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概要編集

法的手続において当事者の代理人、被告人の弁護人として法廷で主張・弁護等を行うほか、各種の法律に関する事務を行う職業、あるいはその資格を持った者をいう。(Wikipediaより引用)

現在の日本においては、法務省の司法試験委員会が行う司法試験に合格し、その後、司法研修所に入所し司法修習を受けてなるコースが一般的である。

司法修習生の段階までは判事検事志望者と習う過程は同一であり、検事や判事を退職した後弁護士として活動する者も多い(元検事の弁護士を「ヤメ検」などと呼ぶこともある)。

数は少ないが弁護士から裁判官になることも可能。

最高裁判所の裁判官は、15人のうち4人が弁護士出身者で占められる運用となっている(7人が裁判官、2人が検察官、1人が学者、1人が行政官)。

活動にあたっては日本弁護士連合会と地域毎の弁護士会の双方に登録することが必要であり、不祥事を行ったり懲戒請求の内容が認められた場合は弁護士会から懲戒処分が行われ、資格停止の処分を下されることもある。

登録された弁護士は日本弁護士連合会のホームページで検索すれば載っている。載っていない弁護士は偽弁護士であるため要警戒。

また、禁固刑以上の刑罰を受けた者は弁護士法第7条の欠格条項に該当するとされ弁護士資格を剥奪される。有名人では元民主党所属の国会議員で、その後日本のこころで活動した政治家西村眞悟が違法な名義貸しで執行猶予付きの懲役判決を受けたことにより弁護士の資格を失っている。

また、弁護士として登録されていない者が弁護士でなければできない訴訟代理や法律相談などを行った場合(非弁行為と呼ばれる)には、弁護士法72条によって処罰の対象になる。


弁護士の任務編集

刑事訴訟編集

弁護士の任務のうち、一番分かりやすいものは、無実の罪で逮捕された被告人を裁判において弁護し、冤罪だと証明する事である。その任務は裁判の前からはじまる。まず刑事事件が発生して被疑者逮捕されたとすると、仮に無実だとしても法律知識もない上に勾留された本人にはその証明は困難である。このため憲法第34条、刑事訴訟法30条は起訴前の被疑者に弁護人依頼権を認めている(市川正人ら『現代の裁判』第5版pp.40)。仮に裁判が始まると、証拠に合理的な疑いが残る時には無罪となるという「疑わしきは被告人の利益に」という鉄則が適用される(同『現代の裁判』pp.43)。弁護人には被告の無実を証明する強力な武器があるわけだ。検察官側はいい加減な捜査で無実の被告人を起訴すれば負けてしまうことになり、慎重な捜査が求められることになる。後述するように被疑者の利益を優先するなら、弁護士としては警察や検察官に働きかけて冤罪であり仮に裁判になっても無罪になるだろう事を示し、起訴を阻止するのが最初の任務になる。


日本の刑事裁判における有罪率は99%と言われる。裁判官が正しい判決を下していると仮定すれば、そのような検察側の慎重な捜査の結果として無実の被疑者は概ね不起訴になっていることになる。仮に無罪になったとしても、無実の者が重罪の事件で起訴されれば何年もの裁判を強いられることになる。当然ながら、長期の勾留、失職や人間関係の崩壊といった大きな被害を受けることになろう。無実の者が起訴されないならば、それに越したことはないと言える。しかし、殺人事件等での被告の冤罪が証明されて無罪判決が出る事例もしばしば起こり、弁護士には重い責務が課せられていると言えよう。


また、被告人が罪を認めている場合であっても、被告人が反省している事を法廷に伝え被害者などに対して金銭の支払いなど可能な慰謝を行うことで刑罰を軽くするよう働きかけることもある。弁護士は法の公正を守る仕事である。検察官は強い権限を持ち、場合によっては事情を無視して過剰に重い求刑を行う可能性がある。弁護士は依頼人の利益を守り、裁判官に働きかけて過剰な刑罰を避ける事で法の公正を守る立場になる。


このように刑事訴訟における弁護とは、被疑者・被告人の権利を保障することによって、国家による国民の安全確保・治安維持という1次の統制を2次的に統制して適正化し、裁判の公正を確保する、というコントロールのコントロールに重要な役割がある(同『現代の裁判』pp.43)。


なお、刑事裁判に被害者参加制度が設けられ、犯罪被害者側の弁護士として活動することもあり、決して加害者の弁護のみが弁護士の仕事ではない。

ただし、薬物犯罪など被害者のいない犯罪も少なくなかったり、検察官が刑事手続で被害者の心情を積極的に述べる運用がされているため、あえて弁護士を頼むという選択をする被害者が少ないのは事実である。


民事訴訟編集

民事訴訟とは、借金の返済や損害賠償などの財産権の訴訟、離婚等の人事訴訟、また広くは官公庁の決定についての行政訴訟等を含む。被告が国であれば検察官である訟務検事が代理を務める行政訴訟等を除いては、原告、被告双方とも弁護士が代理人となる事が出来る。都道府県・市町村などが訴えられた場合も、大体弁護士が代理人として出てくる。

ただし、民事訴訟においては、必ずしも弁護士の選任は強制されていない。2006年時点で、地方裁判所では双方に弁護士がつくのは38%、簡易裁判所に至っては80%が原告・被告とも本人であるという(市川正人ら『現代の裁判』第5版pp.126)。民事訴訟における弁護士の任務は、口頭弁論、証人尋問、和解への交渉など、書面の作成や事前の打ち合わせ等が重要である(同『現代の裁判』pp.127)。

他方、弁護士も無償で依頼を受けることは困難であることや、たとえ裁判で勝訴しても弁護士費用は賠償の対象にならないため、弁護士を頼めず裁判を諦めるという結果になるケースも少なくない。


弁護士のその他の任務編集

弁護士には一切の法律事務を行う権限がある(弁護士法3条)。

実は一般法律事務は、訴訟業務に比べて経済的に重要性を増しつつあり、特に法律相談や企業や私人の法律顧問活動が重要となっている(同『現代の裁判』pp.128)。法律相談では、法律に関する相談と助言による問題解決だけでなく必要なら利害が一致しない相手方との交渉にも携わり、法律顧問では定期的な法律相談と訴訟代理、調停などが行われる。

弁護士でないのに裁判や調停の代理はもちろん、法律相談も業務として行うことは禁止されている。(行政書士司法書士などの一部士業には例外的にある程度の業務が許容されている)


弁護士への道編集

司法試験に合格した後、司法修習生として一定期間の研修(司法修習)を受けることが条件。司法試験は年齢に関係なく受験できるが、公認会計士と並ぶ文系資格の最難関として知られていたため、弁護士になる条件を緩和するために法科大学院(ロースクール)が設置された。現在はこの法科大学院課程を修了するか、司法予備試験をパスすることが受験条件になっている。

法科大学院修了生は、終了後5年内であれば司法試験を受験することが可能。

2014年に法改正されるまでは受験可能な回数が3回だったので、3回とも落ちた者を「三振博士」と呼んでいた。

この受験上限を使い切ってしまったら、法科大学院に再入学するか司法試験試験に挑戦する、または諦めるかするかになる。

三振博士で再受験を諦めた者の中には勉強で得た法律知識を生かし、行政書士・司法書士など他の法律系資格を受験する者や、弁護士事務所の事務員となる者も少なくない。


しかし、莫大な学費がかかる割には弁護士として活動できるのはほんの一握りであり、なれたとしても飽和した市場で新人が入り込む余地はほとんどない。法科大学院制度は以前からの弁護士余り状態に拍車をかけただけで、実質的に失敗したとする批判もある。


実際、法科大学院は軒並み不人気であり、多くの入学者は法科大学院を卒業せずに受験資格を得られる司法試験予備試験も受験している。募集を停止・廃止となった学校も全国で30校弱、入学者の減少が毎年続いており定員割れも珍しくない。このため法科大学院は制度として破綻しているとして、廃止論がしばしば取りざたされる。


弁護士の生活編集

法律事務所編集

司法試験に合格し、司法修習所を卒業すれば、確かに弁護士を名乗る事が出来る。しかし一般には、そのまま自前の弁護士事務所を構えることは少なく、多くはベテラン弁護士の事務所に雇用されて経験を積む(読売新聞社会部『ドキュメント弁護士』pp.28)。彼らは「居候(いそうろう)」をもじって「イソ弁」とも呼ばれる。弁護士事務所は、もしくは法律事務所と名乗ることも多いが、これら弁護士たちと弁理士公認会計士税理士司法書士行政書士等の専門職、またスタッフとも呼ばれる事務員等から成り立っている。事務所の規模も、弁護士一人だけの個人事務所から大規模な組合・法人まで様々である。2015年3月末日現在で弁護士一人だけの事務所に所属する弁護士が25.1%、2~5人が39.6%、6~20人が22.0%、21~100人が7.1%、100人以上の事務所に所属する弁護士は6.3%となる(『弁護士白書』2015年版)。事務所のトップは「所長」や(イソ弁に対して)「ボス弁」等と呼ばれるが、事務所規模が大きくなってくるとイソ弁(アソシエイトとも呼ぶ)から昇進させた共同経営者クラスの「パートナー弁護士」に出資や経営参画を認めているケースも多い(東洋経済オンライン)。


生活とモラル編集

弁護士の最重要な任務の一つは、刑事訴訟節で述べた「国家統制に対するコントロール」である。権力の横暴から無実の市民を守る仕事である以上、国家に支配管理されては成立しない。実際、弁護士の登録・懲戒を行う仕事は各地の弁護士会とその全国団体である日本弁護士連合会(日弁連)にあって、公的な監督から独立している(市川正人ら『現代の裁判』第5版pp.126)。

つまり、弁護士は検察官や裁判官とは異なって公務員ではなく(ただし、弁護士資格を持つ者を公務員として採用する自治体はある)、個人事務所であれ法人であれ事務所の経営を成り立たせなければいけない。日弁連の2014年「弁護士実勢調査」によると、14.3%の弁護士が1500万円以上の所得を得ている一方で14.6%の弁護士が所得を200万円以下であると答え、週平均労働時間は56.2%が50時間を超えるともいう(『弁護士白書』2015年版)。刑事事件の国選弁護の労働は特に過酷で、公判三回で83000円、その後は開廷ごとに5~8000円で、「接見・面談・記録の検討等を含めた実労働時間は学生アルバイト並だ」ともいう(同『ドキュメント弁護士』pp.41)。刑事事件の国選弁護は安定していつもやってくるような仕事ではないという点を加味するとアルバイト以下ともいえる。


公的な規制が少なく経営が過酷な中で、弁護士として生活を維持しつつ社会正義を実現しモラルを守るのは常に困難が付きまとう。全国弁護士会が弁護士として懲戒処分を行ったケースは2014年で101件、退会命令と除名が合計で9件に上った(『弁護士白書』2015年版)。弁護士会も倫理研修や懲戒処分の報道への公表など自浄努力に務めているが、市民による弁護士の懲戒や頼れる弁護士を見極める市民側の技術も求められつつあるというのが現状である(同『ドキュメント弁護士』pp.10)。


弁護士会と日本弁護士連合会(日弁連)編集

弁護士は公務所に登録されない代わりに各地方裁判所所在地に一つ(ただし東京には三つある)ある弁護士会と日本弁護士連合会(日弁連)の双方に登録されなければ弁護士として活動することが許されない。

弁護士会は、日本の法律で設立すること自体が強制されている数少ない法人でもある。


弁護士として許されない行為をした者は、弁護士会によって処分の対象となる。弁護士会から除名されれば、弁護士として活動することは許されないことになる。

弁護士会は権力からの独立が目的であるため、行政からの補助金などはなく弁護士が自らの売り上げから会費を出して運営資金としている。収入の少ない弁護士にとっては会費も厳しい負担となる。

弁護士会は、弁護士の処分だけでなく、さまざまな人権擁護活動を行ったり、弁護士が必要な所に弁護士を派遣する、司法修習で弁護士の立場から指導を行うなどの職務も行っている。

ただし、弁護士によって意見が分かれる問題について、特定の立場から「会長声明」などという形で意見表明を行うことがしばしばあり、加入が義務付けられている法人が反対の弁護士の立場を無視した活動をすべきではないという批判も存在する。


弁護士のバッジ編集

外側にヒマワリを象り、内側には天秤が象られている。

ヒマワリは、太陽の方角を向いて花を咲かせることから「飽くなき正義への希求」を意味するとされる。

天秤は、ギリシャ神話テミスやローマ神話のユースティティアといった正義の女神が用いる天秤に由来し、「公平」を意味するとされる。


弁護士のイメージ編集

司法試験制度が変わった現在も大変な難関であることには変わりなく、理系の医者、文系の弁護士と並び称されるエリート職業である。企業の顧問弁護士など実入りのいい仕事を手がける弁護士は多額の報酬を得ており、法律知識を生かして企業経営に携わる弁護士も少なくない。一方で、「社会正義の体現者」として報酬度外視の仕事に身を投じる弁護士もおり、必ずしも経済的に恵まれている弁護士ばかりではない。


マスコミ等では、光市母子殺害事件などの刑事事件において、依頼人の弁護に熱心なあまり、一般大衆の多くが首をかしげるような主張をする事例がセンセーショナルに取り上げられ、「金次第でどんな凶悪犯にも味方する人権屋」などと悪いイメージが広げられている。中には、こうした凶悪犯の弁護人に対して「凶悪犯に人権はあるのか」などと脅迫状を送ったり脅迫電話をかけるような者もおり、世間からの厳しい視線に晒されている。

しかし、弁護士は依頼人を最優先するのが職業倫理であり、それを責めるのは筋違いである。むしろ、法律の素人で身柄を拘束されている被告人を一方的に処罰しても公平な結果とは評価できず、法律の専門家で自由に活動できる弁護士が手を尽くして弁護し、なお有罪であるからこそ、裁判所の有罪判決が正当なものと評価されるのである。

上記事件のように、凶悪犯を手を尽くして弁護する弁護士はむしろ弁護士として正しい姿である。(上記の光市母子殺害事件の場合は異なるが)財産を持たない被告には国選弁護人がつけられることになっており、凶悪犯の弁護を務めることもあるが報酬は微々たるもの。多くの弁護士は、報酬のわずかな国選弁護士でもまじめに職務を務めており、日本の弁護士の倫理観の高さ(大衆の倫理観とは反する場合もあるが)をうかがい知ることができる


くわえて上述の光市の事件に限らず、世間で騒がれるような、いわゆる「凶悪事件」と呼ばれる事件については、ほぼ「死刑または無期もしくは長期三年以上の懲役もしくは禁錮」が法定刑として設定されている罪を構成するものであり、弁護士がいなければ裁判それ自体を開くことが出来ない為(刑事訴訟法289条)、凶悪事件の裁判が始まる度にネットで見かけるような「凶悪犯に弁護士は要らない」、「こんな凶悪犯を弁護する弁護士もおかしい」という主張通りにするのなら、被告人を裁くことすら出来なくなってしまい、矛盾が生じることになる。そのことからも前述の主張が(感情的にはともかく、法的には)いかにおかしなことを言っているのか分かろうというものである。


訴訟大国アメリカでは日本以上の弁護士余り状態であるため、「交通事故を起こすと警察より先に弁護士の営業が来る」などとも言われている。

また、「マクドナルド・コーヒー事件」のような超理論で賠償金をもぎ取る例も多数報告されており、銭ゲバのイメージが定着している。

なお、アメリカでは州によって弁護士の資格が異なることに注意が必要である。


主な弁護士編集

実在の人物編集


外国の弁護士編集


架空の人物編集

※作品名五十音順



外部リンク編集

日本弁護士連合会 - 公式。弁護士と日弁連の概要解説有。

法テラス - 国営の弁護士と裁判に関する相談窓口。まずは法的に困ったらこちらへ


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