概要
ノーデンス(ノドンス)は本来、ケルト神話の神(ただ、この神を祀るところで「9頭の犬の像」がある以外、癒しと漁の神だったらしい、ヌァザと関連するらしいことしかわからない)だが、本項ではクトゥルフ神話におけるキャラクターを解説する。
ノーデンスが初めて登場するのはアーサー・マッケンの「パンの大神」で、後にハワード・フィリップス・ラヴクラフトが「霧の高みの不思議な家」、「ダン・ウィッチの怪」などの作品で同じ名前の神を登場させた。
クトゥルフ神話においては旧神と呼ばれる人間に友好的な神性に分類されている。
解説
クトゥルフ神話は複数の異なる作家の作品を関連付けた世界観であり、ノーデンスの初出はアーサー・マッケンとなっている。ラヴクラフトの作品としては「霧の高みの不思議な家」である。
当初のラヴクラフトの作品では、人間に友好的な描写はなく、他の神性と同じく人間を廃人にしたり神隠しにしている。
ただし後発の他の作家の作品においては善玉とされ、キャラクター性は違っている。これはノーデンスが、彼の楽しみでナイアルラトホテップの策略からランドルフ・カーターを救うなどしたためである。
後のクトゥルフ神話では重要なキャラクターとされているのに対し、ラヴクラフトの作品においては、そうでもない。
これはラヴクラフトの作品では神の思考、在り方は人間に理解できないという立場をとる事が多いためで、ラヴクラフトの世界観に順ずる限り、外なる神に比べれば”比較的人間に友好的である”という以上の理解は引き出せない。
(何せ、この神によって救出されると、どこか適当な、例えば銀河の最果てとかに放り出されてしまうから)
ノーデンスは旧神に分類されており、比較的地球人に対し好意的な神である。「霧の中の不思議な家」では貝殻の形の戦車を駆るという川や海の神であるかのような描写がある。
「未知なるカダスを夢に求めて」ではグレートアビスという広大な暗黒の領域の支配者であると語られており、地球上の人々からの信仰よりも、深い眠りの中にあるドリームランドという場所においての信仰が厚い神とされる。
彼を崇拝する奉仕種族・夜鬼(ナイトゴーント)らを従えて、彼らが変身したものに乗って移動する。
外なる神の使いナイアーラトテップと対立しており、それはそれぞれに関係する人間同士の代理戦争になる事もしばしばある。
しかしナイアーラトテップとは、ドリームランドに住まう、地球の神々を庇護下に置くという意見では手を取り合っている。
クトゥルフ神話の中では珍しく人間に対して友好的な存在であるため物語ではキャラクターの窮地を救う役として登場することがある。
ただし「友好的」と言ってもあくまで〝比較的〟であること、神であるがため人間とは尺度があまりにも違うことや、救った後の人間がどうなろうとノーデンスにとっては知ったことではないというように描かれていることも忘れてはいけない。
初出作品である「パンの大神」においては超自然的な何かの一つとして描かれており、奇怪な脳手術によって普通の人々が気付かないものが見える様になった女性を強姦したことがほのめかされている。(「ノーデンスの神と結婚した」といった表記がされている)
ニャルラトホテプとの関係
ラヴクラフトの作品「蕃神」において地球の神は人間に姿を見られることを嫌い、高い山々に姿を隠したことが説明されている。
しかし人間の南極探査、エベレスト登頂により遂に地球の神々はドリームランド(夢の世界)にあり人跡未踏、未知なるカダスの瑪瑙の城に移住した。
ノーデンスは地球の神々が人間に脅かされないように周囲を監視し、神の姿を見たものは神隠しにするか、廃人にしてしまうことが描写されている。
またニャルラトホテプは主である外なる神々の盲目白痴の魔王、万物の総帥、光の届かぬ無明なる房室で無聊を極め、飢えて玉座に齧り付き、膨張と収縮を繰り返しながら冒涜的不平を溢すアザトースの意志により地球の神々を彼らの本来治めるべき地球から連れ去り、瑪瑙の城に住まわせることを望んでいた。
人間に最後の安住の地を侵されたくない地球の神ノーデンスと彼らを瑪瑙の城で遊ばせておくことを望むアザトースの目的は、こうして合致し、一種の協力関係が生まれている。
しかし一方でノーデンスは外なる神と友好的である必要がないため、ニャルラトホテプに失態を犯させることを楽しみとしている。
ノーデンスが妨害行為を働いていることをニャルラトホテプは不愉快に感じている。
この事は「未知なるカダスを夢に求めて」の最後の場面でランドルフ・カーターを捕らえたニャルラトホテプが語っている。
カーターはノーデンスの奉仕種族が一瞬で蹴散らされ、自分も捕らえられた経緯から外なる神にとってノーデンスはニャルラトホテプに恥をかかせる程度と見做されているとしている。
このようにラヴクラフトの作品におけるノーデンスは人間に友好的ではなく、ニャルラトホテプに対抗する力もなく、ただ彼の失態を助長して、彼の主、外なる神の怒りを誘う程度と描写されている。
地球の神
旧神という分類はオーガスト・ダーレスが作ったものであり、ラヴクラフトの作品においては単に地球の神とされている。
これは遥か異次元空間、時間と空間を超越した闇に住まう魔王アザトース、副王ヨグソトース、使者ニャルラトホテプら、”外なる神”に対し、地球元来の神々であることを指しており、彼らは大人しく平和的な神である。
彼らは人間に姿を見られることを嫌い、また姿を見た人間を決して許しはしない。今や地球の神々が人間を救わないのは人間が地球の神々の安息の場所を奪ったからだとラヴクラフトの作品では説明されている。
今や無力な地球の神々はアザトースの使者ニャルラトホテプが支配するカダスの瑪瑙の城に住み、人間の目から逃れ、かつての故郷に帰り、昔を懐かしんで歌い、踊るだけである。
「未知なるカダスを夢に求めて」ではランドルフ・カーターは、ニャルラトホテプによって瑪瑙の城に連れ去られたために”地球の神を見た”ペナルティを受けずに済んでいる。
しかしニャルラトホテプがカーターをアザトースのもとに送ろうとした時、ノーデンスが妨害したため、ニャルラトホテプは激怒して地球の神々の前に姿を現して彼らを罵っている。
対立関係
奉仕種族
「這いよれ!ニャル子さん」におけるノーデンス
サブキャラであるうえに複数登場し、しかも登場したのが弱かったという不憫極まりない扱いを受けている。
ノーデンスとは、「這いよれ!ニャル子さん」に登場するキャラクター。
旧支配者だの旧神だのは、基本的に宇宙人だというこの作品では、「ノーデンス星人」として複数登場する。小説原作で登場したノーデンスは以下の通り。
ノーデンス星人・0(神話の元ネタ)
ラヴクラフト御大に遭遇して小説の元ネタになったノーデンス。1体か複数かは不明だが、当時遭遇したニャルラトホテプその他に比べると友好的な性格だったらしい。
ノーデンス星人・1(人身売買犯)
ナイトゴーントを操り、八坂真尋を狙った犯人である。地球の少女コミック(BLモノ)が宇宙放送業界最大手ウボ=サスラ・ネットワークでドラマ化されるにあたり、主演の男の子(受け専)を地球人でやりたいというプロデューサーの意向に合う人物を調べた結果、美少年の真尋に白羽の矢が立った。一大プロジェクトなので、真尋の所属プロダクションを決めるオーディションを主催し、そのための人身売買であった。
上記のような一切の事実がニャル子と真尋の知るところとなり、おまけに用心棒として雇っていたクー子が異空間でやられたことで計画は御破算、ニャル子に脅迫されて事情を白状するが、そんなしょうもない理由で狙われていた事に(あと、ドラマ独自の展開で、首輪を付けて全裸で公園を引き回されるプレイを撮るらしい事に)ブチ切れた真尋の冷酷な一言でニャル子にフルボッコにされた(原作では肉塊に変えられているが、アニメではさすがにR-18Gシーンを放送するわけにはいかなかった模様)。
ノーデンス星人・2(地球の神々の補佐役)
惑星保護機構から派遣されて地球人を精神面から守っている「地球の神々」の補佐役。補佐と称して侵入したニャル夫に主達を皆殺しにされ、自分も心臓を貫かれる。その直前に事態をニャル子に知らせるためにナイトゴーントを送り出すが、ナイトゴーントは勘違いしたニャル子に一撃で斬首されてしまう。