概要
手塚治虫と言えば漫画の神様の異名を持つ漫画家として知られているが、アニメ原案に携わったこともあれば、小説を書いたこともある。そういった創作活動全てを包括する概念が手塚作品というカテゴリである。
特徴
手塚作品は手塚スターシステムの採用により、同一のキャラが全く別の役を行うことが有名である。
まとまった作品集として、講談社の『手塚治虫全集』全400巻がある。しかし、全集ではあるが、未収録の作品が多い。例えば、権利上の問題がある『バンビ(後に問題が解消し復刻)』や『キングコング』、他人が代筆した『マグマ大使 サイクロプス編』や『丹下左膳 乾雲坤竜の巻』、おそらく打ち切り・未完や不出来のため手塚が収録しなかった『ハリケーンZ』や『W3(少年マガジン版)』などが挙げられる。特に問題がない未収録作品は、2009年に改めて『手塚治虫文庫全集』全200巻が刊行された際にある程度は新しく収録されているが、表現上の問題を抱えた『泥だらけの行進』『長い窖』『快楽の座』『妖怪探偵団』などは特に今後も再収録は難しいと思われる。
未収録どころか幻の作品もある。長すぎると出版社に断られて削られた『来るべき世界』の没ページや、完成原稿を紛失してしまったという『宇宙狂想曲』の未発表部分、作者存命中の作品総目録にその名が記載されるも実物が確認されていない『モモーン山の嵐』などは、もし発見されれば手塚ファン的には大事件であろう。ちなみに、手塚治虫は生前「俺には、だれにも知られていない本が一冊あるよ」と語ったらしいが、一体それはテンション。
手塚治虫は生涯かなりの量の作品を発表している。電子書籍ではeBookJapanが漫画以外の小説、対談集なども含めた全400巻、約10万ページ、7GBの全集を電子化している(外部リンク)が、電子書籍になってない作品・未収録も含めると約15万ページにも及ぶ。どういうことなの…。
さらにさらに戦災で失われたアマチュア時代の作品や未発表作品が少なくとも数千ページ以上ある事が確実視されている…。わけがわからないよ。
なお手塚のプロデビューは19歳、以後60歳で死ぬまで漫画を描き続けたが、0歳から毎日7ページ漫画を描かなくては、60歳までにこの量の作品を発表する事は不可能である。
また、手塚治虫は作品の単行本化の度に手を入れ、より良いものにするべく、様々な改変を行ったことで有名である。そのため、手塚の生前に出版された作品は連載時と単行本時では内容が大きく異なっているのもしばしばで、例えば『奇子』『ロック冒険記』などは初出からラストが変更されており、『こじき姫ルンペネラ』という短編では、ヒロインを全ページショートヘアに描き直すという妙に凝った改変をしたこともある。特に伝説的作品『新寶島』は手塚にとって不本意な内容であったため、後に完全リライトされて全集に収録された。中には、表現上の問題などでそのまま収録できなかったため、改変・改題されたというものもある(『火の鳥 羽衣編』『死に神の化身』『ある監督の記録』など)。
より良い内容にするための描き直しではあるが、『ジャングル大帝』などは原稿紛失で描き直された後年の単行本より、連載版のほうを評価するファンも多い。近年は、様々な手塚作品の雑誌連載版も復刻されたりしているので、単行本と比較してどちらが良いか読み比べてみると面白いかもしれない。
生原稿や初期の単行本の初版には一千万円以上ともいわれるプレミアが付いており、手塚伝説を確固たるものにしている。
おすすめの作品の紹介
手塚治虫が生涯に残した漫画作品は非常に多く、これから読む人に向けておすすめな作品を以下に紹介する。
児童向けの作品
児童漫画は、手塚が1960年代前半までに手掛けた作品が多い。冒険・活劇ものなら『鉄腕アトム』『ロック冒険記』『キャプテンken』『W3(ワンダースリー)』、大河的な長編では『ジャングル大帝(できれば漫画少年版)』『来るべき世界』『0マン』などが代表的である。『バンパイヤ』も従来の手塚児童漫画のカラーから脱した重要な作品。
ほか、『サボテン君』『ぼくの孫悟空』『光』『ふしぎな少年』『スリル博士』なども痛快で面白い。より幼年向けでは『ガムガムパンチ』『ロップくん』なども楽しい内容である。
短編では『ライオンブックス(おもしろブック版)』『SFミックス』などが面白い作品の揃ったシリーズで、また『太平洋Xポイント』『地球の悪魔』など、50年代初期の雑誌付録作品は絵も話も充実している。
少年向けの作品
少年漫画では『ブラック・ジャック』が特に有名。短編連作のため読みやすく、手塚が最も得意とする悲劇とヒューマンドラマを巧みに組み合わせたストーリー展開の妙が味わえるとして、手塚作品の中では最も読者を得ている。他に手塚作品最大の大長編である『ブッダ』、ライフワークである『火の鳥』の知名度が高い。また上記3作に比べ知名度はやや下がるが『七色いんこ』『三つ目がとおる』『ドン・ドラキュラ』などもキャラが魅力的であるとしてファンの間では人気は高い。ほか『シャミー1000』『百物語』『ノーマン』『ユフラテの樹』なども面白い。
『どろろ』『未来人カオス』『ブッキラによろしく!』『ミッドナイト』などは打ち切り等の理由でストーリーの終了が唐突なのが惜しいが、キャラや設定は良く練られており名作エピソードもある。スランプ期の『アポロの歌』『ダスト8』『アラバスター』などは、全体的に暗いが印象的な場面も多い。
短編では『安達が原』『るんは風の中』『雨降り小僧』『紙の砦』などの名作がある。また『赤の他人』『アトムの最後』などは恐ろしい世界が描かれ、印象的な作品。『ウオビット』はバンパイヤとあわせて読むと味わい深い。中でも『ザ・クレーター』は、練られた作品が多く収録された短編シリーズである。
少女向けの作品
少女漫画作品は手塚作品としてはハードな展開が少なく、明るいラストを迎える作品も多い。特に50年代の作品は可愛らしい絵柄に加えて、1コマ1コマが丁寧なタッチで描かれているのも魅力である。
幻想的な物語が多く、『リボンの騎士(なかよし版)』『エンゼルの丘』『ユニコ(リリカ版)』などが代表的な作品である。
ほか、『ナスビ女王』『ピンクの天使』などの現代ファンタジーから、『こけし探偵局』『カーテンは今夜も青い』といったミステリー、『あらしの妖精』『つるの泉』『母の眼ばなし』などの民話風作品まで題材は多様である。特に過去の外国を舞台にすることが多く、『虹のプレリュード』『火の鳥(ギリシャ・ローマ編)』『赤い雪』『舞踏会へ来た悪魔』『虹のとりで』など、ロシアからエジプトまで幅広く扱っている。
大人向けの作品
大人向けの作品は、現実の歴史や社会問題などを扱っているものが多く、全体的に暗く殺伐としたものがほとんど。暴力や性描写も多めである。
その中でも『アドルフに告ぐ』『陽だまりの樹』や『シュマリ』など近代の歴史を描いた作品がとっつきやすく、特に前の二つは(手塚の大人向け作品としては)内容もそれほど陰惨ではなく、ストーリーが緻密に構成された晩年の傑作として評価が高い。
『きりひと讃歌』『奇子(あやこ)』『人間昆虫記』『MW(ムウ)』などは人間の精神的暗部や社会犯罪を描き、ドロドロとした内容だがそこに惹きつけられるファンもいる。『鳥人大系』もブラックユーモアがたっぷり味わえる作品。
『ばるぼら』『地球を呑む』などは、途中からテーマが変わったり迷走気味だったりと欠点もあるが、ミステリアスなストーリーは魅力的である。
風刺漫画や4コマ漫画風タッチの作品もあり『フースケ』『ひょうたん駒子』『雑巾と宝石』などのごく軽いものから、『人間ども集まれ!』といった長編SFにまで挑戦している。
大人向けの短編漫画は『ペーター・キュルテンの記録』『最上殿始末』『料理する女』『バイパスの夜』など、冷たくダークなものが多い。中でも『空気の底』は各話の出来も安定していて、手塚自身も気に入っていた短編集である。
その他の作品
初期に発表した『マァチャンの日記帳』『ぐっちゃん』などは起承転結がしっかりしていて良質な4コマ漫画作品である。主婦雑誌に連載された『ごめんねママ』や新聞の日曜版に連載された『どろんこ先生』なども、ほのぼのと面白い良作。厳密には漫画ではない絵物語だが、謎の男と黄金に輝くトランクを巡るサスペンス『黄金のトランク』も面白い。
代表的な作品
- 五十音順。
- 漫画・アニメ併記。
- pixivに投稿のあるものを抜粋。
- 太字は代表作と呼ばれることが多いもの。
手塚治虫以外の手によるリメイク等
リボンの騎士>RE:BORN〜仮面の男とリボンの騎士〜他
他多数
番外>SymphonyOfTheBlood等、今も無数ならきっとこれからも無数な二次創作達。
ちなみに松本零士は、火星博士を真似して火星悪魔なんて作品を描いた経験がある。
作品の著作権が切れるのは2039年12月末だが、一時期期間限定で合法的に二次利用可能とし、広く一般から作品を募るという超画期的な試みが「人知れず」行われていた。(外部詳細)
関連イベント
定期的ではないがオンリーイベントも開かれる事があるようだ。