概要
マグマ大使やスペクトルマンで知られるピープロダクションが制作した特撮ドラマ。1973年10月から1974年3月にかけてフジテレビ系列局(ただし一部系列局除く)ほかにて放送された。
快傑ライオン丸および風雲ライオン丸の後番組であり、獣の顔を持つヒーローが主役であるが、本作は現代を舞台とした怪奇アクションドラマである。
アジトに隠れた悪の組織、幹部、怪人、戦闘員、対抗集団、多用されるバイクアクションも含めて、ピープロ流儀の仮面ライダーといった雰囲気を持つ。
ストーリー
サハラ砂漠では、滝川博士が率いる考古学調査隊が調査を行っていた。滝川博士の息子・剛は、父を追いやってくるが、突如現れたムー一族のムー原人が一人、砂原人スナウラミによって殺害されてしまう。
息子を助けるべく、博士は剛にミイラ蘇生用の人工心臓SPを移植し、蘇生させる。
一命をとりとめた剛は、父からお守りとして虎のデザインが施された古代エジプトのペンダントを託された。
しかし、滝川博士たちは、一万四千年前に封印された『ムー一族』の封印を解いてしまい、復活したムー原人たちの手により殺されてしまった。剛も命を狙われるも、ペンダントの力を用いてなんとか切り抜け、同時に「鉄人タイガーセブン」への変身能力を身に付ける。
この力で、父の仇を打つべく、そして人類への復讐と地上制覇を企むムー一族と戦う事を決意する剛。
しかしそれは、孤独かつ、あまりに過酷な戦いの始まりでもあった。
登場人物
本作以前に検討されていた超能力アクション企画「パーフェクターMW」の設定が流用されていて、メインキャラの名前には1~6の数字が入っている。
- 滝川剛
考古学者の父親に反発する形でオートレーサーとして活躍していた。父親を追ってサハラ砂漠まで行った時、ムー原人によって重傷を負う。父親の手によって人工心臓SPを与えられて蘇生し、「お守り」として与えられたペンダントによって、タイガーセブンに変身出来る力を授かるのだが…
愛車はスズキGT750(風見志郎が普段乗ってたバイクと同型)。
- 高井戸博士
滝川博士と共にムー原人の研究をしていたが、この事は世間一般から殆ど理解されず、異端視されている。それでも自転車屋に偽装した基地からムー原人を追跡捜査していた為、ギル太子からも狙われていた。
- 北川史郎
高井戸博士の助手の一人。高井戸グループの熱血漢で騒々しい体育会系で、滝川博士から勘当されていた剛を快く思っていない、敵より邪魔な味方といったポジション。ある回では、怒りに身を任せ、ムー原人の一人・海坊主原人を素手で倒してしまった。悪人ではないが独善的で身勝手な人物で、本人もそれを自覚はしている。
- 林三平
北川の後輩だが、三枚目のムードメーカー。ちょっと弱気な所もあり、ムー原人の標的になってしまう事もあった。
- 青木ジュン
高井戸グループの紅一点。滝川博士の親友である青木博士の娘で、父の死後は弟と共に滝川家に住んでいた。
- 青木次郎
ジュンの弟で、少年でありながらもムー原人に対抗する勇気を持つ。(演じた少年は成長後「電脳警察サイバーコップ」で主人公を演じている)
- 滝川博士
サハラ砂漠でムー原人の遺跡を発見する。封印を解いて中に入った所を、ムー原人に殺害されてしまう。
剛がペンダントの力で変身する正義の超人。9話からは死別した女性のスカーフを首に付けている。主な技は、右手に装着するファイトグローブで敵を切り裂くタイガーカッター、ファイトグローブを投擲して切り裂くタイガーグローブカッター、額から出す破壊光線タイガーヘッドビーム等。
実は、メインタイトルには「金失人(鉄人)」ではなくて「金矢人タイガーセブン」と、敢えて誤記されている。貧乏ピープロとしては、金を失うのは辛い。
詳細は、当該項目を参照。
本作の敵。一万四千年以上前に封印され、復活し、地上制覇を企む。「ギル太子」の指揮のもと、擁している怪人「ムー原人」とともに人類に挑戦する。
詳細は当該項目を参照。
評価・内容(ネタバレあり注意)
…一見するとしごく真っ当なヒーローものに見えるが、本作の特徴は、鬱展開の多さ、および、ヒーロー番組を否定しかねないほどの異常なリアルさである。
その内容の一例は、
- 第一話で主人公・滝川剛は敵のムー一族によって殺されてしまい、蘇生のため父から人工心臓を与えられるが、その父もムー原人の首領に殺害されてしまう。
- 剛とその仲間達はムー一族の危険性を社会に訴えるが相手にされない。場合によっては警察に疑われてしまう。
- 剛は自分がタイガーセブンであることを隠しているので仲間から不信の目で見られ孤立してしまう。
- ヒーローが運転するバイクが子供を轢いてしまう。
- 少女と心通わせた怪人が、裏切り者として少女と手を取り合うように殺される。
- 二人が殺される姿を見た剛は、自分の戦う理由を見失って自暴自棄になり、戦いを投げ出し逃げてしまう。しかも彼が失踪している間に、理解者である博士が殺されてしまう。
- 最終的に復帰してムー一族を倒すも、人工心臓が寿命を迎えて余命数日となってしまっており、最後まで剛の死は回避できない。
- 最終回は、仲間たちに正体を明かし、ヒロインに彼女の愛に応えられないことを詫びた後一礼して皆の前から去っていくところで物語が終わる。
※ちなみに最終回「今蘇るタイガースパーク」撮影現場は観光名所であった。
このように、それまでのヒーロー作品では絶対やらないような設定を盛り込んだ意欲作ではあったが、メイン視聴者の子供達にこんな重い物語が受けようはずもなく、半年で終了した。次作の電人ザボーガーではこの点を反省してか一転して爽快な熱血ドラマとしている。
決して成功した作品ではないが、その異様な雰囲気から一部ファンの心を掴んで離さない怪作として語り継がれている。打ち切られたからこそテンションが高いまま最終回まで突っ走れたとも言える。
なお、このような内容になった原因の一因は、撮影費を抑えるため。低予算をカバーするために、ストーリーをシリアス路線で徹底したのである。
前企画「パーフェクターMM」
本作は、ピー・プロダクションの未製作企画「パーフェクターMM」がベースとなっている。
このタイトルは複数存在し、最初は1967年に書かれた。東海テレビの依頼により企画されたもので、内容は女性アクションもの。『マグマ大使』に登場したモル役「應蘭芳」氏の、スピンオフと想定されていた。
のちに、1973年に改訂版が書かれる。こちらも設定が異なるものが二種書かれており、超能力を題材としていた。また、「怪奇色」を押し出しており、ヒーローのコスチュームの稲妻模様など、多くがタイガーセブンに転用されている。
関連タグ
氷河戦士ガイスラッガー/無敵超人ザンボット3/魔法少女まどか☆マギカ:鬱展開、重たい内容などの点で共通。
ウルトラマンネクサス:上記の3作品と同様の傾向に加えて、本来の視聴者層を蔑ろにしたシナリオで早期の打ち切りと放送期間の短縮化が決定、それに伴うスケジュールの変更によって結果的に良い終わり方を迎えられた特撮作品。
高際和雄:本作の鬱展開の大部分を担った担当脚本家。倉本聰のお弟子さんであるからか、作風は師匠譲りの影響が強い。ちなみに倉本は「大都会-闘いの日々-」で刑事ドラマの常識を覆すような鬱展開を連作、彼が主宰した富良野塾出身の脚本家たちも「ゴリラ・警視庁捜査第8班」で同様の作風を展開、さらには孫弟子の扇澤延男もメタルヒーローシリーズや「名探偵コナン」で同様の作劇を乱発した。
錦木千束:近年の作品『リコリス・リコイル』の主人公。『人工心臓を移植』『余命が短い』点が、タイガーセブン劇中の剛と共通。しかし、タイガーセブンが終始辛い展開で、そのために性格も暗くなってしまい、仲間たちと理解できずに終わった剛に対し。こちらは余命を知っても終始明るく振る舞い、仲間とも信頼関係を結んでおり、大団円を迎えた点が対照的である。
井ノ上たきな:上記の副主人公。タイガーセブン劇中の北川史郎に該当するポジション。しかし、史郎は最後まで剛を許さず和解せずに終わったのに対し、こちらは作中にて千束を徐々に理解し、最後には堅い絆で結ばれた点が対照的である(ただし、剛と史郎を演じた役者たちは、仲はとても良かったらしい)。