概要
デビューは『少年探偵ロック・ホーム』(1949年)。ロック・ホームというスターシステム名はこのデビュー名からとられている。手塚史の初期から末期まで手塚スターシステムの主要キャラクターとして活躍した「俳優」のひとり。
手塚史の初期では少年のキャラクターであったが、中期以降は主に成長した青年の姿で活躍している。手塚が劇画の影響を受け作風を変容させるとともに善役のみならず悪役キャラクターにも起用されることが多くなり、手塚作品の名脇役として人気を博す。
作品によって役割はさまざまで、ある時は探偵、ある時はFBI捜査官、ナルシスト、ファザコン、ブラコン、女装もすれば裸ネクタイも披露したりとバリエーションに富んでいる。
特に女装や変装は声色も変える徹底ぶりで、見破れない程完璧であり、映画『メトロポリス』で変装(女装)を解いた時の衝撃を味わったファンも多いのではないだろうか。
初期のロックは善良ではあるが繊細な美少年として描かれ、「少年の純粋さ」を体現していた同年代キャラのケン一(敷島健一)とは対照的に悲劇や挫折といった作品の陰の側面を負わされることが多かった。少年キャラとしてのロックは『ロック冒険記』のような単純な勧善懲悪では解決しない話に頻繁に登場したため、人間の愚かさに絶望しながらもあがきつづけるというイメージが強い。
後年に描かれた青年キャラとしてのロックは、多くの場合どこか陰のある葛藤を抱えた人物として描写される。少年期に人間の愚かさを嫌ほど見せつけられたならばこんなひねくれた大人になってしまうだろう、というイメージとしては納得できる形である。『バンパイヤ』における間久部緑郎のように悪の美意識を貫く魅力的な悪役キャラクターとしての活躍が印象強い。
もちろん、悪役一辺倒というわけでもなく、「海底超特急マリンエクスプレス」を始めとする24時間テレビ内の作品では、汚い現実社会にも自分を見失わず、愛や正義のために奮闘する好青年として描かれている。
初期の手塚作品において、古典的なごく普通の善良な少年キャラとして描かれたケン一が、次第に多様化していく善悪の価値観の流れの中でフェードアウトしていき、主要な役柄としての活躍の場を失っていったのに対し、アメリカ風のスマートな少年として生まれたロックは青年に成長するとともに絢爛たる悪の華としてそのキャラクター性を開花させ、手塚史の最後に至るまで活躍するキャラとなった。
基本的な容姿は黒髪と黒いスーツ。それにサングラスをかけていることもある。しましまネクタイもおなじみ。前期は半ズボンが多かったが、後期になると少年役でも長ズボンが主流に。
なお、ブラック・ジャックでは間久部緑郎名義でブラック・ジャックの幼馴染として出演したほか、金持ちのどら息子アクドや天才科学者大江戸醍醐としても登場している。
また車との相性が最悪らしく、いくつもの作品で派手な自動車事故を起こしている。ブラック・ジャックでは第1話で開始早々アクドが危険運転の末街灯に衝突して瀕死の重傷を負い、その治療にブラック・ジャックが招集されている。
ロック・ホームの名は世界的名探偵のシャーロック・ホームズをもじったもの。間久部の名はシェイクスピアの戯曲『マクベス』に由来する。
生前の手塚治虫は「『バンパイア』連載時、若い女性からロックへのファンレターが山のように届いていた」と語っていた事から彼の持つカリスマ性や魅力は時代を経た現在も人々を魅了している事が分かる。
その人気故か、手塚プロが企画した『スターシステムブロマイドトランプ』では他の悪役メンバーを差し置いて、悪役の代表としてスペードのエースの絵柄を担当した。
(しかしこれを不服と思ったハム・エッグ、アセチレン・ランプ、スカンク草井が偽のスペードのエースを作った為、このトランプにはスペードのエースが4枚入っている)
出演作
少年探偵ロック・ホーム 漫画大学 鳩時計事件 来るべき世界
新世界ルルー サボテン君 月世界紳士 化石島 ロック冒険記 化石島少年
太平洋Xポイント、Rock Home in13の秘密、冒険狂時代、まぼろしの円盤、地球の悪魔、フォード32年型、漫画教室、鉄腕アトム、ケン一探偵長、大洪水時代、漫画生物学、ピンクの天使、旋風Z、地球大戦、双子の騎士、未来をのぞく3人、孔雀貝、ジェットキング、ベニスの商人、スリル博士、刹那、緑の地平線、秘密指令第3号、キャプテンKen、ふしぎな少年、鉄腕アトム(TVアニメ1963年版)、ひょうたんなまず危機一髪!、フライング・ベン、バンパイヤ、ガムガムパンチ、リボンの騎士(TVアニメ)、火の鳥未来編、机の中へこんにちは、ブルンガ1世、火の鳥ヤマト編、大暴走、がちゃぼい一代記、アラバスター、ブッキラによろしく!
など、出演作は多岐にわたる。
関連イラスト
ちなみにpixivの関連イラストは間久部名義の方が多く引っかかる。やはり当たり役の影響は巨大なのだろう。