代々
初代尾上松也は、音羽屋菊五郎劇団の中興の祖2代目尾上松緑(7代目松本幸四郎の三男)の部屋子。父は劇団新派の脇役幹部であった春本泰男。兄に尾上緑也(後の6代目尾上松助)がいる。
後に喜の字屋・14代目守田勘彌に見初められ、その芸養子となり、4代目坂東志うかを襲名。名題試験を最年少・最高得点で合格し、若き立役として何れは勘彌を継ぐことが期待された。しかし、弟弟子・義弟にあたる5代目坂東玉三郎が若くして若女形の花形として脚光を浴びるなど役付きに差が出るようになり、そのことが遠因となって深酒を繰り返し、体を壊して長期休業・喜の字屋一門から離脱してしまった。
時に松竹は一門に属さない歌舞伎役者に会長の大谷竹次郎の名からとった大谷姓を名乗らせることにしていた(従って、元々ある名跡「大谷友右衛門」の系統とは無関係となる)。志うかはこの方針により初代大谷桂三と改名。その後も長く雌伏の時を過ごす。
1994(平成6)年、桂三は後述する甥が既に初舞台を踏んでいた中で15年ぶりに復帰した。長年の苦労の中、脇役として歩んでいくことに決め、現在主に中村吉右衛門劇団に同座しながら、今日も活躍を続けている。私生活では33歳年下の妻と結婚し、長男が誕生。2017年、この長男が大谷龍生として初舞台を踏み、苦労の末歌舞伎界に足跡を残すことが出来たと言えよう。
なお、桂三一門(弟子含む)は現在の歌舞伎界で松竹会長系大谷姓を名乗る唯一の存在でもある(他に大谷姓を名乗る役者も先述した友右衛門一門のみ)。
2代目は、初代の甥。6代目尾上松助の長男である。
当代
本名は井上龍一。
本来部屋子に過ぎなかった父・松助であったが、時の歌舞伎界を代表する大幹部であった2代目松緑の愛弟子として、また菊五郎劇団の脇役として高評価を経て、幹部にまで上り詰めた。また、祖父の代からの役者の系譜もあり、時の松竹会長の鶴の一声で弱冠5歳の松也のデビューが決まった。
初名は、父の名ではなく叔父の初名を継いでいる。
以降菊五郎劇団の子役として順調に修行を積むが、歌舞伎界にその足跡を残した父は松也20歳の時に癌のため急逝してしまう。
この時父の遺した3人の弟子たちに「何もできないから他の方に弟子入りし直してくれて構わない」と話したが、3人ともそのまま松也の弟子となることを了承してくれたという。
若くして父や叔父以上の苦難の道を歩む形となったが、自主公演などを積極的に繰り返し、若手役者の中でも評価を経て出演機会が増加、歌舞伎界でそれなりの地位を手に入れることに成功した。
父・叔父とも脇役の道を歩むことになった一方で、花形歌舞伎を中心に主役級の役を演じる機会も増えている。
現在、本業の歌舞伎の他、舞台やドラマ、映画などに多数出演している。
2005年には父の代からの筆頭弟子・尾上徳松が名題に昇進。2017年には自身初となる直弟子が入門している。
妹は新派役者の春本由香。新派の最高幹部二代目水谷八重子の部屋子としてデビューした。余談ではあるが、初代松也である大谷桂三の元養父・守田勘彌は、八重子の実父でもある。春本姓は、祖父から受け継いだもの。
なお、「まつや」の発音は「松屋」などのそれではなく、「渋谷」と同じように発音するとの事。
よく間違われるらしく中村獅童ら同業者からも言ってこられたり、自分でもネタにしている。
スイーツ好きでも有名で、自らスイーツをプロデュースしたことがある。
そんなこともあってか2017年10月公開の『映画キラキラ☆プリキュアアラモード_パリッと!想い出のミルフィーユ!』において、ゲストキャラクターのジャン=ピエール・ジルベルスタインを演じることになった(アニメ映画では『モアナと伝説の海』のマウイ役に次いで2度目の出演)。
また、同年TVドラマ初主演作となった『さぼリーマン甘太朗』でも甘味に取り付かれた営業マン・飴谷甘太朗を体当たりで演じている。
子供時代に『八代将軍吉宗』で主役徳川吉宗の幼少期である源六を演じて以降、多数のNHK大河ドラマに出演している。近年では『おんな城主直虎』の今川氏真や『鎌倉殿の13人』の後鳥羽上皇など歴史的には評価が低くなりがちな人物を演じているが、彼らを敗北者とは思わせない切れ者として存在感を見せており、歴史ファンからの評価も高い。
GENERATIONSのボーカル・片寄涼太とは遠い親戚。
関連タグ
マウイ:モアナと伝説の海のキャラクター。日本語吹き替え版で演じる。
シーモア=グアド:ファイナルファンタジー10のキャラクター。新作歌舞伎で演じる。