蜂蜜酒、ミード(Mead)、ハニーワイン(Honey Wine)とは、蜂蜜を原料とするアルコール飲料である。
概要
その名前そのままに、蜂蜜を酵母等で発酵させて製造する酒類である。日本の酒税法上は「その他の醸造酒」(いわゆる「第三のビール」の仲間)に分類。蜂蜜に由来する黄色、あるいは黄金色の色合いと、ビールに似た味わいを持つ。
高い糖度を持つ蜂蜜はきわめて強力な殺菌作用を持ち、そのままでは酵母を始めとする菌類や微生物類はまったく活動できない(詳細は蜂蜜の項に譲るが、蜂蜜内ではほとんどの微生物は数日内に死滅する)が、これを水で希釈すると天然由来の酵母等による発酵が始まる。これが蜂蜜酒の始まりであり、製造の歴史は旧石器時代にまでさかのぼるとされている。同時に最も古典的な酒類である蜂蜜酒はしばしば霊的な効果があるとされており、例えばケルト民族の伝承では「不死の霊薬」とされていた。
また、北欧神話によれば、オーディンが巨人族が隠匿していた蜂蜜酒を盗み出し、神々の国に持ち帰ったとされている。
クトゥルフ神話においては「黄金の蜂蜜酒」と呼ばれる魔法の薬があり、これを飲んで魔法の笛を吹いて呪文を唱えると邪神ハスターがしもべの怪物ビヤーキーを派遣してくれるとされている。
あと、これを元ネタにした蜂蜜酒が埼玉県西部の山岳地帯秩父で作られている。「ハスター」「ビヤーキー」「クトゥルフ」「ルルイエ」等々の銘柄がある。
ハネムーン
また、蜂蜜を素材とする蜂蜜酒は、蜂蜜同様に高い強精・強壮作用があると長らく考えられていた。このため古代~中世ヨーロッパにおいては、妻を娶った男性に対し、最初の1ヶ月は蜂蜜酒で滋養をつけて子作りに励むことが推奨されていたとされる。これが「蜂蜜の月=Honey Moon」即ち「ハネムーン」という言葉の始まりであると考えられている。
人間以外による飲用
蜜が自然にアルコール発酵した飲料は、その高い栄養価から人間以外にも恩恵をもたらす。いくつかの動物はアルコール発酵した蜜を好んで飲むことが知られている。例えばツパイの一種であるハネオツパイはプルタゴヤシの花の蜜がアルコール発酵したものを好んで飲み、「飲酒習慣のある動物」として有名である。