恐るべきガイゾックが人類抹殺を狙う時、巨大なロボットが甦る。「無敵超人ザンボット3」今、戦いの中に立つ!(番組宣伝CMより)
解説
日本サンライズ(後のサンライズ)が最初に手掛けたオリジナルアニメ。名古屋テレビ放送などで放送された。
東京・大阪以外のテレビ局がアニメの制作にかかわったのは異例で、メ〜テレが制作にかかわったのは「六法やぶれクン」以来2作目。
監督は富野喜幸。脚本には五武冬史(鈴木良武)、荒木芳久、吉川惣司、田口章一(田口勝彦)、星山博之、キャラクターデザインには安彦良和、メカデザインには平山良二(藤原良二)、大河原邦男、スタジオぬえ、各話作画スタッフには青木悠三、井口忠一、金田伊功、木下ゆうき、佐々門信芳、美術監督には中村光毅(デザインオフィス・メカマン)がそれぞれ担当した。
作品解説
「もしも現実の日常生活に突然、侵略宇宙人とそれを迎え撃つ巨大ロボットが現れた時、社会はどう反応するのか?」
という現実的なテーマが敷かれているのが本作の大きな特徴である。
本作において、「敵を倒せば平和が訪れ、人々の生活は全て元通り」などというご都合主義的なお約束は一切存在せず、主人公達の戦いの余波や流れ弾によって街や建物は次々に破壊され、巻き込まれた一般市民達も容赦なく押し潰され、焼かれ、そして無残に死んでいく。
「人間爆弾」を始めとした非人道的ながら合理的な敵の戦闘手段、戦うことに恐怖する主人公達、正義の味方のはずの主人公達が守るべき人間たちを意図せず巻き添えにしてしまう展開、それによって家も家族も生活も喪い、やり場の無い怒りを主人公達にぶつける市民達、『正義とは何か、そして誰が正義を決めるのか』と疑問を投げかける結末など、熱血スーパーロボット系アニメの流れを汲みつつも後のリアルロボット路線に通じる徹底して容赦ないシリアス展開が話題を呼び、「伝説巨神イデオン」と並ぶ「黒富野」の代表作と評された。
富野監督曰く、『勇者ライディーン』での失敗のリベンジマッチであると同時に、商業ロボットアニメの体裁を取り繕いながら、どこまで自分のやりたいことをやりたいように表現できるのか実験してみたかったとのこと。富野は企画段階からスポンサーや放送局に対し、「戦闘シーンは何分必要なのか」「武器は何種類出せばいいのか」など、あらかじめ全ての要求や条件を提示させて、それを受け入れた上で本作のストーリーを構築していった。
主人公達が市民たちから迫害される展開や「戦っていた敵は本当に”悪”だったのか?」という結末は、巨大ロボットを手放しで善いもの扱いしていた当時の風潮に対する疑義や、従来の巨大ロボット物のパターンを破壊する意図を込めたという。
ちなみに富野は最終回の放送後、「プロダクション、スポンサー、広告代理店が真っ青になった」と語っている。
それまでの男児向けロボットアニメとは一線を画する作風ではあったものの、本作は大ヒットを記録し、玩具の売上も当時のスーパーカーブームとラジコンブームに押されて苦境に立たされていたキャラクター商品市場にありながら、十二分に大成功と言える数字を叩き出した。
この商業的成功により、スポンサーのクローバーは男児向け番組を年1本のペースで提供していくという方針に転換し、翌年の『無敵鋼人ダイターン3』の制作とさらなる成功を経て、あの『機動戦士ガンダム』へと繋がっていく。
作画面においては金田伊功が活躍し、「金田パース」や「金田光り」といった独自の演出を周知させるきっかけともなった。
一方、同時に作画の乱れやカットごとのばらつき、作画ミス・配色ミスが多数見られ、いわゆる作画崩壊アニメとしても有名である。
諸般の事情から作画監督が置かれなかった上、キャラクターデザインの安彦良和も『宇宙戦艦ヤマト』の作業で本作の作画には参加できず、あまりの逼迫ぶりからアニメーター経験の無い富野までもが原画作業に参加せざるを得なかったという有様であった。富野と安彦の両人はサンライズのやり方に苦言を呈し、さすがにサンライズも次作の『ダイターン3』からは作画監督を置くようになった。
その最終回は元イタリア代表で、ACミラン所属のサッカー選手フィリッポ・インザーギにトラウマを残したといわれている。
キャラクター
神ファミリー(じんファミリー)
仲間(ブスペア&香月組)
ガイゾック
キラー・ザ・ブッチャー(CV:島田彰)
ロボット
神ファミリー
ザンボエース / ザンバード
ガイゾック
血統に関する謎
神ファミリーの三家族の血統に関して明らかになっている部分は「勝平をはじめとする子供世代はいとこ同士」、「兵左衛門と梅江は夫婦ではない」と言う二点であるが、前者を成立させるためには三家族の親世代たる「源五郎・花江夫妻」、「大太・すみ江夫妻」、「久作・由美子夫妻」の三組の夫妻の片割れが三人兄弟・姉妹でないと成立しにくくなるのだが、その辺りは全く語られていない。
また、後者に関してはスタッフ・キャスト陣にも認識の齟齬があったようで兵左衛門と梅江がビアルⅡ世で特攻をかけた際に恵子が「お祖母ちゃん…!」と泣き崩れるくだりがあるなど首を傾げざるを得ない部分が多々存在する。(そこまで細かく設定していなかった、と言えばそれまでではあるが…。)
もっとも、それは三家族が一つの大家族とみればそこまで不思議なことではなく、親戚の祖母であっても同じ家族とみれば辻褄が合うといえなくはない。逆に言えばそれだけ一族の絆が戦いを通じて深まっていたということなのだ。
放送枠について
誤解されがちなので記載するが、当時のメ~テレ土曜夕方5時半枠はローカルセールス枠で、テレビ朝日では金曜日夕方6時に、朝日放送では月曜日夕方5時にそれぞれ放送されていた。また、テレビ朝日系マストバイ(単独局)は当時8局しか無かった。
初期案
本作の初期案は「戦国時代を舞台にしたロボットアニメ」案があり、主人公名も「神天平」だった。
ザンボット自体デザインも難航し、ライディーン、コン・バトラーV、グロイザーX等に似たデザイン案もあった。
もしも、戦国時代の舞台案で世に出たら、別の意味で衝撃的な展開・結末になったに違いない。
冒険王漫画版
本放送当時、今は亡き秋田書店刊の児童向けテレビ雑誌冒険王で漫画版も全6話が展開された。作画は岩田廉太郎が担当しており、もともと手塚治虫のチーフアシだったため、絵柄が手塚作品そっくりである。
原作アニメ版と異なる点は
・香月、アキ、ミチの一家は序盤で全員死亡
・アキだけでなく、ミチも人間爆弾にされてしまい、勝平と香月を逃がす為に囮になり2人共爆死するが、数多くのガイゾック兵を道連れにする。
・ガイゾックのボスはブッチャーであり、ガイゾックのコンピュータドール8号は未登場
・最終決戦では原作とは逆に勝平、宇宙太、恵子の3人は生還。3人の父兄達が海で気絶している3人を背負い、それぞれ労いの言葉を掛けその後を描きつつ完結。
幻の小説版
ガイゾックとの戦いに勝利した勝平の元へと駆け寄ってくる群衆の達の本当の目的は「異星人最後の生き残り、勝平を抹殺するために…」と勝平が群衆に抹殺される暗示を予感させる結末だったものの、富野監督は「未発表のまま原稿を墓場まで持って行く」との事…。
関連イラスト
無敵超人ザンボット3 に関するイラストを紹介してください。
関連動画
関連タグ
名古屋テレビ(メ〜テレ・制作局)
海のトリトン:富野由悠季監督のデビュー作。最終回で善悪の逆転構図が現す共通点がある。
マジンガーZ:言わずと知れたロボット作品の金字塔にして元祖。本作で大きく注目されている「戦闘の余波での被害・犠牲者の発生、それにより抗議してくる者達」、「戦闘の余波で身内が死んでしまった為に、主人公のもとへやって来て報復行為に及ぶ」といった要素は実はこの作品の東映アニメ版で既に試みられている(実は市民達からの抗議は変装した敵幹部の扇動によるものという、策略によるものだが)。
グロイザーX :同じ民間人の防衛チーム繋がりで、アニメの監督はザンボットの第3話を演出した。
氷河戦士ガイスラッガー: 亡国の戦士繋がりで、スタッフが共通で、人間爆弾も登場する。
無敵王トライゼノン: 選ばれた一族が協力して地球を守るが、本作のオマージュでありながらコミカル色が強く、ゼノパレスの方が母星が滅び、移民の為に飛来して来た。
蒼穹のファフナー :亡国の戦士かつ民間人の防衛チームが家族ぐるみで戦うロボットアニメ繋がりで、本作の台詞の中にザンボット3へのオマージュと思える台詞が登場する。