フィクションにおける扱いの解説は→レイプ。
概要
強姦は古今東西を問わず存在しており、異国の地で捕虜となり、敵兵に公衆の前で強姦された甘美媛、ポロツク公女でありながら両親の目の前で征服者に強引に犯されたログネダ、反逆者にとらわれて五ヶ月間を慰み者として過ごし妊娠したロシアの美人皇女・クセニヤ・ゴドゥノヴァなどがいる。
日本国においては、男性器を合意なく女性器に挿入する事と定義されており、13歳未満の場合は同意があっても無条件に犯罪となる。対義語(合意がある場合)は「和姦」。
よって男性→女性以外の犯行や、男女間であっても挿入以外の方法による暴行であった場合「強制わいせつ罪」もしくは「強制わいせつ致傷罪」として扱われる事になる。
この定義の狭さはしばしば問題とされている他、強盗等と異なり性行為自体は日常生活で広く行われている行為である事から、その証明の難しさもあって長らく警察や司法関係者ですら積極的に扱いたがる者が少ない犯罪であった。
事実、強盗の量刑が懲役5年以上であるのに対し強姦の量刑は懲役3年以上であり、それですら「些細な暴行、脅迫の前にたやすく屈する貞操の如きは強姦罪によって保護されるに値しない」等と言い放ち課さない事は珍しくなかったのである。
現在では状況の改善も進み、被害者の負担を極力減らした捜査・裁判が心掛けられるようになってきているものの、未だ無理解あるいは明確な悪意から被害者に追い打ちを掛けるような事案が起こる事は少なくない。
特に女性は貞操を守る事を義務視する思想や性を語る事をはしたないとする思想から、男性は強くマッチョである事を求める思想や同性愛を忌避する思想から、訴え自体を封じられる事もある。
レイプは魂の殺人と言われる程精神的な後遺症が残りやすい犯罪であるが、彼女・彼らを殺しているのは他ならぬ私達かもしれないのである。こうした行為は近年「セカンドレイプ」と定義付けられ、ようやく本格的な糾弾が始まっている。
また、無理矢理行うという性質上、内臓や骨盤などの身体機能を著しく損なうこともあり、これにより肉体的な後遺症が発生することも少なくない(特に身体機能が未熟な小児が被害者の場合)。
加害者に対してもかつては軽く考えられており、周囲や警察がなあなあで済まそうとしたり、たとえ加害者が有名人であっても未成年に対する強制わいせつ事件を起こした者が短期で公人として復帰することすらあった。
しかし、時代が進むにつれ世間の対応は厳しくなっており、近年ではたとえ示談が成立しても即時解雇は勿論10年以上にわたって復帰が許されない・もしくは完全に業界追放などの厳しい社会的制裁が加えられることも多くなっている。
なお、強姦はかつて著作権侵害等と同様、被害者が告訴して初めて裁判の始まる「親告罪」であった。その理由は先述の消極的態度もあるが、犯罪の性質上被害者の負担が大きくなりやすい事から、加害者を追及しない選択をする余地を残したという側面が強い。ただでさえ性犯罪の裁判は野次馬が湧きやすいのである。
また、従来はあくまで「男性に女性が襲われる」という事態しか想定して法律を作っていなかった面があり、同性間の性暴力、女性が加害者となる性犯罪などに対処仕切れているとは言い難かった。
同性間の強姦の場合、怪我をした時に傷害罪で処分するしかなかったのである。
2017年6月に法律が改定され、強姦(ごうかん)罪を「強制性交等罪」に名称を変更。
強姦罪、準強姦罪、強制わいせつ罪は親告罪ではなくなった。
刑罰も5年以上に引き上げられ、加害者被害者の性別を問わないことになり同性間の性暴力も処罰の対象となった。
また18歳未満に親が性行為を行った場合は「監護者性交等罪」とされこれも処罰の対象となった。
準強姦
暴行・脅迫によらず、女性の抵抗不能な状態に乗じて性行為を行う事と定義される犯罪である。
具体的には、酒や薬物によって判断力を低下させたり、知的・精神障害者を襲った場合に適用される。
文字面から強姦罪より軽いと誤解されがちだが、刑罰は強姦罪と同等である。
集団強姦
2人以上で強姦を行う事と定義される犯罪で、日本では合意がある場合でも乱交を認めていないという事もあり単独の強姦よりも罪が重くなる。
2003年前後に発生した「スーパーフリー事件」を重く見て新たに追加された。
口封じ等の危険性が高まる事から上記の法改正以前から親告罪ではなく、警察が把握次第逮捕・起訴を行える「非親告罪」である。
当然の事ながら、直接性行為をせずとも計画に関わった時点で共犯者であり、止めずに見学していただけでも逮捕される可能性がある。
参考
(強制わいせつ)
刑法第百七十六条
十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
(強姦)
刑法第百七十七条
暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
(準強制わいせつ及び準強姦)
刑法第百七十八条
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。
(集団強姦等)
刑法第百七十八条の二
二人以上の者が現場において共同して第百七十七条又は前条第二項の罪を犯したときは、四年以上の有期懲役に処する。
日本における取り締まりの状況、および問題
犯罪白書を確認いただければわかるが、日本における強制性交等罪に対する検挙率・起訴率ともに世界でもトップレベルとなっている(令和3年犯罪白書によると検挙率は97.4%)。
しかし、これはあくまでも「認知件数」に対する検挙率であり、中々処理が難しい数字ではある。
この手の犯罪に被害者の泣き寝入りが多いこともあるが、被害者が子供の場合は被害者本人が何をされたのか理解できず、しかし「なんとなく親に言ってはいけない」と判断して明るみに出ないというケースも少なくない。
また身内である「近親者」や「友人・恋人」からの暴力は、諸外国と同じく検挙・起訴率が低い。
近親者からの被害に関しては実の親が加害者で、幼いころから何度も性交渉し、妊娠もさせたというショッキングな事件も起きている。
女性だけでなく、男性被害者に対する社会的な理解度の低さも問題となっている。
男性からの被害に関しては女性と同様の理由+「男が性被害に遭ったなんて言えない」という心理的な問題もあって黙り込んでしまうケースが多い。
女性からの被害に関してはさらに親告が難しい。
これには「まさか男が女に」という被害者本人による否定だけでなく、男性向けポルノの影響も少なくない。
いわゆる「逆レイプ」がご褒美的なものとして描写されており、女性からの被害について相談した同性から「羨ましい」という言葉を投げつけられたケースもある。
また、男性は女性以上に身体機能的に反応がわかりやすく、本人が望まずとも身体反射の影響で勃起や射精をしてしまうことで、体の反応と心の拒絶がうまく折り合いを付けられずに必要以上に自分自身を責めてしまう、という事例もあった。
話そう・相談しようとしてもフラッシュバックで会話ができない、「一人であんなところにいた自分が悪いのではないか」「この人を怒らせてしまった自分が悪い」という自責の念、セカンドレイプなど多様な理由により黙り込んでしまう被害者は少なくない。
我が国でもカウンセリングなどが日々進歩をしているが、そのためには本人の気力や家族・友人の理解が必要であり、なかなか一筋縄にはいかないのが現実である。
ポルノ規制と犯罪増減の関係性
現在、世界的にポルノに関する規制が強くなっている。
一方で、「ポルノによって解消していた性欲が、ポルノ規制により行き場をなくし、結果的に事件に発展する」という主張および事例もある。
有名どころでいえば、フランス、韓国、スウェーデンという近年ポルノ系の表現規制(厳密にいえば児童ポルノが二次元にも及んだ事例)が厳しくなった三カ国では、規制強化以降性犯罪が増加し続けている。
(日本でも児童ポルノ禁止法はあるが、これは生身の実在する少年少女が対象であり、二次元に関しては規制されていない。ただし、実在する人物を模写した絵やCGは対象となるので注意。)
もちろん老若男女が入り乱れる公共の場でポルノを垂れ流すという社会については疑問が生じる。(もっとも、現代人は性嫌悪が少なからずあるので合法化=即垂れ流しにされると言うのは考えとして極端すぎる、仮にあったとすれば性行為自体が立派な文化として定着した世界であろう。)
また、実在の少年少女の児童ポルノや、だまされて出演させられたアダルトビデオなどについては本人達の尊厳のために、そして社会秩序のために取り締まる必要がある。
必要最低限の性教育が施され、実際の被害者やそれらに対して忌避感のある人達へ配慮してゾーニングを施すことが、ポルノが健全な娯楽として成立するに必要であるということを忘れぬようにしていきたい。
その上で己の欲を己でコントロールしていこう。オナニーをする事も己を律する立派な対処法である。
武器としての強姦
魂の殺人である強姦は相手の心をへし折る兵器としても使われる。強姦する側の征服欲や性感染症と組み合わせることで悪質さは更に増す。
被害者は前述の通り恥辱で無抵抗となり、さらに追い打ちとして友人や家族・我が子や仲間が襲われる恐怖や性病のリスク、文化圏によっては『敵に穢された』として集団から外される恐怖を何度も何度も与えられ征服される。
無論、このような行為は許されるべきではない。
参照
レイプが「戦争の武器」に ロシア兵による性暴力被害(NHK)
何故犯罪を犯すのか
犯罪者目線に立って見ても、強姦は強盗等とは異なり直接の利益が無に等しい犯罪であり、にもかかわらず他の暴力事件のような衝動性のものよりも、周到に計画された犯行が目立つなど、その異常性については様々な方面から原因の究明が進められている。
しかし、現在の所全てに当てはまる明確な要因は見つかっていない。あえて言うなら、この手の犯罪者は性的な快感よりもむしろ相手を蹂躙すること自体に快楽を覚える傾向にあるという事くらいだろうか。
また、宗教や特定の思想に根差した確信犯であるケースや、何らかの精神疾患やシリアルキラー的な性質を持っているケースなど、そもそも犯罪であるという自覚の無い者も多い傾向にある。この系統では薬物やアルコールの中毒者であるといった理由で脳に異常をきたしていると見られる者も存在する。また、「スーパーフリー事件」などのように、性犯罪をゲーム感覚で扱う雰囲気を持ったコミュニティにハマってしまうことでの価値観の歪みというケースもある。
1999年に沖縄の地方紙「沖縄タイムス」で連載された性犯罪問題の特集「心への侵入」によると、親族の結びつきが強く男尊女卑の強い社会でつまはじきにされた者がそのいら立ちを近親者への強姦ということでぶつけるケースも少なくなかったといい、また強姦の多発が問題視されているインドでは古い風習の残る村の有力者が制裁などのために強姦を指示するなど、地域性や因習による原因などもみられる。
こうした背景から、精神面・思考面での治療が試みられつつもあるものの、未だ適切なプログラムの完成には至っていない。ある者には効果のあった内容でも、別の者にはより悪質な再犯に走らせるヒントにしかなっていなかったといった事例さえもあり、前途は険しいようだ。
また社会の因習による強姦の多発の場合はさらに対処が困難で、各国政府も対応に苦慮している。
所謂「リア充」でもやる者はやるので、強盗のように生活を安定させるといった社会的な支援で解決できるわけでも無さそうである。
もし被害にあってしまったら
前後に何があったかに関わらず、あなたは悪くないのだという事を最初に伝えておきたい。
道に落ちていたり、荷棚やベンチに忘れられた金品を勝手に持って帰ったら犯罪であるように、たとえ全裸で道のど真ん中に寝ていたとしても、その人を襲って良い理由など無いからである。
被害直後はショックでぼんやりとし、そのまま忘れてしまいたいと思うかもしれない。しかし、特に女性は一刻も早く(できれば72時間以内)に産婦人科の病院へ行き、モーニングアフターピルの処方など妊娠を防ぐ処置をしてもらうことを強くおすすめする。また同時に診断書も必ずとっておこう。
男性も性病の確認と怪我等の治療を行うに越した事は無いほか、診断書や証拠保存等によって後の捜査や裁判に大きく役立つ手助けをしてもらえる。病院によっては心のケアに関しても同時にアドバイスを貰えることもある。
病院に行くのがためらわれる場合でも、加害者の体液等が付着した証拠物件があればビニール袋に密封して保存しておき、警察に届け出るときに持参すると良い。残念な話だが、証拠の有無によって警官の態度が左右されてくる事があるのである。
不幸な事に妊娠に至ってしまい、中絶という選択をする事になるかもしれない。そうした場合でも、どうか気に病まないでほしい。
確かに日本には「堕胎罪」という罪が存在したりもするが、現代においてはほぼ「母親の意思に反して堕胎させた」という場合を想定したものとなっており、強姦に適用されるものではない。費用は現状保険が適用されず、全額自己負担となるものの、公的な負担制度がいくつか存在している。担当医や各機関と相談し、最善の方法を教えてもらおう。
「水子」という概念もあるが、これも戦後になって作られた新興宗教に近い。日本はどちらかと言うと、無事に産まれて初めて「命」と見做す傾向にある文化だったという事は覚えておいて損にはならないと思われる。
なお、現在の法律では中絶を行えるのは妊娠22週未満という規定があり、これは強姦の場合でも変わらない。可能な期間内でも、遅くなればなるほど体への負担と費用が大きくなってくるため、可能な限り早く動いた方が良い。
それでも胎児を殺したくない、あるいは措置が間に合わなかったという場合には、自力で育てるほかに然るべき施設に預けるという方法もある。これも詳細は各種相談窓口を参照のこと。
被害相談を受け付けるNPOや弁護士会の無料相談などもあるので、わからない時はそれらを活用するのも手。
なお、先述の通り専門家の中にも無理解や悪意を持った人は紛れている。怪しい、合わないと感じたら遠慮無く別の人を当たろう。
また、映像技術の発達した現代では、行為の様子を撮影して口止めを図る輩も増えている(→リベンジポルノ)。
だが、冷静に考えてみてほしい。少しでも頭が回る犯人なら自ら犯行を自供するに等しい行為を実行するということは考えにくいし、そうでないならあなたの対応にかかわらず面白半分に実行に移す可能性が高い。つまり、脅迫の体を成していないのである。
むしろ、相手の口車に乗ってしまうことで既成事実化を図られたり、要求が過激化してしまう方がはるかに恐ろしい。そのような詭弁は無視して、逆にこちらが先手を打つくらいの気持ちで専門機関への相談を行うほうが事態を好転できるだろう。