「扉の向こうで何かが起こる……」
概要
1985年10月12日から1988年2月6日にかけて全108話、その後完結編となる「地獄編」が1988年2月8日から同年3月21日まで全7回放送された。合計話数は115話。
2期終了後、13年を経てのリメイク作品。同作の再放送が好評だったのを受けて製作され、以降鬼太郎のアニメ作品をリメイクしていく慣習を東映アニメーション(当時は東映動画)に根付かせる。
妖怪たちは日常生活の陰に潜む人知を超えた存在から、現代社会に生きる異種族的な面が濃くなり、人間との対立と融和がテーマとなった。
また、鬼太郎と妖怪とのバトルをメインに据え、アクションアニメとしてのアレンジが施された。キャラクターデザインもスマートで可愛らしいものとなっている。こうした変更は原作からのファンや2期までの視聴者に衝撃を与えたが、頼もしくかっこいい「ヒーロー・鬼太郎」は、当時の子供たちに大人気を博した。
原作の設定をある程度守りながらも、時代に即したテーマやキャラクターを打ち出していくというスタイルは、現代社会への批判と風刺を強めた2期に始まってこの3期で確立され、その後のシリーズに受け継がれていくこととなる。
主題歌
ED:「おばけがイクゾー」吉幾三
OPテーマは引き継がれたものの、ポップス調のアレンジが施され、画面では妖怪仲間たちがバンドを組み、ねずみ男がリードボーカルを取る様子に前作のファンは面食らい、賛否両論を呼んだ。しかしダイナミックなカメラワークや、鬼太郎が凛々しい表情でリモコンゲタを放ち、ヒロインをかばうラストカットは、お茶の間の良い子達を興奮させた。印象的なイントロや、吉幾三のさすがの歌唱力と表情豊かな歌いぶりもあり、ユニークな新EDテーマ「おばけがイクゾー」と共に、放映から数十年たった2022年現在も高い人気を誇っている。
一方、寂しげなメロディが耳に残る「カランコロンの歌」はEDから外れ、作中でも一切使用されていない。
だが、3期鬼太郎のゲーム化である「復活!天魔大王」ではスタッフロールのBGMに使われ、第2期のエンディング映像を第3期キャラでアレンジした映像が作られている。
作風について
前作に比べ、全体にポップで明るい色調を特徴とし、キャラクターデザインも80年代当時の流行に合わせてリニューアルされている。
本作は「現代社会に生きる妖怪」「人と妖怪の共存共栄」をテーマとする融和路線となり、ただ人間を助けるだけでなく、妖怪にもそれなりの言い分があり、何らかのフォローがあるというエピソードが多く描かれた。
この融和路線を強く打ち出すためのヒロインとして、オリジナルキャラクターの天童ユメコが登場。第3期と言えば、このユメコの存在を真っ先にあげる人も多い。
- ある程度の役割が与えられたオリジナルキャラは他のシーズンにも存在するが、ここまでレギュラーとして食い込んだキャラクターは、6期の犬山まなの登場まで、約30年もの時を待つこととなる。
鬼太郎の性格も、前作までの「呑気だが誠実」「どこか浮世離れしている」といったものから、「正義感がとても強く、悪い奴へは容赦のない怒りを剥き出し」にするという、ヒーロー然としたものに変更された。アクションの演出も強化され、体格もがっしりとした歴代きっての武闘派となっている。さらに武器として原作にはないアイテム「妖怪オカリナ」が登場し、アクションシーンを盛り上げた。これに手応えを得たのか、後の4期でもこのアイテムは継続使用された。
3期は、初めて鬼太郎ファミリーという概念が明確化したシリーズでもあり、OPからメンバーが揃うようになったのは本作が初となる。これまでは回によって不安定だったキャラのデザインや性格(時に声優)も、本作ではしっかりと決められ、個性を印象づけるよう描かれている。なお、レギュラー化以降ファミリーの声優が全て異なるのは本作だけとなった。
また、原作では「本日の悪役」としての活躍に留まっていたぬらりひょんが「鬼太郎の宿敵」に昇格したのもこの時が初。
鬼太郎とねずみ男は全話登場で、目玉おやじは第1期同様に「幽霊電車」の回のみ例外的に未登場であった。総合的にねずみ男は目玉おやじより目立つような出番が多い。
歴代最高視聴率、最多放送話数
3期の人気は高く、歴代最高視聴率(29.6%)を叩き出し、後に制作された4期と1話差とはいえ、歴代最大話数の全115話を達成するに至った。
「鬼太郎と言えば3期」というイメージを持つ視聴者も多く、ファンの支持率と知名度は現在でも高い傾向にある。
- 6期の永富プロデューサーと小川監督も、子供時代にリアルタイムで視聴していたのは3期であり、印象に残っていると語っている。このためか6期鬼太郎には、第1話で3期OPを思わせる場面がある、3クール目のEDでは「おばけがイクゾー」よろしく鬼太郎とねこ娘が可愛らしいダンスを披露するなど、随所に3期へのリスペクトが見られる。
子供たちからの熱狂的な支持を得た3期は、過去の作品となっていた「鬼太郎」を復権させた。おかげで、70年代怪奇ブーム終焉の影響で仕事が激減し「妖怪なんてこの世に居ないんだ!」とまで嘆いて落ち込んでいた原作者水木しげるの生活も再び安定するようになる。「ピンチになると、いつも鬼太郎が現れて助けてくれた」と生みの親自らが語ったように、水木の食い扶持を再度大幅に上げたアニメとしても有名である。
ただし水木は、3期に対して雑誌インタビューを受けた時、「今回は4本に1本は私でさえビックリするほど面白く原作をアレンジされてますが、2本は少し首をかしげる部分があり、1本ははっきり言って改悪です」と、厳しめの意見を述べている。
- 第8話「だるま妖怪相談所」がお気に入りのエピソードと語っている他、沖縄由来のシーサーはこのシーズンのために水木が描き下ろしたものである。
- 水木からのアドバイスは、「色はカラフル過ぎてキツめにならないよう自然な色調にして」、各話について「テーマは二の次で、とにかくおもしろくするよう考えてください」との事だった。「子供相手だからと安易に惰性的に作ればすぐに堕ちます。この世界は甘くありません。」と、自身の貸本時代から週刊誌時代までの経験及び、その近年の体験を踏まえて「油断は禁物です」とスタッフを戒めていた。
ちなみにアニメオリジナルキャラクターであるユメコのことは、「他がむさくるしいやつばっかりですから、あれでいいでしょう」とのことで、原作者によっても好印象なキャラとなっていたようである。
レギュラーキャスト
- 鬼太郎(CV:戸田恵子)
- 目玉おやじ(CV:田の中勇)※クレジットでは目玉
- ねずみ男(CV:富山敬)
- 天童ユメコ(CV:色川京子)
- ネコ娘(CV:三田ゆう子)
- 子泣き爺(CV:永井一郎)※クレジットでは児泣き爺
- 砂かけ婆(CV:江森浩子)
- 一反木綿(CV:八奈見乗児)
- ぬりかべ(CV:屋良有作)
- シーサー(CV:山本圭子)
- ぬらりひょん(CV:青野武)※初登場の第4話のみ千葉耕市が担当
- 朱の盆(CV:小林通孝)
- 閻魔大王(CV:郷里大輔)
声優に関するエピソード
後継声優が見つからなかった目玉おやじ役の田の中勇を除き、全ての声優が一新された。子泣き爺役の永井一郎だけは過去のシリーズで同役の担当経験があったものの、過去シリーズでは配役がまるで固定されておらず、厳密に永井がレギュラー担当となった作品は本作からとなる。
鬼太郎役には、現在女優としての活動が中心となっている戸田恵子が選ばれた。当時の戸田は尊敬する先輩である野沢雅子の役を奪う形になったことを気に病んでおり、かなり悩みながら鬼太郎役を演じていたという。
変更について、先代となる鬼太郎役の野沢雅子とねずみ男役の大塚周夫はガッカリしていたが、野沢はこの人事がキッカケでドラゴンボールシリーズの孫悟空役を受けることが出来るようになった。
なお、戸田・野沢の両名は5期の映画作品『日本爆裂』で同時上映となった五大鬼太郎で共演。この頃既に女優業がメインになっていて、アンパンマン以外の声優業はほぼ行っていなかった戸田はオファーを断ろうとしていたが、「野沢雅子さんも来ます」と聞いて受けることを決意したという。
ねずみ男役の富山敬は当時、声優事務所の移籍問題で東映動画(現在の東映アニメーション)の作品に本来なら参加出来ない立場だったが、その実力を買われてこの役を得ている。また、富山が普段行わないアドリブも交えており、2期とは異なるベクトルでコミカルなキャラとなった。
ゲスト妖怪や人間の声優はほぼ同一だが、回によっては銀河万丈や飯塚昭三といった超大物がぶっ込まれたことも。
キャラクターとしての3期鬼太郎
子供らしい無邪気さと妖怪らしい不思議さが同居し、人間離れした雰囲気が魅力となっていた1~2期に対し、本作での鬼太郎は、熱血漢で可愛い女の子に弱いという、少年らしさを強調したキャラクターとなった。
正義感が強く、まっすぐでひたむきな性格。また、基本的には寛大で辛抱強く、人間側から理不尽な対応をされても黙って飲み込むことが多い。それだけに許せぬ悪に対する怒りはとてつもないものがあった。
ねずみ男への折檻にも、容赦なく鉄拳を奮っており、第1話では初っ端からねずみ男が半妖怪であることを詰っている。しかし「根はいい奴なんだ」とも評しており、良いことをした時は素直に受け入れるなど、友情が感じられる部分もある。
その激しい性格設定上、最も目付きが鋭いことでもお馴染み。pixivの投稿イラストでも目付きが鋭く、きりっとした表情で描かれることが多い。
ちゃんちゃんこの配色は上から黄→黒→黄という順なっている(原作も含めた他のシリーズは全てこの逆)。背は2期の鬼太郎よりも高めに描かれているが、公式身長サイズは原作と同じである(映画「妖怪大戦争」を境に鬼太郎、ねずみ男、猫娘、ユメコのデザインに改良がなされたが、猫娘やユメコのようにサイズ変更はされていない)。
戦闘では必殺技の名前を叫ばず、アクションはもっぱら力強い掛け声とともに繰り出される(例外は妖力メインの「体内電気」等)。
また、アグレッシブなだけではなく非常にアクティブでもあり、人間からの依頼がなくとも自分で事件を察知して駆けつける、といったこともしばしばであった。
妖怪と人間の狭間で
このように完成されたヒーローキャラであるというとそうではなく、自身が妖怪で有ることや、作品のテーマもあって、居場所を奪われ追い詰められたり、自然を敬うことを忘れた人間の振る舞いに憤激する妖怪と、守るべき人間との間に立って悩む姿が見られた。
更に物語の最終章である「地獄編」では、なんとねずみ男同様人間と妖怪のハーフであることが発覚。この設定は今のところ今期のみ。ただし第1話からその設定があったかは怪しく、先の通りねずみ男が半妖怪であることを指して罵っている。後々判明したという描写もこれといって存在しない。
余談
前作の再放送が生んだ3期鬼太郎
3期の制作が決定された裏には、好評を得ていた1期、2期の再放送という追い風があった。
2期の放送時は、それまでの妖怪・心霊ブームはやや下火になっていたが、70年代末期には、映画『未知との遭遇』がヒットし、「口裂け女」の噂が全国的な騒動となるなど、再びオカルトブームが盛り返してきた。この流れの中、「ゲゲゲの鬼太郎」は1期・2期共に、地方局での再放送に最適のアニメだった。
1980年代に入ってからは、特にカラー作品だった2期が夏・冬休みに再放映を繰り返す恒例番組となる。これが鬼太郎を知らない世代の子供たちにアピールし、オールド・ファンにはその魅力を再発見させる役目を果たしたのである。
この「前作の再放送という援護射撃」によるファンの循環は、その後も新たな「鬼太郎」が生み出され続ける重要なギミックとなっていった。
21世紀の3期鬼太郎
なんと放送終了から30年の時を経た2018年1月、ビンゴファイブのテレビCMに、まさかの3期鬼太郎ファミリーが登場。
鬼太郎役が戸田恵子、砂かけ婆役が江森浩子と当時のキャストが演じている。なお目玉おやじ役だった田の中勇は鬼籍に入っていたため、当時事実上の3代目となっていた島田敏が代役を務めた(島田は、直後に放送開始した6期で子泣き爺とぬりかべの二役にてレギュラー出演する)。
「目玉おやじ篇」と「砂かけ婆篇」があり、それぞれ鬼太郎と掛け合いをして、最後は鬼太郎ファミリーが並んでダンスをする内容となっている。なぜか敵方であるぬらりひょんと朱の盆も加わっているのはご愛敬。
当時そのままの絵柄や色合いを再現したアニメは必見である。
さらに2018年7月には「元気が、きたろう。」のフレーズで、明治の栄養サポートゼリー「即効元気」のCMキャラクターとして登場。
疲れきったスーツ姿のサラリーマン鬼太郎が、「即効元気」を飲んで力を取り戻すという内容で、アラフォーとなったかつての子供たちにアピールした。→公式tweet
かつてのメイン視聴者が社会の中心を担う世代となった時代にあって、3期鬼太郎はその存在感を存分に発揮することとなった。
「アニメ鬼太郎」の元祖
前作の1期・2期はほぼ原作を下敷きにしており互いの世界観は繋がっていたが、3期から世界観が毎回リセットされる事になり、作風も原作からかけ離れる事になり「アニメ鬼太郎」と言う一つのコンテンツとして確立する様になった。1期・2期が鬼太郎アニメの元祖なら3期はその2代目にして「アニメ鬼太郎」の元祖とも言える。更には3期には今でも受け継がれる幾つかの要素も作られた。
- 鬼太郎ファミリーのメンバー。
- 準レギュラー的な宿敵にぬらりひょんと朱の盆コンビを配置。
- ユメコを始めとする人間関係者が何らかの形で関わる。
- 2期と異なり猫娘が鬼太郎を呼び捨て及びタメ口。(これは原点回帰の4期でも同様)
- 原作には登場しなかったオリジナルの妖怪の登場やアニメオリジナルの創作。
- 映画やゲームによる展開。
- 3期以降は10年近くの周期を置いての再アニメ化
- その年代の後半の世相や空気を強く反映。
- 放送の終盤に歴史的な経済危機に巻き込まれ、翌年の3月に終了。
- 放送期間は約2年程度。
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