概要
定型発達(typical development)とは、発達障害でない人々(あるいはそのような状態)を意味する用語である。
英語圏における「神経学的定型」(neurologically typical, neurotypical, NT)に相当する。
NTは、元々は自閉症(自閉症スペクトラム、ASD)の当事者や家族、支援者のコミュニティにおいて「自閉症ではない、もしくは自閉傾向を持たないすべての人」を指す形で用いられていた。
例えば、同じく発達障害に分類される学習障害を持つ人も、自閉傾向がなければこの用法では「定型」と呼ばれる。
しかし、徐々に神経学的・精神医学的な研究が進んだことで分類が変化し、先に挙げた学習障害はもちろんADHDやそれらに付随することが多い発達性協調運動障害といった、自閉症以外の発達障害も含めて「非定型発達」と表現するようになり、それらの障害を持たない(傾向がない、もしくは弱い)人のことは「定型発達」と称するようになっていった。
さらには、先天性の障害に加えて後天性の精神障害(精神疾患)の人や、知的・発達障害や認知症などに伴う行動障害の人も含む神経学的非定型(neuro-atypical,NA)の対義語としてNTが用いられることもあり、より大きく「神経学的な健常者」という意味で、NTおよび「定型発達」と呼ばれる場合がある。
しかし定義は状況や人、その人の属するコミュニティに応じて微妙に差異がある。
インターネット上の(発達障害関係の)コミュニティ・クラスタでは、主に発達障害の特性や傾向から遠い人間、世間一般におけるマジョリティの属性で構成される人間を指すことが多い。
解説
よく誤解されているが、発達障害とはそもそも簡単に言えば「能力に凹凸があり、特にその差が極端であること」である。
つまり全人類が発達障害的な特性を少なからず持つといえ、その上で、特性が所属している文化と衝突した際に「障害」とされる。
言い換えれば厳密に「発達障害」と「定型発達」に明確なボーダーラインはなく、国や時代が変われば誰が(どんな特性を持つ人が)障害者とされるかは変わるといえ、あくまで、「その時代その場において求められる能力」に大いなる凹凸がある時発達障害とされるのである。
定型発達とは「社会の多くの場面で求められる能力」のバランスが取れている人、広く浅く、より多くのコミュニティに適応できる人、というような意味合いであるといえる。