黒田節とは民謡の一つである。
概説
酒は呑め呑め 呑むならば
呑み取るほどに呑むならば
これぞ真の黒田武士
福岡県に伝わる民謡の一つ。
戦国時代、黒田官兵衛の臣下である母里友信と福島正則の逸話に基づく。
黒田節の「節」は「武士」の掛け言葉ともなっており、母里友信の酒豪伝説を称えるとともに、黒田家の武勇を賛嘆する意味も持っている。
後に詩吟や浪曲なってさらに三節加えられ、現状では4番まで存在する。
また昭和時代にレコード化された際、追加でいくつかの歌詞が加増され、歌い手やレコード会社によって後半に加えられた歌詞がまばらになっていることもある。
レコードとして出された当初は「黒田武士」と命題されている。
ちなみに福岡県の酒造メーカー「大里酒造」から、主力商品として「黒田武士」という日本酒が醸造されているほか、ホームページのアドレスに「kurodabusi(黒田武士)」というフレーズを使用している。
大河ドラマ『軍師官兵衛』でも後述のエピソードを基にしたシーンが存在する。
逸話
ある日、友信は主君の命で正則の屋敷に所用で出向くことになった。
そこでは正則が既に酒を煽って上機嫌で酔っており、遣いで訪れた友信にも酒を勧め始める。
しかし友信は、遣いの身の上であることを理由にこれを断る。
それでも酒を飲ませようとしつこく迫る正則は大盃を家臣に用意させ、そこに並々と酒を注ぐと――
「それを飲み干せば何でもくれてやろう」
……と豪胆に打って出た。
それでも固辞する友信に対し、正則は酔った勢いで「黒田の者はこの程度の酒も飲めないのか」と侮るような発言で容赦なく捲し立て、友信を挑発しはじめる。
流石の友信も、名将・福島正則が相手とはいえ、主君を始め黒田領下の武士を馬鹿にされたとあっては見過ごせず、遂に肚を括って挑発に応じて大盃の酒を飲み干し、正則に一矢報いて見せる。
そしてと友信は正則の言質を取って、「何でも下さるというなら、彼の日ノ本号を賜りたい」と言い放つ。
日本号は正則が蔵する天下の名槍であり、主君羽柴秀吉から武勲の褒賞として下賜された大事な槍だったが、既に泥酔していた正則はこれを断り切れず、渋々ながら「武士に二言無し」と日本号を友信に下賜して帰らせた。
翌日、酔いの醒めた正則は日本号を友信に下賜したことを思い出して蒼くなり、急いで遣いを出して返還を求めたが返還は認められず、その後友信は朝鮮出兵で日本号と共に武功を挙げたのだった。