概要
各種フィクションの作中において、明確に悪人と位置づけられるキャラクター全般を指し、英語のヴィラン(Villain)に相当する役どころのこと。また、そうした役柄そのものや、悪人を演じている役者のことを指す。歌舞伎では悪人方・悪形などとも呼ばれていたが、現在は悪役を敵役(かたきやく)と称する。
あらゆるフィクションにおいて重要な役割を果たすが、特に「勧善懲悪」モノには絶対に欠かせない役どころとなる。
基本的に、作中(その作品世界において)で主人公側の視点から見た悪事を働き、憎まれたり恨まれたり、最終的に倒されたりする役割を担う。この悪役の行動やキャラが立っているほど主人公サイドが引き立ち、読者や視聴者のカタルシスを生む。逆の言い方をすれば、優れた悪役がいなければ、主人公は輝かないのである。
悪役とひと口に言ってもそのキャラクター性は幅広く、部下を平気で切り捨てる冷酷なキャラクターや、自分の哀しい過去から悪の道へ進んでしまったキャラクター(※いわゆる美形悪役に多いキャラづけ)鬼畜ヒーローのせいで同情を誘う悪役や、憎めない小悪党タイプなど、さまざまな悪役がいる。
ここ数年は逆に悪役のほうを主人公サイドとした作品も多々あり、悪役側の視点から状況を逆転して見ると、それまで正義と思われていたものが悪にもなりうる。それにより、受け取る側にもいろいろと考えさせられたり、発想の転換を促されるど、物語の面白さや奥行き・深さ全般を担う重要な役どころでもある。
坂本浩一監督と悪役として人気のあるジャグラスジャグラー役の青柳尊哉氏曰く悪役キャラは本編で補完しきれないため隙が多いから人気の高い悪役ほどバックストーリーを書きやすいとのこと。
「悪役」と「敵役」の違い
「主人公と対立する立場ではあるが悪人ではない」「主人公と敵対するがのちに協力者となる」などのパターンの場合は、敵役(かたきやく)と呼ばれ、悪役とは区別される。この場合の敵対キャラは英語のアンタゴニスト(Antagonist)に相当する。
どちらも似たような意味の言葉ではあるが、字面的に敵役のほうが「敵だけど悪ではない」という事が解りやすい。
時代劇において
山吹色の菓子が大好きな代官や利権独占のために賄賂を付け届ける悪徳商人、単純馬鹿なゴロツキ・ヤクザなどが各話で必ず登場する。(というよりも、彼らがいないと話が進まない)
なお、上記の者に雇われた腕の立つ浪人など主人公たちに成敗されるためだけに登場するモブの悪役のことを「斬られ役」とも言う。
なかには斬られ役専門の職人芸的な俳優もおり、一部のマニアックな時代劇ファンから人気がある。
悪役のキャリア
おおむね大部屋俳優と呼ばれる脇役からの出身が多いが、悪役としても時には主役級の演技力が要求される事もありベテラン俳優が多く、とりわけかつての主演級・ベビーフェイスのイメージある俳優がキャリアや年季を経て悪役を演じるケースが多い。そのためか、悪役に美学を見出し日々精進を重ね悪役専門となる役者も多い。これは声優でも同じ傾向がある。
その出演作でインパクトある演技力を惜しみなく発揮すると「怪演」と評価され、「怪優」と称えられる。
実は、彼らは私生活ではストイックかつ非常に腰の低い人たちが多いとのこと。特に演者同士では敵味方役関係なく団結力が強い傾向にある。
八名信夫氏率いる悪役俳優専門ユニット「悪役商会」では、非常にモラルを大事にする掟があるらしく、例え軽微といえども人様ならびに社会に迷惑をかける罪を犯した場合はユニットからの追放というとても厳しいものを敷いている。その理由は、悪役を演じる側が本当に社会の悪役になってはならないという八名氏の理念からだそう。
なお、アニメの場合だと意外とイメージをガラッと変えた声を出せる人が結構多いため、演じているキャラクターを比較するとしばしばこれはひどいという事態に。
悪役を演じる事の苦悩
先述のように悪役の美学を見出し、演技を磨くことで自身の持ち味を身につけるという役者魂があるが、時にはその培った演技力のあまりに、演じる役の悪行がリアルに映り過ぎてしまい、それを真に受けた視聴者から演者そのものが憎まれ、実生活で嫌がらせに遭う事態も決して少なくない。
その被害の内容も時代によって変化しており、インターネットが一般的に普及する90年代半ば以前は、『カミソリを仕込んだファンレター(所謂『カミソリレター』)』や特に手の込んだものとして『虫の死骸や生ゴミ等を山程に詰めたプレゼント』を悪役の演者の所属する芸能事務所や演者の住所(この頃は今よりも芸能人の個人情報がかなりオープンな時代だった)に送りつけるなどが主であったが、ネット文化が発達し、また個人情報が厳重に管理されるようになった今の時代においては、2ちゃんねるをはじめとするさまざまな掲示板やTwitter、InstagramをはじめとするSNSなどで、悪役やその演者に対する恨み辛みや悪罵、さらにはあらぬ“裏話”を書き連ねる事で炎上させ、演者のプライベートでの評判を貶(おとし)めようとするやり口が主となっている。また、なかには撮影現場やプライベートにおいて、偶然鉢合わせた視聴者から、直接罵られたり、半ば暴行まがいな仕打ち(石を投げつけられる、足蹴にされる、ビンタされるなど)を受けたというケースもある。
※当たり前の事だが、上記の行為はすべて卑劣な犯罪である。
もちろん、それに対する演者たちの反応もさまざまである。悪役役者としてのプライドを持ち悪役一筋を公言する悪役役者や、悪役として嫌われることをいとわない気骨ある演者もいる。が、なかには二度とその作品のその役をやりたくないと漏らす演者もおり、収録現場では涙しながらも気丈に演じた…という話を持つ演者もいたり、精神状態が本当にギリギリのところまで陥ってしまった演者の逸話も少なからずある。そして、なかには絶えぬバッシングに心が折れて最悪の結末を迎えてしまった演者も…
こういったことがあるためか、近年では共演者や制作側からのフォロー発言というものも見られるようになってきた。
詳しくは『風評被害』を参照。
また、特撮においては風評被害対策として最初から人間でないことを強調するために、悪役に俳優を一切起用せず、悪役を着ぐるみ及び声優による声の出演で統一する例も増えている。
ここまで読んだ方はもうお分かりだとは思うが、ドラマや映画に出てくる悪役たちがどれほどイヤな奴であっても、それはあくまでも「演技」である。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いという言葉のとおり、番組中における役者の言動に対して嫌悪感を覚えるのは仕方がないが、演者の実像とは無関係であることを忘れてはいけない。罪を憎んで人を憎まずという言葉があるように、悪役(がとった行動)を憎んでもそれを演じた役者まで憎んではいけないのは言うまでもない。悪役役者は世間から嫌われやすいため、基本的には「謙虚で腰が低い」人が多いと言われているが、悪役としてのキャラ作りやイメージギャップを敢えて避けるためなのか、舞台裏でもあくまで傲岸不遜な態度を貫く演者もいないことはない。なかには演じた人物を彷彿とさせる下衆な行為を現実でやらかした悪役役者も居るわけだが(香川照之、木下ほうかなど)、別に二枚目だろうといい人キャラだろうと不祥事を起こす俳優はいることを忘れないように。なお、逆に現実で不祥事や騒動を起こしたことがきっかけで悪役を演じるようになった役者もいる(草彅剛、沢尻エリカなど)。
関連イラスト
悪役の職業・属性など
魔王系 | 魔王 / 大魔王、魔女 / 魔人、悪魔 / 小悪魔 |
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支配者 | 皇帝、首領、悪代官 |
職業 | いじめっ子 / 悪ガキ、不良 / ヤンキー / チンピラ / ヤクザ、テロリスト、泥棒、強盗、怪盗、詐欺師、スパイ、クラッカー(ネットワーク犯罪者)、マフィア、死の商人、戦争屋、殺し屋(殺人鬼)、破壊者、海賊、マッドサイエンティスト、野心家、独裁者、軍人、傭兵、怪人、怪獣、クリーチャー / モンスター、邪神 |
思想 | 世界征服 / 世界滅亡、力こそ正義、弱肉強食 |
版権 | ヴィラン / スーパーヴィラン / ヴィランズ / ディズニーヴィランズ、プリキュアの敵一覧 / プリキュア悪役オールスターズ / スマブラヴィランズ / カオス軍(DFF) |
関連タグ
敵 | 敵キャラ、敵役、敵女 |
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悪 | 悪人、悪党、悪漢、悪女、外道、ヒール、悪の組織 |
ボス | 黒幕、ボスキャラ、ラスボス、諸悪の根源 / 全ての元凶 |
ライバル | ライバルヒロイン、ダークヒーロー / ダークヒロイン |
兵士 | 戦闘員 / 女戦闘員、雑魚敵 |
悪役関連 | 悪のカリスマ、悪の美学、憎めない悪役、哀しき悪役、美形悪役、必要悪、絶対悪、純粋悪、三流悪役、悪役化、悪徳勇者、悪役令嬢、悪役レスラー、悪役顔 |
他関連 | 勝てる気がしない、どうあがいても絶望、佐山・御言 |
悪役を演ずることの多い俳優・声優
※50音順に記載。近年は演じる機会が少ない人物でも、かつて悪役キャラをメインとしていた人物も記載。
俳優
海外の俳優
あ行 | アラン・リックマン / アダム・ドライバー / |
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か行 | クリストファー・リー /クリストファー・ウォーケン / |
さ行 | ジェイソン・ステイサム /ジュリアン・グローヴァー /ショーン・ビーン / |
た行 | ダグレイ・スコット /ティモシー・ダルトン / |
な行 | |
は行 | ハビエル・バルデム |
ま行 | マイケル・マドセン /マッツ・ミケルセン / |
や行 | |
ら行 | ラミ・マレック /レイフ・ファインズ /ロバート・カーライル /ロバート・デヴィ |
わをん |
声優
(なお、太字で表記されている人物は故人)
外部リンク
一般
pixivision
- 【どうして悪はカッコイイのか】 悪カッコイイ特集!!(2014年10月7日)
- 悲しい過去を力に。「哀しき悪役」のイラスト特集(2019年2月10日)
- これもまた正義。悪役を描いたイラスト特集(2021年10月3日)
- 触れては危険。ヴィランを描いたイラスト特集(2023年5月5日)