概要
「弱い者いじめ」を好む人間はどこにでもいるものだが、性犯罪被害者は特に被害を受けやすく、悪意無き加害にも多く晒される傾向にある。
これは、性犯罪そのものが以下の点で特殊な犯罪である事と一体の関係にあるからである。
- 性行為自体は日常生活でごく一般的に行われる行為であり、事件性の立証がしにくい。
このため体液等動かぬ証拠があってすら、「和姦だった」「ただの痴話げんか」などと言い逃れる余地があり、被害者の側が人格や精神の異常性を疑われてしまう事態が起きる。
一般的なイメージに反して(「痴漢」はむしろ異端である)性犯罪の加害者は被害者と面識のある人物である事も多く、むしろ親子や師弟といった社会的立場の強さを利用して行為を強要する傾向にあるため、その交友関係にある者が次々と味方に付いて非難に加わるという事も起きやすい。
警察官や弁護士も味方になるとは限らない。日本では性犯罪の多くが(2017年7月までは)「親告罪」であり、量刑も一般の暴行と比べて軽めに設定されている事から、彼らにとってハイリスク・ローリターンな事案となっており、「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」の論理であからさまに加害者側に同調して訴えを取り下げさせるという手段に出る者が後を絶たない。
録音機器の発達等でようやく駆逐されつつあるが、かつては調書を取りながらどさくさ紛れに好みの行為や経験人数を聞き出そうとするといった、冗談抜きに「こいつおまわりさんです」な職権濫用を行う人間さえ堂々と在職していたのである。
これが最も分かりやすい事例かもしれない。「レイプ物」がポルノとして成立する現状、そうした趣味を持つ者にとって犯行に関する情報は「貴重な生の声」であり、興味本位で被害者本人から聞き出そうとしたり、憶測や妄想を交えて「下ネタ」として噂したり、酷い時には加害者自身が「武勇伝」として語り聞かせていたりするのである。
性行為に対する実感が湧きにくい子供ならば、しばしば和姦との違いが想像できず、「一足先に大人になった」程度の認識で囃し立てる事もある。単純なセクハラですら不愉快なものであるのに、自身が苦痛を負わされた経験が不特定多数に面白おかしく語られればどうなるだろうか。
さらに、録画機器が発達してくると「犯行の様子を録画して実際にポルノ作品を作る」という手段に及ぶ者も現れてきた(→リベンジポルノ)。こうした心無い人間の存在を前提に、加害者やその周囲の人間、更には加害者側弁護士までもがこれをチラ付かせて泣き寝入りや示談を迫ったという事例さえ確認されている。
※だからと言ってレイプ物の作品全てを悪とする考えは間違っているし、多くの人間は創作と現実の違いは理解している。
昨今、こうした思考に基づいてTwitter等でレイプ物の制作者や閲覧者を犯罪者等と中傷するユーザーが散見されるが、セカンドレイプと同レベルの行為である。
場合によっては犯罪として逮捕されたり、被害者から訴訟を受けることもある。
こうした行為は絶対にやめよう。
残念ながら現状の人間社会は、この点を「異性愛男性」と「それ以外」で性に関する権利を変えるという方法で折り合いを付けているのが実情である。
「男は狼なのよ」という言葉が象徴的であるが、性行為の間「異性愛男性」が人間として振る舞う必要は無く、彼を欲情させない事も、望まない性行為を防ぐ事も、全て「それ以外」の側が配慮しなければならない事であるとする言説は今なお根強いのである。
先述のポルノとの混同もあって、被害前あるいは後に性行為をした経験を取り上げて「取るに足らない事」と断定したり、そもそも被害を語る事自体を「はしたない事」とする意見さえ通用している。
「アドバイス」や「忠告」という名目でもっともらしい説教を行おうとする者も後を絶たない。
この論理で、男性被害者が守られているというわけでもない。むしろ、弱い男=男らしくない=「オカマ」という論理で、明確に男性社会から排除される傾向にある。男性の場合でも加害者は男性になりがちな事から、「ホモフォビア」とも結び付けられやすい。
女性被害者からも「理解者を装ったセカンドレイパー」として警戒されやすく、しばしば最も孤立した状態に陥っている。
性犯罪は精神的な後遺症が残りやすい犯罪の一つであるが、それはこうした周囲の人間の影響も大きいのである。
そのため、専用の相談窓口の開設など各種の教育・支援活動や、個人情報を極力隠した裁判進行など被害者に配慮した法的手続きの充実も次第に進みつつあるが、悪意を持って被害者に絡む人間を排除する決定的な手段が生まれるまでには至っていないのが現状である。
「メンヘラ」への差別感情のため、全てを理解していながら逆効果な言動を取り続けるという悪質な者さえおり、ネットではそうした人間が関係サイトを無差別に荒らしまわっている事も少なくない。
なお、被害の程度や性格によっては「気を遣われる事自体がプレッシャーになる」と言う人も存在する。「親切の押し売りのようで怖い」「かえって被害者である事を意識させられる」といった理由が多いようである。
悪意を持つ事は論外として、目の前の人が何を望んでいるかを考えた上での言動を心がけたいものである。
備考
セカンドレイプのような行為自体はインターネットが普及する前の昔から存在し、例として戦時中に旧満州でソ連軍の慰安婦を強要された十数人の日本人女性は、被害者であるにもかかわらず、戦後に日本側から「キズもの」などと誹謗中傷されたという。
炎上やバイトテロ、犯罪自慢にも言える事だが、ネット・SNSによってこれらが可視化されやすくなったとも言える。
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ヘラ…ある意味常習犯。