北岡秀一
きたおかしゅういち
「いや、俺はな、人間の欲望ってやつを愛してるんだよ」
「そう。人として生まれたからには、全ての欲望を満たしたい。
忍耐だの我慢だの、そんなものをありがたがる人間はたくさんいるけど……
そういう奴に限って、欲望を満たす才能も力もないんだよ」
「英雄って言うのはさ、英雄になろうとした瞬間に失格なのよ。お前、いきなりアウトってわけ」
演:涼平(現:小田井涼平)
変身する仮面ライダー
プロフィール
自らを「スーパー弁護士」と称するほど不利な裁判でも判決を覆せる卓越した腕前を持つが、一方で法外な弁護報酬を請求し金次第で動く悪徳弁護士としての一面も持ち合わせている。
「東京都港区青山8-21-9 パークハウスGoh 201」にある自宅兼個人事務所「北岡秀一法律事務所」を拠点とし、「ゴローちゃん」こと相方の由良吾郎には絶対的な信頼を寄せている。
人知れず不治の病に侵されており、ライダーバトルに参加した理由は”永遠の命”を得るためである。
「欲望を愛している」「欲しいものは全て手に入れる」と公言し、楽しむために生きているタイプだが、同じ境遇の人間には優しさを垣間見せたり、楽しむことを優先させているだけで積極的な悪事には加担しない(上前をこっそり頂いたりはするが)。また、自分に親しみを持つ相手には好意的に接するなど、良くも悪くも人間臭い人物で、城戸真司も仮面ライダーとして対立する前は人として好感を抱いていた。
子供嫌いでありドライな性格だが、自分と同じ境遇の者には手を差し伸べる等意外な優しさを見せることもある。第10話では当初冷たく接していた少女が、母親が自身と同じく重い病を患い治療費が高額な為治せないことを知ると、無償で治療費を全額提供した。
「金の匂いがしない奴からの依頼は受けない」主義と語り、金次第でどうとでも動く姿勢ゆえ同業者や被害者からの評判は芳しくない。ゆえに「どうしても勝ちたい時の最終手段」のような扱いをされている。
それ故にかなり裕福であり、食事やファッション等かなり豪華な私生活を過ごしている。
また、裁判で無罪に出来なかったことから浅倉威に恨まれており(さしもの北岡ですらあらゆる手を尽くした末にようやく懲役10年に持ち込んだほど浅倉の凶行が凄まじ過ぎた為である)、浅倉の登場以降は幾度となく命を付け狙われることになる。
真司の上司である桃井令子に好意を寄せており、何度もデートに誘っては振られるのが定番。
好きな食べ物は「贅沢なものなら何でも」。好きな言葉は「濡れ手で粟」。
割と自己中な性格は子供の頃からだったようで、友達もいなかったようだ。
真司や秋山蓮とはライダー同士戦い合う立場であるはずなのだが、ギャグ回やギャグパートでよくトリオにされている(更には浅倉もその枠組みに混ざることがある)。
第30話から登場した浅野めぐみは由良吾郎が来る前の彼の元秘書であり、ボディガードとして使えるほど強い反面秘書としては度を過ぎた天然で不器用な言動が多く、ストレスの溜った北岡に解雇されていた。しかし彼女が自分と関わりのあるOREジャーナルに採用されたことで北岡は時々ながらも再び彼女に悩まされることに……
何だかんだで秋山蓮同様に徐々に城戸から影響を受けており初期と比べると終盤はかなり丸い性格になっている。特に、終盤である理由から真司が自分からライダーバトルを挑んできた際には驚きと戸惑いを隠せず『お前、何があったか知らないけど、見てらんないよ』と、真司の様子をどこか心配するような台詞と共に断っている(もっとも、この時の北岡は不治の病が悪化していてこれ以上戦うことが出来ない状態であった)。
そのことを北岡自身は自覚しており、蓮とそれについて話す場面もみられた。
第6話の終盤に4人目のライダーとして初登場。
当初は依頼人からお金を巻き上げたり、自身に近づいた真司がライダーと知るや否や、無実の罪で捕まった彼を有罪に仕立て上げたり、真司の攻撃で吾郎が死んだように見せかけて失意の彼を脱落させるように仕向けたりとかなり狡猾で冷酷な性格であった。
その後も蓮と交戦したり、逮捕された芝浦淳を釈放したり、自身が弁護を担当した浅倉が脱獄したことで彼から命を狙われるようになるなど混沌を極めつつあるライダーバトルに苦言を呈し始める。
しかし中盤になると真司を臨時秘書として雇ったり、一緒になって誘拐事件を捜査するなど真司という人間に感化され始めるような描写が目立つようになる。実際、この頃には真司やOREジャーナルの面々と食事やカラオケをするなど初期に比べてだいぶ丸くなっている(尤も、嫌味な性格が完全に無くなったわけではないが)。
しかし、度重なるライダーバトルも相まって病状はどんどん悪化して行き、戦うこともままならなくなっていく。
意識不明となったことで入院し、それが元で生き残ったライダーの召集にも応じられなかったため、神崎士郎からも完全に脱落者と扱われてしまう。
北岡は脱落を受け、命への執着よりも残り僅かな余生を少しでも楽しむことを優先。そして令子をデートに誘い、(北岡の知らぬところで事情を知った島田菜々子とめぐみの進言もあって)遂ぞ令子はデートに応じた。(なお偶々OREジャーナルに居合わせた真司はこの時初めて北岡が重病人であること、即ち彼の願いの本当の意味を知った)
しかしデートを目前にして、「このままじゃ俺…何か一つ染みを残していく感じで…嫌なんだよね」と、北岡は浅倉との決着をつけることを希望。
北岡の病状は悪化しており、手元に力が入らない、快晴の元で「天気が悪くてゴローちゃんの顔が見えない」と話す程の視覚の悪化に見舞われていた。
ミラーワールドから飛び出た大量のモンスターが街に溢れ返る中、王蛇の元にはゾルダの姿があった。
激しい戦いの末、王蛇の「ドゥームズデイ」でマグナギガが消滅しゾルダも致命傷を負って変身が解除されてしまう…
しかしゾルダに変身していたのは彼ではなく、秘書である由良吾郎であった。
この時、既に北岡は宿敵との決闘も愛する者とのデートも叶わず、事務所で眠るように息絶えていたのだった。
彼の意志を継ぎ、浅倉との決戦に臨んだ吾郎も王蛇の攻撃によって死亡。ようやくデートに応じてくれた令子は待たせた本人も、理由を話す人間も来ることのない北岡をレストランで待ち続けるのであった。
欲望に忠実で、巨万の富で欲しい物は何でも手に入れてきた彼だったが、最期は「永遠の命」も「愛する者との時間」も「宿敵との決着」も何も得られることはなく、最後に残った秘書に看取られるとその短い生涯を終えたのだった…
新世界では以前と同じように、吾郎をパートナーとしスーパー弁護士として活動。令子との接点もなかったことになったようだが、報道陣の中に交ざる令子をしっかりと捉えていた。
この世界でも病に罹っているかは定かではないが、人生を謳歌していることには変わりない模様(回復が見込める・病状が軽いものに変わっている可能性もある)。
劇場版『EPISODE_FINAL』
霧島美穂の姉を殺害した浅倉威を弁護していたが故に美穂から恨まれている。
その件に関して少なからず罪悪感を感じており、病の進行も手伝ってか戦いに虚しさを感じる様になる。最終的には、令子をデートに誘った後ゾルダのデッキごと放棄して脱落を選んだ。
(ちなみにディレクターズカット版では、令子もデートに行くつもりであったことが明かされている)
なお、カードデッキを放棄する(ディレクターズカット版では吾郎と共に令子とのデートに着る服を買いに事務所を出る)場面で出番を終え、その後北岡がどうなったのかは不明だが、仮面ライダーを辞める=モンスターとの契約破棄となる為、恐らくはマグナギガに捕食される運命が待っていると思われる⋯
(あの不動のマグナギガが本当に北岡を襲ったかは不明。インペラーみたいなことにならず野生化したことを願うばかりである。)
TVSP『13RIDERS』
真司のヘルメットを叩き落としてベノスネーカーから真司を救うなど、やっぱり本編同様根は悪人ではないことがわかる。しかし本編より悪役ポジションに近く、ナイト以外のライダー達と手を組んで、龍騎を叩き潰そうとした。なお作中描写からしてやはり重病持ちのようだ。
小説版
原典同様のスーパー弁護士で容姿端麗で金持ちなど非常に物質的には恵まれた環境にいる。
特に原典以上に眉目秀麗なことが強調されている。
逆に由良吾郎は凄まじく不細工という描写がされている。
城戸には浅倉の情報を教えたこと以外は終始非協力的で城戸の人柄に影響もされなかった。
終盤になるにつれアルツハイマーのような病状が悪化していき、吾郎のことも忘れてしまい、彼に暴力を振るうようになってしまう。その後は幼少期の千歳飴についての記憶を回想しながら終いにはずっと千歳飴を舐めるかのように自身の指をしゃぶり続けるだけの存在と成り果てる。
ある意味、原典以上に悲惨な末路だと言える。
『超スーパーヒーロー大戦』
「いや俺はさ、別にゴライダーになれなくても結構面白おかしく暮らしてるじゃない?それに、英雄ってのは英雄になろうとした瞬間失格なのよ。わかる?ゴローちゃん?」
モモタロス「誰がゴローちゃんだこの野郎!」
今作で15年ぶりに銀幕に帰還。
劇中に登場するゲームでもある『超スーパーヒーロー大戦』内のトーナメント戦でチームエグゼイドの緑枠メンバーとして陣マサトによりセレクトされたが、本人はあまり乗り気でなかったらしく、永夢逹に契約書の締結を要求する。また、何故かモモタロスの事をゴローちゃんと呼んでいた(1文字しか合っていないような…)。
決勝戦ではカラー及び銃使いの3号ライダー繋がりで仮面ライダー龍玄と戦った。
演者の小田井涼平は『エグゼイド』の世界観における北岡」という雰囲気を意識して演じた、とのこと。
『RIDER TIME 龍騎』
メインライダー4人(龍騎・ナイト・ゾルダ・王蛇)の中では、ゾルダの変身者であるはずの彼のみ登場しておらず、彼の代わりに吾郎がゾルダに変身している。
浅倉の発言から、少なくとも彼もライダーとして戦っていたようだが……?
小田井が所属している歌謡コーラスグループ純烈のリーダーである酒井一圭は、小田井は当時メンバーの中で一番の過密スケジュールだった為、参加できなかったとツイッターにて語っている。
後に純烈が主演する映画の発表会の際は、当作に不参加だったことに触れて「複雑」と述べている。
『ひらかたパークヒーローショー』
(非公式&独自設定だが参考に)
仮面ライダーゴーストのスペシャルショー(2016/6/5)ではブック眼魔に召喚される形で他三人のメインライダーと共に登場。登場直後こそスペクターをマグナバイザーで脅すも、既に死亡した身ということや本編の経緯もあり先述の件を悪かったよと謝る、消滅を受け入れる旨を示した際に死にたくなかったんじゃと真司に問われ「もう永遠の命なんてどうだって良い、この世界にはゴローちゃんや令子さんもいないしね」と返すなど大分丸くなっており、終始味方サイドのキャラとして描かれた。
そして本編で叶わなかった浅倉との決着をつけた後、最期は真司、蓮と共にブック眼魔に導かれ消えていった。
いずれも劇中未使用。
消えない虹
Aメロの歌い出しがスタッカートになっているのだが、当時の涼平の独特の歌い方のせいでこれが局所的にネタにされている。本編では結局使われなかったものの(後にひらかたパークのヒーローショーで一部が流されたことがある)、曲そのものは彼の深層心理を詠い、己の願いや欲望への愛に対する疑問を問う歌詞と爽やかなメロディが合わさった隠れた名曲なので一聴の価値あり。
- 『仮面ライダー龍騎』のメインライターである脚本家の小林靖子氏は、過去の雑誌インタビューにて、「北岡秀一は、井上敏樹先生が創作したキャラクター」だと語っている。というのも、3人目のライダーである仮面ライダーシザースこと須藤雅史のエピソードが終わってから、4人目のライダーをどんな人物にしようか、小林氏がキャラ作りに難航していたのを見たプロデューサーが、前々作『仮面ライダークウガ』に散発的に参加し、前作『仮面ライダーアギト』にメインライターを務めた井上氏を『龍騎』のサブライターとして登板させた事を明かしている。
- 「金には汚くて情には脆い」という設定は当初から決まっていたが、職業は医者として登場する案もあり、前年に既に医者ライダーがいたため弁護士で確定したという。ただし悪徳呼ばわりされていることなどからして、医者キャラで通っていてもどのみちただの医者という設定にはならなかったであろう(因みに前々作にも同じ名前の医者が登場している)。
- 実在病を指定してしまった場合の患者差別を防ぐということもあってか、結局彼の具体的な病名は映像作中では最後まで明らかにならなかった。最期の失明の描写から脳に関連するものではないかと一部からは考察されている。
- 上述の”好きな食べ物””子供時代の話””好きな言葉”は30話にて由良吾郎と浅野めぐみが互いに北岡に関するクイズを出しあったことで判明した設定だが、北岡にはこの他に両者共に知っている人に言えない密かな趣味があるらしい。これも作中では明らかにならなかったが、一体どんな趣味なのだろうか…………
- 「その男、ゾルダ 仮面ライダー龍騎フォトアルバム」に掲載された井上敏樹のインタビューによれば、実はマザコンであり今だに母親には頭が上がらないようである。
- (あくまで本編外の話ではあるが)永遠の命を手に入れる手段はなんでも良いというわけではないらしく、ゲーム『ライダーレボリューション』においてはアルゴスからゴーストになれば寿命の心配はないと誘いを受けるが、ゴローちゃんの料理が食べられなくなることを惜しんで断った(一方で、NEVERやアンデッドの不死性には興味を示していたが)。本編でも自分だけが永遠の命を手に入れてしまったら、いずれゴローちゃんの料理も食べられなくなってしまう・死別を経験するという、病で死ぬよりも辛い不幸と苦痛が降りかかってしまう事は想像に難くないが……。
- 彼が退場した最終回ではルイ・アームストロングの「what a wonderful world」(意味はこの素晴らしき世界)がBGMとして使用されたが、ソフト化に際して無音に修正されている。
3号ライダー変身者
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