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概要編集

西日本を中心に、各地に似た内容の民話が伝えられている。それぞれで細かな部分に差異はあるが、大筋は同じものである。


昔、店じまい前の飴屋に夜な夜な現れては、一文銭で飴を買っていく女がいた。

女の顔は青白く、髪も乱れてただごとならぬ風情で、か細い声でやり取りしてはいずこへともなく去っていく。それがもう六晩も続いていた。


七夜目に訪れた女は、もう金はないがどうかお願いしますと、悲しげな様子で乞う。

女の姿に同情した飴屋は、事情のあることと察して飴を渡してやったが、その夜は思い切って、気取られぬよう跡をつけてみた。


すると、辺りの様子はどんどん寂しくなっていく。そしてある場所で不意に女の姿が消えてしまった。

気が付けばそこは墓場であり、目の前には新しい土饅頭があった。さては幽霊だったかと恐怖に震える飴屋だったが、その土饅頭の中から赤ん坊の声がしたため、勇気を奮って掘り起こす。すると、その中には哀れにも亡き母の体にすがり、飴をしゃぶっている赤ん坊の姿があった。


子を身ごもったまま亡くなり、死後に棺の中で出産した母親は、乳を与えることができないため、三途の川の渡し賃として棺に納められる六文銭で、毎夜飴を買いに来ていたのだ。

子を思う母の心根に感じ入った飴屋は、亡き母に代わり、自分がその子を育てると遺体に向かって誓い、赤ん坊を連れ帰った。それから女が飴屋を訪れることはなくなり、飴屋は赤ん坊を立派に育て上げたという。そしてその子供は後に高僧となったという。


バリエーション編集

長崎市では、「産女(うぐめ)の幽霊」として知られる。母親の幽霊は元々は京都の女性で、宮大工との間にできた子を身ごもっており、宮大工を追って長崎に来たという。その後身ごもったまま息絶えてしまった。この物語の舞台は麹屋町にあった飴屋だとされる。母親の霊は、子を救ってもらった礼として後にもう一度飴屋を訪れ、水不足に悩む人々のために地下水流のある場所を教えた。そこを掘って作られた井戸は幽霊井戸と呼ばれ、旱魃の際にも決して枯れることがなかったという。


幽霊井戸は現在は埋め立てられ、僅かな痕跡が残るのみとなっているが、井戸近くの光源寺には飴買い幽霊の碑、赤子塚が建てられている。8月16日には光源寺が所有する母親の霊の木像と掛け軸が年に一回の御開帳として公開され、紙芝居で産女の幽霊の伝説が語られる。

なお、産女の幽霊の木像と掛け軸の由来は不明であり、あるいはこの木像から民話が生まれたのではないか、との説がある。


石川県金沢市の西方寺には、母親の幽霊ではなく、母子を不憫に思った地蔵が飴を買いに行くという「飴買い地蔵」の伝承があり、子を思う親の信仰を集めている。飴作りで知られる金沢市には、このほかにも異なる物語が伝えられており、「あめや坂」の地名も現存する。


琉球にも似た話の逆立ち幽霊や七つ墓の幽霊が伝わっているが、別の有名な話としての逆立ち幽霊(夫に裏切られた妻の幽霊が、とある男の力を借りて夫に復讐する話)もある(参照)



解説編集

妊婦が死後、棺の中で子供を産むという恐怖譚は、「棺内分娩」と呼ばれる実際の現象に関連があるという。これは妊婦の死後、遺体の腐敗が進むことで体内に発生したガスが、胎児を押し出すというもの。


物語としての原型は、12世紀末に洪邁により編纂された中国南宋の怪異小説集『夷堅志』に見られ、こちらでは母親が買いに来るのは餅で、赤ん坊は素性が知れたため無事遺族の元に引き取られている。


こうした異常出生譚(異常誕生譚)は、洋の東西を問わず、、またはが常人にはない力を持つことの理由付けとして、しばしば語られるものである(異類婚姻譚も参照)。


『夷堅志』の餅を買いに来る幽霊も、元をたどれば釈迦を右脇から産んだ※後、七日で世を去ったというマーヤ夫人に行き着くという説もある。日本では、保護された赤ん坊が寺に引き取られ、後に高徳の僧となったと語られることが多い。


※クシャトリア(王族・戦士)階級の出産は慣用的表現として脇から生まれるとされる。



ゲゲゲの鬼太郎との関り編集

水木しげるの有名な怪奇漫画『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズのルーツは、”死んだ母親から墓場で生まれた奇怪な子供が活躍する”という伊藤正美の紙芝居『ハカバキタロー』にある。


そして『ハカバキタロー』の製作にあたり、伊藤が参考にしたのが関西地方に伝わる「子育て幽霊」系列の民話だった。

それは、意地の悪い姑にいじめ殺された嫁が、その死後、土中で赤子を出産。赤子は母の死体を食べて成長し、姑(赤子にとっての祖母)に復讐を遂げる、という陰惨な内容のものだったという。

伊藤は「この民話にさらにショッキングな場面を挿入し、不気味な演出を加えるなどの脚色を施して仕上げたものが、後に紙芝居の『ハカバキタロー』、『墓場奇太郎』となった」旨を語っている。


その後、伊藤から作品を譲り受けた水木が紙芝居『墓場鬼太郎』を製作。墓場鬼太郎は水木の漫画家転業に伴い、後に貸本漫画として発表、週刊誌デビュー後にゲゲゲの鬼太郎と改題され、メディアミックス作品として水木の代表作となった。

鬼太郎も母が亡くなった後、墓の中で産み落とされる。土饅頭の中から自力で這い出してくるあたりはさすが妖怪であるが、『地獄編』では母に会うため冒険行に出るなど、人と変わらない母子の絆が描かれている。



地獄先生ぬ〜べ〜での『子育て幽霊』編集

「#53子育て幽霊の巻」に登場。ただしこちらは子に対する妄執のあまり悪霊と化し、子供を産んですぐに事故で死亡し、夫も既に亡くなっていた為子供は施設に預けられることになったのだが、施設の子供をわざわざ誘拐して子育てをしていた。その性質は子育て幽霊というより、むしろ「産女」と「姑獲鳥」を合わせたようなものとなっている。


夏でもボロボロの冬服を着て校門の前に現れ、生徒に飴やお菓子を恵んで貰っており、生徒達からは「あめおばさん」と呼ばれていた。


子供の将来を案じたぬ~べ~は病院に返そうとするが、子供を奪われると思った彼女はポルターガイストを起こして抵抗。怒りからお経も効かなかったが、子供が栄養不足で肺炎になりかかっていることが発覚。ぬ~べ~から「できるか!?お前にこの子を治すことが、病院へ連れて行ってやることが!この子を普通の子供として育てていくことができるか!?」と叱責され、苦悩の末に子供をぬ~べ~らに託し、鬼の手によって成仏した。


見た目が「頭部・四肢・乳房以外は白骨化」というゾンビに近いグロテスクな風貌であり、初登場時は衣服で隠していた。

前述の外見のせいなのか、アニメ版やドラマ版には未登場であった。


関連タグ編集

幽霊 妖怪 産女 姑獲鳥

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