぐらいで、他の司教と基本的な権能は変わらない。ローマ教皇に関してもローマ司教の地位を兼ねており、「特別な首位の司教」というような扱いになっている。
日本における司教
2024年4月現在、存命の日本人司教は23名おり、うちいわゆる現役司教は13名。また仙台・東京・福岡・那覇に外国人司教が1名づついるほか、駐日バチカン大使として大司教が1名(ただし着任前)いる。
キリスト教以外の司教・ビショップ
英語ではBishopというが、「ビショップ」とカタカナで書くと同名の人物や、チェスの駒・Wizardryなどの職業の一つを指すことが多い。pixivに投稿されているイラストも大半はこちらである。