河童とは
一般的には※1ざんばら髪の頭に丸い皿のようなものがあり、背中には甲羅、すべすべした緑色の肌と突き出たくちばしのような口、というイメージで知られる。
しかし、実は河童という名や、爬虫類めいた姿は関東独自のものである。※1
水に棲む小さな妖怪は日本全国に多数存在し、土地の伝承ごとに異なる名前や姿、特徴を持っている。
日本民俗学の祖、柳田國男の故郷である兵庫県では河太郎(ガタロ、ガータロ)※2と呼ばれ、広島県では猿猴(エンコウ)、島根県ではカワコ、四国では芝天(シバテン、芝=小さい、天=天狗)、青森県ではメドチ(メドツ)などの名前がある。
これらの水怪たちはすべて、猿かカワウソのような毛むくじゃらの姿をしている。中国由来の武神、兵主神をルーツに持つとされる佐賀県の「ひょうすべ」も、猿・カワウソ型である※3。
一方、関東の河童はカメやスッポンに似た姿を持っており、手足の指の間に水掻きがある。
今や全国的に有名となった「遠野の河童」は、顔が赤いという点は猿を思わせるが、腹に黒い斑があり、これはスッポン、特に子供のスッポンに見られる特徴である。
※1 昭和の児童向け番組のマスコットキャラクターに代表されるこうしたイメージは、そうした土地ごとのイメージを上書きしてしまう危険をもたらし、研究者から批判を受けている。
※2 柳田の生家と記念館が存在する、福崎町辻川山公園内の池では「河太郎(ガタロウ)」「河次郎(ガジロウ)」と命名された機械仕掛けの河童が、観光客を驚かせている。この河童兄弟は以前はベージュに塗られていたが、遠野市と福崎町が友好都市となったことがきっかけで、赤く塗り替えられている。
※3 宮崎県の飛行能力を持つヒョウズンボ、和歌山県のカシャボ(カシャンボ)もひょうすべの系統である。
辻川山公園の河童兄弟。手に持っているのは尻子玉。
著名な河童の仲間について
中国から渡来した水虎、ひょうすべは特に有名。ミンツチ(ミントゥチ)はアイヌの伝承に見られる、神(オキクルミ)が作った人形の末裔。利根川のねねこ河童も比較的よく名が知られている。意外に思う人もいるかもしれないが、一目入道も佐渡島に棲む河童の仲間である。
岸涯小僧(がんぎこぞう)は江戸時代の妖怪画家、鳥山石燕の創作妖怪。現代の妖怪画家水木しげるは、この岸涯小僧をベースにさら小僧を創作している。
由来・正体
由来や正体についても、伝説によるものから民俗学上の考察まで様々である。
姿かたちからは「猿・カワウソ」、「カメ・スッポン」がその正体とみなされている。
伝説では、役小角もしくは安倍晴明の護法童子や式神が川に放たれたというものや、江戸時代の名大工、左甚五郎が捨てた人形が化けたというものがある※4。
民俗学では河川の精/神「河伯」が零落したものという説、大陸から渡ってきた工人集団が元であるという説などがあり、さかのぼって中国大陸にその起源を求めるものが多い。また、遠野の河童の顔が赤いのは、間引きされた赤子がその正体だからだともされる。
九州には河童そのものが大陸から渡ってきた伝承もあり、鎌倉時代のはじめにシルクロードをわたってきたペルシャ河童が筑後川に侵入し土着の河童と抗争したが追い出され、有明海のイソギンチャクになったという伝説が久留米に残されている他、
その筑後川の九千坊もペルシャからヒマラヤを越え、蒙古から中国を通って日本へ来たと河童渡来の碑が八代に残されている。
また、『河童の正体は宇宙人で、いわゆるリトルグレイの仲間である』という珍説も存在し、それによると、
- 「河童のぬめぬめした体=宇宙服の一種」
- 「背負っている甲羅=呼吸するための大気タンク」
- 「頭に載せたお皿=発電機で、頭の毛=通信アンテナ」
- 「とがった口=酸素マスク」
- 「九州の河童は奇妙な鳴き声を出しながら空を飛ぶ=UFOとそのエンジン音」
- 生物から内臓(尻子玉含む)を抜く=捕食行為ではなく実はキャトルミューティレーションやアブダクション後の人体改造
などと考察されている。
※4 河童の片腕を引っ張ったら、もう片腕が引っ込んだという伝承があり、これは元が人形であるからだとする説明話になっている。アイヌに伝わるミンツチにも同様の特徴がある。
伝承に見られる特徴
いずれにせよ川や沼などの水辺に棲む妖怪であり、そのため生活圏が重なる人間とは、善きにつけ悪しきにつけ関わることが多く、それだけ豊富な伝承が語り継がれてきた。
それらの伝承によく見られる特徴として、以下のようなものがある。
- 馬や牛をいたずらで、あるいは肝を食うため水中に引きずり込み殺してしまう。
- 人間を溺死させて胆を食う、あるいは「しりこだま」を引き抜いて殺してしまう。
- 尻子玉は抜かれても死なないで、ただ「ふぬけ」になるともされるが、腑抜けになることで間接的に死ぬことはある。
- 尻子玉の代わりに雷様のように人間のおへそを取る。
- 「河童の死に針・生き針」という物をもち、人間の魂を手の平で操れるという話もある。
- 長(おさ)や頭(かしら)といった統率者がおり、一族を束ねている。
- 人間の子供と川辺で遊ぼうとしたり、魚を分け与えたりする温和な面を持つ。生魚を食べるとされるが、好物はキュウリ。
久留米の伝承では河童にとっては病を治し一粒の種を食えば一人力、十粒食えば十人力の神通力を発揮するという河童の霊食であるという。
- 河童がキュウリを好むのは零落する前の水神の供え物がキュウリだったからという説がある。キュウリは水分補給として昔から重宝されており、水分が切れると弱まってしまう河童が食すのは割と理にかなっている。
ただし、キュウリの栄養価は低い方なので、他に好物とされる果実や魚を食った方が充分なエネルギーを得られる。
- 長崎ではタケノコも好物とされているが、タケノコと偽って輪切りの竹を食わされたため、逆に青竹が嫌いという話が久留米の他島根に分布している。
- 頭に乗った皿が乾くと力が無くなり、弱々しく無害になる。
- 相撲や勝負事が好きで人間をゆうに上回る力で組み伏せる。ただ、頭は良くないようで
人間に騙されて皿の水を自らこぼし、神通力を失って負けることも珍しくない。そんなわけなので、河童に出会ったらお辞儀をすると良いとされる。
- 河童との勝負に勝つ、または親切にしてやると「河童の妙薬」をくれる。傷に非常によく効くという。また帯刀者に腕を斬られた際に切断された腕との交換条件として持ち出すこともある。
- 悪戯を咎められ囚われた際に、もう悪さはしないという改心の誓いとして証文代わりの岩や何かしらの道具、あるいは上記の薬を置いていく話もある。
- かっぱは河に住む童(わっぱ)だから河童と表記するのであって、レインコートの和名であるカッパとは関係ない。(アレはポルトガル語「capa」が語源なのであって、そもそも漢字表記は「合羽」である。)
河童の仲間とされる妖怪一覧
他にもいろいろ存在すると思われるが、河童は呼び方だけで300種類以上あるため、一般的な河童と比べてわかりやすい違いのあるものをここに示す。
pixivにおける主な河童
- 一般的な妖怪の河童
- 河童の擬人化
- 河童のコスプレをしたキャラクター
- 東方projectのキャラクター。⇒河城にとり
- ぬらりひょんの孫のキャラクター。⇒河童(ぬら孫)
- ソーシャルゲーム『陰陽師』の登場キャラ。⇒河童(阴阳师)
他。
関連タグ
主な河童作品・キャラクター
※作品名五十音順。太字は河童が題材となっている作品。