概要
医学上は、全般的な知能や視聴覚機能には問題が見られないにもかかわらず、特定の能力の習得に著しい問題が見られるものと定義される。
識字読解(いわゆる「読み書き」)や計算など、学力に関する障害が代表的である。
簡単に言えば、「知的障害や視覚障害・聴覚障害など(学習を妨げる要因になるもの)があるわけではないのに、あることの学習が極端に苦手である」こと。
「学習機能障害」、「限局性学習症」とも呼ばれる。LDの略称が広く知られている。
特に読み書きに関しては識字障害、ディスレクシア(失読症・難読症・読字障害)、計算能力に関しては算数障害(ディスカルキュラ・ディスカリキュア)と呼ばれる。
症状の一例
- 数字の「1」と「いち」が同じものとして認識できないため、「1+1」と「いちたすいち」が違うものに感じる
- 紙に書かれている文章が一つのまとまりとしてではなく、一文字一文字がバラバラの絵のように見えてしまう
- 少量のものや、簡単な計算で数えられるものもいちいち指を折って数えないとわからなくなる
- 「7」と「16」のような数で、どちらの数が大きいか咄嗟に出てこない
特徴
先に述べたように、学習障害は大前提として知的障害や身体障害に由来するものではない(※ただし、IQは正常値の範疇だが平均の下すら達していない、いわゆるIQ70~84とされる「ボーダー」も含まれる)。全体的な知能の遅れはないものの、なんらかの学習において特別苦手なものがある状態である。
ADHD(注意欠陥・多動性障害)やASD(自閉症スペクトラム)といった、他の発達障害を併発している場合も多い。また、協調運動障害を抱えている人も少なくないため、例えば靴紐をうまく結べなかったり、手本を見ながら文字を書き写すことが苦手だったりする。
学習障害に限らず、障害の程度や本人の特性には個人差があるので正しい理解が必要である。
うまく関われば、その人の良さがわかるかもしれない。
精神的、情緒的な面ではADHD、ASDのようなわかりやすい傾向は見られないとされる。一方で、先に述べたように併発している人も一定数いるため
ADHDでは
- じっとしていることが苦手で飽きっぽい
- 物やお金の管理が苦手で、忘れ物が多かったり浪費癖があったりする
ASDでは
- こだわりが強く、周囲の環境の変化が苦手
- 相手の意思を汲み取ったり、自分の意思をわかりやすく表現したりするのが苦手
といった傾向がある。併発している場合、学習障害の特性に加え他の障害の特性により学習に影響が出ていることも考えられる。もちろん、いずれの障害も併発しておらず、学習障害のみという人も多い。
英語など、他言語の学習についても自分の読み書きする言語と同様に学習障害があるとされる。
例として、本項の過去バージョンにて記載された、おそらく学習障害当事者の実体験と推測される症状の説明を以下に紹介する。
- 英語学習教材や小説を読んでいて、目がチクチクする。(アルファベットが浮き上がってブチブチ刺してくるイメージ)
- アメコミやインフォグラフィックおよびキンダーブックなどは「アルファベットを記号ではなく絵として見ている」ので目がチクチクしない。
- 取り扱い説明書等も(丸暗記した)英文法と英単語を機械的に翻訳している感じで「何も考えていない」ので目がチクチクしない。
周囲の対応について
本格的な勉強が始まる小学校入学以前にはなかなか見つかりにくいため、学校で授業を受けるようになってようやく発覚する、ということも多い。また、特に低学年の場合、単純に学習経験自体が少ないことが原因で学力が低かったり、不器用だったりという普通の子供との違いが分かりにくい可能性もあるため、学年が上がってから診断がつくことも見られる。
診断は小児科、精神科(児童精神科)などで厳格なテストを行ったうえでなされる。そのため、普通の勉強における得意不得意とは違う扱いとなる。
現在では、知的障害を伴わない発達障害が幅広く認知されるようになったことや、パソコン・タブレットなどを利用した学習方法の変化もあり、小中学校特別支援学級・特別支援学校(此の場合は入学不可)ではない普通学級でも本人の特性に配慮した学習が行われるようになってきている。一方で、すべての学校・学級・そして指導する教員たちの間で同レベルの理解があるとは限らず、対応にはまだばらつきがあるといえる。
また、ある程度成長してから、特に成人してから、就職してから障害だと発覚することもあるため、職場での対応や一緒に働く職場の仲間による理解が重要と言える。
障害は、決して本人や家族の努力が足りないわけではない。そのため、もし周囲に障害を抱えている人がいても彼らを勉強不足だとやたらに責めることはしてはいけない。
学校・職場における具体的な指導方法などはこの項目では述べないが、参考として関連リンクに文部科学省、厚生労働省などの紹介ページを記載するので、興味のある方や当事者、また身近にそのような人がいる方などはぜひ見ていただきたい。
関連タグ
学習障害を公表している著名人
スティーブン・スピルバーグ トム・クルーズ オーランド・ブルーム
黒柳徹子※1. ミッツ・マングローブ 柳家花緑
沖田×華※2.
※1. 黒柳徹子は著書で子供時代のエピソードを綴ったところ、LDの子供達を診ている複数の専門家たちから「LDなどの傾向が顕著である」と指摘されたと紹介している。
※2.沖田×華は小学校の頃に『学習障害』『注意欠陥多動性障害』、中学生の頃に『アスペルガー症候群』と診断。しかし認識できたのは成人してからと作品の中で描いている。