🍶概要
日本独自の製法で製造された醸造酒のこと。古事記にも酒の記述は出てくるが、古代酒は生米を口に入れて噛み、それを吐き出して溜めたもの(口噛み酒)などで、現在の日本酒とはかけ離れたものであった。
そこから徐々に日本の風土に合った酒造りの技法が進展していった。平安時代、朝廷の儀式をまとめた「延喜式(康保4年、西暦967年)」には、儀式に使う酒の仕組みが書き残されており、すでにこの時代の酒造りは、おおまかな製法は現代と同じであったことがわかる。また、当時の知識人が集まっていた寺院では、「諸白(もろはく)」と呼ばれる透明度の高い酒がすでに作られていた。これが清酒の先祖とされる。また、室町時代には「火入れ」と呼ばれる低温加熱殺菌の技法が確立した。この「火入れ」は、酒の味は変わらないが、菌は死ぬというギリギリの温度を見極めて酒を加熱する技法であり、温度計も「菌」という概念もない当時としては、非常に高度なものである。酒を加熱殺菌する技法としては、世界最古に近い(ヨーロッパでワインを低温加熱殺菌する技法が確立されたのは、これから300年たった1800年代である)
賞味期限が伸びた結果、各地の酒が全国に出回るようになり、今まで知ることのなかった遠くの味を知った各地の酒造職人たちは、それに触発されて、創意工夫を凝らした様々な酒を作るようになっていった。いわゆる「地酒」の文化の誕生である。
ただ、これらの酒は基本的に富裕層が飲んでおり、庶民はより単純で甘くアルコール度数の低い自家製のどぶろくが広く飲まれていた。
現在の日本酒の製法が庶民にまで行き渡ったのは、意外に新しく、明治時代のこと。明治以降も、日本酒の進化は続いており、現在の日本酒の華とされる吟醸酒は、大正時代に初めて作られ、一般化したのは1980年代である。蒸留酒は古い時代に外国から渡ってきたとされ、日本の伝統的な蒸留酒は焼酎(沖縄のものは泡盛)と呼ばれ、地域によっては日本酒より一般的に飲用される。
水・米・麹を主原料とした米酒(穀物酒)である。他の醸造酒と異なり、甘みを抑えアルコール度数を上げるために手間のかかった製法がとられる。純米酒や吟醸酒の製造には高度な技術が要求される。
酒税法での分類では清酒(せいしゅ)と呼ばれる。日本酒の品質は良質な材料はもとより杜氏の技量に左右される面が大きいが、最近は獺祭の蔵元旭酒造など気温・湿度などの一切をデータ化して自動化した製法を確立させた酒蔵もある。
製法
大まかな製法は以下の手順である。純米酒以外では多少異なる場合がある。
一 | 米を精米・洗米し、蒸し上げる |
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二 | 蒸した米と麹菌を混ぜて発酵させ、米麹を精製する |
三 | 水・蒸し米・米麹を混ぜ、酒母(もと)と呼ばれる高純度の酵母液を精製する |
四 | さらに、水・蒸し米・米麹・酒母を混ぜてもろみを精製し、これを発酵させる。 |
五 | 発酵したもろみを搾り、原酒にする |
六 | 原酒をさらに濾過し、生酒(なまざけ)にする |
七 | 生酒を低温殺菌し、炭酸を抜いて不純物を完全に濾過し、新酒を精製する |
八 | 新酒を醸造し、清酒となる |
上記の行程を踏み、初めて我々の知る日本酒となる。
なお、もろみの状態でアルコール成分を蒸留して醸造たものが、いわゆる米焼酎、生酒の状態で醸造したのものがいわゆるにごり酒、さらににごり酒より粗い状態のものがどぶろくである。
最近は日本酒を3年以上寝かせた「古酒」(長期熟成酒)を製造する酒蔵(詳細はこちら。)や普通はやらない製法(例:遠心分離機を使用してもろみを絞る、湖底や海底に沈めて熟成させる、雪室を利用して貯蔵・熟成するなど)に挑戦する酒蔵もある。
また、多くの酒蔵は蔵元からその年の酒造りを全責任をまかされて請け負う杜氏をはじめ蔵人と呼ばれる職人が製造を手掛けていたが「女人禁制」であった。
近年は、女性の杜氏・蔵人の登用や、上記の旭酒造など杜氏・蔵人に頼らず「徹底的にデータ化、社員が手掛ける」酒蔵も登場している。
分類
清酒にも、その原材料の比率や製法によっていくつかの分類があり、大まかには普通酒、純米酒、本醸造酒、吟醸酒(純米吟醸酒)、大吟醸酒(純米大吟醸酒)に分けられる。
特に大吟醸酒は、清酒の最高品質品とされる。
味
甘口と辛口に大別される。
甘口はその名の通り口当たりが甘く飲みやすい。
辛口はいわゆる「キレ」と呼ばれる独特の鋭い辛味を伴う。
甘口は飲みやすい分、糖度が高く悪酔いを起こしやすい。
辛口は酒を飲んでいるという感覚が強まるため、人によっては酔いが回るのが早い。
米麹独特の風味もあり、まずこの匂いで好き嫌いが分かれる場合が多い。もっとも「日本酒は臭い」というのは、下記の「三倍醸造酒」等の粗悪品や劣化品に見られる傾向で、品質が良く適切に管理された純米酒はそれほどの酒臭さはない。
吟醸酒は特に米の真芯の部分を使って丹念に醸造されるため、スッキリとしたフルーティーな香りが楽しめる酒も少なくない。
飲み方
一般的には冷やして飲む「冷酒」と、容器に移して温める熱燗で楽しまれる。
温度を変えず室温で楽しむ「冷や酒」もあり、味や品種によってそれぞれお勧めの飲み方が変わってくる。
氷を入れるいわゆる「ロック」は邪道と看做されがちだが、日本酒の中には敢えてロックで楽しむことができる種類も存在する。
また飲む際に「和らげ水」と呼ばれる飲み水を添える場合もある。
これは悪酔いを起こしやすい日本酒のアルコールを体内から早めに排出するための工夫で、日本酒を提供する店舗によっては徳利の数や瓶単位でサービスとして付いてくる。
あえて「火入れ」をせずに出荷される「生酒」を好む人もいる。
アルコール度数
アルコール度数は平均11~16%程度だが、高いものでも20%が限度とされる。しかしこれは低温殺菌で発酵を鈍くしていることからこの程度で止まっている話で、"氷らない日本酒"として知られる「越後武士(えちごさむらい)」は独自の雪室にて長期発酵期間を経るため、46%という蒸留酒並みのアルコール度数を叩き出す。これは酒税法上はリキュールでありパッケージにはそう表示されているが、酒税法の改正によって「46度」というアルコール度数が日本酒の規格外となってしまったためで、醸造方法自体は日本酒の製法で作られている。
(漫画『BARレモン・ハート』にも紹介された。詳細はこちら。)
また日本酒はかなり糖度も高く、悪酔いしやすいのはこの糖質のせいといわれている。
度数の高い酒に強い欧米人でも、糖度の高さから日本酒には悪酔いを起こすことがある。欧米で度数の高い酒類のほとんどは蒸留酒に属するため、糖度自体は低い。またスタウト(大麦を焙煎して作る黒ビールの一種)以外の淡色ビール、ワインなども日本酒より糖度は低めである。
海外での評価
日本文化が国外で紹介されていくにつれ、日本酒にも注目が集まる。
当初は「醸造アルコール」に甘味料等を添加して水で3倍に薄めた「三倍醸造酒」と呼ばれる粗悪品のイメージが抜けず、人気は低迷していたが、日本酒用の米の供給が充実した近年では、添加物を醸造アルコールのみに抑えることに成功し、品質が大きく向上したことで再評価されている。
一方で輸出については伸び悩んでいる。
これは日本酒と洋酒の保存感覚のズレからくるもので、洋酒が長期間の保存に対して品質が耐えうるのに対し、日本酒は開栓してからの劣化が早いことから早めに飲み切る必要がある。
このズレから、老舗レストランでもワイン感覚で保存されて劣化した日本酒が取り置かれてしまい、日本酒人気に対して海外での消費が伸び悩む理由となっている。
対策として、大手酒造メーカーの中には、輸出した日本酒の品質管理を知ってもらうために、取扱店に向けて講座を開いたり、日本酒の保存状態の視察を敢行するところもある。
日本酒以外の日本の醸造酒
本みりん
調味料や料理用酒のイメージが強い味醂も、広く飲まれている時代も有った。
有名な飲み方としては焼酎とのカクテルである「柳陰」などが有る。
灰持酒(あくもちざけ)
一般的な日本酒は冬に仕込む事が多い。逆に言えば気温が高い地域で日本酒を仕込む事は技術的に困難であった。
その為、気候条件などが一般的な日本酒を仕込むのに適さない地域では、木灰を加える事によって雑菌の繁殖を防ぐ方法が取られた。このような酒を「灰持酒」と呼ぶ。
これは古代日本で作られていた黒酒(くろき)の製法に似たものとされ、実際に「黒酒」の商品名で販売されている灰持酒も有る。
餅米を原料に作られる事がほとんどで、灰を入れた事で弱アルカリ性となり、色は赤または黒っぽい赤となる。
なお、甘さは味醂と一般的な日本酒の中間程度のものが多い。
現在、日本で生産・販売されている灰持酒には、熊本県の赤酒、鹿児島県の地酒(じしゅ)、島根県の地伝酒などが有る。
現代では料理洋酒やお屠蘇に使われる事が多い。
日本酒の銘柄
※pixivにタグのあるもの、アニメや漫画のキャラクターと同名の物を主に掲載。
千福 賀茂鶴 古鷹・・・広島県の酒。(千福・賀茂鶴は日本海軍御用達。)
聚楽第・・・京都・上京区にある佐々木蔵之介の実家の造り酒屋で製造。
正宗…日本全国
関連イラスト
関連タグ
有閑倶楽部・・・キャラクターの苗字の多くが日本酒の銘柄から。
三井寿・・・名前の由来が「三井の寿」(みいのことぶき)から。『スラムダンク』とコラボした商品もある。⇒詳細記事参照