概説
日本で発達した槍の一種で、特に穂先(刃)が一尺(30.3cm)以上のものを指す。
長いものだと二尺以上、中には四尺(121.2cm)超えの規格外品さえあった。
日本号・御手杵・蜻蛉切の『天下三名槍』は、すべてこの大身槍に属する。
全長3mを超える長槍級の代物も多い。
構造
穂先が大きくなる分、扱いやすく重心が取れるよう茎(なかご/槍の根本)も長大化。特に大きなものは柄の内部すべてが茎になっており、石突きまで含めて一体化して鍛造したものも少なくない。
またそんな槍身を支える柄も、赤樫(あかがし)など頑丈で重い木材が使用され、仲後を覆うために柄の直径も4cm前後まで達している。
これにより重量が素槍の数倍となる関係から、扱いには相当の膂力と技量が必要となり、自在に扱えるだけも充分な脅威と看做された。
これだけ大きな穂先を持つため、中には美術的な彫刻を施したものもあり、一例として日本号にはそうした端麗な装飾がなされている。
そのほか、穂先は簡単に折れないよう、断面が二等辺三角形のように中心に向かって太く形成されている。
威力
通常の槍の倍近い重量に、太く鋭い穂先、凄腕の槍使いの三点が折り重なるだけに、絶大な威力を発揮した。
「天下三名槍」を振るった本多忠勝・福島正則・後藤基次らが、まさにその代表といよう。
特にその長く大きな穂先は突くだけでなく斬撃にも対応出来るため、これを利用した薙ぎ払いなどを駆使し、乱戦では無類の強さを誇ったという。
逆にいえば、彼らほどの槍名人でなければ扱い切れないほど、使い手を選ぶ傾向にもある。