概要
自閉スペクトラムとも。
『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版(DSM-5)における、「神経発達症群」に分類されるひとつの診断名であり、以前の版で「広汎性発達障害」の中に含まれていた自閉症(いわゆる古典的自閉症、カナー型自閉症)、アスペルガー症候群(AS)や高機能自閉症といったいくつかの障害が「スペクトラム(=連続して)として分布している」と定義・統合されて出来た診断名である。
古くは言語障害が中核だと思われていたが、知的には正常で言葉の遅れが見られないにもかかわらず、自閉症同様の問題を抱える人が多く知られるようになったために、虹のようなスペクトラムだと捉えられるようになった。近年では急速に認知が広まり、疾患率(≒診断数)も急激に増えている。
それに伴い、かつては大半が知的障害を伴うと思われていたが年々その割合が低下している。一方で、かねてから認識されていたような年相応の社会性や言語獲得が難しく、支援学級に通わざるをえない児童も一定数いる。
DSM-5では「社会的コミュニケーションの障害」、「限定された興味や反復的な行動様式」の2つが診断基準であると定められている。
約30%が知的障害を伴う(以前の分類における古典的自閉症などに該当する)と考えられており、また言語コミュニケーションの発達に問題を抱えていることが多い。
ADHD(こちらも自閉症スペクトラムの一つに数えられる場合がある)や学習障害など、他の発達障害を併発している場合もある。
脳機能の障害であり、基本的に親の躾や生育環境などは発症に影響しないと考えられている。
子供の頃から症状が見られ、他の発達障害と同じく生涯基礎的な特徴は続く。
発達障害が研究途上の分野であること、近年になって急速に知名度が上がってきたことから、いまだ世間では誤解や偏見が多いのも現状である。
一般に個人の中で得手不得手や認知能力の差が大きいとされ、「発達障害者は2人として同じ症状を持った人は居ない」と言われる程、その人によって特性や症状は千差万別である。
自閉症の項目でも触れられているが、「自閉」と言っても必ずしも「自分から閉じこもる」という意味では無い。医学的に言われる「自閉」とは「自分目線」という事である。言い換えると、客観的な視点で自分や周囲をとらえるのが苦手な特性とも取れる。この影響もあってか、物語・文章の構築が不得手で、内容がひどく薄味になるか、コピー&ペーストの多用をするものも少なくない。
特に知的発達を伴わないアスペルガー症候群などでは、自閉症傾向が強くても年齢相応の社会性を持っており、同年代との活発な交流が見られる事も多い。
いわゆる引きこもりや不登校を指して自閉症と呼ぶ誤用・誤解もしばしばある。自閉症の症状によって学校生活や社会生活がうまくいかず結果的に引きこもり状態になる例もあるが、それは二次的な影響であってイコールではない。
アスペルガー症候群
自閉症スペクトラムの中でもアスペルガー症候群は知的には正常である人が多く、中には一部のIQが120を超えるような高い知能を持つ人もいる。
学業でつまずくことがあまりないことから、本人の性格や症状の傾向によっては学校生活(おおむね小中高まで)の中では発見されないことも多い。大学など上級学校への進学、就職活動や就職後の職場など、コミュニケーションが複雑化し、迅速さが求められる場での活動がうまくいかず発覚する場合や、精神的なストレスから二次障害としてうつ病、適応障害などに陥ってしまい、それらの治療の過程で「生きづらさ」が障害に由来するものだと発覚する場合もある。
また、人間関係等が原因で、中退や退職などにより社会的活動からドロップアウトしてしまう事も少なくない。障害者支援の中には就労継続支援など、不登校や引きこもり、ニートといった人たちの社会復帰につながる制度が存在する。
対人タイプ
自閉症スペクトラムには総計5つの対人タイプがある。
詳細は発達障害に現状は記載されている。
障害者手帳について
発達障害者は精神障害者として障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)の交付を申請することが可能である。また、知的障害を持つ場合は療育手帳の交付を申請することができる。
障害の程度や本人の生活における能力によって等級は変わり、また申請には医師の診断が必要なため、詳しくは厚生労働省の紹介ページや、各自治体の案内を参照していただきたい。
障害者手帳を取得すれば、障害者総合支援法に基づいてさまざまな支援を受けることが可能となる。障害者が苦労することが多い就職活動においても、障害者雇用枠で就職し、職場から理解と適切な支援を受けながら働く「オープン就労」も可能となる。もちろん障害を明かさない「クローズ就労」、もしくは明らかにしていても一般の職員(健常者、定型発達者の職員)と同じように働く選択肢も存在するため、体調や特性、仕事内容をよく把握した上でそれぞれに合った形での働き方を選ぶことが重要である。
他の障害にも言える事だが、障害者が困難を抱える事の最大の理由は環境なのである。
関連項目
外部リンク
ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について(厚労省内e-ヘルスネット)
自閉スペクトラム症(ASD)とは(一般社団法人 日本自閉症協会)
大人になって気づく発達障害(政府広報)