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墓場鬼太郎

はかばきたろう

『墓場鬼太郎』とは、1960年から1964年にかけて複数の貸本出版社(兎月書房、三洋社、佐藤プロ、東考社)をまたいで断続的に発表された水木しげるの貸本漫画、およびそれを原作とするアニメである。週刊少年マガジンでの連載開始時は『墓場の鬼太郎』とされ、やがて『ゲゲゲの鬼太郎』に改題された。本項では月刊漫画ガロ版『鬼太郎夜話』についても扱う。
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ゲゲゲの鬼太郎』の前史として位置づけられる作品。当初は貸本漫画としてスタートし、その後諸事情により、様々な紆余曲折経て、掲載紙を変えて描き続けられた。
シリーズが少年誌に連載を移し「ゲゲゲ」に改題された後も、基本的な設定や世界観の繋がりは示唆されている。アニメでも4期6期で、キャラクターのバックボーンについて原作との関わりが言及される場面がある。


概要

作品の歴史

1932年~1935年にかけ、伊藤正美が民話『子育て幽霊』をモチーフとして発表した紙芝居で、死んだ母親から墓場で生まれた子供、奇太郎が活躍するという怪奇物語、『ハカバキタロー』がその原型。
第二次世界大戦後、そのキャリアを紙芝居作家としてスタートした水木しげるは、関西の紙芝居業界の元締め鈴木勝丸に勧められ、伊藤の了承を得て作品を引き継いだ。このとき、水木は主人公の名前を鬼太郎に変更、キャラクターデザインも大きく変え、隻眼にして怪奇性を強調している。こうして紙芝居墓場鬼太郎シリーズが開始された。

  • 紙芝居『墓場鬼太郎』は昭和29年(1954年)から4作が発表された。各タイトルは『蛇人』『空手鬼太郎』『ガロア』『幽霊の手』で、残念ながらいずれも現存しない。
その後、紙芝居の衰退により、水木は漫画家に転業。墓場鬼太郎も貸本漫画として生まれ変わる。
漫画作品として発表された当初は『妖奇伝』というタイトルだった。前期長編として三洋社版『鬼太郎夜話』がある。

漫画版『墓場鬼太郎』は数年間4社の貸本出版社から断続的に出版された後、1965年に『週刊少年マガジン』でメジャーデビュー、改めて『墓場の鬼太郎』のタイトルで連載開始。
その後アニメ化に伴い、1967年に『ゲゲゲの鬼太郎』に改題されて継続された。

ガロ版『鬼太郎夜話』

兎月書房から三洋社(現・青林堂)に移籍した水木は1960年~61年にかけて兎月書房版『墓場鬼太郎』の続編にあたる貸本漫画『鬼太郎夜話』を発表した。後に『夜話』は、三洋社の長井勝一社長が新たに興した青林堂が創刊した伝説の漫画雑誌『月刊漫画ガロ』で1967年~69年にかけてリメイクされた。

この『夜話』での鬼太郎は、煙草を吸い街をうろつき、やすやすと儲け話に釣られる放埓な俗物であり、『少年マガジン』版の”正義のヒーロー鬼太郎”とは対照的な存在である。

ちなみにガロ版『鬼太郎夜話』は『ゲゲゲの鬼太郎』のコミックスにも2~3冊に分けて収録されており(例えば講談社KCコミックス版では8・9巻、サンコミックス版では11・12巻、3期放送時の講談社KC新書版では15~17巻、中公文庫コミック版では8・9巻に収録)、当時『ゲゲゲ』を読んだことで期せずして『夜話』の異質な世界観にハマった読者も少なからず存在する。
つまりガロ版『鬼太郎夜話』は、単行本の扱いでは(収録は大半が最後だが、時系列的に鬼太郎誕生後の)『ゲゲゲの鬼太郎』の大長編シリーズとして位置づけられている。

「ゲゲゲの鬼太郎 VS 墓場鬼太郎」
墓場鬼太郎



ガロ掲載(リライト)版についての余談

  • 水木が『ゲゲゲの鬼太郎』をはじめ少年週刊誌連載で多忙な時期に、ろくに原稿料の出ない『ガロ』にあえて貸本版『鬼太郎』を並行して復活させたのは「水木の作家意識のあらわれだろう」との指摘がある。『ガロ』は既存の枠に収まりきらない作家を育て、世に送り出すことを目的として創刊された雑誌である。その性質上発行部数は乏しく、原稿料は大手の数分の1という激安であったが、それでも良いからと掲載を希望する漫画家が後を絶たない雑誌でもあった。詳細はリンク先を参照。
  • ただし、『ガロ』が赤字続きで原稿料を出せなくなったのは1970年代に入ってからである。当時の水木は、読者を選ぶ作風に加え、貸本漫画そのものの衰退により明日をも知れぬような経済状態にあった。長井からの『ガロ』への執筆依頼は、そこに差し伸べられた救いの手とも言えるものだった。兎月書房から移籍して『鬼太郎夜話』を出させてくれた過去の事も含めて、水木は長井に強い恩義を感じていた。



内容

昭和30年代の日本を舞台に、幽霊族の最後の生き残りとして墓場から生まれた鬼太郎や、多くの妖怪たちの放埓な物語。

本作に登場する鬼太郎は薄気味悪く生意気な、それでいて間の抜けたところのある悪ガキとして描かれ、金儲けに腐心したり、人間を騙したり、誰かが酷い目に遭っていてもほったらかしてどこかに行ってしまったりと好き放題の活躍を見せる。

基本的に妖怪人間の法や倫理観に囚われない自由な存在として描かれ、人間が何らかの理由で彼らと関わった場合、多くはろくな目に合うことがない。
「人間は人間、妖怪は妖怪」であり、着の身着のままで自由に生きる妖怪と、社会に縛られてなお欲望に溺れる人間との対比に、つい物思いへと誘われる作風となっている。

作品リスト

兎月書房版全作品リスト

発表誌サブタイトルアニメ
妖奇伝幽霊一家第1話「鬼太郎誕生」
妖奇伝幽霊一家・墓場鬼太郎同上
墓場鬼太郎地獄の片道切符同上
墓場鬼太郎2下宿屋第2話「夜叉対ドラキュラ四世」
墓場鬼太郎3あう時はいつも死人同上
墓場鬼太郎シリーズ1怪奇一番勝負第8話「怪奇一番勝負」
墓場鬼太郎シリーズ2霧の中のジョニー第9話「霧の中のジョニー」


三洋社~佐藤プロ※~東考社版全作品リスト

発表誌サブタイトル出版社アニメ
鬼太郎夜話1吸血鬼と猫娘三洋社第3話「吸血木」~第4話「寝子」
鬼太郎夜話2地獄の散歩道三洋社第5話「ニセ鬼太郎」
鬼太郎夜話3水神様が町へやってきた三洋社第6話「水神様」
鬼太郎夜話4顔の中の敵三洋社第7話「人狼と幽霊列車」
鬼太郎夜話5(未刊)亀男の巻(原稿散逸)
墓場鬼太郎シリーズおかしな奴佐藤プロアニメ版未制作
墓場鬼太郎シリーズボクは新入生佐藤プロ第10話「ブリガドーン」
墓場鬼太郎シリーズ怪奇オリンピック・アホな男佐藤プロ第11話「アホな男」
墓場鬼太郎長編読切ないしょの話東考社アニメ版未制作

※(劇画家・佐藤まさあきのプロダクション)


アニメ

「父さん、人間ってちょっと……、面白い生き物ですねぇ……イヒヒヒヒ……」

平成20年1月から3月まで、ノイタミナ枠にて全11話が放送された。
当時は5期放送の真っ最中であり、鬼太郎のアニメ作品が同時期に放送されるというのは前代未聞の事態であった。
アニメ鬼太郎シリーズの全ての始まりに位置づけられる作品にもなっていて、音楽はオリジナルだが担当は4期と同じ和田薫である。鬼太郎と目玉おやじは全話登場で、ねずみ男は第1期「ゲゲゲ」同様に2話以降の全エピソードに登場している。また内容・キャラクターデザイン共に当時の貸本版を踏襲した設定となっており、ブラックユーモア満載な痛烈に風刺のきいた怪奇漫画風エピソードも多数存在する。現代風にデザインや作風をアレンジした部分はあるものの、元の作画を調整して彩度を変更し、白黒アニメも思わせるくすんだ色合いになっていることが特徴。

  • ちなみに霊毛のちゃんちゃんこの黄色部分は、これに加えて更に調整が加えられている(作中登場する偽ちゃんちゃんこと比べると差は歴然)。
  • シリーズ構成の成田良美曰く、「放送コードと戦った作品」でもある。特に血液銀行の描写や吸血鬼の吸血シーンなども、散々抵抗したが結局自粛を求められたという(墓場鬼太郎第4巻:初回特典ブックレットより)。また鬼太郎の喫煙シーンなど、反社会的な行動や、公序良俗的にまずいと思われる場面は全カット・変更されている。

キャスト


特別出演

ドラキュラ四世(CV:大友龍三郎)

太郎・目玉おやじ・ねずみ男は「ゲゲゲの鬼太郎」第1期・2期と同じ声優陣のキャストが勢揃いした。
野沢雅子は、本作における鬼太郎のキャラクターを「頭からネジが何本か抜けている感じ」とし、デザインについては「可愛い」と語っている。

主題歌

※本作はタイトルに『ゲゲゲ』を冠しないため、アニメ『鬼太郎』シリーズ中唯一の例外で恒例の主題歌『ゲゲゲの鬼太郎』(作詞:水木しげる 作曲:いずみたく)は、作中のBGMも含めて全く使われていない。

オープニングテーマ

『モノノケダンス』
作詞:石野卓球ピエール瀧/作曲:石野卓球/編曲・歌:電気グルーヴ
ピエール瀧によれば楽曲はEDを想定して制作したものだったというが、OPに使われたことを後で知って驚いたと語っている。原作漫画の絵柄やコマを取り入れたOP映像はもちろん、ユニーク過ぎるPVも必見。

エンディングテーマ

『snow tears』
作詞:1pack market、中川翔子/作曲:鈴木大輔/編曲:nishi-ken/歌:中川翔子

挿入歌

『有楽町で溶けましょう』
作詞:ピエール瀧/作曲:石野卓球/編曲:中村慧/歌:トランプ重井(電気グルーヴ)
『君にメロロン』
作詞・作曲:meg rock/編曲:nishi-ken/歌:中川翔子

各話リスト

話数サブタイトル
第1話鬼太郎誕生
第2話夜叉対ドラキュラ四世
第3話吸血木
第4話寝子
第5話ニセ鬼太郎
第6話水神様
第7話人狼と幽霊列車
第8話怪奇一番勝負
第9話霧の中のジョニー
第10話ブリガドーン
第11話アホな男


墓場鬼太郎読本

2008年に角川書店より刊行されたアニメ版『墓場鬼太郎』を徹底解説したガイドブック。全話解説、設定資料、スタッフ・キャストおよび水木しげる京極夏彦佐野史郎へのインタビューなどを掲載した充実の内容に仕上がっている。ただし現在は絶版のため新刊での入手は不可能となっている。


余談

竹内寛行版『墓場鬼太郎』(1960年~1962年)

竹内寛行版『墓場鬼太郎』とは、マニアの間で「ニセ鬼太郎」として知られているもう一つの鬼太郎シリーズである(なお水木しげる作の『鬼太郎夜話』にも「ニセ鬼太郎」という、まるで竹内版に対する当てつけめいた皮肉なキャラクターがメインで登場する)。

当初水木しげるは兎月書房から『墓場鬼太郎』シリーズを発表していたが、兎月書房が水木に一銭の原稿料も払わなくなったため、水木は3巻目を最後に兎月書房と絶縁する。
しかし、兎月書房は4巻以降を水木の紙芝居仲間だった貸本漫画家の竹内寛行に描き継がせ、水木と無関係であることを強調するためか、紙芝居「墓場太郎」の作家で、原案者的な立場にあった伊藤正美を名目上の原作者として並記した。なお、作品そのものには伊藤はノータッチである。

一方の水木は、続編として三洋社(現在の青林堂『ガロ』の前身)から『鬼太郎夜話』シリーズを刊行(1960年~1961年)。
以上の経緯から兎月書房の貸本『妖奇伝』に端を発する『墓場鬼太郎』初期作品は、2つのパラレルワールドへと分岐することになった。
竹内版の内容やその他の評価、および絶版後の動向についてはリンク先を参照。

兎月書房倒産と以後のシリーズ展開

その後三洋社社長・長井勝一の急病で『鬼太郎夜話』シリーズは中断となり、水木は未払いの原稿料の清算と竹内版『墓場鬼太郎』の終了を条件に兎月書房と和解し、『鬼太郎夜話』を2年間描いた後の翌1962年に巻数をリセットして『怪奇一番勝負』『霧の中のジョニー』を描き下ろすが、貸本業界退潮の波には勝てず、同年晩夏に兎月書房は倒産する。

そして鬼太郎シリーズは1年開けて、1964年に佐藤プロで3巻、東考社で1巻描き続けられ、更に翌1965年に講談社の雑誌に移行し、大ヒットを成し遂げてアニメ化もされ、以後は現在までに至る『ゲゲゲの鬼太郎』として様々なメディア媒体にて大活躍を繰り広げる事となる。

ちなみに水木の回想によれば、兎月書房が倒産したと聞いて慌てて兎月にまで駆け付けると、債権者にボコボコにされてコブだらけの清水袈裟人社長が真っ赤な目をして現れ、「ない金はないんだ。気がすまん人には頭をなぐってもらっとるんだが、あんたも、二、三発なぐって行くかい?」と無責任なことを言ったという(のちに水木は「打ち出のコヅチじゃあるまいし、なぐって金がでてくるわけではない」と回想している)。
なお水木は兎月書房の原稿料を手形で受け取っていたため、兎月の倒産で手形は不渡り(無効)になり、ついに水木は原稿料を受け取ることができなかった(水木しげる『ゲゲゲ家族の肖像』より)。

伊藤正美・竹内寛行による兎月書房版全作品リスト

発表誌サブタイトル作者
墓場鬼太郎4鬼太郎と木猫娘原作・伊藤正美/画・竹内寛行
墓場鬼太郎5蜘蛛男と鬼太郎原作・伊藤正美/画・竹内寛行
墓場鬼太郎6地獄特急原作・伊藤正美/画・竹内寛行
墓場鬼太郎7東京旋風編原作・伊藤正美/画・竹内寛行
墓場鬼太郎8野獣咆哮編原作・伊藤正美/画・竹内寛行
墓場鬼太郎9妖狐の逆襲原作・伊藤正美/画・竹内寛行
墓場鬼太郎10地獄の古城作画・竹内寛行
墓場鬼太郎11戦慄の魔城作画・竹内寛行
墓場鬼太郎12凄惨 底なし沼作画・竹内寛行
墓場鬼太郎13(無題)作画・竹内寛行
墓場鬼太郎14畜生部落作画・竹内寛行
墓場鬼太郎15鬼群の乱舞作画・竹内寛行
墓場鬼太郎16氷結地獄作画・竹内寛行
墓場鬼太郎17首抜き魔人作画・竹内寛行
墓場鬼太郎18大東京の戦慄作画・竹内寛行
墓場鬼太郎19妖婆の逆襲作画・竹内寛行


現在入手可能な単行本

  • 貸本まんが復刻版『墓場鬼太郎』(角川文庫 全6巻)
  • ガロ版『鬼太郎夜話(全)』(ちくま文庫 全1巻)
  • 限定版BOX『貸本版 墓場鬼太郎』(小学館クリエイティブ 全2巻)
  • 完全復刻版BOX『貸本版 鬼太郎夜話』(小学館クリエイティブ 全1巻)
  • 水木しげる漫画大全集『貸本版墓場鬼太郎』(講談社 全5巻)



関連イラスト

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怪奇一番勝負
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鬼太郎の原点
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醜い奴ほど美を求めるものだよ
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ゲゲゲの鬼太郎(アニメ)
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