概要
クトゥルフ神話に登場する架空の魔道書。和名では『死霊秘法』とも。
”魔道書(魔導書)”と言えばコレ、と言われる程の知名度を誇っている。
アラビア語原題は『アル・アジフ』(キタブ・アル・アジフとも)。ネクロノミコン (Necronomicon)は西暦950年にギリシア語に翻訳された際の書名。
「アジフ」はアラビア語で「風が吹いた時に鳴る砂の音」「雷鳴・轟き」「弓が唸る音」を表し、悪霊が立てる音とされた。
730年、ダマスカスにて、狂える詩人アブドゥル・アルハザードが執筆。アラビア語の原書であり、現存しないとされている。その後738年、アルハザードは路上で白昼かつ衆人環視の中、見えない怪物に貪り食われたという。
950年、コンスタンティノープルのテオドラス・フィレタスが「ネクロノミコン」の表題でギリシャ語に翻訳。1050年に総主教ミカエルにより焚書指定を受ける。
1228年、オラウス・ウォルミウスが、ギリシャ語版をラテン語に翻訳。1232年に教皇グレゴリウス9世により禁書指定を受ける。
その後も14世紀から17世紀にかけてギリシャ語・ラテン語が刊行。1560年頃にはジョン・ディーによる英語訳が行われたが製本されずに散逸している。
写本や翻訳を重ねるうちに情報が抜け落ちたり劣化して散逸している。収蔵状況が判明しているのは5冊で、15世紀ラテン語版が大英博物館、17世紀ラテン語版がパリ国立図書館、ハーバード大学ワイドナー図書館、ミスカトニック大学付属図書館、ブエノスアイレス大学図書館に収蔵されている。
この書名はクトゥルフ神話からも離れて一人歩きを始め、アメリカの古書店がジョークでこの本を目録に載せて注文が殺到したり、各種魔術ファンタジーで魔導書の一つとして示されたりと様々な場所で活躍(?)している。
冊数が少ないはずなのにやたらと出てくるとか、完全版を再現したとか、実はアル・アジフが残っていたとか、そのような報告が今も絶えない。