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クトゥルフ神話

くとぅるふしんわ

20世紀にアメリカの小説家ラヴクラフトの描いた小説世界をもとに、彼の友人である作家オーガスト・ダーレスらが設定の共有を図り、作り上げたコズミック・ホラー作品群。及びその世界観。
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概要

英語では「Cthulhu Mythos」。

クトゥルフ「神話」とはいうが、古代文明(文化)で語り継がれた言い伝え昔話という訳ではない。20世紀アメリカ合衆国で考案された世界観の中での架空の神話であり、平たく言えば「非常に壮大な世界観設定シェアワールドである。


怪奇・幻想小説の先駆者の一人であるハワード・フィリップス・ラヴクラフトが自身の小説に登場させた事物を友人の作家達とまとめ、お互いの作品で登場した怪物やアイテムを自分の作品にも登場させるという遊びにより、いかにも本当に語り継がれてきた神話のように見せかけたもの。

例としてはロバート・E・ハワードの『英雄コナン』シリーズは、ラヴクラフトと同じ世界観を共有している。


「神話無き新世界(アメリカ)に生まれた新たな神話」としてアメリカ神話とも呼ばれる。

 

作品の内容・世界観

メインとなるのは、外宇宙より古来の地球に飛来した旧支配者旧神の戦い、それらが後世に与えた影響、邪神の崇拝者の暗躍など。時に「神話」の時代そのものを描いた、より神話らしい作品も登場し、それらも含めて「クトゥルフ神話作品」と認識されるようになった。


クトゥルフ(Cthulhu)は、人間には発音できない音であり、便宜上『クトゥルフ』『クトゥルー』などと表記される。日本では『クトゥルフ』と表記・発音されることが多い(但し、ラブクラフト自身、熱烈なラブクラフティアンに宛てた書簡にて、クトゥルフの明確な発音を述べており、それによると「舌の先をピッタリと口蓋に押し付けて、不完全な2つの音節『Clhu-Lhu』を唸るように、吠えるように、咳き込むように言えば良いでしょう」と記されている。

この書簡から、東京創元社が出版したラブクラフト全集では、ダーレス神話と明確に違う事を示す為、上記の音節から最も妥当と思われる発音・クルウルウで表記し、国内外のラブクラフティアンもクルウルウと呼称している)。

中にはこの神話を真実の出来事だとして調査するファンもいるというからその影響力は相当なものといえる。


執筆する上で共通の公式設定というものは無く、シェアワールドと違い他作品と矛盾が発生しても問題無く「クトゥルフ神話とはラヴクラフトの創作である」という前提で書いても構わない。

そもそもこのシリーズは、後述の通りラヴクラフトと交流があった作家同士で「ぼくのかんがえたじゃしん」を交換し合って自作に登場させるという「お遊び」から始まったものであり、作家同士が設定資料をシェアしていた訳ではない。

ラヴクラフトの著作に限ってみても、作品毎に設定が変わっていることもある。例えば狂気山脈という地名は、南極にあったり、ドリームランドに出現したりする。


コズミックホラー(宇宙的恐怖)

ラヴクラフトの提示した世界観。「宇宙無慈悲であり、人間中心の地球的な考えは通用しない」というコンセプトのもと、「矮小な人類が自身の常識が通じない強大な外宇宙存在に相対し、生命的な脅威、価値観を破壊される精神的な脅威に襲われる恐怖」を描く。


冒涜的な暗黒の神話

アメリカ建国の大本ともなった主流宗教であるキリスト教においては、ルーツであるユダヤ教旧約聖書に基づいた以下の世界観が信じられてきた。

  • 世界とは全知全能の崇高なる唯一神が創造した完璧で美しいものである。(天地創造
  • 人間は唯一神が自身に似せて作った存在であり、世界のあらゆる生物・あらゆる事象を神に代わって管理する役目を与えられた「万物の霊長」である。
  • 原罪によって人間が楽園を追放された(失楽園)後も神は人間を見守っており、信仰を忘れず隣人愛や正義に基づいて正しく生きれば人間は死後に神の国へ招かれ、永遠の命と安寧を授かる。

クトゥルフ神話はこうした価値観に全力で唾を吐く

クトゥルフ神話では「神が作るはずのないもの(各種の醜く強大な邪神や神話生物、地球外生命体オーパーツ)が存在」し、そうしたもの達に人類が翻弄・嘲弄され、更には「人類の誕生にも外宇宙存在の関与があったことを示す証拠」まで登場する。

つまりこれらは「唯一神の存在の否定」であり、「『万物の霊長たる人類』の否定」であり、「死後の幸福という救いの否定」にも繋がる。そのためクトゥルフ神話の世界における「真実」は、触れた人間の「信じていた世界観を冒涜・破壊」し、「正気を失わせる」のである。


基本原則

  • 宇宙は無慈悲である

宇宙、次元、時空、あらゆる物質は、誰かにとって都合よく出来てはいない。

人間がと定義して信じる現象は実在しない上、微生物のような生き物が人間に知覚されず、人間の戯れや無自覚によって殺されることも理解できずに生きているのと同じように、人間もまた宇宙から見れば取るに足らない矮小な存在の一つでしかない。


かつて地球を支配した存在の一部を垣間見た人は、それらを旧支配者と呼ぶ。

それらの力を求める人間は、外法の魔術を求め、時に神として崇拝している。旧支配者同士も敵対することは珍しくなく、それらを崇拝する人間も争うことがある。太古の人類は彼ら同士の争いや闘争に巻き込まれ、大きな被害を被っていた。

しかし旧支配者達は広大な宇宙の一惑星に過ぎない地球やそこに住む人類という生物のことなど全く興味も関心も無い。

(それにしては神様たち地球に来すぎじゃないか? という突っ込みは当然あり、他の作家により旧支配者達の重用する逗留地であるとの設定も作られた。)

そもそも旧支配者にとって人間の協力など、小虫が騒いでいる程度のもので必要とされていない。このため主人公が邪教徒の妨害をしても根本的には何の意味も無いというのが定番のオチである。


  • 地球的考えの否定

端的にいうと「常識にとらわれないこと」

ラヴクラフトは、宇宙の生物を空想するにあたり、まず地球的な考え=従来的な常識を捨てなければならないと考えた。

よって彼は「利用できる」とか「愛情を持つ」という人間なら当たり前の感情を宇宙の生物は持たないとし、また人間から見て「意味のある事」が必ずしも宇宙でも有用と見做されているとは限らないという認識を作品に盛り込んだ。

従って旧支配者たちが人間から見て不自然な思考、意味不明な行動を取るのは、彼らが地球的な考えを持たないためとされる。

次に小説『宇宙からの色』で登場した宇宙生命体「色(カラー)」のように物質ではない身体を持った怪物を創造した。

また代表的なクトゥルフのような地球のタコに似ている怪物と違い、地球上の何物にもモチーフを取らない怪物としてガス状のヨグ=ソトース、俗にいうスライムのようなショゴスなどを提案している。

ガス状生物やスライムも現代ではありきたりだが、ラヴクラフトが単なるホラー小説ではなくSFとして作品を作った要素である。


架空の言語

人の声に似て声でない、発音不可能な言葉と書かれる言語が度々登場する。

ラヴクラフトは言及しなかったが、後の作家によってルルイエ語と解釈され、人間とは全く異なる発声器官を持つ存在によって使われているものとして扱われた。人間の咽喉で正しく発音することは不可能で、本来の発音を実際に耳にした人間だけが、奇妙なやり方で喉を使うことによってそれらしく模倣できるのだという。

ラヴクラフト自身が作品中で人間には発音不可能だと言及したのは「クトゥルフ」「ルルイエ」のみだが、正しく発音すると命の危険があるとされる神性の名前もあるのでそれらも本来発音不可能なのかもしれない。

ラヴクラフトの小説『銀の鍵ではナアカル文字ともロンゴロンゴとも全く似ていない、ルルイエ語を記述するための象形文字羊皮紙に書かれていた。

他の作家も同じ言語に見えるように意図したそれっぽい呪文を登場させ、邪神達の共通言語のように扱っている。


クトゥルフ神話ではルルイエ語以外の架空の言語も複数ある。

  • センザール語
  • ナアカル語
  • アクロ語

もともとヴァルーシアのヘビ人間の言語であった言語。

  • ツァス=ヨ語

ツァト=ヨ語とも。数百万年前のハイパーボリア大陸で話された言語。


またグール語など登場するそれぞれの文明を持つ種族は独自の言語を持つと考えられる。テレパシーを使うユゴスからのものなど、コミュニケーションに言語を使うこと自体を「遅れている」と表現する種族もいる。


ダーレスらが追加した世界観

※ ここに挙げるのはダーレスにより整理されたものを基本としたもので、作者によってはこれと異なる設定をする者もいる。

また、そもそも旧支配者が何故生まれ、地球にやってくる事になったかなど、因果関係が極めて不明瞭な部分が多い。

特に旧神の設定を中心にして、善悪二元論四大元素属性など世界観を大きく隔てるほどの違いが現れるので、クトゥルフ神話を理解しようとする際、その話題はどのような世界観に基づいたものであるのか注意されたい。

なぜラヴクラフトの想定した以外の世界観があるかというと、ラヴクラフト自身および、ダーレスがラヴクラフトの世界観に縛られることなく、作家ごとの独自のよりクリエイティブな作品が書かれることを望んだため。この姿勢に反発し、無責任だと批判した作家もいた。

このような経緯から、ダーレスが関わる以前の作品群を『原神話』、ダーレスの設定が色濃く反映された作品群は『新神話』と区別するファンも一定数存在し、更にその中で「新神話は認めない」派閥も生まれてしまった。


はるか昔、「宇宙の善の意思」を体現する「旧神」と呼ばれる神々が居た。

後に彼らから「宇宙の悪の意思」を体現する神々が生み出された(=クトゥルフ神話の神々)。

宇宙の悪の意思たる神々は旧神の元を離れると、外宇宙から飛来して古代の地球を支配した(旧支配者の名はここから来ている)。

旧支配者同士も仲違いが多かった(今日においても続いている)が、ある時結束して旧神に反逆を試みた。


結果として敗れた旧支配者はあるものは地球の奥深くへ、一部は遠い宇宙へと封印されたが、その封印も完璧なものではなく、完全な復活と支配権の確立を望む彼らは現代にあっても時折姿を現し、闇の世界には彼らを信仰する者たちが依然として残っている。


宇宙の悪の意思たる旧支配者は、基本的に人間にとって善となる存在ではなく、協力的態度を示したとしても駒として利用するためだと解釈したほうが良い。しかし、「人智を超える」利益が得られることに望みを賭け、手の内に入ろうとするものは現代的な思想を持つもの(科学者や医師)でも後を絶たない。


また数柱の神々には召喚法が知られているが、旧支配者との接触は極めて危険で、状況によほど望まれぬ限り、まず死亡(文字通り「取って食われる」)・変死するか、肉体的・精神的に破滅的な症状を呈するか、完全に乗っ取られて利用されるかのいずれかである。

さらに、出現時には感受性の強い人間が集団で悪夢にうなされるようになるなどの被害が報告されている。


神々の戦い

「大地の神々」と呼ばれる地球で誕生した力の弱い神々は、大きな宇宙の周期によって、旧支配者達が休眠期に入ったのを見計らい、その封印を強くした。

低次の知性体である人間にとっては長い期間旧支配者達は活動が抑えられ、太古の神々のことを多くの人間は忘れ去って文明が繁栄した。


科学が発達した今日、低次の知性体であったはずの人間が物事の関連性に気付き、宇宙の真実のほんの一端に辿り着いて発狂してしまうことがある。

また、魔術を連綿と受け継ぐ魔術師や、旧支配者を時に力の源として、時に神聖な神々として崇める宗教結社なども社会の影に今も存在している。


上記から転じて

異界の存在としか思えないものたちの存在を示唆し、証明してしまう痕跡がこの世界のそこかしこに見つけることが出来てしまう。


例えば大海原の海底隆起、例えばエジプトに残された秘蹟、中国奥地の伝承や未開の地で歴史に葬られた宗教儀式。狂気の沙汰としか思えぬ行い、儀式、血なまぐさい邪教なども遠い僻地などではなく、都市の生活圏内にも蠢いている。


微粒子の世界、宇宙の研究も可能になった人類はそれまで「見ることが出来なかったおかげ」で平穏を得られていた現状を、自ら破壊しようとしている。人間のそのような姿をメッセンジャーは嘲り、大量破壊兵器の誕生を促進させた。


超高度な文明、科学力を持った異星の種族も活動し、時には彼らの都合の良いように人類の社会に影響を与えている。その違和感に気付いてしまう賢く哀れな人間は、通常では到底あり得ぬ奇妙で悲惨な末路を迎える。


異界からの脅威に立ち向かおうとするものもいるが、基本的にその場しのぎである。勇気ある人間達は神々の対立関係をうまく利用して自分たちに協力させることもあるが、協力者も人間に必ずしも好意を持っているわけではなく「大地の神々」でさえ、共通の敵を持つ人類をも利用しなければ自分たちが危ういという打算的な考えを持つ。


舞台・地名

クトゥルフ神話に登場する地名。

現代社会と異なる場所が舞台となることもある。

  • ゾス星系

暗黒惑星ゾスとも。

クトゥルフやツァトゥグァがやってきたとされる太陽系外宇宙の天体系。

幻夢郷などとも訳される。

物質世界とは異なる次元にある空間で夢見る人と呼ばれる能力のある人だけが眠っている時、魂がこの世界に赴くことが出来るとされる。

間違っても語感から連想されるようなファンシーな世界ではない。グール、ガスト、ガグ、巨大なカエル型宇宙人などが、この世界に生息している。またドリームランドの地球、ドリームランドの月というように物質世界とは地理が根本的に異なるが似通った部分もある。

「大いなるもの」と括られる非常に矮小な神々が保護されている地でもある。

  • ハイパーボリア

ヒュペルボレオス、ヒュペルボリア、ヒューペルボリア、ハイパーボレアなど。

クラーク・アシュトン・スミスが作り、ロバート・E・ハワードの小説『蛮人コナン』の舞台となった。

主に現代を舞台として描かれるクトゥルフ神話とクトゥルフが地上で活動していた時期の間にあたる。

具体的にはムーアトランティス以前である数百万年前(中新世)のグリーンランド付近にあった大陸で、現在は沈没している。

魔術師や神々の存在が一般的であり、フレーバーではなくキャラクターとして神が登場することも多い。

大魔導士エイボンや大神官モルギ、ゾン・メザマレック、ホルマゴール、エヴァグ、ファラジン、

アヴァルザウンド、ラリバール・ヴーズ、奇跡を起こせる人ナーブルス、魔導士エノイクラなどが活躍した。

  • ゾシーク(ゾティーク)

クラーク・アシュトン・スミスの作品が主に舞台としており、スミスが最も力を注いだジャンルでもある。

ラヴクラフトの作品にインスパイアされて誕生した。太陽が赤色巨星と化している現代よりも遥か未来にあたり、地球最後の人類が棲む大陸と設定されている。

(一応設定上は離れ小島にマレー人などの生き残りも居る模様)

他には科学文明が滅び、太古の魔法が復活した世界である事が特徴。

現在の我々の大陸はおそらく周期によって何度か沈んでいる。魔法と魔神崇拝が太古と同様に再び広まっている。水夫はオールと帆だけを使っている。火器はなく、弓矢と剣と槍などしかない。多神教的な社会であり、タサイドンのように実在する魔神や神と取引する様子も描かれる。

ファンタジージャンルであり、いわゆる「終末もの」「ダイイング・アース」に分類される世界観。

  • ニューイングランド

アメリカ東部の六つの州。ラヴクラフトの故郷であり、彼が好んで舞台に選んでいる。

アーカム、キングスポート、インスマス、ダンウィッチなどがある。


その他の地名


登場する存在

各カテゴリーや、個々の詳しい詳細に関してはリンク先を参照。

外なる神


旧支配者


旧神


地球本来の神々(大いなるもの)』


その他


その他の用語


『神話』のルーツ・成立経緯

19世紀以降の欧米では自然科学の発展により、キリスト教で信じられてきた世界観に大きなヒビが入っていた。(生物学者チャールズ・ダーウィンの『進化論』、哲学者フリードリヒ・ニーチェの「神は死んだ」はこの時代の象徴である。)

一方でそうしてあらゆる神秘が否定され、や精神といった領域までただの物質的現象に貶められてしまうことへの反発も強く、限界を見せたキリスト教の影響が及ばない古代文明や東洋の宗教・思想に世界の真理を求める神智学神秘学(オカルティズム)も盛んになる。

こうした社会の揺らぎが強い時代にラヴクラフトは生まれ、筆を執る。


クトゥルフ神話の世界観はダーレスによって作られた部分が大きいが、邪神たちの多くはラヴクラフトが世界各国の神話、伝承、天文学の知識、そして彼自身の独創によって生みだしたものである。

そのためクトゥルフ神話の邪神たちは、消えた幻の古代文明の神々とされるものが多い。例えばナイアルラトホテップ古代エジプトの神、クトゥルフイースター島など南太平洋の島々やペルーのインカ文明ムー大陸の神とされる。これらは、ラヴクラフトが超古代史の謎の部分を、最新の科学的解釈を交え、その卓越した想像力で補完することによって生まれたのである。

こうした要素はラヴクラフトの作品に共通して、背景設定的に匂わされているものであった。複数の作品で同じワードが使われ、未知の恐怖の中に明らかに「神話」が用いられていることが読者に伝わり作品世界内にリアリティを出す手法として存在していた。怖ろしいながらも神秘的に(それはつまり多く語らないということでもある)それらを描いており、詩文や幻想小説を好み、それを書きたいと希望していたラヴクラフトらしい手法だったと言える。


ラヴクラフトはこの「神話」を友人達に自身の作品で使って欲しいと促していた。クラーク・アシュトン・スミスがツァトゥグァを作り、ラヴクラフトも(リン・カーター曰く)すぐさま大喜びで自分の作品にツァトゥグァを使った。これを機に友人作家らでこの「お遊び」が広がった。

ただし、ラヴクラフト自身はそれで作品同士の世界を繋げるつもりは毛頭なかったことが証言で分かっている。互いの設定の辻褄を合わせようと苦心した作家もいるが、それらをまるで意に介さなかった作家もいれば、断片的だったり曖昧だったりする記述から、勘違いしたまま書いてしまう作家もいた。創始者のラヴクラフトはどちらかと言えば「意に介さなかった」方の作家と思われる。

リン・カーター曰く、「ラヴクラフトの作品が書店に並ぶ頃には、自身の手によってかなりの下地ができあがっていた」。

以上の経緯から、クトゥルフ神話は作家ごとに独自の世界観を構築していること、互いに設定を強制するものではないことも特徴となり、神々の力関係や、対立関係、血筋、婚姻関係まで作家によって様々である。それはあたかも、既存の神話がエンターテイメント作品に自由な設定で取り込まれるのと同じように見える。


ある作家は、古い伝承を換骨奪胎して取り込み、今尚その世界の裾野を広げるクトゥルフ神話体系の事を「神話なきアメリカの新たなる神話」と呼称した。

このようにクトゥルフ神話は小説家や同神話の信奉者による想像力、好奇心、はたまたお遊びなどによって形成され、今日もまだ広がり続けている。


余談になるが、友人のクトゥルフ神話作品を読んだあとのラヴクラフトは、手紙の中で「!」を大量に使い、いくつもの単語を用いて賞賛を送るなど、かなりテンションが高い。

ラヴクラフト自身も先人の作品からワードを借りることが多かったので、背景フレーバー的なものはより良い創作のためには共有されるべきという考えだったのかもしれない。


クトゥルフ神話作家

広義にクトゥルフ神話の作家とされる者は多数に上るが、いくつかの世代に分ける事が理解の助けとなる。


ラヴクラフトの先達

ラヴクラフトに影響を与えた先達のホラー作家たち。

ラヴクラフト自身これらの作家の作品から積極的に固有名詞を借用するなどしてクトゥルフ神話世界構築の助けとした。


エドガー・アラン・ポー

アンブローズ・ビアス

ロバート・W・チェンバース

アルジャーノン・ブラックウッド

アーサー・マッケン


ラヴクラフト世代

ラヴクラフトと同時期にパルプ・マガジンで活躍していた同世代の作家たち。これらの作家たちとの固有名詞やアイデアの交換、相互の借用によりクトゥルフ世界が成り立っていく。


ハワード・フィリップス・ラヴクラフト

クラーク・アシュトン・スミス

フランク・ベルナップ・ロング

リチャード・F・シーライト (Richard F. Searight)

ロバート・E・ハワード(ピストル自殺した親友)

オーガスト・ダーレス(ラヴクラフトの作品を編集した)

ヒュー・B・ケイヴ (Hugh B. Cave)

ヘンリー・カットナー

ロバート・ブロック(ラヴクラフトの殺害許可書を得て、作中で彼をモデルにした年老いた怪奇小説家を怪死させている)


アーカムハウス世代

ダーレスによるアーカム・ハウスの設立、およびクトゥルフ神話の再編が進んでからの作家たち。アーカム・ハウスから作品を刊行した者を含む。


コリン・ウィルソン

ブライアン・ラムレイ

ラムジー・キャンベル

リン・カーター

ゲーリー・メイヤーズ

ディヴィッド・ドレイク (David Drake)

ジョン・グラスビイ (John Glasby)

ウォルター・C・デビルJr (Walter C DeBill Jr.)


ダーレス死後の世代

ロバート・M・プライス

スティーヴン・キング

フランクリン・シーライト (Franklyn Searight) - 上記リチャード・F・シーライトの息子

ジェームズ・アンビュール (James Ambuehl)

トレイシー・アンビュール (Tracy Ambuehl)

トマス・リゴッティ (Thomas Ligotti)

スコット・ディヴィッド・アニロウスキイ (Scott David Aniolowski)

リチャード・A・ルポフ (Richard A. Lupoff)

カール・エドワード・ワグナー (Karl Edward Wagner)

ジェフリー・トーマス (Jeffrey Thomas)

W・H・パグマイア (W. H. Pugmire)

スタンリー・C・サージャント (Stanley C. Sargent)


日本のクトゥルフ神話作家

小説家

朝松健

風見潤

神野オキナ

菊地秀行

くしまちみなと

栗本薫

小中千昭

小林泰三

殊能将之

高木彬光

田中芳樹

伏見健二

山田正紀

山本弘


漫画家

水木しげる

後籐寿庵

槻城ゆう子

西川魯介

魔夜峰央

諸星大二郎

八房龍之助

矢野健太郎


評論家

荒俣宏

大瀧啓裕

紀田順一郎

東雅夫


クトゥルフ神話が関係する創作物

こちらではクトゥルフ神話を題材にしていたり、その要素を取り入れている漫画やゲーム作品を紹介する。

各作品の細かな内容は各リンク先を参照のこと。

また擬人化や美少女化等の萌え要素の強いものは「萌えクトゥルフ」にも纏められているのでそちらも参照されたし。


  • クトゥルフ神話TRPG:アメリカのケイオシアム社から発売されたクトゥルフ神話を題材にしたTRPG
  • エターナルダークネス:クトゥルフ神話を題材にした任天堂ゲームキューブで発売したホラーアドベンチャーゲーム。
  • TheElderScrollsシリーズ:Bethesda Game Studioが制作している3DオープンワールドRPG。高い自由度、広大なマップ、細部まで拘った設定と世界観などで人気だが、開発スタッフの中にクトゥルフ神話の好きな人がいることはよく知られており、そのオマージュと思われるもゲームに盛り込まれている。
  • Fate/GrandOrder:クトゥルフ神話の神々と惹きあう事で誕生したサーヴァントが属するエクストラクラス、フォーリナーがいる。ただし、表現はかなりぼかしめ。
  • ウルトラマンティガウルトラマントリガー:設定や一部の登場キャラクターに、クトゥルフ神話をモチーフとした者がいる。
  • デジモンアドベンチャー02:話中にクトゥルフ神話をモチーフとしたデジモン及びサブタイトルのタイトルコールにそれらしい文章が登場する。
  • サガ3時空の覇者:脇役や敵側の主要キャラクターに、クトゥルフ神話を基にした姿や名前を付けられた者が多い。特にオリジナルのGB版に顕著。
  • ブラッドボーン:後半のストーリー展開や一部のクリーチャーの元ネタになっている。
  • 東京放課後サモナーズ:異世界「オールドワンズ」出身のキャラクターとして登場。中には変則的な形で出演を果たしている眷属や神性も...。

関連タグ

小説 ラヴクラフト シェアワールド 宇宙 狂気 超越 コズミックホラー

SAN値 SAN値直葬 ああ!窓に!窓に!

銀の鍵 ダンウィッチの怪 クトゥルフの呼び声 無名都市 アーカム計画 タイタス・クロウ


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クトゥルフ神話1000users入り クトゥルフ神話5000users入り


クトゥルー神話 クトゥルフ:表記揺れ


萌えクトゥルフ:クトゥルフ要素が出る作品もこちらを参照。


グノーシス主義:内容に影響が見られる。


SCP_Foundation:こちらは都市伝説をベースにした創作ジャンル。クトゥルフ神話同様、地球の理では計り知れない不条理と狂気に満ちている。

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