概要
エルクとはヘラジカとアメリカアカシカを指す語。北アメリカ以外ではユーラシア大陸のヘラジカをエルク、北米のヘラジカを「ムース」と呼ぶ。北アメリカではアメリカアカシカのほうをエルクと呼ぶ。
ちなみにイホウンデーがはじめて登場する作品を描いたクラーク・アシュトン・スミスはアメリカ合衆国カリフォルニア州出身である。
アルケタイプと呼ばれる存在である「ズィヒュメ(ザイヒューム)」の娘。ナイアーラトテップの妻ともされる。スミスが両神の結婚関係について尋ねるロバート=バーロウ(後のラヴクラフトの遺稿管理人)に、その考えを(魔導士の)プノムからヒントを得た、あるいはほのめかされたのか、と気になっている、と書いた上で「引用」という形で返事したところによると、彼女はその神性の第三期においてナイアーラトテップに「庇護された(covered)」という。
ヒューペルボリアにて崇拝された女神で、その信徒はツァトゥグア信徒と対立関係にあった。ツァトゥグア信徒の魔術師エイボンとイホウンデーの神官との間の争いとその結果二人が戻ってこなかった一件が、住民たちによってツァトゥグアに有利な形で解釈され広まったのが契機となり、イホウンデー信仰は劣勢となり、ツァトゥグア信仰が優勢となった。
分類については、神話内での分類をした資料がなく、小説作品内でも断定できる記述がない。
「庇護されなければならず、外なる神のような完全な不滅性を持たない」「旧支配者であるとツァトゥグアと同等の力を持つ」「古代に地球で崇拝され、支配地域を持っていた」などを踏まえると旧支配者ではないかと考えられるが、そもそも分類する必要もないかも知れない。
アルケタイプ ズィヒュメ
スミスの書簡に寄れば、「ズィヒュメ」と呼ばれる存在がイホウンデーの親なのだという。ズィヒュメは「雲のような回転楕円体のヘラジカ」と説明される。両性具有の動物アルケタイプだったとされる。「アルケタイプ(Archetype)」はおそらく、ギリシャ語の「arche(起源、最初)」と英語の「type(型)」から成る名称であろうと思われる。
アルケタイプ
ヴーアミタドレス山地下の住人の例に漏れずその一区画をなす洞窟に棲んでいる。赤道付近の沼地のような湿っぽい蒸気に満ちた洞窟は、太陽が創造される前のような原初の輝きが全てを包み、全てに浸透している。
そこには原初の世界の岩、動物、植物のような形が満ちているが、どの形もはっきりとしないおぼろげなもので、その構成組織も不透明ながら希薄なものであり、霊体に近い。
この洞窟内の全ての存在はアルケタイプであり、万物の原初の形をとどめていると考えられる。
「人類の始祖」と名乗るアルケタイプは現人類を目にして「真の原型より言語道断にも邪道におちいった、かくも粗雑な複製」と、嫌悪と敵意を表した。
アルケタイプは外なる神アブホースの子供たちかもしれない。
アブホース
このヴーアミタドレス山地下にはアブホースという外なる神が棲んでいる。
古の神々と齢を等しくするアブホースはヒューペルボリアのヴーアミタドレス山の地底にある、「粘着質の湾」に潜んでいる。そこは暑く、蒸気と悪臭漂う、薄闇に包まれた汚物まみれの泥に縁取られた水溜まりであり、アブホースの肉体によって一杯に満たされている。
この神は分裂繁殖によって、奇怪な化け物じみた生物を産み出し続けている。産み出され、水溜まりに落ちた生物のうち、岸に泳ぎつけなかったものはアブホースの体の各所に開く口に呑み込まれるが、逃れたものは外に這い出していき、母体から離れるにつれて徐々に大きくなってゆくと言う。
アブホースの領域はどうやらアルケタイプたちのいる場所の先にあるらしく、アルケタイプはアブホースと深い関わりがある可能性が高い。アブホースの生み出した怪物が捕食されずに大きくなった存在がアルケタイプなのかも知れない。
性質と言い、形状と言い、ウボ=サスラに似ているが、ウボ=サスラが地球上生物の原形を産み出したと言うのに対し、アブホースは人類とは全く縁もゆかりもない生命体であるらしく、人類や地上に対する知識や興味は全く無いらしい。
関係性
夫だとされる神性。外なる神。イホウンデーはこの神に庇護されたとされるが、
婚姻もほのめかされ、妻であるとの作者の証言もある。
娘?
親。両性具有であり、単体でイホウンデーを産んだらしい。
ヘラジカの原始の姿であるという動物アルケタイプ。神性かどうかははっきりしない。
祖父母(祖父であり祖母であるという意味で)である可能性がある。
ヒューペルボリア大陸で互いの信徒が対立関係にあった。