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統合失調症

とうごうしっちょうしょう

統合失調症とは、脳の機能障害であり精神疾患の一種。発症のメカニズムや根本的な原因は未だに解明されていない。
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概要編集

思考や知覚、感情、言語などの機能が障害を受け、それにより周囲との関係をうまく構築することができず、自分の感覚・行動が以前のそれや周囲と歪みがあることを認識できないという特徴を持つの機能障害による病気であり、精神疾患のひとつ。

かつては「精神分裂病※」と呼ばれていたが、症状への誤解を招くとの考えから2002年に改められた。


発病のメカニズムや原因も諸説あり、はっきりと解明されているわけではないが、本人の素因(遺伝の影響も多少あることが認められている)と環境が両方関係するといわれている。


5月24日は「世界統合失調症デー」であり、世界各地で啓発活動が行われている。


※英語では「Schizophrenia」(ドイツ語では「Schizophrenie」)というが、「スキゾ」が「分裂した」、「フレニア」が「精神」を表す。これを直訳したのが「精神分裂病」である。


症状編集

症状やその程度は千差万別で明確に定義することは難しいが、典型的な症状として、思考がまとまらなくなったり(思考障害)、幻覚幻聴妄想を引き起こしたりというものがある。それにより他者に対する攻撃性や疑心暗鬼が増したり、独り言を言うようになったりすることで対人関係に支障をきたし、健全に社会生活を営むことが難しくなる。

異常な(体の)緊張や興奮、不適切な言動がコントロールできないといった、奇異な行動が見られることもしばしばある。


妄想に加えて自分と他人の区別が曖昧になる自我障害も典型的な症状の一つであり、例えば「自分の考えていることが誰かに知られている」(サトラレ体験)「自分は誰かに操られている」(サセラレ体験)と思い込むことが挙げられる。


また、感情の動きが小さくなり、自分のことをうまく表現出来なくなる、相手の感情を推測して読み取ることが難しくなるといった感情にまつわる障害や、集中力、記憶力、整理力などがが欠如してしまう認知能力の障害も大きい。


統合失調症の症状は「健康な時にはなかったような状態が現れる」陽性症状と「健康な時にあったものが失われる」陰性症状に大きく分けられる。上記の妄想や幻覚は陽性症状にあたり、感情・気分障害(またこれに伴うコミュニケーションの問題)や認知障害などは陰性症状にあたる。

人によって症状の差が大きく、陽性症状が強く出ることもあれば陰性症状が強く出ること、両方が同じくらい出ることもある。

近年では陽性症状にドーパミンノルアドレナリンの過剰とGABA神経の伝達異常が、陰性症状にはセロトニンの過剰分泌が関与しているところと、グルタミン酸神経系異常が関与しているところまで解明されつつある。


パニックや強い不安、体のだるさ、睡眠障害などが現れることがあり、特に発症初期はうつ病パニック障害などの疾患と判断がつきにくいこともある。

短期精神病性障害・統合失調様障害といった、一時的に統合失調症に似た症状を示すものもある。

ほかにも症状が類似する障害として、特徴的な症状の一つである感情障害などが目立たず、妄想のみが強く出てしまう妄想性障害や、躁うつ病(双極性障害)では特に「躁」の時に妄想が強く出ることがある。

また、統合失調症と気分障害の症状が同時に起こる統合失調感情障害がある。

これに加え、スキゾイドパーソナリティ障害はその発症に統合失調症との関連があると見られており、症状についても統合失調症の陰性症状に類似すると主張する医師もいる(統合失調症スペクトラム障害)。


「ある日いきなり発症する」というよりは、徐々に症状が現れて進行することが多いため発病の明確な境目がわかりにくく、(特に初期の場合)診断も難しい病気であることから、幻覚などがある程度進んでからやっと診断がつく場合も多い。また、本人に病気である自覚(病識)がないことが多く、周囲の人が異変に気がついても、なかなか病院へ連れて行けないという問題もよく起こっている。


男女とも、思春期から30歳までに発病することが多く、70〜80%の人がこの世代で発病するという。また、女性の場合40代ごろにも発病しやすいピークが見られるが、これは閉経などホルモンバランスの変化が影響している可能性があると考えられている。


治療の現状編集

一般的な精神疾患と同様に、投薬による療法と心理社会的治療(作業療法、いわゆるリハビリや行動療法)が並行して行われる。


明確に完治したと言い切る事が難しい病気であるため、ある程度よくなり、普通に近い生活が送れる状態は「完治」とは言わず「寛解」と呼ぶ事がほとんどである。


症状が重く、本人や周囲の人が健康的な日常生活を送るにあたって大きな悪影響が出ている場合などは、入院により治療されることもある。長期的に入院するほど重度であっても、適切な投薬治療と療養により、社会復帰する人も決して少なくない。また、症状の程度によってはデイケアサービスやグループホームでの治療が行われることもある。

特に近年は向精神薬の品質や使用方法の改善、治療方法が進歩しており、きちんと治療して寛解する道は以前より確実に広まりつつある。


近年ではカナダの精神科医エブラム・ホッファーが提唱する「オーソモレキュラー栄養療法」(ナイアシンなどのビタミンB群をサプリメントで不足した脳の栄養を補っていく方法)が欧米を中心に精神疾患の治療法の一つとして取り入れられているが、未だ発展途上の段階にあり、日本では多くの医療機関・医師によって「これ単体で治療するのではなく、薬物療法など他の療法と組み合わせて様子を見ながら治療を進めるのが適切である」という見解が出されている。


発症から治療に取り掛かるまでが早ければ早いほど、予後(治療後の体調)がよい傾向にあるため、出来る限り早期治療が求められる。


寛解後の再発とそれに伴う妄想・不安から、服薬や通院を自己判断で(あるいは周囲によって)勝手に辞めてしまうという人も多い。

治療を中断すれば当然回復も遅くなるため、体調の変化などがあって服薬をやめたい場合は医師に相談し、その判断を仰ぐべきである。

また、これに関連して、主治医に対する不安から「ドクターショッピング」により、適切な診断・治療が受けられないまま症状が改善せず医療機関をさまようことになってしまう例も確認されている。


社会的な関わり編集

症状の程度にもよるが、他の精神疾患同様「精神障害者保健福祉手帳」(障害者手帳)の対象となっており、行政によるさまざまな支援を受けることができる。ただし、全ての疾患・障害に言えることだが、必ず交付されるというわけではなく、症状に応じて申請→自治体ごとに障害の程度が判断され交付という形になっている。


かつては病名のマイナスイメージや特徴的な症状によるコミュニケーションにおける軋轢から偏見も大きかったが、近年では精神疾患・障害に関する一般市民の理解が少しずつ進んできており、公表している著名人も増えている。


一方、幻覚や妄想が原因で「他者から監視・攻撃されている」(よくあるのが「集団ストーカーに狙われている」というもの)と感じてしまい、周囲とコミュニケーションがうまく取れず孤立してしまう、同様の悩みを抱える人と同調してたちの悪い陰謀論などに結びついてしまうようなことも少なくない。

中には無自覚な症状で苦しむ人を相手に「集団ストーカー対策」「電磁波による思考攻撃を防ぐ」などと謳い、安価かつ効果のない雑貨を高額で売りつける悪質なビジネスも存在している。


「免罪符」としての統合失調症編集

統合失調症は自我や正常な判断能力を失う病気であるため、犯罪を犯しても「責任能力なし」として無罪になることがある。傷害強姦はもとより、最たるものとして殺人事件の犯人でも統合失調症を理由に無罪になったケースさえある。実際に日本航空350便墜落事故は、機長の意図的な操作が原因で起こった事故だが、この病気(当時は精神分裂症と呼ばれていた)に罹患してたため刑事責任能力がないと判断され無罪になっている。


このため、「統合失調症が理由であれば、あらゆる犯罪が免責される」という見方が存在し、犯罪者が詐病で統合失調症を装い、わざと理解不能な言動をすることがある。例として、2016年に発覚した千葉大学生少女監禁事件では、犯人の男が法廷で「職業は森の妖精です」「今ならからあげくん一個増量中」などと奇怪な発言をし、これが免責狙いの詐病と見られた。ただし後の精神鑑定では精神疾患と認定されず、懲役12年の実刑判決を受けた。

(※そもそも本物の統合失調症の症状は素人の演技で再現できるほど単純ではないため、精神鑑定以前に専門家に見せればすぐにバレる)


言うまでもなく、こうした「病人気取り」と本当に統合失調症で苦しんでいる患者とを同一視することは、必死で闘病している患者、そしてそれをサポートする医師、家族や友人、行政に対する大変な侮辱になりかねない。場合によっては人権侵害・治療妨害・業務妨害にあたるため、もし事件などの当事者にまつわる話題として(統合失調症以外も含めた)疾患について取り上げる場合、十分に背景を理解した上で慎重な発言が求められる。


統合失調症は100人に1人弱は発症すると言われる、決して珍しくない疾患である。この項目を読んでいる人の中にも今後発症する人、あるいは既に発症し、治療中である、寛解を迎えているという人もいるかもしれない。

家族や親しい友人、学校や職場で関わりのある人が発症する、している可能性も十分ある。

患者も、そしてそうでない人も、同じ人間である。身近にいるかもしれない彼ら・彼女らの存在を理解し、受け入れることは社会を築いていく上で重要なことである。


統合失調症に罹患したことを公表している有名人編集


  • 山田花子(漫画家)…自殺の直前に精神分裂病(当時)の診断を受け、入院していた。

関連タグ編集

ワードサラダ(言葉のサラダ):例えば「観覧車が中学6年生のライオンにボールペンを掛けて一軒家を建てた」というように、文法としては間違っていないが内容が支離滅裂な文章のこと。脳機能障害によりこの状態になってしまうことがあり、統合失調症においても思考障害が重症化すると起こる場合がある。

ダーティハリー5:統合失調症を患った人物が犯人という設定。

集団ストーカー:統合失調症患者が被害を自称することがある。

家の中にストーカーがいます

電波系:脈絡のない妄想や支離滅裂な主張をする人のこと。「頭の中に電波でメッセージが伝えられている」というような主張をすることに由来。


発達障害:思考のまとまらなさや集中力の欠如など類似する点が見られる。実際に、自閉症スペクトラムは発症メカニズムに重複する点が見られるという調査結果が存在する。

自己愛性人格障害:協合する点が多く、併発しやすいパーソナリティ面の障害。


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