浪小僧
なみこぞう
遠州七不思議の1つでもあり、一説では神に近い存在の河童の一種ともされている。
人の親指程の背丈をした子供の姿をしており、水と深く関係があり、雨を降らせる力を持ち、大雨が降る時は嬉しさの余り陸に上がって遊ぶ事もあるが、急に日照りになってしまうと海に帰れなくなってしまう。
もしもこのような浪小僧に出会い、海に帰してあげると大干ばつの時に雨を降らせて恩返しをしてくれるとされ、次のような伝承が伝えられている。
奈良時代。行基という名の僧が年老いた母の快癒を祈願して2体の藁人形を作り、それらに田植えをさせた。
田植え作業が終わった藁人形たちに行基は読経を聞かせた後、風雨の災害が起きる時は必ず人々へ知らせるように言い聞かせると久留女木川(現在の都田川)へと流した。
川へと流された藁人形の内の1つが海へと流れ着き、漁師が仕掛けていた網に引っ掛かったのだが、この人形こそが浪小僧で、海から引き揚げられた浪小僧は漁師に命乞いをして助けてくれれば波の音で天気を知らせると約束し、それを承諾した漁師は網から浪小僧を開放して海へと返してやった。
それ以来、この地方の漁師たちは波の音の響きによって天気を知ること遭出来る様になったという。
また、浜松市中区曳馬では上記の伝承とはまた違った話が伝えられており、ある日の事、ある少年が田植えをしていると、親指大位の浪小僧が顔を出してきた。
如何やら大雨が降った日に海から陸へと上がって遊んでいる内に日照りの為に海へと帰れなくなってしまったらしい。そんな彼を不憫に思った少年は波小僧を海に帰してやると浪小僧は何度もお礼を言いながら海の中へと去って行った。
浪小僧が海へと帰っていた後も日照りは続き、稲も全く育たず途方に暮れた少年が海辺で佇んでいるとあの時助けた浪小僧が現れ、あの時の恩返しに雨乞いの名人である父親に頼んで雨を降らせると約束し、波の響きが南東から聞こえれば雨が降る合図だと言い残して海へと姿を消した。
それから間もなく南東から波が響いてきて雨が降り田畑は潤い、窮地を脱する事が出来たのだった。
それ以来、農民たちは浪小僧の知らせで事前に天気を知る事ができるようになったという。