概要
「児泣き爺」「児啼爺」とも表記する。現在の表記は柳田國男によるもの。
その名の通り、本来の姿は老人だが、夜道で赤ん坊のような産声をあげる。見つけた人が捨て子でもいるのか、と憐れんで抱き上げようものなら体重が次第に重くなり、手放そうとしてもしがみついて離れず、遂には抱き上げた者の命までも奪ってしまう場合があると言われる。ゴギャー、ゴギャーと泣くことから「ごぎゃ泣き」という異名もある。
「ゲゲゲの鬼太郎」にて鬼太郎の仲間妖怪としての活躍が有名になり、メディアへの露出も割と多くなった。
山城・歩危の伝承が水木しげる御大が描く子なき爺の基本になったともされる。
近年の研究により、この妖怪にはモデルとなったような実在の人物も存在するらしき事が明らかにされた。赤子の泣き真似が得意な老人で、山中を意味もなく徘徊していた事から「悪い事をするとあの爺に攫われてしまうぞ」と脅しに使われたのが発展して妖怪の伝承になったとの事であるが、これも一説であり、それ以前から徳島では目撃伝承があったとも言われている。そのため、子泣き爺は実在した風習から派生したという説もある。
ゲゲゲの鬼太郎
鬼太郎のおじいさん代わりのような存在で、石化能力を駆使して鬼太郎を助ける。
同じ老人系の妖怪故か、よく砂かけ婆と行動を共にする(結婚していたり良い仲であるとされることもあるが、腐れ縁的な描かれ方の方が多い)。彼女の経営する妖怪アパート(5期では妖怪長屋)に住んでいるものの、家賃の滞納が目立つ。一説には砂かけと共同経営とも言われるが詳細は不明。籠で寝ている事がある。
長く生きてるだけあって、目玉おやじや砂かけ婆に次いで妖怪にも詳しい。年齢は約3100~3200歳(3期以降判明)。目玉おやじとは砂かけ婆同様に古い友人で、お互いの信頼も厚い。
重度の酒好きで、それがためにねずみ男に騙されることもしばしば。経験豊富な老人妖怪にしては物事に油断しやすい傾向もある。ねずみ男はしょっちゅう裏切るので、表面上良い印象は抱いていないが、それでも仲間だとは思っている。また、ねずみ男・一反木綿・鬼太郎ほどではないが、彼も比較的若い女には弱い方で、美女に変身した妖怪に騙される事も少なくない(それがため砂かけからビンタされる事も時折ある)。
身長は140cm で、体重は 25kg から千貫(約3750kg)にまで変容するが、ビルのフロアを突き破ったり潜水艦にしがみついて沈没させる(『鬼太郎のベトナム戦記』)など、明らかにそれ以上の体重になっていることもある。石になった時の硬さと耐久性はぬりかべと同等。ただし、火や熱には弱く、ぬりかべが溶岩でも短時間なら耐えれるのに対し、子泣きは火炎に触れると悲鳴をあげて人の姿に戻ってしまう事が多い。また、地獄の犬には一瞬でかみ砕かれるが、粉砕されても復活できる模様(参照)。
手には電電太鼓を持つが、おもちゃとしての機能以外にも対電気妖怪(かみなりなど)用の武器にも使え、雷電エネルギーをコントロールすることもできる。
そのほかは、地震の誘発、自身ではなくて対象を石化させる能力、敵を潰すのと同時に地面に封印する、アニメ5期以降は石化範囲のコントロールや形状の形態変化、道具の石化(パチンコ『地獄からの使者』版では、子泣きの石化に砂かけの砂を纏わせて巨大なドリルを形成している)・変身などの能力も持っている。
また、自身のしゃっくりする波動で遠く離れた相手を足止めする事もでき、相手はしゃっくりをして動きがしばらく止まってしまう。悪魔ベリアルとの戦いで披露した。
妖怪らしく再生能力を持つため、空腹のねずみ男に自分の腕を食わせたことがある(しかし、貪欲なねずみ男ですら食べたがらなかった)。
意外にも「金角」という人間の親戚がいて、しかも政界にて副総理になっている(「平成の妖怪」とも言われ最終的に闇献金事件により辞職した金丸信副総理のパロディ。たしかに本人の写真を見ると子泣き爺によく似た顔をしている)。だが、子泣き爺が人間の血縁なのか、同族の誰かが人間と結婚したことによる系譜上の縁戚関係だけなのか定かではない。少なくとも子泣き自身は伝承上にも記録がある純粋な妖怪で、原作・アニメ等共に共通して自称している。
妖怪アパートや妖怪長屋への家賃滞納の常習犯だが、原作ではかなりの金持ちだとされることもある。蓑に腹掛け姿が基本だが、4期では紋付き羽織り袴の立派な和服(礼服)も持っていた。
5期では度々ダダをこね、酒に溺れやすいなど、これまでにないほどのダメな部分が如実に見られたが、同時に「西洋妖怪キラー」として凄まじい活躍を見せている。
6期ではこの傾向に拍車がかかり、事あるごとに幼児のようなダダのこねっぷりを見せ、時には昼間っから鬼太郎も酒臭さに閉口するほど”酒に呑まれて”いる。おかげで引き受けたはずの子守もままならないなどの失態も見せたが、12話では持ち前の能力をフルに発揮して団三郎狸を足止めする活躍を見せた。
英語では「Old Man Crybaby」と訳されている。
実写版にも登場しており、「月曜ドラマランド」版では児泣き爺ネタを持っていた赤星昇一郎が、「妖怪奇伝ゲゲゲの鬼太郎 魔笛エロイムエッサイム」では不破万作が、「ゲゲゲの鬼太郎(実写映画)」「千年呪い歌」では間寛平が演じている。
映像化作品における子泣き爺
最も演じたことがある声優は永井一郎氏だが、メインという意味では実は鬼太郎ファミリーの中でもキャストが安定しないキャラクターの一人である。
アニメ第1作目
このシリーズから担当経験のある永井氏が、後に3作目で正式に子泣きを務めることになる。この時点で準レギュラーだが、この頃は出番がまだ非常に少なく、声優も比較的永井氏の担当回が多かったものの、あまり安定はしていなかった。11話のみ北川米彦氏(当時は北川国彦表記)が。29話のみ富田耕生(当時は富田耕吉表記)氏が担当している。一方で、デザインがよく変わっていた砂かけに比べると、デザイン面では比較的安定している。
アニメ第2作目
前シリーズより登場頻度が増えたものの、砂かけと比べて存在感は薄かった(それでも、ぬりかべや一反木綿よりはマシ)。公式での声優は矢田耕司氏とされているが、実際は複数担当しており、砂かけと違いまったく安定していない。ただし、矢田氏が演じる機会が多かったのは確かである(永井一郎氏は19話のみ担当、はせさん治は29話のみ担当。)。相変わらずデザイン面は安定している。
砂かけ婆としょうもない言い合いをするなど、頼りになる年長者というより小うるさい老人というキャラクター付けである。
また、本作では石化能力の他に大木にも変化して相手を押しつぶすという、従来のシリーズでは見せない変身能力も発揮した。
アニメ第3作目
声:永井一郎
以前の作品で一番担当経験の多い永井一郎氏が、ようやく正式レギュラーとして担当することになった。表記は「児泣きじじい」。
トボけた話し口調ではあるが、年長者らしくしっかりものというキャラ付けがなされている。さすがに目玉おやじには敵わないながら、砂かけ婆と共に妖怪界の知識が豊富な描写も増えた。
前作では喧嘩仲間だったが、本作では砂かけに告白をするなど気がある描写も見られた。
その一方で、移ろう時代に付いていけない描写も散見された。
アニメ第4作目
声:塩屋浩三
表情や仕草まで含めて、水木御大の妖怪画に一番近いデザインとなった。
性格は第2作目を程よくお茶目にしたようなキャラ付け。いざという時は頼りになる場面もあるが、基本的にはのんびりした部分が悪い意味で出やすい。
ピンチに出くわすと砂かけ婆と対応を譲り合う場面がお決まりのパターンとして描かれているのが本作における特徴。
石化していない通常でも頑強であることが従来より明確にされ、卑劣な人間たちに拳銃で撃たれても「刺激が心地よいわい」と、平気さを示して容赦なく恐怖心を実感させるなど、妖怪としての側面を見せつけることも少なくなかった。火や電気の耐久性も歴代一である。
滅多にやらないが、本作では触れた仲間と共に石化して身を守る能力を持っている。
パソコンを使いこなすなど、現代社会にも密かに上手く順応していた。
アニメ第5作目
声:龍田直樹
本作より担当声優がぬりかべと役を兼務する体制になる(龍田氏は前作でもぬりかべを担当し、更には一反木綿と二役だったため、連続二役にしてぬりかべ続投だった)。従来と異なり、普段は殆ど目を細めており、真剣になった時のみ目を見開く表情が多い。
「嫌じゃ嫌じゃ」が口癖で、少々駄々っ子な気質も強くなり、駄々をこねる時は地面に本当に寝転がってしまうなど、歴代で一番子供っぽい部分が強調されている。以前から家賃の滞納癖はほんのりと描かれてもいたが、本作では妖怪長屋の家賃を百年単位で滞納しているという、トップクラスにだらしない一面を見せている。
鬼髪の話では、黒くて長い髪を好むという髪フェチの設定が付き、自室には黒髪のカツラをコレクションしていた。同話で推しの黒髪アイドルが黒鬼髪によって髪を切られた事件が起こった時、妖怪長屋が壊れそうになるほど大暴れして嘆いた。
砂かけ婆とは家賃未払いでいつも怒られているが、皆殺しの矢の呪いで彼女が暴走した際は、両腕が灰化しても構わず砂かけ婆を必死に止めようとした。
一方で、西洋妖怪と相対する時などは真面目になり、強豪とも渡り合うなど、本気を出すと強いという武闘派なところを見せていた。体の硬度から来る攻撃力と防御力はぬりかべと互角である面も、本作が歴代で一番多く描写されている。また、本作から身体の一部分のみを石化させるという技術を見せるようになる。また、鬼界ヶ島で再び西洋妖怪と対決する際には酒断ちして修行し、石化して高速回転し、鋭利な岩の棘を生成して相手に体当たりするという新技を編み出した。元から石になれるので、ゴーゴンの石化の魔術を受ける前に自ら石化して回避した。
アニメ第6作目
声:島田敏
おべべの色が青色になっていることが特徴。本作でも極度の酒好きで、よく呑んだくれることから砂かけに叱られるのも相変わらず。しかも昼間から飲み続けて猫娘からも呆れられるなど、飲酒シーンは従来より増えている。
将棋好きで、雷にも強いなどの設定も従来通りである。
4期でパソコンを使いこなせた能力は、本作ではスマホを使用してSNSを利用するまでに昇華されている(ただし、妖怪仲間としかネット通信はしていない)。
高所恐怖症の気があるのか乗り物酔いか、一反木綿の背に乗って妖怪城へ乗り込んだときには吐き気を催し、「降りられるならなんでもするぞい!」と叫んでいた。
ゲームにおける子泣き爺
操作できるゲームのうちSFCの「復活!天魔大王」ではリーチの短さの代わりに攻撃力が高く頼りになる一方で、PS2の「異聞妖怪奇譚」では不遇要素が重なりすぎてお荷物扱いされるなど評価が二極化している。
その他の創作での扱い
一般的に広まっているのは水木しげる考案の姿なので、各デザイナーとも違った姿を模索している。
忍者戦隊カクレンジャー
妖怪軍団の一員「コナキジジイ」として登場。ピエロの様な姿で玩具を身に付けた赤ん坊妖怪。人間の魂を奪い人形に込めることで家族を作ろうとした。
侍戦隊シンケンジャー
伝承の元になったという設定の外道衆「ナキナキテ」という名で登場。自身の使役する白鬼子と子供を入れ替え、親に捨てられた子供の泣き声で三途の川の水を増やそうとする。
手裏剣戦隊ニンニンジャー
牙鬼軍団「上級妖怪コナキジジイ」として登場。鉄アレイを素体に生まれた上級妖怪で、近くにいた人間同士を強制的におんぶ状態にして恐れを集める。
地獄先生ぬ~べ~
まるで子供のような小さな身体をした妖怪だが、非常に欲求が強く、(敬虔な) 女性には災難を、世の数多の男性 (や男性読者等には)幸を届ける。
電気グルーヴ
「墓場鬼太郎」のOP曲「モノノケダンス」のPVにおける、天久聖一による紙人形劇ではピエール瀧の顔をした子泣き爺が登場している。
ラグナドール
CV花江夏樹
石人形(ゴーレム)を相棒にしているギャン泣きするイケメソ妖怪。
詳しくは→ラグナドールのキャラクター一覧へ。
余談
伝承となった徳島は、エンコ河童や一つ目入道、のびあがり、七人ミサキや山爺(や相手の「山ばあ」)、萌え系で乙姫にも化ける池の主であるメスの龍神、など多数の妖怪の伏魔殿や平家の落人伝説の地としても知られる地である。