概要
姿は女性で、血だらけの腰巻をつけ、小さな赤ん坊を抱いている。道端や川べりに現れ、通行人に「子供を抱いておくれ」と頼む。恐ろしい姿を見たものは大抵逃げ出してしまい、その後は悪寒と高熱にうなされて死んでいく。逆に勇気を奮って赤ん坊を抱くと、赤ん坊はどんどん重くなるが、産女が念仏を唱え終わるまで耐え抜くと産女と赤ん坊は成仏して消える。この試練に耐えたものは怪力を授かったという。
解説
産女の怪異は平安時代にはすでに語られていたが、江戸時代に至り、中国の妖怪である姑獲鳥と混同されるようになっていった。姑獲鳥は出産で死んだ妊婦が化けたものとされ、この混同には、それだけお産に関わることで命を落とす女性が多かったという、悲しい事実が窺える。
産女の伝承を作り上げたもう一つの要素に、「棺内分娩」がある。
これは妊娠中の女性が亡くなった後、遺体の腐敗が進んで体内にガスが溜まり、胎児の遺体を押し出すという現象で、近年にも例がある。
まるで死者が死産したように見えるため、昔の日本ではこれを恐れて、妊婦が死んだときには腹を割き、胎児を取り出してから埋葬するという風習もあった。
この棺内分娩の恐怖が中国伝来の物語と結びついて成立したものに、飴買い幽霊の怪談がある。