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概要編集

手塚治虫グロテスクで醜悪な作品を描きたいと思いついて連載された作品。

連載を始めたものの、当時の手塚の精神状態は割と追いつめられていたらしく、本人はこの作品を気に入っていない事を公言している。

しかし緻密な筆致で描写されるアクション性、ストーリー性、共に読者からの評判はそれなりに有り、ともすれば平凡と受け取られかねない「本当の美とは何か」「外見の美醜よりも心の美醜」とも言うべきテーマを説得力溢れる描写で展開、そして変態化がさらに進行したロック・ホームは正に名人芸である。

近年kickstarterにて英語版出版の為のクラウドファンディングによる資金調達計画が達成された(外部リンク


「アラバスター」とは雪花石膏のことであり、主人公の偽名でもある。宝石のような華美さもなく、くもりガラスのような陰気さもない至高の物質として、作中では象徴として用いられている。

あらすじ編集

米国の黒人金メダリスト、ジェームズ・ブロックはハンサムな顔とその実績から英雄的な存在だった。

しかしある日慕っていた白人女優のスーザンから黒人であることを理由に手酷くフラれ、さらに彼女の嘘の証言が原因で刑務所送りになってしまう。

今までの名誉をすべて失い絶望の淵を彷徨う彼は、死刑囚の科学者F博士に託された透明化の光線銃に救いを求め、黒人でも白人でもない透明な存在になろうとする。

だが、光線銃の威力に耐え切れず、結果的に皮膚だけが透明化した化け物のような姿になってしまった。

以降、彼は世間から行方をくらまし、アラバスターと名乗り、世界のありとあらゆる「美しいモノ」に対する復讐を始める…。

キャラクターとしてのアラバスター編集

アラバスター

本名ジェームズ・ブロック。

何と言っても特徴的なのはその外見である。元々は純朴そうな美男子であったが最早その面影はなく、半透明の体からは血管だけが透けて見え、さながら出来の悪い人体模型のような外見である。

しかし元オリンピック選手の肩書は伊達ではなく、凄まじい身体能力を有し敵の動きを見切りピーナッツのような小さなものの礫で骨折するほどの打撃を与える特異な技術を持ち、外見も相まってまさに怪人である。

既存の価値観による美しいモノ全てを憎悪しており、醜いモノこそ美しいと嘯く。


しかし、初出時点の設定上では、佐野 次郎(さの じろう)という日本人で、顔に大きなアザを持つ日米ハーフの青年であり、容姿が大きく異なっており、第1話の出来事も全て日本で起きたという設定である。

また、次郎(ジェームズ)を転落させるきっかけを作った元彼女・スーザンも元々は麗子という日本人として描かれており、麗子(スーザン)がフった理由も出自や人種ではなく顔にできたアザをバカにしたためであった

このため、アラバスター独自の美意識に至るまでの経緯が初発表時と単行本では大きく異なっており、これらの変更についてはファンの間でも賛否が分かれている。


登場キャラクター編集

亜美

亜美

F博士の孫娘であり、本作のヒロイン

胎児のときに母親が透明化光線を受けたため遺伝子が変質し、透明人間となって生まれた。ただし瞳だけは透明化しなかった。

その都合上、作中では半分以上全裸で過ごしているヒロインである。

F博士の裁判を担当した小沢検事に引き取られ、赤ん坊の頃から日本で育つ。

普段は全身に白粉を塗っているが、そのことで学校ではいじめを受けていた。

ある時ゲンと出会い、なし崩し的に彼の犯罪行為に協力したことが母親に発覚。母親の小沢検事は自身の名誉のために罪を世間から隠そうとするが、それを卑怯だと拒んだ彼女は家出し、アラバスターに拾われる。


当初はアラバスターのやり方を拒んでいたが、ロックに暴行され塗料を全身に塗られ全裸で世間に晒されるという屈辱を味わったことで闇堕ちし、世界中の美しいモノへの復讐を誓う。


ゲン

本名は山形絃哉。不良グループを率いているが、彼らなりの正義感と信念に基づいて盗みなどを行っており、弱者や罪のない者を虐げるような真似はしない。

亜美に惚れこんでおり、アラバスターのもとで働いているのも彼女の身を案じてのことである。


ロック・ホーム

センシティブな作品

アラバスターと対峙するFBIイケメン腕利き捜査官。

一応は善玉として登場するが、醜いモノすべてを極度に嫌悪し、(自分を含めた)ギリシャ系以外の人種は美しくないと断じる差別的な美的感覚の持ち主。

(初出時点は「『人間の善悪と美醜は比例している』という更に歪んだ美的感覚の持ち主」という設定であった)

全裸で鏡に抱き着き「僕は美しい」とのたまう超ナルシスト。作中では女装も披露する。

腕は確かだが手段を選ばない捜査方法や身勝手な態度で、実態はとても善玉とは言えず、むしろ変質者と言うべきキャラクターである。

また、作中では(透明状態の)亜美を気に入り手籠めにしようとするも拒絶されたため、彼女を辱めて闇堕ちするきっかけを作った人物でもある。

最後はパターン通り自慢の美貌を奪われ、絶望して自滅するという因果応報の運命を辿った。


カニ平

小沢検事の実子で亜美の義理の兄。職業はカメラマン。誰よりも亜美のことを心配しており、家出した彼女をずっと探していた。

後にゲンと手を組み、変装して「カメ」と名乗り正式にアラバスターの組織の一員となって亜美を連れ戻す作戦を開始する。


スーザン

ジェームズ・ブロック(アラバスター)が恋焦がれていた女性。前述の通り初期設定では麗子という名の日本人だった。

美しき白人女優で、最初はジェームズに対しても親しげに接していたが、それは単に彼の金メダリストという肩書きを見ているだけに過ぎなかった。

告白されるや否や「黒人が白人と付き合える訳がない」と馬鹿にし、更に激高した彼に暴行されたと証言するなど、人間性には大いに問題のある人物。

その後、女優としては零落れていたが、釈放され半透明化したジェームズから復讐を受け、最期は彼の手によって透明化光線を浴びせられ、文字通り存在を消滅させられた。



関連イラスト編集

センシティブな作品アラバスター/スカンク草井


関連タグ編集

手塚治虫 漫画  透明化

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