プリキュアチームの仲間同士の戦火を交えた戦い
映画 ふたりはプリキュアMax Heart2 雪空のともだち
友人たちと共に雪山にやって来た美墨なぎさと雪城ほのかは、とある出来事が原因で険悪なムードになってしまい、仲直りのきっかけを掴めぬまま、二人組の氷の魔人フリーズン・フローズンと戦うことになる。
その最中、敵の術中にはまったキュアホワイト(ほのか)がフローズンに洗脳されてしまい、キュアブラック(なぎさ)と戦うことになってしまった。最初はホワイトと戦うことを拒んでいたブラックだったが、彼女も途中でフリーズンに洗脳されてしまい、とうとうプリキュア同士が本気で拳を交えることになってしまった。
このブラックとホワイトの戦いがかなりガチだったため、当時映画を見た小さなお友達にとってはトラウマものであり、そのあまりにショッキングな展開に子供が泣き出すなどのクレームが何件かあったという。
これがキッカケで、悪役以外とのプリキュア同士の戦いは封印される事になり、主人公チームのプリキュア同士が戦うのは、このブラックvsホワイトが最初で最後となっている。
なお、この時にホワイトが見せた目が据わっている表情がかなり怖い。(上述のように幼児達が泣き出したのもこの表情のせい)
「キュアブラック…。あなたを、倒す!」
しかしながら、この後正気に戻った二人が涙ながらに本心を吐露し合い、絆を取り戻すシーンは必見である。
フレッシュプリキュア!第43話
FUKOのゲージを破壊するため、ラビリンスの幹部達がアジトにしている洋館に突入したキュアピーチ達。その前にノーザが立ちはだかり、4人に幻覚を見せる。最初の「プリキュア達が望まない世界」の幻覚は一点の瑕疵を突いたプリキュア達に破られるが、次の瞬間、4人は別々の空間へ飛ばされ、ピーチは砂漠で砂の魔物と、キュアベリーは海で水の魔物と、キュアパインは森で樹木の魔物と、キュアパッションは岩山で岩の魔物との戦闘を開始する。ノーザとサウラー、そしてウエスターは別室でその様子を監視していたのだが、三人が見ているモニターには、ピーチとベリー、パインとパッションが、何の躊躇もなく戦い合う映像が映っていた。
そう。ノーザの第2の幻覚により、ピーチ達の目には仲間の姿が恐ろしい魔人に見えてしまっていたのだ。
『雪空のともだち』の子供たちからの否定的な評価によって、長らく封印されていた「主人公チームのプリキュア同士の戦い」の復活エピソードである。
ここでのプリキュアたちは純粋に敵の術中にはまって戦わされてしまっている。また見ている子供達に配慮してか、ここでの戦闘シーンはプリキュア同士で打撃を与える絵画を作らないように演出されていた(プリキュアが打撃するシーンがあっても、相手はプリキュアではなく幻覚世界の魔物として描かれている)。この第2の幻覚は、遅れてタルトと共に洋館に突入したシフォンの力によって解除され間一髪のところで同士討ちのピンチを脱している。
キラキラ☆プリキュアアラモード第27話
ロックバンドでもパティシエ活動でもうまくいかず、岬あやねや仲間たちへの嫉妬で苛立ちを募らせていたキュアジェラート(立神あおい)がエリシオに心の隙をつかれて洗脳され、公園の森の中を破壊しながら進み、あわやロックステージも破壊しようかというところで残りのメンバーの説得により正気に戻るという事態が発生した。
メインのプリキュアの心が闇に染まり破壊活動に走るというのは上記の『雪空のともだち』以来であり、ハイライトがない瞳でゆっくりとステージに向かって歩いてくるというのも上記のほのかを彷彿とさせる。
但し、今回はあおい以外のメンバーは無事であり、暴走するキュアジェラートを力を合わせて止めるという展開がわかりやすく描かれ、憎しみのぶつけ合いのような描写ではなかった。
さらに言えば、ジェラートが暴れたのはロックフェスを無茶苦茶にするためで、仲間のプリキュアを攻撃対象としては認識しておらず、仲間達もキュアジェラート本人に対して一切攻撃しない形でフェスのステージや観客達を守ろうとしている。
これは元々本作が肉弾戦封印というキャッチコピーを掲げて殴る蹴る以外の戦闘方法を豊富に持つがゆえでもある。暴走するジェラートが繰り出すクリームエネルギーによる攻撃を、同じくクリームエネルギーを繰り出して打ち消すことで防いでいくというような形のアクション演出が基本で、プリキュア同士が仲間にダメージ攻撃を与えるというような痛々しさは注意深く排除されていた。プリキュア同士で打撃を与える絵画を作らないという点は上記のフレッシュプリキュア第43話と共通する。
ちなみにエリシオはジェラートを正気に戻そうとするプリキュア達を邪魔するべく怪物を召喚しており、そちらとのバトルという形で互いにダメージを受けあう戦闘アクションも同時に盛り込まれている。
ひろがるスカイ!プリキュア第49話
アンダーグ・エナジーで強化したスキアヘッドことダークヘッドとの戦いに敗れ、ダークスカイに変化したキュアスカイが、キュアプリズムに襲い掛かる。しかし、間一髪のところでキュアプリズムの心に触れたことでキュアスカイは正気に戻った。
敵に操られた形で本当に味方を攻撃しようとしたのはこのダークスカイが前述のMH映画『雪空のともだち』以来で、テレビシリーズでは初めてとなる(『雪空のともだち』の時と違いお互い洗脳された訳でも直接攻撃したわけでもないので、ある程度配慮されていると言える)。
プリキュアチームの仲間同士の冷戦
上述の通りプリキュアシリーズではチーム同士での対立があるが、時々「戦火を交えないプリキュア同士の戦い」として、「冷戦」と称される展開が存在する。
Yes!プリキュア5第23~24話
ミルクといつものいざこざを起こす中不注意により、皆で作ったナッツハウス用の飾りを壊してしまったのぞみ。
今までの努力が水の泡になったとしてまずのぞみが「ミルクが悪い」と言い、それをりんが「人のせいにするな」と叱る。
更に「のぞみがかわいそう」とうららが意見し、こまちは「どちらも一理ある」と中立的立場を宣言。これに対し「こまちは優柔不断」とかれんはイライラしてたのもあり、ついキツイ言い方でばっさり切り捨ててしまう。
かくして起こった仲間同士の喧嘩はナッツが一時的に無理やり収めるも、そう簡単に各々納得できない気持ちを抱えたまま翌日まで持ち越された。
翌日ココに励まされ仲直りをしようとするのぞみだったが、第24話冒頭までに仲間たちがナイトメアの策にはまってしまい絶望の仮面を着けられ洗脳状態に陥ってしまう。
この時の戦闘はキュアドリームの手足を4人がかりで押さえつけるプリキュアという若干生ぬるい描写ではあるが仮面自体けっこう不気味な見た目なのとほんのちょっと前までそこにいたはずの仲間が全員いなくなってしまい、知らぬ間に敵対するという精神的な恐ろしさが強調されている。
なおこの後ココの必死の想いでキュアドリームの絶望の仮面は砕かれ、彼女もまた「楽しいだけじゃだめなんだ」と精神世界で正面から向き合う覚悟を見せることで傷つけることなく無事仲間を解放している。
ハピネスチャージプリキュア!第1~23話
氷川いおなは姉の封印を直接的に行ったファントムおよび幻影帝国に対して憎しみをむき出しにするのはもちろん、同じプリキュアであるキュアプリンセス(白雪ひめ)に対しても「幻影帝国を世界に解き放った元凶」として強い不寛容の姿勢を抱いており、第1話冒頭では彼女に絶対に許さないと言い放っている。
第19~20話ではプリンセスを排除した新しいチームを自分と新しく作ろうとキュアラブリーとキュアハニーに提案しているが、これはただ感情的な理由からではなく、ひめの態度や逃げの姿勢がチームに災難を招くと考えていたからである。(初期にあたる第8話の時点で「プリンセスを信じていると、いつか災いが降りかかる」と警告している)
さらに第20話では「アクシアの箱を開けてしまったことを大切な仲間であるはずの二人に隠し続け、それを暴露され立場が危うくなったら逃げ出した」という状況を目の当たりにし、いおなのひめへの不信感は決定的になってしまった。
しかし皮肉なことに、フォーチュンが「プリキュアとしての仲間を作らず1人で戦っている」という深刻な状況であることに気付き、最も彼女の身を案じていたのはキュアプリンセスだった。
彼女はフォーチュン救出の為にプリキュア墓場に乗り込んだ際、ファントムに先制攻撃を仕掛ける等、最も奮戦していた。
そのプリキュア墓場にて、ひめは初めていおなと正面からコミュニケーションをとった。
今までの事を謝罪してプリカードを全て譲渡し、変身できないいおなを守るため、逃げずにファントムに立ち向かった。
ひめの願いが自分と同じ性質(家族を救う)であることを知っていたいおなは、ひめが自分のために願いを手放したことに衝撃を受ける。
その姿に心揺さぶられたいおなは、ひめの謝罪を受け入れ、自らも今までの言動を詫び、冷戦は終結した。
わんだふるぷりきゅあ!第12~20話
第12話でキュアワンダフル&キュアフレンディの前にキュアニャミーが姿を現すものの、ニャミーはワンダフル&フレンディと違い大切な人を守る為ならガルガルへの攻撃すら躊躇しない性格である。
また、ニャミーにとってワンダフル&フレンディはまゆを戦いに巻き込んだ根源とまで考えており、(一応2人の目的は理解しているのか止めは譲っているものの)2人の仲間になろうとすら思っておらず、むしろ"敵"として認識していた。第19話でまゆがキュアリリアンに覚醒して守るべき存在から共闘するバディに変わったことで冷戦は一応の収束を見たが、それでも「まゆを守るだけ」「知らない動物に興味ない」と仲間になる事を拒否していた。しかし、キラリンコジカとの対話でガルガルの真実を理解し、まゆから「ガルガルを助けよう」と促された事で考えを改め、第20話でようやくチームに加わった。
別チームのプリキュアとの戦い
一部の作品では、主人公チーム以外にもプリキュアが存在する作品もあり、そのような場合、ごく稀に主人公たちと敵対するプリキュアが現れる。
ハピネスチャージプリキュア!第37・38話
敵の首領クイーンミラージュによって洗脳されて悪堕ちした本物のプリキュアであるキュアテンダーが出現し、続く第38話でハピネスチャージプリキュアと激闘を繰り広げた。
このキュアテンダーは主人公チームの一員であるいおな/フォーチュンの実姉であったため、当話はかなりシリアスで重い流れとなっている。
悪堕ちによって性格だけでなく容姿も大きく変わっており、本来のキュアテンダーとは別キャラとも呼べるのだが、後述する闇キュアのような「まがいもの」として扱われていないところは特筆される。(関連タグ:キュアテンダー・闇)
加えて当話ではプリキュア同士が戦うこと自体をミラージュが特別な不幸として扱っていた。
最終的にテンダーは、ラブリーやフォーチュンの呼びかけ、及び新技「イノセントプリフィケーション」によって浄化され本来の心を取り戻した。
そして洗脳した張本人であるミラージュも、第30話で悪堕ちした元プリキュアであることが判明している。
悪の組織が作り出したコピープリキュアとの戦い
こちらのプリキュア対決は、主人公側のプリキュアと、正規プリキュアを模倣して作り出した悪の戦士(闇キュア)との戦い。
これまでに登場した闇キュアのほとんどは人間ではない人造生物で、さらにはプリキュアとしての力もホンモノではなく、敵勢力が闇の技術でプリキュアに似た力を再現させている。
そのため彼女らは「プリキュアのコピー・まがいもの」という扱いであり、プリキュア同士が戦っているわけではないという解釈になっている。
また、彼女らの個人名は「キュア○○」には絶対にならない。これも正統なプリキュアではないという記号付けである。
プリキュアシリーズに登場する「悪の少女戦士」との戦いは、プリキュア側に戦うことへの葛藤を抱かせるケースが多いが、闇キュアについては手加減や容赦をする必要のない「敵対存在」として強調して描かれるのも特徴。
映画Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!
鏡の国へやってきたプリキュア5は、そこでシャドウによって作り出された自分達のコピーダークプリキュア5と対決することになる。これにより、「主人公側VS悪役側」のプリキュア対決という構図が出来上がった。
その一方でキュアドリームの言葉に心を動かされ、己の使命と友情の間で揺れるダークドリームの悲劇も描かれた。
ハートキャッチプリキュア!
上述の『鏡の国のミラクル大冒険!』が好評であったことから、『ハートキャッチプリキュア!』にて、TV版では初となる悪のプリキュア・ダークプリキュアが登場し、キュアムーンライトとの対決が描かれるのだが、ダークプリキュアがスタッフの予想以上に子供にも人気が出てしまい、彼女たちの救われない戦いの結末は小さなお友達と一部の大きなお友達に更にトラウマを植えつけることになってしまった。
このことから、『雪空のともだち』の件も相まって、プリキュア同士の戦いはしばしの間タブー視された。
スマイルプリキュア!第45・46話
第45話の最後で、バッドエンド王国側のプリキュア「バッドエンドプリキュア」が登場。
こちらはこれまでの悲劇的なイメージが強い敵側のプリキュアとは対照的に“完全な悪”として描かれ、善と悪のプリキュアが全力全開極限バトルを繰り広げる、単純明快で勧善懲悪的なプリキュア同士の戦いになった。
ハピネスチャージプリキュア!第30話
幻影帝国の幹部ファントムがクイーンミラージュから与えられた新たな力を使ってキュアラブリーのコピー・アンラブリーに変身。オリジナルを上回る力で圧倒したばかりか、ラブリー=愛乃めぐみのアイデンティティを全否定して踏み躙り、ラブリーを心身ともに追い詰めた。しかし、救援に現れたキュアプリンセスらの励ましで立ち直ったラブリーの反撃で変身が解け、更にシャイニングメイクドレッサーでパワーアップしたプリキュア達の新技を受けて敗れ去った。
前作のキュアセバスチャンや『ハートキャッチ』のキュアファイヤーと異なりプリキュアで男性が完全な女性の姿に変身した唯一のケースであり、色々と波紋を呼んでいる。
Go!プリンセスプリキュア第19~21話
第19話、ディスダークの首領ディスピアの娘と名乗るトワイライトが、ホープキングダムのとある古城で伝説には語られていない4つ目のプリンセスパフュームを手に入れ、第20話でディスピアから与えられた三つ目のブラックキーによってブラックプリンセスへと変身。続く第21話にてプリンセスプリキュアと激突した。
闇の力に染められたとはいえ変身に使用されたアイテムが正規のものなので、擬似プリキュアとも言えないのも特徴。
最終的にブラックプリンセスはプリンセスプリキュアに敗れ本来の姿であるトワに戻り、続く第22話で彼女はプリキュアの力に目覚め、深紅の炎の中で浄化されたキーとパフュームによってキュアスカーレットに変身している。
ひろがるスカイ!プリキュア感謝祭
アンダーグ・エナジーによって誕生したブラックスカイが、キュアスカイの前に立ちはだかる。
擬似プリキュアとの戦い
本物のプリキュアではないが、闇の力以外で再現された擬似プリキュアが本物のプリキュア相手に戦ったエピソード。
闇キュアほど「敵対存在」として強調されないが、戦うことへのタブー視はない。
ハートキャッチプリキュア!第37・38話
スーパーシルエットへの変身能力を手に入れるためのプリキュアパレスの試練の相手として、ミラージュプリキュアが登場。プリキュア4人の「心の影」が具現化された存在で、4人とほぼ同じ外見を持つ。本体のコンプレックスを刺激しながら容赦なく攻撃してくる。
見た目が黒基調のコスチュームで顔つきも鋭いため、悪のプリキュアたちに似た雰囲気がある。ゆえに一見すると倒すべき敵のように思えるが、自らの心の影を否定する(=倒す)のではなく、受け入れることこそがこの試練をクリアする隠された条件であった。
ドキドキ!プリキュア第25話
セバスチャンが四葉財閥の科学力を駆使して開発した人工コミューンを偶然手にしたマーモが変身したキューティーマダムとの戦い。戦ったのはキュアハート達だったり、人工コミューンを取り返そうと戦いを挑んだセバスチャンだったり、果ては本来味方であるはずのグーラ(が作り出したジコチュー)だったりする。
変身出来るようになったのをいいことに謎のヒロインを気取って好き放題やっていたマーモだったが、最終的にはキュアロゼッタとの戦いで人工コミューンが壊れてしまい、変身が解けていつものように逃亡するという結末に。
愛のプリキュアとジコチューのプリキュアが戦う構図ではあるのだが、マーモ自身の性格や行動が基本的に変わっていなかったためか普段のプリキュアvsジコチュートリオと大して変わらなかった。
スター☆トゥインクルプリキュア第20話
プリキュア達が守るべき妖精フワを誘拐した宇宙怪盗ブルーキャットと、それを追うプリキュア達との戦いが繰り広げられた第20話で、戦闘の途中でブルーキャットが得意の変化(へんげ)の術を使って本作の主人公であるキュアスターの姿(スターブルーキャット)に変わった。
ただし、ブルーキャットの特徴である猫耳や猫尻尾が残ったままなので本物と間違うようなことはない。しかしブルーキャットは「プリキュア達は甘いので、仲間と似た姿をした相手に攻撃するのは躊躇するだろう」と踏んだのである。そして実際にその通りに仲間達は躊躇して攻撃を寸止めしてしまう。ブルーキャット自身があまりにも計略が上手くいきすぎたことに拍子抜けになり、本気の戦いでも甘さを抜けきれないプリキュア達に苦言を呈していた。
しかし当のキュアスターだけはもちろんそんな躊躇はすることなく、自分に変身したブルーキャットに掴みかかり、フワを返せと迫った。
キュアスターと偽キュアスターの戦いは、激しい殴り合いの応酬という者ではなく、双方が掴みかかりながら過激な言葉の押収がされるという、いろんな意味でリアルな女同士の諍いという感じに演出されていた。今にもどちらかがビンタをしそうな緊張感でもあったが、そこまで行く前に第三の勢力が介入して、それへの対処のために最終的にブルーキャットとプリキュアは共闘することになり、その中でブルーキャットは本物のプリキュアに覚醒した。
ちなみに、ブルーキャットが偽キュアスターに変身する前は激しい殴り合いの応酬は普通にされていたのだが、偽キュアスターになってからは結果的に打撃を与えられることはなかったことになる。
なお、ブルーキャットが偽キュアスターに変身した姿については、スターブルーキャットという個別タグが作られている。
映画プリキュアオールスターズF
本作で登場するキュアシュプリームは、プリムが再現したプリキュアであるが、物語のクライマックスでプリキュア達の前に立ちはだかる。
プリキュア同士の戦いに発展しかけたケース
わんだふるぷりきゅあ!第39話
ガオウの力によってこむぎがガオガオーンに変えられそうになったものの、いろはの呼びかけによって暴れる前に元に戻る事が出来た。
覚醒済みのプリキュアが怪物と化すのはこれが初となる(覚醒前なら来海えりかや明堂院いつきがデザトリアンに、輝木ほまれがオシマイダーにされた事がある)。
「プリキュア同士の戦い」のタブー視について
項目冒頭のように、映画『雪空のともだち』でキュアブラックとキュアホワイトが洗脳されて互いに戦いあうという展開にしたところ、子供たちからの拒否反応が予想以上にあった。
しかし、プロデューサーの鷲尾天は子供達を泣かそうとしてそういった展開にしたわけではない。東映アニメーション側初代プロデューサーとして『ふたりはプリキュア』から『Yes!プリキュア5GoGo!』までを手がけた鷲尾Pはインタビューで、「プリキュア同士の戦いは“子供が喜びそうなもの”として取り入れたものだった」と語っている。事実、仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズなどの東映ヒーロー映画は「ヒーロー同士が誤解で対決するが最終的には協力して巨悪を倒す」という展開が定番になっている(元をただせば東映まんがまつりの『マジンガーZ対デビルマン』あたりにまで遡るが)。
しかし、彼は男児と女児は好みが違うという点を致命的に見誤っており、そういう展開はメイン視聴者層である女児たちに受け入れられなかった事を思い知らされたらしい(もっとも初代プリキュア自体が「女児向けのセンスを全く分からないスタッフ」が作ったからこそ今までにないノリとして女児受けした作品でもあるのだが)。
また、演じた声優にとっても辛い展開だっただろうと感じた事を教訓に、以降は自分が担当するプリキュア作品では「プリキュア同士の戦い」をタブーとしたと語っている(関連リンク参照)。
しかし、ここで注意しなくてはならないのは、「プリキュア以外」が相手ならば、悲劇的な対決も許容されているという点である。
たとえば、『Splash☆Star』の満と薫、『フレッシュ』のイース、『ドキドキ』のレジーナ、『ハピネスチャージプリキュア!』の相楽誠司などは、プリキュアたちの「たいせつなともだち」であるにもかかわらず悲劇的なドラマの果てにプリキュアと激闘を繰り広げた(いずれも最後はハッピーエンドを迎えてはいる)。
結局のところ、問題になっているのは戦う相手がプリキュアという名前を持つかどうかということになる。そのため、悪堕ちしたキュアミラージュはプリキュア名を捨てクイーンミラージュを名乗り、闇キュアは「キュア○○」という名前をつけないことで偽物であることを強調する。
いわば名詞の魔力であるが、このあたりは商品展開の話とも密接に関わる大人の事情である。
結局、プリキュア同士の戦いはシリーズのタブーなどと言われてはいても、「プリキュアに似た見た目を持つ女の子が敵になる」ことでドラマを盛り上げることは手を変え品を変え続けられている。「どこまでなら許されるか」の線引きはその作品を担当するスタッフのさじ加減一つなのだ。
特に、プリキュアの最初の8年を支えた二大プロデューサーである鷲尾天(2004年~2008年)と梅澤淳稔(2009年~2012年)は、プリキュアが戦うべき敵はどう在るべきかの考えがそれぞれ正反対だったことが知られている。そして、この2人の考え方はプロデューサーが頻繁に変わる後々のプリキュアシリーズにも大きな影響を与えている。
→プリキュアの敵の項目も参照
鷲尾天プロデューサー時代(2004年~2008年)
プリキュア同士の戦いをタブーとしたと明言した鷲尾Pだが、意外なことにプリキュアが洗脳されて敵に回ることは『雪空』以後も許容している。
さらに、「プリキュアの仲間」が敵に回ってプリキュアと戦うようなことさえも行っている。
「悪堕ちの許容」の例としては、上述した『Yes!プリキュア5』第24話が該当する。この時はプリキュア同士での戦闘は発生せず4人がかりの拘束に留まっている。
「プリキュアの仲間との戦い」については『Yes!プリキュア5GoGO』の映画版『お菓子の国のハッピーバースディ♪』で行われている。ここではメインキャラクターの一人であるココが敵のムシバーンに洗脳されてダークココとなり、主人公であるキュアドリームと戦いを繰り広げるという展開が起こった。
ただし、これら二つの例については、「悪人に操られている」という演出を徹底しており、子供たちが慣れ親しんだキャラクターが悪の心に染まったわけではないということを強調していた。
梅澤淳稔プロデューサー時代(2009年~2012年)
プロデューサーが鷲尾から梅澤淳稔(『フレッシュ』~『スマイル』)に交代した後は「プリキュア同士の戦い」は鷲尾P以上にデリケートに扱われるようになった。
梅澤Pは「プリキュア同士の戦い」というより「仲間同士の諍い」自体をタブーとしている。プリキュアの仲間となった者ならば、それがプリキュアでなくても敵に回るようなことはない。
このことはとても慎重に扱われており、日常シーンでの諍いさえも半ばタブー化された。プリキュアや妖精が喧嘩する話が全くなかったわけではないが、それでも鷲尾P時代に比べると格段に少なくなっている。
また、鷲尾Pがプリキュアを「自分の日常や身近な人達を守るついでに世界を救う」ような存在として描いていたのに対し、梅澤Pはプリキュアを「万人を守るヒーロー」として描いている。この点から「プリキュアは他人に迷惑をかけない」ということが重要視された。ただ、それでも本人が意図せずして友人や家族を心配させたり迷惑をかけたりしてしまうことはあった(まあ、中には自堕落な生活態度を改めなかったせいで周囲に迷惑をかけてしまった者達もいるのだが…)。
一方、「プリキュアに似た見た目を持つ女の子が敵になる」という流れは鷲尾P以上に積極的に取り入れられている。映画の一発ネタだったダークプリキュア5の流れを汲むダークプリキュアやバッドエンドプリキュアを登場させることで闇キュアというジャンルをプリキュアシリーズの定番要素として確立させ、さらにはキュアパッションやキュアビートによって「敵の少女戦士が主人公たちと戦いの中で友情に目覚め、改心してプリキュアに覚醒する」という光堕ちキュアというジャンルを定着させたことも特筆すべき点である。
それ以降の傾向
梅澤Pがプリキュアシリーズから離れて以降は、「プリキュア同士が敵対する」ことや「プリキュアの仲間が敵に回る」ことに対する姿勢は慎重なものの、『雪空』以降のタブーの流れがある程度緩和されつつある。
これは梅澤Pが引退した辺りから、制作現場で「プリキュアシリーズも10年を超えたので倫理基準も時代に即して見直すべきではないか?」という懸念が頻出していたことが大きい。
特に2014年の『ハピネスチャージプリキュア!』と2015年の『Go!プリンセスプリキュア』の2作は今後も続くシリーズのことを考えて風通しをよくしようとスタッフが意識的に様々なタブーを破りにいった作品である。
プリキュア同士の戦いという視点においては『ハピネスチャージプリキュア!』が革命的であり、上述しているように、作り物や敵の変身した姿でない本物のプリキュアであるキュアテンダーが敵役として登場して主人公チームと戦いを繰り広げた。もっとも、キュアテンダーはその存在こそ作中で何度も言及されていたものの、本編に登場したのはこの話が初めてであり、「子供たちが慣れ親しんだキャラクターが悪い心になった」というトラウマ展開ではない。
一方、同作では、プリキュア達の仲間で主人公に淡い想いを寄せていた相楽誠司を悪堕ちさせている(悪堕ち誠司)。「子供達が慣れ親しんだキャラクターが悪い心に染まった」というトラウマ展開そのものを行ったわけで、このあたりは「戦う相手がプリキュアかどうか」で扱いが大きく変わる典型例だろう。
また、同作では正規プリキュアであるキュアフォーチュンが同じプリキュアであるキュアプリンセスを嫌悪していたことも梅澤P時代のくびきから抜け出た点でもある。
2017年の『キラキラ☆プリキュアアラモード』では鷲尾時代に見られた「プリキュアの悪堕ち」展開が復活している。(第27話。詳細は上述)
ただ、2017年現在でも「プリキュアオールスターズに登録されるメインプリキュア同士が直接的に攻撃を与え合う」という展開は『雪空』以外では起こっていない(軽いケンカ描写は幾つかあるが)。
2018年の『HUGっと!プリキュア』ではルールー・アムールが当初クライアス社の一員として登場した。第13~15話でプリキュアと交流を深める中で図らずも絆を育み、その結果クライアス社に回収され第17話でまさかのメカ装備で(記憶を消された状態で)プリキュアと対峙した。こちらも同話にて和解を果たしプリキュアの仲間となっている。
シリーズの定番となった「プリキュアに似た見た目を持つ女の子が敵になり和解する」展開だが、短期間で立て続けにイベントを起こす構成によって「子供たちが慣れ親しんだキャラクターが悪い心になった」というトラウマ展開を必要最小限に抑えている(本シリーズの例に漏れず、スパイであることも当初から視聴者に提示している)
また第25話ではなんと妖精枠のハリハム・ハリーが元クライアス社社員と判明、無理やり拘束を解かれる形で味方同士の戦いが展開された。ただし実際はハリーの圧倒的パワーを前にキュアエトワールが説得を試みたため、殴り合いには発展していない。
2021年の『映画トロピカル〜ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!』では王国に閉じ込めようとするシャロンとの間に友情が芽生えていたキュアラメールは、ブロッサムとマリンの攻撃からシャロンを庇う。
Pixivにおけるプリキュア同士の戦い
いつの世にも、「特定の作家やシリーズ作品のキャラクターが戦ったら、誰が一番強いのか」を夢想するファンは存在する。プリキュアもまた然り。
ということで、公式のようなタブー視などに囚われず、純粋なファンアートとしてのプリキュア同士の戦いを描いた作品もPixivに投稿されている。
言うまでもないだろうが、この手の投稿はプリキュアを愛する大友のロマンの発露である。断じてキャラヘイトではないし、そうあってはならない。
…などと書いていたら、何とプリキュアシリーズに長く関わっているこの人がやってくれた!
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- ウルトラマン同士の戦い:円谷プロダクションのヒーロー同士の衝突。手合わせは構わないが、敵意もろだしの戦いはやはり禁じ手である
- ライダーバトル:ニチアサのヒーロー同士の衝突繫がり。なのだが、プリキュアや戦隊ものやウルトラマンと違い仮面ライダーは「主人公の力の元が悪の組織や黒幕由来なこともザラ」ということもあり制約が少なく、誤解や主張の食い違いでライダー同士の死闘に発展しやすくライダーバトルそのものが話の中心になることすらあるほど。