今、日本のアニメーションは海外で注目されヒットしていますが、そのほとんどは男子が活躍する作品です。
日本のみならず、海外の女子達は、自分達女子が大活躍して日常のストレスをスカッと吹き飛ばす作品を待っています。
───『ふたりはプリキュア』プレスリリース(2003/11/26)より
概要
プリキュアシリーズとは、東映アニメーション製作・朝日放送テレビ(ABC TV)・テレビ朝日系列、毎週日曜8:30枠(いわゆるニチアサキッズタイムと呼ばれる児童番組枠の1つ)に放送されているオリジナル少女向けアニメシリーズで、所詮「変身ヒロイン(バトルヒロイン)もの」の作品の一種である。
『明日のナージャ』終了を受けて、2004年2月から同時間枠を継承した『ふたりはプリキュア』を第1作とし、人気を得て後にシリーズ化された。以降、20年以上続く人気シリーズに成長し、テレ朝系アニメ番組ではドラえもん・クレヨンしんちゃんに次いで、東映アニメーション制作女児向けアニメでは最長シリーズとなっている。
「女の子だって暴れたい」というコンセプトの下に企画され、主に体術を使って戦うのが特徴である。
「少女達が“プリキュア”という戦士に変身し、戦う」「妖精がプリキュアのサポーターになる」の要素が基本。「プリキュア」は「Pretty」と「Cure」を合わせた造語で、「キュア○○」の様な戦士名が付く(ただし、これに該当しない番外戦士も一部存在する)。メインキャラ人数は作品毎に異なっている。
それぞれの作品に明確な繋がりはないものの、歴代作品のキャラ達が総登場するオールスター映画が制作されている。
また、漫画版が講談社『おともだち』『たのしい幼稚園』等の幼児誌や少女コミック誌『なかよし』などで掲載されているが、他社雑誌掲載はほとんど例がない。ただしムック関連は他社でも発売されており、他社でもプリキュア特集が組まれるケースがあるため、講談社が独占しているという訳ではない。
ちなみに、講談社関連キャラが今まで起用されて来なかったマクドナルドのハッピーセットにも(一部シリーズを除き)登場している他、松屋とのコラボ企画も実施されたことがある。さらに、東映直営湯沢東映ホテル(新潟県)と池の平ホテル(長野県)では「プリキュアルーム」という独自の部屋も用意されている。
また、ストーリーには単純な勧善懲悪で終わらない社会的なメッセージ性が込められることが多く、幼稚園入園前〜小学校低学年向けの番組とは思えないような複雑な内容も多々含まれている。
これは、シリーズ第1作目時に「子供達が今直ぐには理解出来なくても大人になって思い出した時に支えとなるような作品を作る」というコンセプトがあったためであり、現在に至るまでプリキュアシリーズの伝統として引き継がれている。
作品の話数については、(メインシリーズは)1作につき概ね49話前後が基準となっている(2024年現在で最も話数が多いのは『フレッシュプリキュア!』(2009年度)・『Go!プリンセスプリキュア』(2015年度)・『魔法つかいプリキュア!』(2016年度)・『ひろがるスカイ!プリキュア』(2023年度)の全50話)。1年に日曜日を迎える日数である52~53日よりも少ないが、これは毎年11月第1日曜に全日本大学駅伝の中継で休止になることや、2020年までは全米オープンゴルフの中継で休止になる場合があったためである。ただし、正月休みに関しては(被れば必然的に)1話分お休みになる(このような特番編成は、一部地域の夏の高校野球中継を含めたニチアサ全体に言えるのだが…)。
後にBS松竹東急にて放送されることになった2021年以降、全米オープンゴルフの中継がテレビ朝日では行われていないことから、今後は(放送時間の変更や前述の駅伝も含めた特番による休止の増減の状況によるが)前述の4作より多い話数(全51話以上、年によっては全52話も)のシリーズも出現する可能性がある(早ければ日曜日が年に53週発生する2026年度となる)。
なお、同一世界観である初代と『MaxHeart』及び『Yes!プリキュア5』シリーズ、そして『魔法つかいプリキュア!』シリーズを1つのシリーズとしてカウントした場合、『Yes!プリキュア5』シリーズが全97話と最も多い話数のシリーズとなる(さらに、番外作品『キボウノチカラ』もカウントした場合、全109話となり、唯一の100話超えとなる)。
毎年2月1日は「プリキュアの日」として日本記念日協会に認定されている。
シリーズ一覧
本編
年数 | 年度 | 作品名 |
---|---|---|
1 | 2004年 | ふたりはプリキュア |
2 | 2005年 | ふたりはプリキュアMaxHeart |
3 | 2006年 | ふたりはプリキュアSplash☆Star |
4 | 2007年 | Yes!プリキュア5 |
5 | 2008年 | Yes!プリキュア5GoGo! |
6 | 2009年 | フレッシュプリキュア! |
7 | 2010年 | ハートキャッチプリキュア! |
8 | 2011年 | スイートプリキュア♪ |
9 | 2012年 | スマイルプリキュア! |
10 | 2013年 | ドキドキ!プリキュア |
11 | 2014年 | ハピネスチャージプリキュア! |
12 | 2015年 | Go!プリンセスプリキュア |
13 | 2016年 | 魔法つかいプリキュア! |
14 | 2017年 | キラキラ☆プリキュアアラモード |
15 | 2018年 | HUGっと!プリキュア |
16 | 2019年 | スター☆トゥインクルプリキュア |
17 | 2020年 | ヒーリングっど♥プリキュア |
18 | 2021年 | トロピカル〜ジュ!プリキュア |
19 | 2022年 | デリシャスパーティ♡プリキュア |
20 | 2023年 | ひろがるスカイ!プリキュア |
21 | 2024年 | わんだふるぷりきゅあ! |
番外作品
1 | 2023年 | キボウノチカラ〜オトナプリキュア‘23〜 |
---|---|---|
2 | 2025年 | 魔法つかいプリキュア!!~MIRAIDAYS~ |
舞台作品
1 | 2023・2025年 | Dancing☆StarプリキュアThe_Stage |
---|
※ プリキュアシリーズ一覧に、より詳細なシリーズ一覧リストがあります。
プリキュアシリーズの特徴
「アクション」へのこだわり
2004年に放送開始された『ふたりはプリキュア』におけるキャッチコピーは「女の子だって暴れたい」。
女児向けの変身ヒロイン物でありながら、格闘戦(※)主体で戦うという斬新さが人気を集め、当時の女児向けアニメにおいては異例のヒットを叩き出した。
※格闘戦の他にも、肉弾戦、空中殺法、マーシャルアーツ(ふたりはプリキュアMaxHeart DVD-BOXのブックレット15P参照)などと表現される場合もあるが、全体的には格闘系のワードで表現される傾向にある。
本作がこれまでの女児向けアニメと違い異質な作風になったのは、まずプロデューサーの鷲尾天氏が商社や出版社関係(三省堂)、報道関係(秋田朝日放送)から転職した人物であったことに加え、女児向け作品のノウハウがない状態で仕事を任されたのが一因として挙げられる。結果的に、『ドラゴンボール』や『金田一少年の事件簿』、『エアマスター』で監督を務めた西尾大介氏の色が色濃く出た作品となった。
翌年には続編も作られ、翌々年には登場人物から世界観まであらゆる設定を一新させた新しい「プリキュア」が作られた(ふたりはプリキュアSplash☆Star)。その後も「プリキュア」という名前とバトルアクションのテーマ以外には繋がりがない新作が毎年作られるようになり、後に「プリキュアシリーズ」と呼ばれる様になる。
制作側はプリキュアシリーズを「アクションファンタジー」という独自ジャンル名で呼称している。(参考1、参考2)
「大人となっても忘れないもの」を目指して
プリキュアシリーズの主な対象年齢は未就学児層とされているが、それと同時に「子供と一緒に見ている親も楽しめる作品」ということも目標としている。
そのため、「親が不快とならない品の良さ」の様なものも意識されており、当然入浴シーンなどの御色気シーンは御法度。従来の同ジャンルでは定番であった夏の水着回ですら、シリーズ12作目になるまではタブー扱いであった。話にも道徳的な要素が盛り込まれることが多く、変身後のデザインは、主な視聴層である小さな女の子が喜ぶよう、華やかな色彩にフリルやリボンなどがあしらわれている。
ニチアサの多くにいえることながら、バンダイがメインスポンサーを務める作品であるため、当然玩具の販促色も濃く、作中に登場している変身グッズやアイテムは、関連玩具として魅力的に展開することも全シリーズで求められている。
脚本や演出においては、放映当時の時勢を反映したドラマ性が強い内容も目立ち、一定の大人のファン層が付いている理由はこの部分が大きい。
さらに、他の児童向け番組の例に漏れず、親子で楽しむことも想定しているため、「一緒に見ている両親が子供達に説明することでコミュニケーションを取りながら視聴することを想定した内容」となっている。
一方で、シナリオを意識せずとも派手なアクションやコミカルな演出で(子供が疑問を持たずとも)気楽に視聴出来るよう工夫されている作品もいくつか存在している。
初期のプロデューサーであった鷲尾氏は「子供の時には理解出来なくても、成長して昔も思い返した時、作品の意図や意味に気付いて貰えれば」と語っている。
15周年記念会見の際にも、「例え作品が変わっても、共通して目指すべきもの」として、同じ理念が語られている。
関連玩具のメイン層は主に未就学女児としているが、アニメの視聴層はシリーズを重ねるごとに拡大しており、現在では(上述した通り)大人層がそれなりに付いているコンテンツとなっている。制作側としてはその事実を肯定的に受容する態度を見せている。
ただし、他女児アニメ(アイカツシリーズやプリティーシリーズなど)と比べると、大人向けのコンテンツ展開は殆ど控え目である
初の大人向けコンテンツとなる『プリキュア5』のラジオ番組『CLUB ココ&ナッツ』の放送開始前も、鷲尾氏は枠から外れ過ぎないようにと釘を刺していた。
ただ、この点は15周年を境目にやや緩和され、ソーシャルゲームでのコラボや人気投票など、放映当時は子供だった視聴者が思い返すキッカケを作る展開を行う様になった。
『フレッシュプリキュア』から『スマイルプリキュア』までのプロデューサーを務めた梅澤淳稔氏は「プリキュアシリーズは大人の男性視聴にも耐え得る作品作りを意識している」と明言している。ただし、これは子供と一緒に見ている母さんは勿論、父さんの心にも響く作品を目指す」という意味であり、所謂大きいお友達は対象外であることに注意すべきである。なお、「プリキュアメイン層は10歳未満の女児と30歳以上の男性である」と記載された資料らしきものがネット上で拡散されているが、これはDVD販促用資料をコラージュして作られたフェイクである(証拠リンク)。
シリーズ変遷
※バトルヒロインの項目も参照。
前史
──当時はシリーズ化して続いて行く……という予感はあったんでしょうか?
西尾:欠片も思ってなかった。多分、誰も思ってなかった。1年だって怪しかったのに(笑)。
(『ふたりはプリキュア』総集編Blu-ray/DVD発売記念インタビューより)
鷲尾:当初はこんなロングランではなく、半年 - 1年で終了する予定と聞かされていたんです。
プリキュアシリーズが誕生したのは、(元を正すと)かつて同時間帯で放送されていた『おジャ魔女どれみシリーズ』において、急なシリーズ延長繰返しによりスタッフの疲労が限界に達したことに端を発する。これは(同シリーズに限らず)長期シリーズでは必ず起こる弊害であるが、上記のどれみシリーズの場合、上層部の安易な命令とスタッフの段階的な交代をほとんど行わなかった(つまり、ほぼ同じスタッフを延々と使い回し続けていたこととなる)ために大問題となっていた。その結果、『どれみ』をこれ以上続けるのは限界として、『明日のナージャ』という新作アニメが制作されることになった。しかし、何故か上層部から「(どれみシリーズと)ほぼ同じスタッフを継続すること」という条件を提示されたため、制作スタッフの疲弊はほとんど解消されなかった。
上層部はこの作品を、最低でも2年ものとして考えていたため、もし人気が出たら(前述の『どれみ』と同様に)さらに続編を作りたい、と目論んでいた。……が、現場スタッフが上層部の安易な商業主義に反発するかの如く、自分達がやりたいことだけを貫いた作品作りを徹底した(加えて、番組の中途での打切or1年での終了を前提にスケジュールを組んだ)ため、玩具販促の面で芳しくない結果が続き、上層部は(現場の目論見通りに)『ナージャ』を1年で終了させてチームを解体する決断を下すこととなる(逆にいえば、安易なシリーズの継続で疲弊したスタッフを解放するに至ったともいえる)。
(『ナージャ』2年目キャンセルに関する詳細はナージャの項目を参照)
そして、予定していたスケジュールが突然空いてしまったことで、それを穴埋めする作品が必要になった。男児向け作品に転換することも検討されたが、引き続き女児向け作品を制作することになり、その間にその次の番組を制作するために必要なスタッフの体制(作風、スタッフ等)を整えることになった。
しかし、『どれみ』時代からこの時間帯を支えて来たスタッフ抜きで女児アニメを得意としている人材を揃えることは難しく(しかも、『ナージャ』続編の放送キャンセルが決定したのが2003年夏に入る前だったこともあり、番組を設立するまでの時間は半年強しかない状態であった)、作品のプロデューサーに任命された鷲尾天氏とシリーズディレクター(監督)の西尾大介氏に至っては、女児向けアニメに関しては全くのド素人という有様であった。
女児向けアニメの経験がなかった鷲尾氏は、自分が面白いと思う要素を全面に出すこととした。彼が好んでいたのはバディものの刑事アクションドラマや不良マンガであり、それを変身ヒーローに当てはめることで「性格が真逆な女の子同士がひょんなことからバディを組んでヒーローになり、パートナーである妖精を悪の怪人から守るため、互いに軽口をたたき合いながら対人格闘を行う」という、当時の女児向けアニメでは全く前例の無い企画が生まれた。
当時の女児アニメの常識からすると傍から見るとふざけているとしか言いようがない内容であったが、女児アニメの常識を知らなかった鷲尾氏は至極真面目かつ熱意を持って提案。「女の子ならではというのはわからないけど、女だろうが男だろうがワクワクするものは同じはず」と信じて疑っていなかったのだ。そして、鷲尾氏はその思いを込めて、後にシリーズを代表する言葉となる「女の子だって暴れたい」の一言を企画書に書き加える。
これが現在までのプリキュアシリーズ全体における代名詞となるのだが、この時点では誰も想像すらしていなかったのだ。
この企画書に納得していなかった上層部は、鷲尾氏に対して企画の修正を促すが、「もし企画が通らなかったら、俺は(プロデューサーを)降りる」と、頑として修正を拒んだ。
また、『ナージャ』の急な打切で他プロデューサーを検討する時間的な余裕もなかったため、本来ならボツとするべき企画を通さざるを得なくなってしまったのである。
鷲尾氏自身、プリキュアという作品はニチアサ8:30枠の女帝として長く君臨していた関弘美氏の世界観を根底から壊すこととなるため、上層部からの嫌味を受けるばかりか、『どれみ』を支えてくれたファン層からの強い反発もあるであろうと危惧していた。そこで鷲尾氏は時間がない中でスタッフを集めるに当たって、以前から親交があった西尾大介氏を監督に抜擢。彼を東映アニメーションの中庭の噴水前に呼出し、「俺と共に修羅の道を行くことに付合ってくれ」と頭を下げて頼んだ。頼まれた方の西尾氏も(鷲尾氏同様)女児アニメ経験は皆無で分からないことだらけであったが、その熱意に感じるものがあったのか、「分かった。もし作品が上手く行かなかったら、謝って逃げちゃおうか」と(傍から見れば物騒なことを)いいつつ、この無謀なプロジェクトに参画したのである(後に、鷲尾氏は「2003年プリキュア三顧の礼」と呼んでおり、このタイミングがプリキュアという番組企画がスタートした瞬間としている)。
現場スタッフには、主に西尾氏が当時SDとして手掛けていた『エアマスター』制作スタッフから有志を募る形で揃えることが出来、放送開始まで時間がない中で命懸けの制作が開始された(プリキュアが格闘戦を駆使するのはアニメ版『エアマスター』の名残ともいわれているが、西尾氏としては「当たり前のことをやっているだけ」としている。プリキュア戦闘演出やドラマの作り方においては、西尾氏が降板したシリーズ第3作『S☆S』から大きく方向性が変わったが、「全身を使った激しいバトルが主体」ということについては、現在までプリキュアシリーズ全体に継承されている)。
作品作りを参考するに当たり、鷲尾・西尾両氏は、映画『48時間』『ダーティハリー』、テレビドラマ『噂の刑事トミーとマツ』『白バイ野郎ジョン&パンチ』などを参考としたが、いずれも女児向け作品ではなかった。
こうして作られた『ふたりはプリキュア』という作品は当然の如く従来の女児アニメとは大きく異なる感性の作風に仕上がった。
こういう作風のアニメは絶対ヒットしないことは目に見えていると思われていた(ある意味「こういう作風は絶対にヒットしないこと」を実証するための実験作という認識でしかなかったといえる。)当然ながらこの時点では、シリーズ化する予定など毛頭なかった。さらに、『ナージャ』不振影響もあり、中部日本放送制作・TBS系列で放送中であった『セーラームーン』実写版がバンダイ女児向けグッズ販促メインとなっていたので、仮に『ふたりはプリキュア』が不振に終わったとしても、女児向け販促状況自体には全く影響がないと踏んでいた。それに、鷲尾氏率いる制作スタッフ陣には「企画時点で予定を組んでいた1年どころか、半年で打切る可能性もあること」が上層部から示唆されていた。『ふたりはプリキュア』が前半・後半とに分けられているのは、公式では「物語がダレないための構成」としているが(シナリオ上は)半年で打切に至った場合でも自然に完結しそうな形となっているため、もし打切に至ったとしても、都合が良かったといえるかもしれない。
もし、『ふたりはプリキュア』が『ナージャ』以上の商業的な大失敗を喫し中途半端な形で終了してしまい、後に制作される番組以降もスタッフが揃わない等で駄作が連発するなどの混乱が起きれば、最悪の場合、日曜8時半のアニメ枠自体が廃枠に追込まれる…ということが起こりかねないのではと、当時のコアなニチアサファン層では不安が膨れ上がっていた。そんな不穏な空気の中、『ふたりはプリキュア』が2004年2月1日、遂に始まった。しかし…。
予想外の大ヒット
皮肉にも、前述の『ナージャ』終了に伴う混乱が原因で作られた『ふたりはプリキュア』の、あまりに斬新過ぎる内容が逆に受けて子供達の間で話題沸騰となって大人気を集めるという結果となったのだ。
おまけに、上述のアニメファン層においては「日曜8時半枠の危機」の危惧が煽られた結果として『ふたりはプリキュア』に対しては(『ナージャ』への八つ当たりめいた批判で『どれみ』ロスのフラストレーションがガッツリガス抜きさせられたことも手伝って)「まぁ『ナージャ』よりかは」という意識が生じてしまい「廃枠に追い込まれるなら、キチンとプリキュアを応援しよう」という空気感も蔓延する(もっとも、『どれみ』ロスによるファンからの理不尽なプリキュア叩きは、この時期にも一応は存在していた。ただし、リアルタイムファンはこの時点では、この時間帯からはナージャ騒動もあって「卒業」しており、そうした批判は当時には一部に留まっていた。『どれみ』ロスに伴うプリキュアバッシングは、寧ろ「どれみ世代」が「子育て世代」となって、親として視聴層に戻って来た平成最後期 - 令和以降に、一部に留まっていたリアルタイム時の批判が「時間帯に戻って来たどれみ世代」に取込まれて再燃してしまったもので、これは今でも根深いものとなっている)。
そして何よりショックであったのは、プリキュア関連玩具売上が『どれみ』シリーズピーク時をも早々に上回ってしまったことである。これは誰も予想していなかったことであった。
このように、放映を開始した途端に予想外の人気を獲得して商売的にも成功を収めたため、番組のメインスポンサーであるバンダイからすれば良いことであったが、困ったのは東映アニメーション本体の方であった。ここまで爆発的にヒットしてしまうと番組を半年どころか1年で終わらせることは難しく、続編の制作が急遽決定される。これによって、番組最終回まで辿り着かせるために必死に制作しながら続編の構想を練るという苦労を背負うことになる。
スタッフ達の懸命な努力もあって、続編『ふたりはプリキュアMaxHeart』は2005年2月6日より放映された。
さらに、同年4月16日にはシリーズ初の劇場版『映画ふたりはプリキュアMaxHeart』が公開され、以降年1 - 2回のペースでプリキュアシリーズ映画作品が公開されている。
一方『ふたりはプリキュア』TVシリーズ及び劇場版制作に関しては、女児向けにまだ不慣れな状態のまま2年続けての制作であった上、当初想定されていなかった続編の急な決定も重なり、『どれみ』時代と同様に非常に壮絶なものとなった。番組制作面については、続編のイトルが締切日ギリギリとなっても中々決定せず、鷲尾・西尾両氏が「もう一杯一杯だね」と話す程『MaxHeart』という本編内容と直接無関係のものとなってしまったり、『Max Heart』第11話における作画崩壊といった作画を整える余裕の無い回が存在している事から、当時の壮絶な状況が窺える。さらに劇場版2作目では、一部の女児が泣き出すという大失態を起こしてしまう(雪空のともだち、プリキュア同士の戦いも参照)。
こうして、監督(シリーズディレクター)の西尾大介氏が疲弊による限界に至っていると早々に感じた鷲尾氏は、西尾氏を監督から交代させるべきと上層部へと発案。西尾氏は『MaxHeart』の放送終了をもって監督を降板することとなった。
『Splash☆Star』における低迷期
『MaxHeart』の次番組については、新キャラを追加して初代プリキュア3年目を継続させる案もあった。実際、作品主人公が「なぎさ」&「ほのか」であることを変えるのにスタッフから反対の声があったためである(この時点で『プリキュア』には「ブランド化」や「主人公交代によるシリーズ化」といった着眼点はない)。
しかし、『ふたりはプリキュア』(続編『MaxHeart』も含む)は監督・西尾氏あっての作品であると感じていた鷲尾氏は仮に監督を交代しても『プリキュア』を続けるならば、キャラも世界観も1度白紙に戻して『プリキュア』という作品自体を「再構築」して、『プリキュア』作品継続を目論んだ。
さらに、この頃から『ふしぎ星の☆ふたご姫』の好感触による2期躍進に加え、女児向けゲームとして「ある作品」が登場した。それら作品の「キラキラかわいい」作風への話題が好感触として大きくなる萌芽が見えていたことから、『ふたりはプリキュア』でのバトル時に暗い画面で不安を煽る路線に対し、一部で「目新しいだけでいずれ限界が来るのではないか」「キラキラ可愛い路線番組が盛り返せば、プリキュアの武器となって来たハード路線は諸刃の剣となり、逆に足枷となる(仮に子供を味方に付けても親を敵に回してしまうこととなり、家庭にも見捨てられる)のではないか?」との疑問点が出ていた。
そこで、女児向けアニメ制作としては初めてとなった『ふたりはプリキュア(無印・MH)』の成果に気を良くした(このことについて、鷲尾氏は後に「油断した」と評している)鷲尾氏は「もし『プリキュア』を続けられるなら、初代や『MaxHeart』の様なやり方ではなく、本当の意味で女子達に向けた上で親達も納得&安心して見てくれるであろう、キラキラかわいくて美しいプリキュアを本気で作り上げてみたい」と考える様になる。
こうして、当時の女児向けとしては当時余り前例がなかった「世界観もキャラも継承しないが、コンセプトのみ継承する」という試みが行われることとなった。そして、このコンセプトに基づいて生まれたのが『ふたりはプリキュアSplash☆Star』である。
ところが、『MaxHeart』最終期である第3期までは売上は好調であったが(売上は34億であり、これは第3期同士での比較なら、歴代プリキュアシリーズで過去最高)、『Splash☆Star』開始時から落ちてしまう。
つまり、前述した「ある作品」……即ち、女児向けTCAG元祖とされている『オシャレ魔女ラブandベリー』(通称:ラブベリ、2004年秋期 - 2008年)台頭である。
さらに、同時期に展開されていた『ふたご姫』好評による第2期の突入や、ライバル会社より満を持して送り出された『きらりん☆レボリューション』の登場(身も蓋もないことをいえば良質な女児向け作品の豊作であり、同時にライバルメーカーによって各家庭に対してプリキュアへの疑問点を問われた無意識的な対プリキュア包囲網の成立)まであいまった。
『Splash☆Star』はプリキュアシリーズの存続における使命を背負わされた作品であったが、ラブベリに押しに押され、『ふたご姫』『きら☆レボ』下位作品からも(追付かれこそしなかったものの)追撃を許し、関連商品の売上が想定よりも悪くなってしまう(約半減)。
『Splash☆Star』は元々は2年予定で企画されていたが、この成績不調から2年目をキャンセルさせられる憂き目に遭う(皮肉にも、『ナージャ』と外見構造としては同じ状況となったといえる。しかし、当初からスタッフ側が(スポンサーや上層部が勝手にプランニングしていた2年単位での計画を「自分達のことを欠片も考えてくれなかった身勝手な都合」と切り捨てて)1年での終了を前提に動かしていた『ナージャ』とは異なり、『Splash☆Star』は元から続編を前提とした作品であったため、ここにき手1年で終了のためのハードワークがまた起こってしまった)。
『5』でのV字回復
『Splash☆Star』の翌年をどうするかについて企画会議では「もうプリキュアではない別のアニメを作るべきでは?」という議論も巻き起こる。この時点での「プリキュア」は、無印~MaxHeartの大ヒットは偶然斬新過ぎたためにヒットしただけで、本来は前述の通りヒットするのはあり得なかった作品という認識が強まっていた。通常のアニメ制作会社であれば、ここで大人しくシリーズを畳み、別の作品に切替えるのが常識である。
しかし、『Splash☆Star』の突然の2年目キャンセルという状況下では新たにスタッフを招集する余裕は無く、止む無く『Splash☆Star』と同じスタッフで繋ぎの別作品を1年間制作させて、その間に別の女児向けアニメ作品の企画準備やそれを作れるスタッフ・制作体制を整えることが決定する(この事で、ただでさえ『Splash☆Star』終了のためにハードワークを強いられていた現場は、さらに次作の準備作業まで上乗せされ、さらにハードワークな状態となってしまう)。
しかし現場のトップである鷲尾プロデューサーは「自分の女児向けは『プリキュア』しかノウハウがない(同じスタッフでやるならプリキュアを続けさせろ)」として、それ以外の作品を作ることを拒む(鷲尾はこの時点で、作品をリセットすればスタッフの使い捨てにもなりかねない多大なハードワークに突入する事は予測しており、それを防ぎスタッフを守るためにも「あくまでも予定どおり『S☆S』の二期目」を当初より希望し続けたが、商業成績という数値の前には叶わなかった。プリキュアの継続は、この時点で3年かけて多少なりとも培ってきたノウハウを流用できるため、その分、スタッフ負担を軽減できる、スタッフを少しでも守れる、という心積もりもあった)。いずれにせよ、当時はこの次作を以てプリキュアを今度こそ終了させる方針であったと同時に鷲尾プロデューサーが、これからもプロデューサーとして作品を作らせてもらえるかどうかの最後のチャンスであったといえる。
かくて再び追い詰められた鷲尾プロデューサーは、このチャンスを何とか起死回生に結び付けるため、これまでプリキュアシリーズに関わってくれていた東映グループ所属の女性社員達に「どんな作品が好きか、見たいか、作りたいか」というリサーチをかける。そして彼女達からは、当たり前と言えば当たり前であるが「チームものが良い」「恋愛のキラキラは欲しい」「主人公の手の届かないイケメンなんかいらないけど、寄り添ってくれるイケメンの存在は必須」などなど過去作の存在を念頭に置いたド定番の意見が頻出した。しかし、それらは男性向けから発展した方法論しか持ち得なかった鷲尾にとっては逆に新鮮な(そして鷲尾天という年配男性が「女子のために」と考えていたことを「全否定」する)意見であった。
かくて、こうしたリサーチ結果を念頭に再び鷲尾プロデューサーの好みであるヤンキー漫画『ソウルブラザー』概念を組込み、再度設定レベルからリセットした『Yes!プリキュア5』が製作された。
結果として『プリキュア5』は、前述の意見を導入したことが功を奏したのか、一気に人気を回復させた。さらにラブベリへの対抗策としてこの年に稼働開始したプリキュアデータカードダスも、『魔法つかいプリキュア!』まで続く大長寿のアーケードゲームとなり、ゲーム面でもラブベリをけん制することができた。また、データカードダス内で発展したモーションキャプチャー技術は『フレッシュプリキュア!』以降の3Dダンス技術に転用される利点ものちに生まれた(後々になって考えるとキッズ向けアーケードゲームの競争激化発端でもあったことも忘れずに)。
これを受けてスポンサーや上層部は、本来『プリキュア5』放送期間中に予定していた別の女児向けアニメ作品企画やスタッフの段階的な準備を急遽取止め、『プリキュア5』2期目製作を指示する(事実上、シリーズ終了の危機をなんとか回避することに成功したと言えるが、結果的に『作品が不振で打ち切られたため繋ぎ番組を作り、放送中に本来のまともな作品の準備をする→その繋ぎ番組が好評だったためまともな作品の準備を止めてその繋ぎ番組の放送期間を延長する』という無駄なサイクルを2度もやらかしてしまったことになる。また、プリキュアの売り上げ枠が拡大することにより、バンダイ内部の作品も含めた、他の女児向けアニメの資本的な吸収及び少女漫画原作・児童向け(純粋な)魔法少女アニメ衰退が始まるキッカケともなった)。
しかし、鷲尾はこれまでの経験の総括(=こんな修羅場は作品のためにも、何よりスタッフのためにも長くは続けられない)から、この時間枠でのコンテンツ継続のためには前任者の考え通りの世代交替が必須として、前もって「これ以上プリキュアをやるにしても終えるにしても、自分(鷲尾)は『5』に関しては2期目となる『Yes!プリキュア5GoGo』までしか面倒は見ない(=別時間枠に行かせて欲しい)」と宣言しており、彼はプリキュアの制作現場からはこの作品を最後に去ることとなる。
年単位交代制による安定的シリーズ化へ
『5GoGo』後のシリーズ作品に関する検討は、(ある意味)『Splash☆Star』以来のシリーズ存続の分岐点とも言えた。
『プリキュアの父』である鷲尾氏が現場を去ることになり、「これからシリーズをどうして行くのか」という議題に対しては2つ案があった。
一つ目はプリキュアシリーズを終わらせること。もう1つは好評であった『プリキュア5』第3期を全く別のプロデューサー指揮下で作らせることであった(なお、『プリキュア5の3期目』については、約14年半後に番外作品『キボウノチカラ〜オトナプリキュア‘23〜』として実現している)。
だが、結果的にはそのどちらでもなく『プリキュア5』の3期目を作らず、『ノイタミナ』(当時は「墓場鬼太郎」)からニチアサに復帰していた、元SD・梅澤淳稔氏を新たなプロデューサーに起用した上で、今までとは繋がりがない全く新しい作品『フレッシュプリキュア!』が制作されることとなった(なお、『フレッシュ』より前の時期のプリキュアシリーズで完全新作を作られたのは、前年実績が芳しくなかったからであったのだが、『フレッシュ』の企画が始動した春頃には、当時放映中『Yes!プリキュア5GoGo』は前年の同期超えを達成した実績を有する作品であったことは強調しておく。『5GoGo』は後半こそ陰りを見せていたが、その時点では『フレッシュ』企画は既に固まっていて、内容に影響は与えていない)。
また、鷲尾氏の前任として『ニチアサ女児向け枠の母』との呼び声高く、梅澤氏ともタッグを組んだこよもある関弘美氏がプロデューサーより上の立場であるテレビ企画部長(企画)となった。
関氏には1つの悲願があった。それは「1年単位で作品(キャラコンテンツ)を切替え、日曜8:30枠での恒常化を行う」というものである。
制作したアニメ人気が出ると、(当然ながら)スポンサーや上層部は「商業上安定している作品は人気が完全に尽きるまで終わらせるべきではない」と考える。だが、現場としては、イチから作る必要がある作品に何年も拘束され続けてはいずれ疲弊してしまう。プロデューサーを務めていた時の関氏は『どれみ』 - 『ナージャ』に至るまで、その矛盾に悩まされ続けていた。
そんな彼女は、『無印』以降の5年間でシリーズ延長とテコ入れを繰返したことで「キャラ代替わり」が定着しつつある事と、『プリキュア5』でのV字回復という実績を念頭に、自身の考えを実行出来るコンテンツであると感じていた。そして以下の改革を実行する。
- それまで、鷲尾氏としての女児向けアニメブランドであった『プリキュア』の名称を『東映アニメーション専用女児向けバトルアクションアニメシリーズ』という解釈に変更した上で、事実上シリーズを存続させる(これは、名称および基本的なスタイルを使用した方が別の名称・設定のアニメを制作するよりは、日曜8:30枠が『ナージャ』の様な突発的な番組終了によるゴタゴタを避けられ、安定してシリーズを存続させられると踏んだためでもある)。
- 『どれみ』や『無印』『MH』の時の様なスタッフの過度な疲弊(特にスポンサーのからの要請を主な原因とする「人的リソース消費財化」即ち「スタッフ使い潰し」)を回避するため、作品の世界観の切り替えや、監督・構成・キャラデザなどの交代も1年単位で実施する。その際、1年単位でスタッフやキャラが異なっていてもシリーズとして成り立たせる様にする。(つまり、作品の開始 - 終了までを計画的にパッケージングすることを可能とする。これは関氏と梅澤氏の「師」である「ニチアサの父」籏野義文氏の教えとも合致する)。
これらを実現するため、関氏は梅澤氏と共にスタッフへと働き掛ける。この新体制で作られた初の作品である『フレッシュプリキュア!』以降からは実際に定着する。
プリキュアが表立って「シリーズ化」と「ブランド化」を意識した戦略を練る事ができるようになったのは、ここからである。上層部やスポンサーが望む「コンテンツの長期安定化」はプリキュアをブランド化することによって実現させつつ、作品自体は一年単位で完結させて、主要スタッフは一年単位で交代することで現場の負担を軽減させたのである。こうして『どれみ』からずっと続いていた疲弊問題は(多少なりとも)緩和された。
以降のプリキュアシリーズは、『スーパー戦隊シリーズ』『平成→令和仮面ライダーシリーズ』などと同様、ニチアサ女児向け固定アニメシリーズとして正式に定着する様になった。
それ以外にも新たな試みが多く行われ(中学生層へのアプローチ・作風変化・オールスターズシリーズ開始など)、シリーズとして最も大きな転換点となっている。
よって、第1作から第5作までを「鷲尾プリキュア」「第一期」、第6作目から第9作目までを「梅澤プリキュア」「第二期」と呼ぶことも多い。(第10作目からはプロデューサーも現場スタッフ同様に頻繁に交代するようになっていくので、プロデューサーによって○○期と分類するのはやりにくくなっている)
2012年、関氏は『スイートプリキュア♪』をもってテレビ企画部長から企画開発スーパーバイザーへと栄転したため、現場からは離れた。その翌年には梅澤氏も『スマイルプリキュア!』を最後に、後任である柴田宏明氏へとシリーズを引き継ぐ。
以上のことから、プリキュアシリーズの交代制度が定着するまでの流れは、鷲尾氏が基礎を作り、関氏や梅澤氏がその実績と(師匠である故・籏野氏の教えをベースとした)長年の経験とを踏まえて昇華させた結果とされる。
『ハピネスチャージ』における2度目の低迷期、そしてモチーフ重視の製作手法へ。
第11作『ハピネスチャージプリキュア!』が放映された2014年は、プリキュアシリーズにとって大きな試練を迎えることとなった。この頃には『プリティーシリーズ』(2010年展開開始)と『アイカツシリーズ』(2012年から展開開始)、それに『アナと雪の女王』(2013年公開)といった、プリキュアシリーズにとって見れば強敵といえるコンテンツが台頭。さらに、本来は男児向けとされた『妖怪ウォッチ』が予想に反して大ヒットしたことにより、プリキュアシリーズは『Splash☆Star』以来の大きな冷え込みを経験する。これに関しては、バンダイがディズニーに関する版権を獲得していることと『妖怪ウォッチ』が好調であったことを指して、後に「自社製品がカニバリを起こした」と反省した程であった。
この時の反省を踏まえ、翌年の『Go!プリンセスプリキュア』からは、子供達が興味を引きそうなモチーフを作品ごとに設定し、それを全面に押し出すことが意識されるようになる。コスチュームデザインはもちろん、世界観やストーリー、美術設定まであらゆる要素がそのモチーフで統一されるようになった。
モチーフを表現するためにはシリーズの伝統を崩すことも辞さなくなっており、スイーツ(お菓子)というモチーフが選ばれたために従来のバトル演出ではそれができないとして「肉弾戦の封印」がなされた『キラキラ☆プリキュアアラモード』(2017年)や、『ヒーロー』というテーマが導入されたのを機に初めて男性のレギュラープリキュアを登場させた『ひろがるスカイ!プリキュア』(2023年)、動物をモチーフにしている故に怪物化した動物への攻撃を防ぐことを表現するため、その相手に対して捕獲を目的とするチェイスアクションを主体とした『わんだふるぷりきゅあ!』(2024年)はその典型でもある。
現在の状況
シリーズ自体の評価は現在も安定しており、特に映画の売り上げは近年のアニメ映画ブームの恩恵もあってか好調であるものの、マネタイズの主軸を「玩具の販促」とする方針から徐々に転換を模索している傾向が見られる。
玩具系グッズの売上高は『HUGっと!プリキュア』の101億円(上半期のみだと51億円)を計上したのを最後に売上高が低調続きの状態となっており、『ヒーリングっど♥プリキュア』以降は少子化やコロナ禍の影響もあり上半期売上げが40億円未満の状態が続いている。20周年を迎えた2023年頃には、かつて玩具売り場の棚の一等地にあったプリキュア玩具も『リカちゃん』や『すみっコぐらし』などに棚を明け渡すことも多くなっているという(参考)。
この商業的不振について、バンダイ代表取締役社長(当時)、川口勝氏は「TV放送だけをやればすべてうまくいくという時代はなくなってきており、色々と工夫をしないといけないでしょうし、これまでと同じことをやっていれば同じような売り上げがついてくるという状況ではないと思っています。」とコメントしている。
これはプリキュアシリーズだけの話ではなく、「女児向け玩具を販促するためのTVアニメ」というあり方自体に要素的限界が出ていることの指摘であり、他のTVアニメ連動型のコンテンツも女児向けの分野ではコロナ禍を境に軒並み成績を落としている。
女児向けおもちゃは大人向けの需要を獲得することが特段難しく、仮面ライダーシリーズのようにプレミアムバンダイでさらに収益を増やすことが難しいのが特に挙げられる。
こういう時勢もあってか、2019年にバンダイのトイ事業部は従来の「ボーイズトイ」「ガールズトイ」の男女分けを廃止して統括している。
このためか、現在ではYouTubeの動画およびテレビ番組内でのコラボや、キッズコスメ「Pretty Holic」を立ち上げるなど、小学生以上の視聴者を取り込むことを目指している。
Pretty Holicは2021年より立ち上げられたが、玩具とは逆に右肩上がりの成長が続けられており、その後のアニメ本編にもPretty Holicの要素が販促要素としてかなり前面に取り扱われている。プリキュアシリーズのマネタイズにおける転換点を象徴するブランドでもある。
玩具以外のシナジーとして近年力を入れつつあるものにショーイベントがある。
プリキュアシリーズのショーイベントの始まりは初代からあり、劇団飛行船によるマスクドミュージカル(着ぐるみ舞台劇)がそれである。これは現在でも『プリキュアアドリームステージ』の名前で途切れなく続いている。
その後、2010年代になると女児向けアイドルアニメ黄金期となり、他作品ではライブイベントとのシナジーでコンテンツを盛り上げるのが主流となったが、プリキュアシリーズでは長らくジャンル違いということもあってそのやり方に手を出していなかった。
しかし、2018年よりその年の放映作の曲を中心にした『プリキュアLIVE』が始まり、コロナ禍の2020年を除いて毎年続くようになる。2019年からは最終回放映後に後日談の舞台劇とライブと声優座談会をセットで行う『プリキュア感謝祭』も始まった。これらは現在では公演からしばらくの間は配信でも鑑賞できるようになっている。
2023年にはシリーズ20周年記念としてさらに数多くのイベントが企画され、どれも収益的には大成功している。ただこれはプリキュアのイベント成長期がコロナ明けとタイミングが重なったことが大きく、逆にコロナ前からグリーディングイベントとのシナジーで人気を博していた『ガールズ×戦士シリーズ』はコロナ禍でそれができなくなってシリーズ打ち切りの憂き目に遭っている。
20周年前後での時期は『プリティーシリーズ』、『アイカツシリーズ』も休止状態であり、この時期でのプリキュアシリーズのイベントでの成功は残存者利益の側面が極めて大きい。これからどのように成長させていくかは課題であるであろう。
ショーイベントの新しい試みとしては、2.5次元舞台劇『Dancing☆StarプリキュアThe_Stage』(2023年)もある。全メンバーを高校生男子という設定にすることでイケメンアイドル好きの女性層をファンに取り込むことを狙っている。これも一定の成功は収めており、2025年には続編の公演が決定している。
一方で、メインシリーズの内容面でも『ひろがるスカイ!プリキュア』を境に変化が見られている。春映画の枠が無くなったのを機に、初期メンバーを全員揃える期間を長めに設定したり、悪役会議を省略して日常エピソードを増やしたりするなどのテコ入れが行われている。
このように、シリーズ存続のための模索は現在も続けられている。
事件・災害などに伴う影響
長期シリーズの宿命なのか、本シリーズも様々な事件・災害の影響を受けることになった。
東日本大震災の影響
2011年放送の『スイートプリキュア♪』では、3月11日に発生した東日本大震災の影響で、3月13日にシリーズ初の報道特番による休止が発生した(2024年現在では唯一)。ただし、休止が放送序盤の1回のみであったことが幸いし、アニメ本編での放送を予定していた一部エピソードを秋公開の映画に流用することで、予定通り1月末に放送を終わらせることが出来た。また、同年5月20日には被災者向けの応援メッセージ動画が配信された他、次回作についても、震災の暗いムードから立ち直るために「スマイル」と「ハッピー」をテーマとした『スマイルプリキュア!』が制作・放送された。
この『スマイルプリキュア!』は当初の企画ではプリキュアシリーズに新しい風を吹かせるべく、『キューティーハニー』や『カードキャプターさくら』のような単独ヒロインものとして作成させる予定だったのだが、震災の影響で「今は一人で頑張る時代じゃない」として5人のプリキュアのチームが強い絆で戦うという方向性の作品に作り直された。これ以降、2024年現在に至るまでプリキュアが単独ヒロインものとして作られてはいない。
コロナ禍の影響
2020年放送の『ヒーリングっど♥プリキュア』は、コロナ禍の時代に放送開始したシリーズであったこともあり、感染拡大の影響で9週分の放送休止が発生してしまった。
この事態は販促にも影響している。本来は6月14日に登場予定だった追加戦士であるキュアアースが、放送休止期間の影響で8月9日の登場となってしまったのだが、玩具の発売スケジュールは当初の予定を遅らせることができず、キュアアースの玩具は7月に発売されてしまった。アニメに登場していないキャラのグッズがそうそう売れるわけないうえ、キュアアースがアニメに登場した頃はすでに値崩れしてしまっており、追加戦士の玩具展開の売り上げとしてはイマイチな状況になってしまった。
- さらにこの放送遅延の影響で予定通り1月末で終了させることは出来ず、話数短縮や次番組『トロピカル〜ジュ!プリキュア』の開始が例年と違い2月最終週にずれ込むなど、様々な面で影響を受けてしまった。
- 映画作品についても、『映画プリキュアミラクルリープ_みんなとの不思議な1日』が春映画から二度の延期を経て秋映画に変更となり、さらに映画恒例のミラクルライトも感染拡大防止の観点から劇場での使用が出来なくなってしまったため、作中描写の一部修正が施されることになった。
東映アニメーション内ネットワークの不正アクセス被害の影響
2022年放送の『デリシャスパーティ♡プリキュア』では、同年3月6日に東映アニメーションのネットワークが第三者による不正アクセスを受けた影響で、3月13日に放送予定だった第6話の放送が延期され、第4話の再放送に差し替えられた。さらに3月20日から4月3日まで「映画HUGっと!プリキュア_ふたりはプリキュア_オールスターズメモリーズ」を分割放送する措置が取られた他、4月10日も第5話の再放送に差し替えられたため、最終的に第6話以降の放送は本来より5週遅れの4月17日以降となった。
- この影響で、本来なら同年3月20日にデビュー予定であったキュアヤムヤムのデビューも5週遅れの4月24日に変更されることになった。また、玩具販売と本編展開に1か月以上ものズレが生じてしまったことから、『ヒーリングっど』の時と同様玩具展開の売り上げに少なからぬ影響を与えることが懸念されている(参考リンク)。
- さらに、この影響で話数の短縮も発生してしまった。これにより、次番組『ひろがるスカイ!プリキュア』は予定通り2月第1週開始となった。
その他
上記の他、突発的なニュースが入ると速報テロップが本編中に挿入されることがあったり、海外の火山噴火などにより津波注意報・津波警報の情報地図が挿入されていたりすることも稀にある。
記念回
通算話数
100話 | 『S☆S』第4話「うっそー!? 春の景色とセミの声」 | 2006年2月26日 | |
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200話 | 『5GoGo』第6話「ドーナツ国王目覚める!」 | 2008年3月9日 | |
300話 | 『ハートキャッチ』第8話「カリスマモデルのため息! って、なぜですか?」 | 2010年3月28日 | 朝日放送の公式携帯サイトではこれを記念した待受け画面が配布された。 |
400話 | 『スマイル』第11話「プリキュアがチイサクナ〜ル!?」 | 2012年4月15日 | |
500話 | 『ハピネス』第14話「ヒーロー登場!あいつはいかしたすごいやつ!!」 | 2014年5月4日 | 記念オープニングメッセージを放送、記念キャンペーンを実施 |
555話 | 『Go!プリンセス』第20話「カナタと再会!?いざ、ホープキングダムへ!」 | 2015年6月14日 | 記念回の語呂「Go!Go!Go!」に合わせたもの。記念オープニングメッセージを放送、記念プレゼントを実施 |
600話 | 『魔法つかい』第15話「ハチャメチャ大混乱!はーちゃん七変化!」 | 2016年5月15日 | エンドカードで回数到達を発表 |
700話 | 『HUGっと』第16話「みんなのカリスマ!?ほまれ師匠はつらいよ」 | 2018年5月20日 | |
800話 | 『ヒーリングっど』第18話「ハートにズッキュン!ニャトランの恩返し」 | 2020年8月2日 | |
900話 | 『デリシャスパーティ』第27話「コメコメ大変化!?らんのハッピー計画」 | 2022年9月11日 | |
1000話 | 『わんだふる』第32話「動物園の推しアニマル」 | 2024年9月8日 |
総放送回数
※おさらいセレクション、劇場版分割放送も含めた総放送回数。700回までは通算話数と同一。
800回 | 『ヒーリングっど』おさらいセレクション第6話「ママはどこラテ?おるすばん大脱走!」 | 2020年5月31日 | |
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900回 | 『デリシャスパーティ』第13話「うばわれた思い出を守れ!明かされる拓海のヒミツ」 | 2022年6月5日 | |
1000回 | 『わんだふる』第18話「まゆの気持ち、ユキの気持ち」 | 2024年6月2日 | 私立恵比寿中学、≠ME、BEYOOOOONDSとのスペシャルダンスコラボを配信。本編の冒頭とエンドカードにて特別映像を挿入。 |
総括
今となってはプリキュアが一年ごとにリセットを繰り返すことは当然のことと世間に受け入れられているのだが、鷲尾時代は世代交代に困惑する視聴者も多く、作品を惜しむという観点からも残念がる視聴者も多かった。梅澤時代もその傾向はあったが、2011年頃にはほぼ定着したと言える。実際、時代に合わせたスタイルへのシフトに対応しやすくなり、その後のブランドの確立も相まって「鷲尾Pは生みの親、梅澤Pと企画の関氏は育ての親」とする声も多い。
現在では女児向けアニメの中では最長シリーズとなっている(同一の世界観では、未だにアニメ版の『美少女戦士セーラームーン』シリーズが最長である。それを除外した場合で見ても、最長は『おジャ魔女どれみシリーズ』である)。
2010年代に入るとジュエルペット、アイカツ、プリティーシリーズ、ガールズ×戦士シリーズなどの登場によって、女児向けコンテンツでも「キャラクターと世界観の世代交代をしつつブランドは共通する」ことはごく当たり前になっているが、それまでは「男児向けとは違って、女児向けコンテンツは(もしキャラクターを変えるなら)イチからやり直さなければならない」という考え方が常識だったのである。
なお、各作品の関係者、特に担当声優に対しては「 人気次第ではシリーズが終わるかもしれないので頑張ってくださいね 」と発破をかけるという。ただし、これはどのシリーズ作品にもある当然の危機管理による忠告であり、同じニチアサである仮面ライダーシリーズや戦隊シリーズに出演する役者達に対しても同じことを言われるという。
スポンサーの影響力の強さも相まって、(見方を変えれば)子供向け番組というのは常に崖っぷちの中で作られているのだと言えるだろう。
「プリキュアオールスターズ」の沿革
シリーズ第5作『Yes!プリキュア5GOGO』(2008年)は、不完全燃焼感のあった『Splash☆Star』の救済、また『初代』などをまた思い出してもらいたいという目的で制作された。また『5周年』という節目のタイミングでプリキュアオールスターズというオールスター企画も始まった。ゲームにおける全プリキュアの登場や、『5GOGO』の映画で短編を制作するなどの展開を行った。この企画は想像以上に大きな反響を呼び、第6作『フレッシュプリキュア!』が始まった2009年からはプリキュアオールスターズ一本で映画を作るという方向性へと昇華された。これにより、鷲尾氏は中核としてオールスター映画に携わるようになる。
この映画が公開されるのは(一部を除き)毎年3月中旬であるが、(ご存知のように)プリキュアシリーズの各作品が始まるのは毎年2月の第1週である。このスケジュールから分かるように、この春映画は、初めてプリキュアを観た子供たちというよりは前年のプリキュア作品を最後まで見てくれた子供たちをメインターゲットにしている。つまり、前年のプリキュア作品を愛してくれた子供たちに「TVで始まったばかりのこの新しいプリキュアも、みんなが応援してくれたプリキュアの仲間なんだよ」と伝えるためのものなのである。同時に、前年の作品で知った子供たちにプリキュアの歴史は続いているとアピールするための場でもある。(これとは別に、秋には最新作の単独映画が作られていた。つまりプリキュアは2005年と2009年から2019年までと2021年は、一年に映画を2本上映していたことになる)
2016年まで歴代プリキュア戦士が何らかの形で全員登場していたので映画「プリキュアオールスターズ」と名付けられていた。その後は人数の関係で全員出すことは難しくなったため、子供たちにも馴染みやすい直近3世代のプリキュアのみの出演となった。
(2018年公開の秋映画で歴代プリキュア戦士が総出演しているが、これは「秋の単独映画に歴代プリキュアがゲスト出演している」という扱い。同年公開の春映画はあくまで3世代限定である)
また、このプリキュアオールスターズというブランドで過去作のプリキュアたちの玩具なども展開されている。
このように、現在のプリキュアシリーズは前年と繋がりを持たせないように「リセット」をする一方で、プリキュアオールスターズというブランディングで作品ごとの「緩やかなつながり」も視聴者に意識させる、二本柱とも言える展開が行われている。
プリキュアは「原作」を持たないオリジナル企画で、監督やシリーズ構成などの主要スタッフも毎年変わる。「生みの親」である鷲尾氏も『フレッシュ』からは直接関わっていない。
だからこそ、このプリキュアオールスターズのブランディングが、全く無関係な作品同士が「プリキュア」と同じ名前を名乗っていることに対する「正当性」を示すものとなっていた。
プリキュアは作品を超えても存在する「外見上の共通デザイン」が存在していない。(例えば、ガンダムシリーズは「ツインアイとアンテナ」があれば知らない作品のガンダムでもガンダムだとわかるようになっているが、プリキュアにそう言うものはない)
そのため、見た目だけではプリキュアの仲間だとは世間にアピールできない部分があり、このようなブランディングは特に重要視されていた。
この春映画(一部は秋映画)ではTV本編のストーリーとは直接関わりがない(一種のパラレルワールド)という扱いにすることが慣例化していた。
これは、プリキュアシリーズが過去作とは繋がりがないことを前提にした設定とストーリーで作られているため、「もし、この世界に別作品のプリキュアがいるなら」と考えると、TV本編の設定や物語に大きな矛盾が生まれかねないためである。
しかし、シリーズが進む中でこのTV本編への別作品のプリキュアの客演が意識されるようにもなっていった。きっかけとなったのは2016年の『魔法つかいプリキュア!』で、最終回の本編中に次回作の主役キュアがゲストとして登場しており、地続きのような感じで視聴者が次回作へとすんなりと移行できる演出となっている。以降、次回作の主人公の客演は『デリシャスパーティ♡プリキュア』まで慣例化する。
そして2018年の第15作『HUGっと!プリキュア』ではついにTV本編に過去作のプリキュアが登場。しかもストーリー中の重要な節目に度々登場し、(上述したような)設定に関するすり合わせの観点から難しいと思われていたTV版プリキュアオールスターズもついに実現させた。
だが、このまま順調に進むと思われていた矢先の2020年、前述の通りコロナ禍が発生。同年3月に公開予定だった『映画プリキュアミラクルリープ_みんなとの不思議な1日』は10月末に、単独映画(当時は『ヒーリングっど♥プリキュア』)も巻き添えを喰らう形で翌年3月に玉突き延期という被害に遭ってしまう。つまり、2021年春はクロスオーバー映画ではなく『ヒープリ』の単独映画が上映されたため、「春はクロスオーバー映画」という伝統が初めて崩れた。そして、翌年の2022年に春映画が事実上終了とされてしまう。
これには様々な事情があるのだが、その一番の要因は近年の東映アニメーションがより多様なコンテンツの作成を目指して、製作ジャンルを増やしていることが大きいと思われる。つまり、プリキュアが毎年2回も映画を作るというのは制作リソースの配分として贅沢すぎるのではという、以前からの懸念点があった(通常、テレビアニメシリーズの劇場版は多くても年1回の公開というのが常であり、年2回にわたって映画を公開するという、日本のアニメ界全体から見ればあまりに過剰であった)。これはコロナ禍の混乱でより可視化されただろうということだ。春映画が廃止された事によって、初期メンバーを全員出さなければならないという縛りが無くなったことから、初期メンバーの登場スパンを複数回にわたって確保したり、一部の初期メンバーを4月以降に登場させるなど、メンバーの登場パターンの多様化に繋げることが出来たという利点がある。(これは初期メンバーの関連玩具の販売開始時期を分散させることができるというメリットもある)
一方で、春映画が終了する数年前から秋の単独映画にも過去作に登場したキャラがゲスト出演する流れが2021年まで続いていた(最初は2017年の『プリアラ』映画での『まほプリ』メンバーとの共闘)、2022年以降はこういった流れは廃止されているものの(同年は同時上映の短編に共演機会が設けられた)、2023年には『ミラクルリープ』以来3年ぶりのクロスオーバー長編映画『プリキュアオールスターズF』が公開されており、「作品を超えたプリキュア同士の共演」というテーマは現在まで続けられている。
「ライバル」の存在
先述の『オシャレ魔女ラブandベリー』(ラブベリ)を筆頭に、プリキュアはライバルの存在に悩まされ続けてきた。
それと同時に、同ジャンルにおけるライバルの存在はプリキュアシリーズを進化・改革させるきっかけにもなっている。
鷲尾氏は、2006年度放送の『Splash☆Star』以降の作品が『ラブベリ』の人気によってプリキュアが押されていたことについて、「プリキュアをシリーズ化させるにあたって、自分が目指したチャレンジの多くは受け入れられずに失敗している」と語っている。
実際のところ、当時のラブベリファンやその母親たちからは「ラブベリはキレイでかわいくてオシャレだが、プリキュアは乱暴だ 」と言う意見もあった。
その事もあって『Splash☆Star』では上述のように代替わりを始めとする様々な転換・改革を行ったが、それらは尽く裏目に出てしまった。その上、ライバルメーカーから出された『きらりん☆レボリューション』の登場と、同じバンダイ(バンナム)グループのバースデイ(しかも監督はHALに移籍していた『おジャ魔女どれみ』の佐藤順一氏で、主要スタッフも東映動画系列の出身が多かった)によって『ふしぎ星の☆ふたご姫』から僅かながらとはいえ第2期すら許可できるほどのカニバリすら起こされてしまう。(バンナム側は『ふたご姫』に関してはアイテムを絞っているため影響は少ないと説明したが、その結果は如実のものであった)
さらに『Splash☆Star』の放送当時、完全に作品ジャンルが同じである『出ましたっ!パワパフガールズZ』(パワパフZ)まで出されていた。しかも、このパワパフZのプロデューサーこそ関弘美氏であった。彼女の手腕の元で、どれみシリーズに関与したスタッフが参加していた。それどころか、この『パワパフZ』は東映アニメーション設立50周年記念作品として全面的にプロモーションが成された作品(逆に『S☆S』は東映アニメーション設立50周年を全面には打ち出せなかった)である。つまり、当時の東映アニメーションの上層部ですら、『S☆S』は最初からメイン扱いではなかったのだ。ここまでくれば、もはやダメ押しも良い所である。(一方で、前述の「パワパフZ」のスタッフは、後にプリキュアシリーズを支えるスタッフにもなったので、判断が難しいところではある。)
こんな状況下では(特に女児向けに不慣れだった鷲尾氏では)対処は難しかった(『Splash☆Star』に限らず、何を作ってもこの期の落ち込みは必然だった)とも言える。当時のカートゥーンネットワーク側としても、1998年に始まって2005年に全話放映し、2009年に一話だけ追加されたパワーパフガールズの知名度を上げるためには時期的な問題もあった。日本ではパワーパフガールズ全話の和訳が終わったばかりの人気や制作陣のモチベーションがあるうちに「Z」の制作を依頼していた事もあって、プリキュアと被るかどうかの判断は不可能であった。その後、カートゥーンネットワークは2010年代後半から2020年代にかけてあらゆる面で衰退しているため、カートゥーンネットワークの支社も必死にアピールしたがっていたであろうことはうかがえる。
その後も、『プリティーシリーズ』『アイカツシリーズ』などの強豪コンテンツが台頭するなど、予断を許さない状況と続いていた。
とはいえ、(裏を返せば)そのライバル達との激しい競争の中でも決して諦めず、「現場側の忍耐強さをもって定着させたのがプリキュアシリーズ」ともいえる。
総じて言えるのは、シリーズを通して高い利益をあげているということである。
実際、『ラブベリ』騒動で最も落ち込んだといわれる『S☆S』の商業成績でさえ、当時の女児向け3番手となった『きらりん☆レボリューション』(小学館『ちゃお』・タカラトミー)から見れば雲泥の差である(『S☆S』は60億、『きら☆レボ』はピーク時で15億)。
シリーズ存続の検討は、その後のさらなる落ち込みなどを危惧した結果の産物であることが多い。
意外な話だが、2017年の『アイドル×戦士ミラクルちゅーんず!』から始まる女児向け特撮企画『ガールズ×戦士シリーズ』の登場まで、所謂バトルヒロイン物のライバル作は皆無に近かった。
- 『セーラームーンの全盛期に『ウェディングピーチ』への(セーラームーン参加スタッフの一部による、ある種、強制的に行われた)派生をキッカケとして、多くの類似作が作られて本シリーズへと繋がった事を考えると対照的ともいえないこともない(その原因等については「バトルヒロイン」を参照)。
シリーズの長期化とライバル不在に伴い「女児向けの小さなパイをプリキュアが独占してしまっている」として批判を受けつつあったプリキュアだが、ここにきてようやくライバルが登場。このシリーズ登場は「頭脳とダンスでアクションする戦う女の子」復権への道筋とも見られ、後に元号が令和に変わってもその存在感は増しており、『ガールズ×戦士シリーズ』が終了した2022年6月までは近似的ジャンルのライバル同士として互いに好影響を与え続けていた。
上述で述べたことから、プリキュアに対抗するための手段として「同一のバトルヒロインもの」、次いで「アイドルもの」を主体に生き残りを図るといった手段が採られる様になっていき、サンリオなどの「妖精・マスコットもの」も生き残るための努力を行っていた(『妖精・マスコットもの』については、かつて『プリキュアシリーズ』と同じバンダイアニメでも『たまごっち!』シリーズや、『ここたまシリーズ』もメディアミックス展開していた)。その反面、2000年代中頃まで比較的に盛んであった『少女漫画をアニメ化する』パターンや(こちらは上述のプリキュアへの対抗手段に該当しない作品が多いことや月刊がほとんどである故に原作ストック確保が困難という状況もあるため)純粋な女児向け魔法少女アニメ放送(その手のアニメは深夜向けに移動しているが、魔法少女同士の闘いとなると純粋なものは数える程しかない)は現在、余り見られなくなっている。
2022年までの女児向け作品は『プリキュアシリーズ』を筆頭に、『アイカツシリーズ』『プリティーシリーズ』、サンリオ系等の妖精・マスコットモノ(『すみっコぐらし』『ミュークルドリーミー』シリーズ他)などを加えて熾烈な人気争奪戦が繰り広げられることとなった。だが、翌2023年では『プリティーシリーズ』(商品展開は継続)と『ガールズ×戦士シリーズ』といったタカラトミー女児作品のTVシリーズが前年で休止、同じバンダイ『アイカツシリーズ』もアーケードゲーム終了、新作アニメ制作終了などライバル達が次々と脱落するという事態が起きている。そして、2023年3月には『リズスタ-TopofArtists!-』も終了に追込まれてしまい、リズスタの後番にアニアを題材としたストップモーションアニメや『トランスフォーマー』シリーズのセレクションを導入することになる。しかし、前作とはジャンルが異なり過ぎることもあり(特に後者は明らかに女児向けではない)、これがプリキュアのライバルとして通用するかは怪しいといえる。
『リズスタ』終了以降、まともなライバル作品は同時期に人気が急上昇した動物モチーフの『ちいかわ』や『すみっコぐらし』に事実上交代することになった。一方のプリキュアは『ちいかわ』の人気が急上昇している事を警戒してか、2023年度の20周年(厳密には20年目)の節目に合わせて、本編の内容及び関連商品も今までとは別の切り口での展開を行うなど、多様性を視野に入れたイベントや展開を行って行くことになり、どれも大成功を収めた。しかし、いずれも女児のファンを増やすという本来の目的は余り達成出来ておらず、男児や大人の視聴者層などのファンを増やしただけに過ぎなかった(男児のファン増加は初のレギュラー男性プリキュアのキュアウィングの存在も大きい)。
それでも、2023年4月から2024年3月までの約1年間は女児向けアニメ・特撮番組の暗黒期とも言え、プリキュアしかまともな女児向けアニメ・特撮が存在しない状態となった。番組やコンテンツの選択肢を大幅に減らされた女児の関心は、前述の『ちいかわ』や『すみっコぐらし』『サンリオ』などに加えて『リカちゃん』などメディアミックスの存在しない玩具シリーズや、『それいけ!アンパンマン』『ドラえもん』『ポケットモンスター』『名探偵コナン』『ちびまる子ちゃん』など、性別を問わない子供向けアニメや国民的アニメに振り向くことになった。一部では『推しの子』や『葬送のフリーレン』『SPY×FAMILY』など、スポンサーに左右されない深夜アニメにも向けられる異常事態も発生している(特に『SPY×FAMILY』はアーニャの玩具や学習帳など子供向けグッズも発売されたりしている)。
2024年度からは、プリティーシリーズ1年半ぶりの新作『ひみつのアイプリ』が開始し、ライバル不在の状態が遂に解消される・・・と思われていたが、こちらは衛星放送での放送が無いためカバーが出来ない(BSはおろかCSですら放送されていないが動画配信はされているため、見逃し視聴自体は可能)ため、ライバルとして通用できるかは微妙な状況である。とはいえ、『ちいかわ』などマスコット系ライバルコンテンツの大躍進が未だに続いている影響や、20周年の節目を終えた影響によってプリキュアシリーズを取り巻く環境は大きく変化しており(前述の20周年記念の施策の一定の成功は、結果的に残存者利益として「女児向けアニメ・特撮」というジャンルの需要がプリキュアに集中した側面も無視できない。)、今後どのような影響が出るかはまだ未知数である。
プリキュアシリーズの決まりごと
上述したように、『フレッシュプリキュア!』以降から「一年での完結」になってからは、前年とは全く異なるモチーフやテーマを盛り込むことで、過去作との差別化が意識されている。
なので、各作品が好き勝手に作る事が出来るように思えるが、実際はある種の「決まりごと」のようなものが存在することが知られている。
だがそれは、「プリキュアとは○○を描く作品である」という方向性ではなく「プリキュアでは○○を描いてはならない」という禁則事項という形で受け継がれている。
例えば「顔を攻撃される描写は描かない」「食べ物の好き嫌いは描かない」などがある。
詳細は「プリキュアタブー」の項目を参照。
元々は、初代からシリーズ第5作までプロデューサーを務めた鷲尾天氏が、「プリキュアシリーズではやってはいけないこと」に関しての制約を現場に通達していたことが始まりとされるが、鷲尾氏がプロデューサーを退任した後でも、いくつかが「お約束」として伝統化していったようだ。
鷲尾氏には、自分が作ると男が見たがるようなアニメになってしまうという自覚があった。そこで、少女向けとしては逆にふさわしくないであろう要素を明文化して、あとは好き勝手やらせてほしいという目的があったようだ。
そこに、上述した『ラブベリ』襲来とこれに伴う誤解や偏見の視覚化と顕在化が巻き起こった。その結果、「決まりごと」はより強く意識されていくようになっていったのである。
だが、こういう決まり事に強制力がある訳ではなく、時代の流れによって沿わないとされた部分は変化してきている。逆に、鷲尾時代にはなかった新しい決まり事も生まれている。20年を超えて続いているシリーズなので、「プリキュアとはどういうものなのか?」という点についても少しずつ変化している。
鷲尾氏自身、2009年にプリキュア関連現場から離れた後は、シリーズに関する見解を一切述べないことを貫いており、後発作品が自分が作ったルールを継承していることについても述べることは1度もなかった。
だが、2015年に鷲尾氏が企画部長に就任したことで、プリキュアというIP運用に関して責任を持つ立場となったため、「『プリキュアってこうだよ』っていうスタンスはクリエイティブとならない。作品ごとに重要視したいことは変わって当然」として、かつて自分が担当した作品のルールに縛られ過ぎないように明言するようになった。
プリキュアシリーズ15周年におけるインタビューでは、その上で作品が変わっても受け継がれ続けているものがあるとすれば、それは「核は凛々しくあること。自分たちで問題を解決しようと立ち向かうこと。後は時代・環境によって変化して行く」としている。
制作体制
プリキュアシリーズはいわゆる玩具を売るためのアニメであり、特定の漫画や小説などの原作は持たない。この点は特に重要であり、売り上げの影響が他作品よりもかなり影響してしまうため、アニメでの展開は売り上げにあまり結びついていない傾向にある。
まず、玩具メーカーのバンダイのガールズトイ事業部がどのような玩具を売りたいかをデザインし、その玩具を活躍させるためのキャラやプロットを東映アニメーションが考える形で作品は企画されて行く。
そのため、玩具の売上成績がそのままシリーズの行く末を左右する事でも知られており、このことは視聴率よりも優先されている。上述したように2008年までの『オシャレ魔女ラブandベリー』のブーム、2014年辺りの『妖怪ウォッチ』『アイカツ!』『アナと雪の女王』のブーム、2020年におけるコロナ禍の影響で発生した本編と商品展開スケジュールのズレでそれぞれ売り上げ不振を起こしたことが、シリーズの存続および見直しに関しての議論に繋がっていることも示している。
作品企画に携わるのはプリキュアシリーズでは東映アニメーション(制作)、朝日放送テレビ(ABCテレビ)(放送局、2018年3月までは(旧)朝日放送)・ABCアニメーション(ABCグループのアニメ事業会社、2016年7月より)、ADKエモーションズ(広告代理店、2018年12月までは旧ADK(アサツーディ・ケイ))の3(4)社である。それぞれの会社から企画担当者・プロデューサーがそれぞれ1人ずつ選出される。企画会議時点での権限はプロデューサーより企画担当者の方が上であり、プロデューサーは企画担当者の要望を取りまとめて制作を指導するのが仕事となる。映画では企画担当者がプロデューサーを兼務する。
実際の制作スタッフの中ではSD(シリーズディレクター)・シリーズ構成・キャラデザ担当者がプリキュアシリーズでの主要三職とされ、インタビューなどでも(大体は)これらの人達とプロデューサーが受け答えをしている。
簡単にいうとSD(シリーズディレクター)は絵コンテ、演出陣の代表かつシリーズ全体の統括職。要するに「監督」であるが、東映アニメーションではテレビアニメにおいては監督に相当する職種を「SD」と呼んでいる。これは東映動画時代から実写映画を踏襲する形で劇場映画を「長編」、テレビシリーズを劇場作品の短編と位置づけて「短編」とし、短編においては各話の担当演出が事実上の監督であると考えており、その統括職としてSDを置いているためである。
シリーズ構成は脚本陣の代表。SDと共に世界観や全体のストーリーを組み立てる立場でもある。1話や最終話等の節目の回ではほぼ脚本を担当している。
キャラデザは作画陣代表。キャラクターの原案だけでなく、総作画監督として毎話の原画をチェックし、細かい手直しなどを入れるため1年を現場と付き合うことになる。また、重要な節目となる放映回では作画監督そのものを担当する。ただし、『魔法つかいプリキュア』以降は放送回によってはキャラクターデザインとは別に総作画監督を設けている。
この他としては、劇伴音楽の作曲担当もプリキュアシリーズでは重要な役所である。全体のBGMの作編曲だけでなく、各種挿入歌・キャラソングの作編曲、場合によっては主題歌の編曲も手がける。基本的に複数シリーズにまたがって起用されることが多いため、同じ作曲者であれば以前の作品で使われたBGMも流用されることがある。この作曲者が変わることで、音楽面での作品イメージも変わることになる。
他にも背景美術画の設定を取り纏める美術監督(設定・デザイン共に)やキャラ・背景などの着色設定を決定する色彩設計、そして制作現場を統括する制作担当などが主要なスタッフとなる。
一方で東映アニメーションでは基本的に各話担当演出がアフレコ時の演出指導も行っているため、音響監督は置かれていない。キャスティングに関しては系列東映アカデミー→東映東京撮影所マネージメント部、音響制作は子会社・タバックが担っている。
また、映画に関しては上述の制作中核3社(ABCグループについては2016年春までは旧ABC本体が、同年秋からはABCアニメーションが担当。ADKグループも2018年秋までは旧ADKが、2019年春からADKエモーションズが担当)に加え、東映(映画の配給元であり東映アニメーションの親会社、テレビでも協力としてクレジット)、バンダイ(上記の通り関連玩具等を発売している筆頭スポンサー)、マーベラス(テレビ映画を問わず音楽制作と各種音楽・映像ソフトの販売)、木下グループ(企業メセナの一環で映画制作に出資し映画制作子会社も持つ不動産デベロッパー、ASDX1から映画ヒープリまで参加)が参加する製作委員会によって製作されている。
初の大人向け作品となった『キボウノチカラ〜オトナプリキュア‘23〜』も、製作中核会社のうち朝日放送テレビが外れた代わりに、放送するNHKの関連企業NHKエンタープライズが加わり、さらにバンダイとマーベラスで構成される製作委員会の形態を取っている。
同じく大人向け作品『魔法つかいプリキュア!!~MIRAIDAYS~』も同様に製作委員会形式を取ることになっている。この2作品に関しては共同アニメーション制作としてスタジオディーンが参加しているのもメインシリーズとは異なる点となっている。
出資に関するリスクを減らすためにこの方式が取られているわけだが、その反面、著作権・版権管理(特定の1社に管理を委ねられていない場合、委員会参加各社の許諾を必要がある)の都合上、映画公開以後のグッズなどの商品展開がやり難いのもまた事実である(プリティストアなどでキュアエコーやキュアモフルンのグッズがなかなか出ないのがその代表例)。
プリキュア声優
プリキュアを演じたことがある声優は俗に「プリキュア声優」という枠組みで呼ばれる。
詳細は当該記事参照。
楽曲について
女児向けコンテンツにおいて、歌とダンスは定番の要素である。女児向けアニメにアイドル物が多いのは、歌とダンスと映像と物語を全てセットで提供できるからといっても差し支えない。
プリキュアとてそれは例外ではない。アイドルアニメのように歌を全面に押し出すことはもちろんやりにくいが、それでも「歌」は(プリキュアシリーズにとっては)大きな柱として意識され続けている。
特に『フレッシュ』以降のエンディングで描かれるCGダンスムービーはプリキュア名物となっている。
OP
- 物語進行に応じて映像の差異はあったりするものの、基本的には同じ曲を1年間にわたって使用(『フレッシュ』『スイート』『魔法つかい』は歌詞違いの別バージョンが存在、『Go!プリンセス』は後期では同曲の2番を使用)。
- 映画公開時期にはそのハイライトムービーが流される。
- 所要時間は以下の通り。
1:15 | 無印 |
---|---|
1:20 | 『MH』 |
1:25 | 『S☆S』『5』『5GoGo』『フレッシュ』『ハートキャッチ』『スイート』『スマイル』『ドキドキ』 |
1:30 | 『ハピネスチャージ』『魔法つかい』『アラモード』(第1話と第8話以降)『スター☆トゥインクル』『ヒーリングッど』『トロピカル~ジュ』『デリシャスパーティ』『ひろがるスカイ!』『わんだふる』 |
1:45 | 『Go!プリンセス』『アラモード』(第2話から第7話まで)『HUGっと』 |
1:45については、いずれも曲冒頭にアバンがあるため、その分長くなっている。
ED
- 『MaxHeart』以降は前後期に分かれており、『S☆S』以降は曲に合わせて踊る「プリキュアダンス」が特徴。
- 『フレッシュ』以降は3DCGアニメーションを使用。
- ダンスの振り付けは『フレッシュ』~『スマイル』は前田健、『ドキドキ』~『Go!プリンセス』はMIKIKO、『魔法つかい』は原ななえ、『アラモード』~『スター☆トゥインクル』は振付稼業Air:Man、『ヒーリングっど』~『ひろがるスカイ!』はCRE8BOY、『わんだふる』以降はYurinasiaがそれぞれ担当。
- 所要時間は以下の通り。
1:30 | 『ヒーリングッど』まで及び『わんだふる』以降 | |
---|---|---|
1:40 | 『トロピカル〜ジュ』から『ひろがるスカイ!』まで | 『トロピカル〜ジュ』と『デリシャスパーティ』はED冒頭に10秒程度のコーナーが設けられていたため、実質1:30であった。『ひろがるスカイ!』では(第1・22話を除き)ED冒頭に7秒程度のコーナーが挿入されているため、実質1:33であった。 |
担当歌手について
- シリーズ全作品において、本人名義での歌手活動を行っているプリキュア役声優が最低でも1人(中でも、『MaxHeart』チームは全員)出演している。彼女たちはキャラクターソングや挿入歌は普通に担当するが、OP・EDについては『Go!プリンセス』までは兼任例は無く(後述するように例外はある)完全に分業制となっていた。(ただしモブキュアについては例外であるようで、『ハピネスチャージ』では仲谷明香氏と吉田仁美氏の2人が28話でアロ~ハプリキュアのキュアウェーブとキュアサンセットを演じている)。
- 2016年以降は『魔法つかい』や『HUGっと』のようにプリキュア役の声優がEDを担当したり、『アラモード』や『スター☆トゥインクル』のように分業制を採用していたりする。
- とはいえ、この慣例は(映画版)では、映画3作目『ふたりはプリキュアSplash☆Star チクタク危機一髪』で早くも崩れている。同作においては、映画版シリーズで初めて当代のプリキュア(日向咲/キュアブルーム&キュアブライト<樹元オリエ>と美翔舞/キュアイーグレット&キュアウィンディ<榎本温子>withフラッピ<山口勝平>&チョッピ<松来未祐>)によって、エンディングである『ガンバランスdeダンス ~咲&舞version~』が歌われている。上述の通り、『S☆S』は商業的数値の観点(そして劇場版である事)からプリキュアファンからも見落とされがちなため、この部分は認識されづらいのだが、それまでの歌手分業制の枠を超えてプリキュア作品の主題歌を歌った、歴代初となる主題歌を担当したプリキュアチームは、他ならぬこの『S☆S』チームである。
- テレビシリーズにおいて、当代のプリキュアがエンディングコーラスに初めて参加したのが『Yes!プリキュア5』後期エンディング『ガンバランスdeダンス ~夢みる奇跡たち~』の「プリキュア5」チーム。(名義は「ぷりきゅあ5」とひらがな表記)ただし、主旋律を歌うのは宮本佳那子氏である。そのため本曲を分業制とするか兼務制とするかは意見が分かれる。しかし、ここでそれまでの分業制から歌手声優共同制を(一時的とはいえ)取入れていることは、この話題に着目する場合には注目に値する。
- テレビシリーズにおいて、分業制でも共同コーラス制でもなく、単独での主題歌兼務を果たしたのは『魔法つかいプリキュア!』チーム。EDテーマをプリキュア役の高橋李依氏と堀江由衣氏、後期では2人に加え早見沙織氏が歌うことになる(彼女達も前述の『MaxHeart』チーム同様、メンバー全員が歌手活動をしている)。ただし、主題歌担当のプリキュアとすると上述の通りのため、彼女達を「初の主題歌担当プリキュア」とする説には難があり、これを用いる場合には「テレビシリーズで」「主旋律を」という、少なくとも2つの前提条件が必須である。
- 後に放送された『HUGっと』でも、プリキュア役・引坂理絵氏・本泉莉奈氏・小倉唯氏、後期ではこの3人に加え田村奈央氏・ゆかり氏がEDを担当する。
- 『アラモード』では再度分業制に戻ったものの、宮本佳那子氏がEDを担当したことで「主題歌を担当した歌手が後にプリキュア役の声優となり、さらにその後の作品で再度主題歌を担当する」という初の事例となった。さらに宮本氏は、本編でもかなこという役で出演しており、(あくまで主題歌歌手という特例であるものの)「過去にプリキュア役をやった声優は後の作品に出演しない」という不文律を打ち破った(2023年時点では唯一のケース)。宮本氏は『HUGっと』でもOPを担当することになる。
- 歴代担当歌手がゲスト出演し、中には本人役として出ることもある(うちやえゆか:映画SS、工藤真由:『5』&『ハートキャッチ』、宮本佳那子:『5』&『アラモード』、池田彩:ハートキャッチ)。更に工藤氏は『スイート』でフェアリートーン役でレギュラー出演し、宮本氏は『ドキドキ』でキュアソード役に抜擢されている。レギュラーとして出演したプリキュアシンガーはこの2人のみ。
- 『GoGo!』後期EDの「キュア・カルテット」とは、五條真由美氏、うちやえ氏、工藤氏、宮本氏の4人によるユニットとしての名義。
- 歴代主題歌歌手のうち、OPとEDの両方で担当経験があるのは、五條氏・工藤氏・宮本氏・池田氏・北川理恵氏・Machico・石井あみ氏・吉武千颯氏の6人(キュア・カルテット参加分も加えるとうちやえ氏も該当)。このうち、宮本氏・北川氏・吉武氏は最多の通算5作品で主題歌に携わっている(キュアカルテット分も含むと宮本氏は6作品となる)。それに次ぐのが工藤氏(キュア・カルテット参加分も加えると五條氏が5作品で上回る)の通算4作品。また、五條氏・宮本氏・北川氏・Machico氏の4人はプリキュア楽曲のみのベストアルバムを後にリリースしている。
- 映画に関しては、作品によってアイドルや有名アーティストとのタイアップ楽曲を使うことがある。この場合、大半は作品の音楽制作を担当しているマーベラスとは別に、その歌手の所属レーベルがシングルを出す場合もある。
- プリキュアのOP・EDを担当する歌手は、放映される一年間は全国各地で(毎週のように)開かれる遊園地やショッピングモールでのキャラクターショー、各種ホールで開催されるミュージカルにゲスト出演するのが定番となっているほか、CD発売記念のミニライブもあったりする。放映中のシリーズ作品のプリキュア声優がOP・EDを兼任しにくい理由の一つとして、彼女たちは毎週必ず出番がある=毎週収録があるので、地方での公演も多いキャラクターショーとのスケジュールの調整が難しいという大人の事情があったりする。よって、売れっ子のアーティストの曲もOP・EDにはほぼ起用されない(上記のように、映画版のテーマソングとしてなら別ではあるが)。逆に言えば、仮に何年もプリキュア歌手として活躍しても、それ以外の様々な仕事が増えると必然的に卒業せざるを得なくなるということでもある。もちろん、スケジュールをやりくりした上で全国各地を回ることが基本となる(本職がミュージカル女優である北川氏や、声優アーティストとして様々な作品とその関連ライブに出演しているMachico氏がその最たる例)。また、スケジュールの都合でどちらか片方のみが出演する場合、その歌手が1人でOPもEDも歌うこともある。前述のように『魔法つかい』『HUGっと』ではプリキュア声優がEDを担当しているが、この場合はOP担当の北川氏や宮本氏が対応する。公式ライブにおいても、(スケジュールの都合上で)ブッキングができない場合は他の歌手がカバーするケースもある。
※ その他、こちらも参照→プリキュア関連曲一覧・歌キュア・プリキュア歌手
コミカライズ版
コミカライズ版は、『なかよし』で上北ふたご作で全てコミカライズ化されている。
連載の上、『GoGo!』以降のシリーズは1年毎に交代制のため、限られた尺で完結しなければいけないため、人数が多い作品では、漫画1話段階で主人公と友人関係であったり、プリキュアとなる初変身過程も大幅に省略される場合も多い。
連載の都合上、限られた尺でメインであるプリキュアキャラを掘り下げるため、サブキャラの同級生キャラなどは登場しない、またはゲストキャラ扱いのことが多い。特に悪役キャラ扱いは顕著で、人物像がほとんど掘り下げられない経過にあり、アニメではプリキュアと戦い消滅したり、最終的にプリキュアと和解したりしているのに対して、コミカライズ版では何事も触れずに途中から登場しなくなったり、ゲストキャラのような扱いになることも多い。
少女漫画誌で連載している為、アニメより恋愛要素が増している傾向にある。また、アニメにはない漫画オリジナルのエピソードが存在していたりする。
次第に日常生活やオリジナルストーリーが中心になってきた為か、デパプリからは「スピンオフ」と表記が変えられた。
受賞歴
『ふたりはプリキュア』や『ふたりはプリキュアMaxHeart』時代には、2005年の東京国際アニメフェア内の東京アニメアワードにて「テレビ部門優秀作品賞」を受賞した。
『映画HUGっと!プリキュア_ふたりはプリキュア_オールスターズメモリーズ』では、劇中に登場するプリキュアの人数が55人であることから公開日2018年10月27日付で本映画が「アニメ映画に登場する最も多いマジカル戦士数(Most magical warriors in an anime film*」でギネス世界記録に認定された。
このギネス認定における登場人数カウント基準が「ちゃんとしたセリフとバトルシーンが用意されている」ということであったため、認定証はプリキュア役を演じた55人の声優達に送られている。
また、前述の通りコロナ禍の困難の中制作された『ヒーリングっど♥プリキュア』は、『アニメージュ』第43回アニメグランプリで、グランプリ作品部門1位(得票数455ポイント)となった。シリーズ17作目にして初の快挙となる。(投票期間2021年4月9日 - 5月8日、アニメージュ2021年5月号の綴じ込みハガキ投票数を集計、アニメージュ2021年8月号で発表された)。
同グランプリキャラ人気投票部門でも、女性キャラクター部門では花寺のどか/キュアグレース(得票数405ポイント)が1位、男性キャラクター部門ではダルイゼンが7位(得票数62ポイント)にランクインしたのを筆頭に、『ヒーリングっど♥プリキュア』キャラが多数ランクインした(ちなみに、男性キャラ部門1位は『鬼滅の刃』炎柱・煉獄杏寿郎。得票数155ポイント)。
さらに、『ひろがるスカイ!プリキュア』では、2023年8月号で発表されたアニメージュ第45回アニメグランプリでグランプリ作品部門14位(得票数62ポイント)を獲得している。
ネット局
2024年現在、テレビ朝日系列以外のネット局では、山陰放送(TBS系列)が遅れネットで放送されているのみである。『アラモード』までは宮崎放送(TBS系列)でも放送されていた他、『ふたりはプリキュア』は福井テレビ(フジテレ系列)で一部のピソードのみが放送されていたことがある。このため、(前述を除く)テレ朝系列のフルネット局が所在しない山梨県、富山県、徳島県、高知県、佐賀県では、2024年現在、プリキュアシリーズのTVアニメ本編を一度も地上波で放送した実績がない(ただし、これらの地域でもCATVなどの区域外受信やネット配信などで視聴することは可能な他、徳島県・佐賀県以外ではオールスター作品などの映画の事前番組を放送していたことがある。また、番外作品『キボウノチカラ〜オトナプリキュア‘23〜』はNHKEテレで放送されるため、番外作品を含めると全国放送の実績は達成している)。なお、シリーズ初の深夜枠である『まほプリ2』に関しては、テレビ朝日系列フルネット24局のみの放送となる。
再放送について
TOKYO MX・千葉テレビ・キッズステーションでは再放送を実施している。過去にはTOKYO MX・チバテレ以外の関東地方の独立局やサンテレビに加え、BS11・アニマックス・テレ朝チャンネルでも再放送されていた。
問題行動
「大きいお友達」によるトラブルとその影響
放送開始から20年を超える人気作且つ女児向けである故に、大きいお友達を中心に様々なトラブル(ショー中に奇声や大声を上げる、プリキュアのコスプレで女児と接触するなど)が発生したケースが多くなっている。このため、『わんだふるぷりきゅあ! ドリームステージ♪』では、大きいお友達に向けた注意事項が初めて登場する事態となっている。その内容は、「コスプレをした状態の大人のお客様のご来館及びご観劇を禁止」「奇声や大声を上げたり他のお子様に話しかける行為の禁止」「ダンスレクチャータイム以外の撮影・録画・録音は一切禁止」「三脚類や自撮り棒などを使用しての撮影行為は禁止」というもので、いかに公式が警戒しているかが分かる。
リークについて
プリキュアシリーズは昔からリーク(情報漏洩)の激しいコンテンツであった。
放送前のアニメの脚本や作画が事前に漏れることはまずあり得ないが、玩具やグッズに関しては放送前からサンプル品が作られるため、そちらからキャラデザが判明するのはいつものことである。これは玩具の販促をメインとするコンテンツの宿命ともいえるが、特にプリキュアは完全なオリジナルアニメである故に、徹底的にプロットを書上げてから、通常よりも手を入れて制作する必要があるため、1回リークされるだけでもストーリー展開を修正するのが非常に大変であるということが挙げられる。
また、プリキュアシリーズは翌年作のタイトル発表は12月に行うのが通例であるが、『デリシャスパーティ♡プリキュア』まではタイトル発表1ヶ月以上前に公開されているのが常で、公式発表前にタイトルが流布されて、そこからデマが広まってしまうことが何度もあった。
2023年度『ひろがるスカイ!プリキュア』以降は、それに伴う商業的被害を防ぐため、商標登録公開自体を12月までずらし、商標の公開と同日にタイトルを発表するようになった。本来、商標登録は早めに公開する方がメリットとなるが、それを捨てざるを得ないほどまでに警戒しているということでもある(スーパー戦隊シリーズや仮面ライダーシリーズはやや従来通りに商標公開されている。この徹底ぶりは日本国内で放送される全アニメ・特撮シリーズと比べてもトップクラスであろう)。
追加戦士については、突然登場することによるサプライズを重視していたが、2020年度の『ヒーリングっど♥プリキュア』以降、劇中での登場より1ヶ月ほど前から公式サイトで告知するのが常となっている。一ヶ月くらい前になると玩具やグッズ周りで追加戦士デザインが出てくるタイミングであり、デマを流される前に先手を打っているともいえる。
これらの施策が奏功したのか、2020年代になってからはガセネタ流布はかなり減ってきてはいるが、YouTube内ではリークに基づいた適当な考察動画がアップされるという事態は未だに続いている。
これもSNSの普及ゆえに承認欲求や稼ぎ目的でのリークやそれに基づく新キャラの予想イラストや考察をアップする心無い人(=モラルの無い大人のプリキュアファン)が増加した故に発生した止むを得ない事情と言えよう。
余談
ちなみに海外展開も行われており、名称は若干異なる。
ドイツやイタリアでは名前の由来となった「Pretty」と「Cure」を合わせて「PrettyCure」(読みはプリティキュア)と呼ぶ。中華圏では「光之美少女」、韓国語では「프리큐어」(こちらの読みは日本と同じ)となっている。
1番イメージからかけ離れているのは米国であり、こちらは「Glitter Force」(読みはグリッターフォースで「キラキラ戦隊」といった意味合い)となっている(この名称はスマイルプリキュアのことを指す)。
関連タグ
全体 | プリキュア 東堂いづみ 東映アニメーション |
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シリーズ関連 | オトナプリキュアシリーズ 映画「プリキュアオールスターズ」 |
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外部サイト
プリキュアシリーズ公式ポータルサイト『Precure』(旧・『プリキュアガーデン』)
東映アニメーション公式YouTubeチャンネル - YouTube
TAMASHII NATIONSのプリキュアアイテム情報! プリキュアーツ! | 魂ウェブ
プリキュアシリーズ最新作URL
最新作のプリキュアの公式サイトは上記のURLとなり、シリーズ開始前またはシリーズ終了後に個別のURLに変更される。最新作のページから各作品へのリンクは張られている。
東映アニメーション側の過去作の公式サイトへのリンクについては、プリキュアシリーズ一覧の項目の基本データの欄に記載されているのでそちらを参照。