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概要編集

 NHK BS2のマンガ評論番組で、手塚治虫について、「どの作品にも出る」手塚作品の黒い部分を指して、言ったものが最初と思われる。その際に「黒手塚百パーセントで描かれた作品」として、『鳥人大系』があげられた。

また、そのようなダークな要素の強い手塚の作品を「黒手塚作品」と呼んだりする。


 漫画の神様手塚治虫は、ヒューマニズム溢れる作品を描いた人物というイメージで一般的に知られている。しかし、その一方で強いニヒリズムを抱えた人物でもあり、策謀や背徳などの人間の心の闇、強姦や殺人などの社会犯罪、グロテスクで過激な表現など、「健全」「教科書的」「いい子」といった手塚作品のイメージを払拭するような、暗く殺伐とした「黒い」作品も多く描いている。特に、60年代後半~70年代初期は手塚の暗い精神状態が反映されたらしく、いわゆる「黒手塚」作品が多い。


他人を騙し陥れて成功していく女性が主人公の『人間昆虫記』、戦後の田舎社会を舞台に少女監禁や近親相姦などセンセーショナルな題材を描いた『奇子』、良心を破壊された美青年が数々の社会犯罪を引き起こしていく『MW』、主人公の受難の旅と「人間てんぷら」が何とも衝撃的な『きりひと賛歌』、実在したドイツの殺人鬼の伝記的作品である『ペーター・キュルテンの記録』、老人向け精神病院内での狂気と殺人を巡る『料理する女』などが黒手塚作品としてよく挙げられる。


青年漫画は暗い作風が目立つが、手塚本人は「なぜか、ぼくの青年マンガには夢のひろがりがなく、たのしさにかける、といった読者がいます。はっきりいえば、ぼくは青年マンガでは、そういうものをつとめて消そうとしているのです。ぼくにとって青年マンガは、アトムやレオのような少年マンガの夢のアンチテーゼの産物のつもりなんです。(『鉄の旋律』あとがき)」と語っている。


少年漫画でも、救い無き人類文明の未来を描いた『アトムの最後』、鬱屈した少年の精神が馬の怪物となって暴走する『ボンバ!』、不完全に透明な恐ろしい姿となった男が世の美しいものに復讐していく『アラバスター』など、ダークな作品が発表されている。


しかし実際は「黒手塚」「白手塚」なんてない編集

上記のことから手塚作品は「白手塚」「黒手塚」に分けられることがしばしばある。ネットでは手塚の作品紹介に「白手塚作品の〇〇」と言った使われ方も多い。


しかし、これの使われ方は少し間違っている。


すべての黒手塚作品には白い部分が含まれているし、白手塚と言われている作品も多かれ少なかれ黒い部分が含まれている。


鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』は上記の手塚自身の発言のせいもあって、白手塚の代表作品だと思われがちだが、実際に読んでみるとアトムは産みの親の天馬博士に捨てられているし、レオの父のパンジャは人間に殺されているなど、悲劇がストーリーの発端となっている。


逆に、黒手塚作品の代表的とされる『MW』は主人公が最愛の人物の死に涙を流すという印象的な場面もあり、上記の『鳥人大系』も殺伐とした描写の一方で温かい情愛も端々で描かれている。


そもそも手塚作品を「白」や「黒」に分けることなんてできないのだ。


白100%の手塚作品も存在しないし、黒100%の手塚作品も存在しないのである。

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