概要
そもそも、仮面ライダーシリーズは一作目からしてコンセプトが『悪の組織に体を改造されるも心までは洗脳されなかった青年がその力を活かして悪の組織と戦う正義のヒーローの物語』であった。いわば主人公も怪人の一人なわけで、それを良しとしない悪の組織が反逆者である主人公を抹殺するために動くのは自然の流れであり、組織の技術力で改造された刺客の中に、主人公に施された技術をもとに作られた量産型の怪人や改良モデルがいてもなんらおかしくはない。
また、そういった経歴を持つ者が別の悪の組織に改造された青年を見れば過去の経験からして『彼は自分の知らない組織に改造された怪人なのか!?』と疑念を抱き、最悪の事態を回避するため戦うことは十分にありうる。なぜなら上記にある通り仮面ライダーの姿をしているからといって正義の味方とは限らないからだ。
他のヒーローものならタブー化しかねず物議をかもしやすい善玉の力の悪用や悪堕ちといった要素も、仮面ライダーシリーズならば『悪役側の怪人が本来の用途に即した使い方であり、寧ろその力を平和のために活用している主人公側がイレギュラー』ということが多々発生し、割とすんなりクリアできてしまうのだ。
平成や令和のライダーにしても昭和ライダーのように黒幕の魔の手から逃れた善良な怪人というパターンもあるし、黒幕の野望成就の過程の副産物とか組織内の改心した人物が世界の被害を抑えるために作成したが元が元だけに組織側も同じ構造の怪人を作成可能とか仮面ライダーの上司である組織の重要人物が悪に手を染めいつのまにか腐敗していたという風に、『仮面ライダーの姿をした者同士が戦う』という構図を描写するハードルは他のヒーローバトル物よりいささかが低くなりやすいといっていいだろう。
そのため、「仮面ライダー同士の戦い」は初代ライダーにもすでに見られ、昭和ライダー作品でも「誤解」「洗脳」「暴走」などが原因でライダー同士が戦う場面は時折見られた。意見は分かれるがシャドームーンを仮面ライダーに含めるなら、『仮面ライダーBLACK』はこれを主題にした作品といってもよい。だが「ライダーバトル」が頻繁に見られるようになったのは平成ライダーになってからである。
その主たる要因としては、平成第2作『仮面ライダーアギト』から定着した「仮面ライダーの複数化」がある。放映時間が連続するスーパー戦隊シリーズとの差別化の意味でも、最初から「複数の仮面ライダーが一致協力して敵に立ち向かう」構図は描きにくい。「ライダー同士の立場や思惑の違い」を前面に出した「群像劇」の形に向かうのはほぼ必然といってよいが、そのなかで「ライダー同士が戦う」展開まで含まれるようになるのは、無理からぬ帰結である。
そして平成ライダー第3作『仮面ライダー龍騎』ではライダーバトル自体が作品のテーマとなった。これ以降、明確な「悪の仮面ライダー」もしばしば登場するようになるなど、『龍騎』が後続作品に与えた影響は非常に大きい。
昔からのファンには苦言を呈されたこの「ライダーバトル」だが、本来の視聴者である子供たちからは決して不評ではなく、次回作『仮面ライダー555』以降も時折ライダーバトルは勃発することとなった。『555』では有資格者であれば誰でもベルトを使って変身できるという設定だったため、「ベルトを奪った敵オルフェノクが、自らライダーに変身して他のライダーに襲いかかる」という場面も多々見られた。
ほか、正義のライダーの正体が怪人だったという事実に衝撃を受けた別のライダーが襲いかかってくる、主人公の破天荒な行動が理解できない別のライダーが主人公を否定するために戦いを挑む、嘗ての仲間が何らかの事情で闇堕ちし、一時的に主人公陣営と対立するといった事態からライダーバトルに発展するなどの事態が起こるようになっている。
ライダーバトルを主軸に描いた作品
仮面ライダー龍騎
本作では仮面ライダーはミラーモンスターと呼ばれる怪物と戦う…のだが、ライダーバトルで勝ち残った最後の一人は願いが叶うという設定があり、そのため他のライダーをぶっ殺して自分だけ願いを叶えようとするヤツが後を絶たなかった。中には自分の契約したモンスターに一般人を襲わせて強くなろうとしたり、ライダーバトルを永遠に長引かせるために参加したヤツまでいた始末であり、苦言を呈すオールドファンも多かった。
仮面ライダー鎧武
本作では仮面ライダーは鎧を模した姿の「アーマードライダー」と呼ばれ、インベスという怪物と戦うのだが、序盤ではライダー同士でもダンスステージの使用権を巡ってバトルしたり、中盤以降は「黄金の果実」と呼ばれる伝説の果実を巡って争ったりした。
仮面ライダーエグゼイド
本作では「医療」をテーマに、人々に感染するコンピューターウイルス・バグスターと戦い患者を治療するべく奮闘するドクター達を描いているが、その一方で様々な思惑を抱いた仮面ライダーによるガシャットの争奪戦や死のゲーム「仮面ライダークロニクル」が繰り広げられた。だが、最終的には対立していた多くのライダー達が共闘することになった。
仮面ライダーギーツ
本作では「デザイアグランプリ」という謎のゲームにてライダーバトルが行われているが、今までのライダーバトルとは異なり、敵ライダーを直接攻撃するようなことは滅多にない。(というより、攻撃すること自体ルール違反で減点対象となる。)その代わりに様々なゲームが行われ、ジャマトの討伐数や一般人の救助等でポイントが加算され、そのポイント数を競ってデザ神を決定する。そのため、『ギーツ』は「競争」という意味でのライダーバトルともいえる。
しかし、第11話からはジャマト側も仮面ライダーに変身するようになったため、本作でも他作品同様のライダーバトルが行われるようになった。その後、ジャマトだけでなく運営側のライダーやジャマトに協力するライダーとも敵対するようになり、より従来のライダーバトル要素が強くなっていった。そして、ついには全てのライダーを倒すゲームが始まってしまった。
しかし、その後主人公が世界を作り変えたことでライダーバトルは主人公陣営VSデザグラ運営という方式に変わり、最終的にライダー達が協力して、主人公とともに運営側のトップを打倒した。
関連項目
プリキュア同士の戦い、戦隊同士の戦い:ニチアサのヒーロー同士の衝突繫がり。
ウルトラマン同士の戦い:円谷プロダクションのヒーロー同士の衝突。