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概要

ジョン・ディーの刊行されなかった16世紀英訳版『ネクロノミコン』、その一部(断章)として構想されたテキストである。

『ネクロノミコン断章』ジョージ・ヘイが編集したアンソロジー集『魔道書ネクロノミコン』に収録されている。
ロバート・ターナーやコリン・ウィルソンといったオカルト界のビッグネームが関わった本格派。

『断章』において、以下のアイテムや印のくだりは、、実在の魔道書(グリモワール)風の文体で書かれており、「設定資料集のデータ」や「小説内での描写」とは違った味わいとなっている。

『魔道書ネクロノミコン』日本語訳は学習研究社(現:学研ホールディングス)から刊行された。増補版『魔道書ネクロノミコン【完全版】』には『ルルイエ異本』の再現テキストも収録され、こちらも和訳が出ている。
残念ながら2021年7月現在、いずれも学研側に在庫は存在していない(版元品切れ、あるいは絶版)。

ネクロノミコン断章の設定

『魔道書ネクロノミコン』編者のジョージ・ヘイが調査を行ってたどりついたジョン・ディー博士の未発表文書を、コンピュータ専門家のディヴィッド・ラングフォードがディー博士の暗号書を用いて解読し、ロバート・ターナーが再構成して現代英語に直した、というスタイルで書かれている。
暗号文は既存のオカルト文献、魔術書からのシンボルの挿入の指示を含んでおり、そうして「再現」された『断章』は中世グリモワールとクトゥルフ神話の雰囲気が混じり合った形になっている。

同書収録の「『ネクロノミコン』注解」では、ラヴクラフトは「『ネクロノミコン』とクトゥルー神話作品は、明らかに近代オカルト伝統に多くを負っている」としつつ、『ダニッチの怪』の「ダニッチ」と似た「ドニッチ――ダニッチの古い表記」がディー博士の手紙にあらわれるとし、ラヴクラフトがディー博士の文書を元にブラックウッドやアーサー・マッケンの小説を参考にしたかもしれない、と書いている。
ターナーがつけた序文では「『ネクロノミコン』が実際に古代のものであることが確認されるわけではない」としている。

総合すると、「ラヴクラフトが参照したかもしれない、あるいは同じ起源を持つ中世以降の文書の解読・翻訳」というリアリティー設定になっている。
表紙にあたる冒頭部分には「アル・アジフ」「アブドゥル・アルハザード」というファンにはおなじみのワードがあるが、「ソロモン王が書いたことにされているレメゲトン」のような塩梅である、という解釈も可能。

登場するアイテム


登場する結印

儀式に使用するためのジェスチャー。いずれも左手によって行う。

  • ヴーア(ヴール)の印…旧支配者へ祈祷の際にするべき印。
  • キシュの印…次元の門を開くための印。
  • コスの印…次元の門を封じるための印。
  • 古の印…神話生物が避けていくという印。エルダーサイン、旧神の印とも。同名の刻印もある。

言及される超常的存在

性質や召喚の方法を解説するという形でアザトースクトゥルフハスターシュブ=ニグラスナイアルラトホテップヨグ=ソトース、そして「ヨグ=ソトースの球体」について言及される。
『ネクロノミコン断章』冒頭の「旧支配者とその眷属について」は旧支配者や奉仕種族についての包括的かつ端的な説明になっている。

  • ヨグ=ソトースの球体

外なる神ヨグ=ソトースに寄生する13の存在。「デーモン」と呼ばれ、ゴエテイアに紹介されるソロモン72柱と同名の存在を含む。球体(globe)という名前だが、丸い姿のものは一体もいない。
  1. ゴモリ(GOMORY)…26の地獄の(infernal、「非道の」「忌々しい」とも訳せる)軍団を率いる、魔力ある宝石と護符の知識を持つ黄金の冠を被ったラクダのような存在。元ネタはグレモリーか。
  2. ザガン(ZAGAN)…33の軍団を率いる、海の神秘を召喚者に教える大きな牡牛あるいは恐るべき王の姿の存在。元ネタはザガンか。
  3. シュトリ(SYTRY)…60の軍団を率い、未来についての知識を教える、偉大な君主の姿の存在。元ネタはシトリーか。
  4. エリゴル(ELIGOR)…60の軍団を率い、戦勝のための知識と来るべき戦いについて教える鉄の冠を戴く赤い男の姿の存在。元ネタはエリゴールか。
  5. ドゥルソン(DURSON)…22のデーモンを使い魔とし、全てのオカルトの秘密を明らかにし、過去の事柄を明かす、ワタリガラス)のような姿の存在。DURSONという悪魔は知られていないが、一文字違いのプルソン(PURSON)ならいる。
  6. ウアル(VUAL)…あらゆる古代言語に通じた暗雲のような姿の存在。元ネタはウヴァルか。
  7. スコル(SCOR)…召喚者の命令に従い金をもってくる白蛇のような姿の存在。元ネタはスコルベノト(Succor-benoth)か。
  8. アルゴル(ALGOR)…全ての秘密を知り、偉大な王達、君主たちの愛顧を得させることができる、ハエの姿の存在。寒気、悪寒を意味するalgorとスペルは同じ。グリモワール『精霊の職務の書(Liber Officiorum Spirituum)』スローン3853写本版ではアロセスの異称として登場する。
  9. セフォン(SEFON)…宝が隠された場所を空かす、緑色の顔の男の姿の存在。元ネタはバールゼフォン(バアル・セフォン)か。
  10. パルタス(PARTAS)…薬草(ハーブ)や石の効用を教え、召喚者を不可視にしたり視界を取り戻すことができる存在。大きなハゲタカの姿をしている。『精霊の職務の書』ではフォラスの異称として言及される名称である。
  11. ガモル(GAMOR)…人間のような姿の存在。偉大な人々からの好感を得る方法を教え、宝物を守るあらゆる精霊を追い払う力を持つ。
  12. ウムブラ(UMBRA)…巨人のような姿の存在。お金の場所を移動させる力、あらゆる女性の愛を得る力を持つ。名前はラテン語で「」を意味するUmbraが由来か。
  13. アナボス(ANABOTH)…黒魔術で召喚者を狡猾にする力を持ち、召喚者たちの邪魔となる悪魔達を退け、奇妙な事、隠された事柄について教える存在。姿は黄金のヒキガエル旧約聖書『列王記上』に登場する人物ナボテ(ナボト)のアルファベット表記がNabothだが、こちらは暴君アハブに抵抗する義人である。

関連項目

クトゥルフ神話

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