概要
南九州、特に鹿児島県に伝承の多い河童の一種。単に「カッパ」の訛り言葉であるともいわれる。
すらりと長い手足が特徴で、他の河童よりも強い力を持つとされる。
外見
他の河童と同じように、水かき・おかっぱ頭・頭部の皿・甲羅などを備えた姿をしている。他の河童と比べて、腰蓑や褌をつけて描かれることが多い。常によだれを垂れ流し、非常に生臭いという証言が残っている。
最大の特徴はその四肢の長さ。体育座りをすると膝が頭より高い位置に来るというのだから驚きである。通常、人間が試しても精々胸か喉までしかないことを考えると、その異常さがよくわかることだろう。
上記のような特徴から、「足長河童」という別名を持つ。
分布
南九州に広く伝わっており、特に鹿児島県は伝承が多い。薩摩川内市の伝承は有名であり、伊佐市はガラッパ由来のスポットも多数存在する。
一方で奄美大島やトカラ列島など離島の話も非常に多いため、他と比べて「南国のカッパ」という印象が強い。
伝承
相撲・キュウリ・いたずらを好み、時に凶暴な一面を見せるのは他の河童と共通。体調を崩したり命を落としてしまう例もある。
他種に比べて女好きであるともされ、女を襲ったり、女に見惚れて川に流されたという話もある。
春は川辺に、秋は山に住むといわれ、山では人間に憑りついたりする。鳴き声が少々変わっており、「ヒョーヒョー」または「フンフンフン」と鳴いたという。大正時代の鹿児島県では、大木の倒れる音や鉄砲の音を出したとされる。
河童には珍しく山の現象に深く関わっており、枝に頭をぶつける・道に迷う・変な音が聞こえるといった奇妙な出来事は、すべてガラッパが関係しているという。
人間からの理不尽な攻撃には必ず仕返しを行い、山中にてガラッパの悪口を言えばたちどころに報復を受ける。相手が裸足であれば数km先の悪口も聞こえるのだとか。
また、人間に懲らしめられて償いをする話もやはり存在するが、彼らの場合は「友好関係による恩恵」の伝承が比較的多い。
膏薬を伝授する・魚がよく釣れる・田植えを手伝う・果ては水難防止に至るまで、その加護は多岐にわたる。伝承では全体的に、恩義を忘れぬ義理堅さが感じられる。
苦手なものとされているのが、仏飯(仏壇に供える米)・光沢のある金属・人間の歯・網など。これらを身に着けているとガラッパの難を逃れられるという。
特に仏飯を摂取していれば、人間以外に動物にも効果が現れる。仏飯を食べたガラッパが力を失ったという話があるあたり、相当に苦手なのだろう。
彼らには「ガランデンドン」というガラッパの神が存在し、その神はかつて鹿児島の神社にガラッパたちを集め、悪事を働かぬよう説得した。そして戒めを文字にして石に刻み、その石がある限りガラッパは悪さができないのだという。
そのため、かつては悪戯好きであったガラッパたちは、現在では常に考え事をして静かに過ごしていると言われている(諸説あり)。
総じてガラッパは、他の河童よりも術や神通力の類に長け、力の強い種類であると考えられている。
メディア・作品にて
アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』第五期にて、19話に河童池の長老として登場。特に伝承が反映されている様子はなく、河童の一人として名前を拝借した模様(ほかにも数人、有名な河童の名を冠する者が登場している)。
河童池の埋め立てに対して派閥抗争が勃発したため鬼太郎に相談。移住派の代表代理組として、抵抗派代表との相撲対決をしてもらい、自身は行司を務めた。物忘れがひどく、都合が悪いと寝たふりをするスケベなジジイであった。CVは辻村真人氏。
他には鹿児島県のローカルヒーロー薩摩剣士隼人にて、ガラッパをモチーフとした「GA★ラッパー」というキャラクターが活躍している。
尚、とんがりボウシシリーズに同名のキャラクターが登場しているものの、全く関連性はない。
余談
- かの御大は山中に腰掛けるガラッパの絵を描いている。どことなく剽軽な顔つきなど、他の河童とは異なるユーモラスな雰囲気を纏っており、一見の価値あり。因みに鳥取県境港市の水木しげるロードにもブロンズ像が存在する。
- 鹿児島県伊佐市には、「民宿ガラッパ荘」や「湯之尾滝ガラッパ公園」なる場所があり、各所に河童の像が建てられている。
- 河童は川に流した藁人形の変化であるといわれるが、大島郡の瀬戸内町では、善行を行わなかった人間が海で死ぬと、その霊魂がガラッパになると伝えられている。
関連タグ
ケンムン:同じく鹿児島県奄美大島に伝承のある河童の仲間