「確かにあまり良い運勢は出ていない。
だが立ち止まるよりは進んだ方が正解だ。
あんた次第でどうにでもなる……大丈夫だ」
変身する仮面ライダー
概要
プロフィール
神崎士郎に仕組まれた運命に対抗すべく、ライダー同士の戦いを止める為、奔走する。
どこか達観していて容赦無くズバズバと物を言う性格だが普段は穏やかで物腰の柔らかく、面倒見の良い好青年で自分の事ばかり考えているライダー達の中ではかなりまともな部類。
コイン等を使った占いで未来を見通す能力(所謂、予知能力)を持ち、その占いが百発百中であるためか「俺の占いは当たる」が口癖。ただし、本人は「運命は変わらないものではなく、むしろ変えるべきもの」というスタンスを取っており、占った者にその旨を言い添える。
経歴
登場当初は秋山蓮に戦いの無意味さを説く為、半ば付き纏っていたが、彼の考えに同調する城戸真司と出会い、真司が居候する喫茶店「花鶏(あとり)」に出入りし(一時期居候もしながら)、彼に手を貸す様になる。
その後は真司と共にライダーバトルの本質を探ろうと神崎士郎・優衣兄妹について調査を進める中で優衣の異常性に一早く気付いていた。
調査を進める中で彼と真司は神崎士郎の配下であるガルドサンダーに遭遇する。すると普段の物腰の柔らかい彼とは打って変わって激昂しガルドサンダーをファイナルベントで撃破する。戸惑う真司に手塚は自身がライダーになった訳を話す。
彼がライダーになった訳は、神崎からデッキを受け取った親友である斉藤雄一の死だった。
ピアニストであった雄一は、浅倉威の起こした暴力事件に巻き込まれて手を負傷し、以前の様な演奏が出来なくなってしまう。
そこへ現れた神崎士郎からデッキを手渡され、「ライダーバトルに勝ち残ればあらゆる願いが叶う」と唆されるが、「他人を傷付けてまで手を治したいとは思わない」と戦いを拒絶した為、神崎士郎に仕えるガルドサンダーに食い殺された。
雄一の最期を目の当たりにしていた手塚は、友人の死を無駄にしない為、「戦いを止める」という目的を持ってバトルに参加したのである。
前述の通り、ライダー同士の戦いを止めさせる事が目的である為、戦おうとしない彼を急かす様に神崎から「サバイブ」のカードを渡されても、自身では一度も使用せず最終的に蓮に託した。
当初は蓮が新しいライダーに倒される未来を予見。その事を巡り真司とも対立するが、19話で最終的にこれを覆した真司に希望を寄せる(代わりにその新しいライダーが脱落したのだが)。
しかし次の脱落者を占うと、表情を一変。その場にいた真司に「次に消えるのは…俺だ」と伝える…
変わる運命
その後の戦いで王蛇と交戦したが、ファイナルベントから龍騎を庇い、致命傷を負ってしまう。
変身解除された手塚は、「運命に決められた通りに死ぬのかよ!」と半ば憤る真司に真実を伝える。
「次に消えるライダーは…本当はお前だった。しかし運命は…変わる」
そう、手塚の占った結果では、本来の次の犠牲者は真司であった。
満身創痍ながらも満足げな笑みを浮かべる手塚。その後現場に駆け付けた優衣の鏡像を指し示し、何かを伝えようとするが声を出す事すら儘ならない。
代わりに真司を見て、「お前なら…」と心の中で呟く。そして亡き親友に「今なら分かる……お前は俺の運命を変えてたんだ……そしてそれがもっと大きな運命を変えるかもしれない……」と思いを馳せながら、真司達に希望と未来を託して息絶えた。
最期に優しい『嘘』をついた手塚。「ライダー同士の戦いを止める」という同志とも呼べる者の死に、真司の悲痛な叫びが響き渡った。
「俺の占いが……やっと……外れる……」
手塚が真司を生かしたお陰で、心を閉ざしていた蓮が最後には真司に「お前こそ生きろ」と叫ぶまでになる、また、優衣が戦いを止めるよう兄に働きかけるなど、手塚の決断は龍騎本編のライダーバトルに多大な影響を与えたと言える。
本編最終回の新世界にも登場。ガス欠を起こした真司のバイクが東條悟の自転車に追突された様子を見て、「あんた、今日の運勢は最悪だな」と言い放った。さらにそのバイクが浅倉に蹴られ、「俺の占いは当たる」と告げた。
他のメディアミックス
劇場版「EPISODE FINAL」
ディレクターズカット版でのみ冒頭で既に脱落している事が示唆されている。
どういった末路を辿ったかは不明だが、彼の契約モンスターであるエビルダイバーが王蛇の支配下に置かれている為、TV版と似た顛末であると思われる。が、あくまで詳細は不明。
TVSP「13RIDERS」
TVシリーズ本編とは設定が異なり、蓮の親友であり小川恵里の元恋人(?)として登場。
願いの為に他人を殺める事に疑問を感じていたが、モンスターとの戦闘中に高見沢逸郎/仮面ライダーベルデの襲撃を受け、最期はベルデのファイナルベントを受けて死亡してしまう。
漫画版「13RIDERS」
仮面ライダーという仮面を着けて戦っている内に人間性を失う事への恐怖、ミラーモンスターはライダーの成れの果ての姿ではないのかという推測を口にする姿が描かれていた。
こちらもベルデの手にかかり死亡したが、TVSPとの違いとしてシザースが死亡しない為、クライマックスの地下駐車場でのライダー混戦前に死亡した唯一のライダーだったりもする。
小説版
手塚かどうかは不明だがライアが登場。
こちらもTV版と同じく浅倉/王蛇に撃破される。ミラーワールドの星空を見て自分の不吉な運命の予兆を感じていた事から、本作でも占い師なのかも知れない。
RIDER TIME 龍騎にて
仮面ライダージオウのスピンオフ作品『RIDER TIME 龍騎』にも登場。手塚が映像作品に登場するのは実に17年ぶりとなる。
EPISODE1ではライダーバトルが開始されて既に4日が経過しているが、この間に真司が変身する龍騎や、木村(ベルデ)、石田(インペラー)と4人でチームを結成。自らが率先して纏め役となり、芝浦淳(ガイ)・石橋(シザース)・戸塚(タイガ)のチームと敵対していた。
自分達の拠点を襲撃してきたガイのチームを退けた後、真司達とは遅れて合流。芝浦から共闘の申し出があった事を伝え、話し合いの場を設ける為に全員のカードデッキを預かりたいと話し、真司達のカードデッキを回収した上で話し合いの場に連れて行く。
しかし、実は物語開始時点で既に芝浦達と内通しており、真司達からデッキを回収したのも、彼等からデッキを奪って変身出来ない状態にした上で、芝浦達と共に真司達を一網打尽にする為だった。
手始めに石田をエビルダイバーに捕食させ、残る真司と木村も芝浦達と共に始末しようとした……が、そこに突如乱入して来た王蛇のベノクラッシュでタイガが死亡。そこに王蛇に付き従っているゾルダまで現れ、混戦状態となる。
続くEPISODE2ではゾルダのエンドオブワールドから逃れ、芝浦達が拠点としていた屋敷に引き上げた後、一応の祝杯も兼ねて食事を楽しんでいたが、その最中に突然、芝浦と共にミートナイフで石橋を刺殺。
その後、何と芝浦とは肉体関係がある事が明らかになる。
(流石に本番のシーンは無かったものの)ベッドシーンや事後のシャワーシーン等の衝撃的な場面が連続する中、最終的には芝浦とも敵対しなければならない事実に苦悩していた(この時、タロットカードを使った占いを行っていたが、引いたカードは『塔』。即ち破滅を示していた)が、突然現れた鏡の真司から「裏切り者は裏切られる。本当は気付いているんだろう?芝浦の奴は信用出来ないって」と唆しを受けたのを切っ掛けに、芝浦との共闘関係も破綻。戦闘に突入する。
最初は互角の戦いを繰り広げるも、一瞬の隙をついて仕掛けたファイナルベントをガイのコンファインベントで打ち消され、反撃のヘビープレッシャーで撃破され敗北。
しかしその衝撃で、嘗ての自分と真司の記憶が蘇る事となり、満身創痍になりながらもその場から逃げおおせる事に成功。真司を探して彷徨う中で木村と遭遇し、裏切られた事への怒りをぶつけられそうになりながらも彼にベルデのデッキを返し、その上で真司に龍騎のデッキを返す為に彼に会いたい事を願い出る。
しかし、その願いは叶わず、木村が真司達の下に合流できた時には既に力尽き、息絶えてしまっていた。
代わりに木村は真司に手塚の血で染まった龍騎のデッキを返すと、手塚が最後に記憶を取り戻した事や、手塚からの2つの遺言として「お前はお前らしくいれば良い」そして「もう1人の城戸真司には気を付けろ」と伝えたのだった(その遺言から、自分を唆した真司が本物ではない事に気付いていた模様)。
余談
他の媒体では一貫して主人公サイドの味方寄りの善人として描かれていた手塚が、(最終的に本来の人物に戻ったとはいえ)裏切りや殺人も躊躇しない冷徹な悪役+同性愛者として描かれた事は往年のファンに衝撃を与えた。というか様々な意味においてRIDER TIME 龍騎の最大の注目点の一つであり、当然ながらこの手塚のキャラクターについては賛否両論を巻き起こし、多くのファンの間で賛否含めて話題や論争を呼んだ。
しかし本編の手塚は、ライダーバトルを拒否する心優しい親友・斎藤雄一の死を通じて戦いを止める使命感に目覚めたのであって、記憶を消され親友の死どころかその存在すら思い出せなくなった今となっては、戦いや裏切りに躊躇しない人物になったという事自体はそれ程違和感のある描写ではない(とはいえ、石橋を躊躇無くナイフで刺す様な人物になるかと言われれば、それは別の話ではあるが)。
そもそもRIDER TIME 龍騎はあくまで「ジオウの世界の龍騎の話」である為、最初から原典の手塚とは別物と見る意見もある。
また手塚はともかく、原典の企画段階において本来のライアは元々敵キャラとして登場する予定であり、手塚はライアではなくガイに変身する予定だった。本作における手塚の裏切りはその初期設定の名残とも思われる。
…という噂が囁かれているが、ファンタスティックコレクションにおけるデザイナーのコメントで「ガイとライアは善悪逆のイメージで作った」とは書かれているものの芝浦と手塚を逆にする予定だったとは書いておらず、"手塚を悪人にする筈だった"という根拠の書かれた資料も特に見つからない。
また2017年には番組プロデューサーの白倉氏と脚本家の小林氏は手塚は当初僧侶にするつもりだったと話しており、悪人だったとは話していない為、「手塚は悪人キャラとして想定されていた」という噂は上記のデザイナーのコメントに尾鰭がついた信憑性の低い、はっきり言ってガセの可能性が高い。
因みに、両者の契約モンスターはどちらもキカイダーの敵キャラがモチーフだったりする。
それとは逆に、TVSPにおいて手塚を倒す等完全な敵対関係であったベルデが本作では味方寄りの人物として描かれており、原典での立場が逆転した状態となっている。
本作のベッドシーンは余りの衝撃故に、ファンからは賛否含めた論争は別として「芝浦×手塚のユナイトベント」等と早くもネタにされる事にもなった。実のところ、芝浦はともかく手塚は本編においても雄一と二人きりでクリスマスを過ごしていた、会って間もない真司にやたら親身である等、そうとも取れそうな描写は所々のシーンに存在している(これはあくまで一部のファンの憶測であり、真偽は不明。TVSPでは恵理の元恋人という設定もあるので、異性愛者である可能性も低くないだろう)。
手塚を演じた高野氏はtwitterで「2話を見たいけど、怖くて見れない」と語っている。
因みにこれ等の描写の演出的な意図としては、真司と蓮の『肉欲を伴わない友情・絆との対比の為』という解釈もある(流石に無いと思いたいが…)。
尚、このシーンについては、脚本を担当した井上敏樹氏がプロデューサーである白倉伸一郎氏からの「正月までに脚本を仕上げて下さい」という無茶な要求を2018年12月27日に聞いた為、本人曰く「無理強いされたので、『配信限定なら腹いせにやりたい放題やってやる!』という気持ち半分でやった」結果、こうなったらしい。
その後、白倉Pから尺の都合上色々と削る様、要求されたものの、これだけは意地でも通したとの事。
余談
七月七日
TV本編で手塚が退場した第23話『変わる運命』の放送日が七月七日の七夕であった事から、pixivではこの日を彼の命日として関連作品を発表するユーザーもいる。
本を出した事があるってホント?
結論から言うと、これは半分本当である。
と言うのも、2003年9月1日に主婦と生活社から刊行された書籍『仮面ライダー占い』が販売されていたのだが、著者は誰あろう手塚海之(という設定)で、文体も手塚の口調に合わせたもの(※1)。
登場するライダーについてだが、昭和ライダーは1号からRXまで(BLACKは同一カウント)、平成ライダーはクウガからファイズまで(サブライダーはG3-X、ギルス、13ライダー、カイザが登場)。
裏表紙が文字通り鏡文字になっていたりとネタは細かい。
同じく主婦と生活社から2013年12月13日(丁度、『仮面ライダー鎧武』が放送していた頃である)にバージョンアップ版とも呼べる同名の書籍が登場しているが、手塚が書いているという設定は無くなり、登場ライダーは昭和ライダー15人+平成ライダー16人(サブライダーでただ一人バロンが登場している為)となっている。
東映公式でも似た様なノリの『ネット版 オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー ~ガチで探せ!君だけのライダー48~』というネットムービーを製作していた事があり、こちらはサブライダーの幅が広く、仮面ライダーライアも登場する(声は代役だが、変身者は恐らく手塚だと思われる)。
(※)余談だが、架空のキャラクターが執筆したという設定の本は他にも例があり、ウルトラマンタロウが執筆したという設定の『ウルトラマンの愛した日本』(宝島社新書 422)等がある。
役者について
手塚を演じた高野氏は後に『仮面ライダードライブ』で岡村敬助を演じている。ニチアサ外では『仮面ライダーTheFirst』と『仮面ライダーTHENEXT』で一文字隼人/ホッパー2号を演じている。
ウルトラシリーズでは『ウルトラマンガイア』で藤宮博也/ウルトラマンアグルを演じていた。