「ここは行くあてのない者たちの集まる地
居場所がないならばここで生きよ」
概要
この記事は多大なネタバレを含みます。未試聴の方は注意。 |
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『スター☆トゥインクルプリキュア』に登場する敵対勢力。理不尽な理由で母星を追われた異星人のコミュニティから発展した組織。
「見捨てた者たちへの怒り、憎しみを力に変えるのだ」をモットーに全宇宙の支配を狙い、様々な惑星を侵略している。
現在は、宇宙征服の鍵となるプリンセススターカラーペンと宇宙妖精フワの確保を最優先に行動している。
プリキュアシリーズ初のメンバー全員が異星人で構成される組織であり、強大な科学力を持つ。
その科学力は高く、言語翻訳機を用いて地球の言葉を話せるほか、宇宙空間を移動する際は攻撃機能を搭載したアダムスキー型のUFOを用いて移動する。
また、首領代行のガルオウガは空間を切り裂きワープゲートを開く能力を有しており、宇宙のどんな場所でも構成員を送り込める。
おうし座のプリンセスによると、ノットレイダーに支配された宇宙は星々の光が消えて暗闇に包まれるという。
さらに第31話のトッパーによれば、その悪夢の兆候はすでに始まっており、今この時にでも天の光は少しずつ消えていっているらしい。
ちなみに彼らにとっては地球は、「プリミティブな辺境の地」に当たるらしい。
構成員
構成員は作中設定上は異星人だが、デザイン上のモチーフになっているのは日本の妖怪である。
上層部
ダークネスト(声:園崎未恵) |
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ノットレイダーの支配者。プリンセススターカラーペンとフワを狙い、全宇宙の支配を目論む。その正体は……???。 |
ガルオウガ(声:鶴岡聡) |
鬼のようなノットレイダーの最高幹部。元々は母星を失った流浪の民。第46話でプリキュアに救済された。 |
三幹部
ダークネストやガルオウガに仕える3人の幹部で、いずれも宇宙に居場所をなくした異星人で構成されている。
第12話からダークネストの力で所持するアイテムを強化され、第21話からはアイワーンが独立して2人体制となる。
3人共最終的にはプリキュアや宇宙星空連合と和解し、それぞれ星の復興などに力を注ぐ。
カッパード(声:細谷佳正) |
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河童のようなノットレイダーの幹部。元々は資源を奪われ続けてきた星の出身。第46話でプリキュアに救済された。 |
テンジョウ(声:遠藤綾) |
天狗のようなノットレイダーの幹部。元々は差別が蔓延するグーテン星の出身。第46話でプリキュアに救済された。 |
アイワーン(声:村川梨衣) |
一つ目をしたノットレイダーの幹部。元々は宇宙を彷徨う浮浪児。第21話から独立するが、第38話でキュアコスモと和解。 |
アイワーンの部下
戦闘員
ノットレイ(声:下山吉光、他) |
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ノットレイダーの戦闘員たち。プリキュアとの戦闘が任務。いずれも居場所をなくした宇宙人で構成され、アイワーンが開発したスーツを着用する。 |
巨大ノットレイ(声:下山吉光) |
ダークネストの力で強化されたテンジョウの能力により、複数のノットレイが合体した巨大な戦闘員。通常よりも強化されている。また、人間を素体にした強化型も登場。 |
アイワーンの兵器
ノットリガー(声:下山吉光) |
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アイワーンが使役する怪物。プリンセススターカラーペンを闇に染めた「ダークペン」で召喚される。 |
アイワーンロボ(声:なし) |
アイワーンが操縦する戦闘機。ユニから奪った宇宙船を素体にし、エネルギーに変換した歪んだイマジネーションを注入して姿を現す。登場した機体は16号と23号の2機である。 |
元構成員
以下、第49話以降のネタバレ注意
黒幕
プリキュアとの戦闘
ノットレイダーの特徴として、幹部たちの戦い方がそれぞれ異なるということがある。
自身に決め技が直撃することも多々あるが、浄化されて心が綺麗になったり存在が消滅することはなく、ただダメージを受けたり吹っ飛ばされたりするだけである。
これは、構成員たちが単に戦闘力がある異星人に過ぎないため。これは下級戦闘員ノットレイでさえそうである。
(ニチアサ繋がりで言えばスーパー戦隊シリーズに多く見られる宇宙人系の怪人に本質は近い)
構成員たちの経緯
ノットレイダーは故郷の星を奪われたうえ、暗く凍える宇宙の最果てに追いやられ、闇に潜んで生きてきた難民たちの集まりである。
ノットレイダーの起源は、ガルオウガが率いていた難民コミュニティだった。ガルオウガ自身も理不尽な理由で母星を失った経験を持ち、その破壊を防げなかったことに責任を感じていた。
彼は唯一の生存者として故郷の破片に留まっていたが、やがて同じように故郷を失った者たちが集まり、コミュニティが形成された。
そこに現れたのがダークネストである。ダークネストは彼らに自分の部下となり協力するよう提案した。難民たちはその取引を受け入れ、ノットレイダーが結成された。
ノットレイダーのメンバーたちは、「誰かのせいで自分たちは不幸になった」という強い被害者意識を持っている。その憎しみの対象は特定の個人ではなく、宇宙文明の歪みや無関心さに向けられている。
誰にも助けてもらえなかった彼らに手を差し伸べたのはダークネストだけだった。そのため、彼らはダークネストに忠誠を誓い、次第に凶悪な集団へと変わっていった。
これは、宇宙星空連合もノットレイダーを救うことはできなかったことを意味している。もっとも、連合にも助けられる範囲に限界があるため、すべてを救うなど不可能ではあるが。
ただし、自分を不幸にした原因を特定の誰かに向けてしまう者は、ノットレイダーにとどまれない。
アイワーンはユニへの復讐心に囚われたことで、最終的にノットレイダーから離れることになった。
追いやられた難民であった過去を理由に、彼らは「侵略される側」から「侵略する側」へと立場を変え、生きるための手段としてその行動を正当化していた。
皮肉なことに、本作におけるプリキュアは「宇宙の危機に現れる伝説の戦士」であり、ノットレイダーの被害者を救う存在として描かれている。
これは、宇宙が「構成員たちの過去の不幸は救う価値がないが、彼らの被害者は救われるべき」と暗に示しているように解釈できる。(被害の規模が違うため、同じように比較はできないが)
ノットレイダーの構成員たちは、現在の宇宙に期待も希望も持っていなかった。ダークネストが宇宙を暗闇に覆い尽くしたとしても、何も変わらないと考えていた。
第11話でカッパードは「闇に潜んで生きてきた」と語っていた。彼らは表に出ることなく、孤立を選び、迫害から身を隠しながら生き延びてきたと考えられる。
ノットレイダーのメンバーのモチーフが日本の妖怪であることも、「人間社会に受け入れられず、迫害されてきた存在」のメタファーと解釈できる。
宮元宏彰SDも、妖怪モチーフのデザインから「居場所を追われ、闇に潜んで生きる”排除された者たち”」という設定を思いついたと語っている。(アニメージュ2020年3月号より)
本拠地
ノットレイダーの本拠地は、宇宙のどこかにある「機械都市」と呼ばれる場所である。
この都市は、ガルオウガという幹部の故郷である星が壊れた後、その残骸の上に新しく作られたもの。
都市の中心には、剣のように見える巨大な岩が突き刺さっている。この岩はダークネストが現れたときにできたもので、現在は彼の居城になっている。
岩の内部には、ノットレイダーの作戦司令部が設けられており、ダークネストの玉座もここにある。
司令部は宇宙の星空を眺められる開けた場所にあり、周囲はねじれた木の枝のような岩に囲まれている。
その先端には大きなクリスタルが置かれており、中でダークネストが眠りについている。
普段はこの司令部が描かれることが多いが、第38話ではアイワーンの回想を通じて、市街地の様子も描かれた。
市街地には、居場所を失った多くの異星人たちが暮らしており、この異星人たちこそ、戦闘員ノットレイの中身である。
また、ユニによれば、この都市はブラックホールの近くに位置しているらしい。
都市へ移動するには、ガルオウガが持つ特別な腕輪が必要で、これがないとたどり着けない模様。
なお、幹部たちが戦いに敗れて撤退する際に使う転移ゲートは、幹部自身が開いているのではなく、本拠地にいるガルオウガが開いている。
都市の外観は、1960~70年代のアニメに出てくる未来都市を思わせるデザインで、どこか懐かしい雰囲気がある。
建物のデザインにはアール・ヌーヴォー(19世紀末の芸術様式)の影響が見られ、土台部分には無数の歯車が組み込まれているなど、スチームパンク風の要素も取り入れられている。
シリーズ屈指の団結力
ノットレイダーは、様々な事情で集まった構成員たちが心の傷を共有しているため、非常に強い結束力を持っている。
派閥間の対立や自分の利益を優先するような行動は見られず、協力して行動する際も足を引っ張り合うことはない。
幹部たちは部下に無理な要求をせず、上層部も失敗に対して厳しい罰を与えることはない。加えて、過剰なノルマも設定されていない。
ただし、離反者には執着しないドライな一面もあるが、無駄に人材を失うことを避ける運営方針があり、組織全体で大切に守られている。
たとえば、惑星レインボーで仲間に裏切られ孤立したアイワーンにもすぐに援軍が送られた。その際、カッパードも急な派遣命令に対して不満を言わず、裏切りの件についても責めなかった。
アイワーン自身は「ノットレイダーに居場所はない」と発言していたが、多少の降格はあったとしても組織を離れずに済んだ可能性が高いと考えられる。
テンジョウ役の遠藤綾も「(ノットレイダーは)会社としてはたぶんとてもホワイトです」と述べている。(『アニメージュ スター☆トゥインクルプリキュア特別増刊号』より)
しかしこのような運営方針は、実質的な統率者であるガルオウガによるものであり、本来の統率者であるダークネストは冷徹な性格である。
彼は封印されて動けない間、幹部たちを無償でパワーアップさせた一方、プリンセススターカラーペンを確実に手に入れるため、アイワーンが苦しむのも厭わずその自我を奪い取った。
一見矛盾しているように見えるこの行動も、部下を最大限活用するという目的からすれば理解できる。
不要な使い捨てはしない一方で、命を賭ける場面では容赦しないという冷徹さを持っている。
ノットレイダーの構成員たちは、こうしたダークネストの冷徹さを理解した上で従っている。
ただし、その忠誠は「心」ではなく「力」に対する信頼に基づいている。
一方で、構成員たちが本当に心を寄せているのはガルオウガである。彼こそがノットレイダーの精神的支柱と言える。
ノットレイダーの「仲のよさ」や「居心地のよさ」は、視聴者に伝わるよう意図的に強調されている。
シリーズ構成の村山功氏は、ノットレイダーを「擬似家族」として描いている。出自や種族が違っても思いを共有すれば家族になれることを示しているという。(アニメージュ特別増刊号より)
なお、村山氏が過去に担当した『魔法つかいプリキュア!』では「多様性」のテーマを肯定的に描いていた。本作では、そのテーマを敵側に移している。
これは、本作が描く「異なる思い」を持つ者同士のつながりを強調するものと考えられる。
結末
第46話では、プリキュアと宇宙星空連合の艦隊がノットレイダー全軍と激突し、「第二次スターパレス攻防戦」が始まった。
ノットレイダーの兵士たちは、幹部を含めてダークネストから「歪んだイマジネーションを強化する鎧」を与えられており、その力によって星空連合を圧倒していた。
しかし、この鎧には副作用があり、歪んだイマジネーションを引き出しすぎると暴走し、理性を失う危険があった。
プリキュアたちは暴走しかけて苦しむ兵士たちに言葉をかけ、その言葉が兵士たちの心に響いたことで、彼らは暴走寸前で正気を取り戻すことができた。
しかし、この展開をダークネストは茶番の終わりと捉え、自ら「蛇遣い座のプリンセス」としての正体を明かした。
彼女は構成員たちの鎧を意図的に暴走させ、その結果生まれた歪んだイマジネーションを自身に吸収した。
蛇遣い座の真の目的はこの力の吸収であり、ノットレイダーの存続は最初から必要とされていなかったのである。
自分たちが切り捨てられたと悟った構成員たちは、蛇遣い座に「共に宇宙を支配する約束は嘘だったのか」と問い詰める。
これに対し蛇遣い座は「この宇宙の消滅こそが真の目的であり、ノットレイダーも例外ではない」と宣言。
ここで構成員たちは反旗を翻し、プリキュアや宇宙星空連合と共に蛇遣い座に立ち向かうことを決意した。
最終的に、蛇遣い座の野望はプリキュアたちによって阻止され、彼女は宇宙の行く末を見守るために姿を消した。(詳細は『蛇遣い座(プリキュア)』を参照)
蛇遣い座はノットレイダーに謝罪することはなかったが、一度だけ使用可能なワープ機能付きの腕輪をガルオウガに手渡し、「どう使うかは自由。復讐を望むなら追ってくるがいい」と告げた。
だが、ガルオウガはそのワープ機能を復讐ではなく、プリキュアたちを地球に送り返すために使用した。
最終話では、宇宙星空連合がノットレイダーに新たな星を与えたことが明らかになった。
最終決戦から約15年後、トッパーやララがその星を訪れると、そこは桜のような花が舞う、美しい星となっていた。
この様子から、ノットレイダーの幹部や構成員たちが力を合わせ、星の開拓を進めていたことがうかがえる。
ガルオウガも、かつて敵であった宇宙星空連合が自分たちを認め、安住の地を与えたことについて感謝していた。
宇宙星空連合の決断は、ノットレイダーにとって大きな救いとなり、彼らの未来への道筋を照らすものとなった。
余談
名前は「インベーダー(Invader)」と「乗っ取る」を組み合わせたものと推測される。
しかし、Not Raiderと解釈すると全く逆の意味になる。
作中では、名前に反して行き当たりばったりの行動が目立ち、脅威としての存在感が薄かった。
皮肉にも、実際に「乗っ取る」作戦を展開したのはノットレイダーを去ったアイワーンである。
第39話にてようやく「主人公達の学校に潜入する」というまともな作戦が見られた辺り、これまで武力重視の姿勢が強過ぎたのかもしれない。
とはいえ、第47話で真相が明らかになった今となっては、その考えの浅さ自体が黒幕の狙い通りであったのだが。