概要
NHK大河ドラマ通算34作目となる作品で、1995年1月8日から12月10日にかけて全48回が放送された。
大河ドラマとしては数少ない、江戸中期という泰平の世を舞台とした作品であり、江戸幕府第8代征夷大将軍・徳川吉宗を主役に据え、その生涯と彼の進めた「享保の改革」が時にコミカルに、時にシリアスに描かれている。
諸般の事情から、映像ソフト化は長らく総集編(VHS・DVD)のみという状況が続いていたが、放送から30年近くが経過した2023年になって、全話収録の「完全版」DVDがリリースされる運びとなった(全2巻、いずれも7月14日発売予定)。
制作
1980年代後半から1990年代初頭にかけての、NHKの組織のスリム化構想に関連して、大河ドラマもまた『太平記』(1991年)終了後、3年4作品に亘って制作体制や放送サイクルの見直し、それに未開拓の時代やテーマの開拓などが試みられていたが、諸般の事情からこれらの試みが頓挫したのに伴い、本作は『太平記』までの制作体制・放送サイクルへと回帰する事となった。
脚本にはジェームズ三木、音楽には池辺晋一郎が充てられた。この2人はかつて、近現代路線への転換を試みつつも低迷していた大河ドラマを復活させた、『独眼竜政宗』(1987年)でもタッグを組んでおり、彼らの起用にはこの時と同様に低迷の真っ只中にあった大河ドラマを立て直すという意味合いも込められていた。
前述の通り舞台が泰平の世、即ち他の大河ドラマでは山場となる合戦シーンなどを盛り込みにくいという、作劇上のハンディキャップがあったにも拘らず、それを逆手に取って「将軍家のファミリードラマ」という路線を取り、さらに江守徹扮する近松門左衛門が全篇を通してナビゲーターとして登場したり、忠臣蔵や江島事件などを取り上げて山場を設けるといった工夫で、「大河ドラマの復活」という課題を見事に達成してみせた。
本作と同時期には、同じく徳川吉宗を主人公とした時代劇『暴れん坊将軍』(テレビ朝日系列)も放送されており(この当時は第6シリーズを放送)、同作とは視聴率のみならず出演者やストーリー内容でもいい勝負を繰り広げた。
出演
紀伊・徳川家
- 徳川吉宗(演:西田敏行)…紀州藩主・徳川光貞の四男として生まれ、幼少期は部屋住みとして過ごすが、相次ぐ兄達の死に伴い紀州藩主となり、7代将軍・徳川家継の死とともに8代将軍に任じられる。
- 徳川光貞(演:大滝秀治)…第2代紀州藩主であり吉宗の父。幕閣たちが対応に苦慮する高家・吉良義央の屋敷を襲撃した旧赤穂藩の浪人たちを「無頼の徒」と批判、厳しく処断することを主張するなど硬骨の思想を持つ。
- 徳川綱教(演:辰巳琢郎)…光貞の長子、跡を継いで紀州藩主となるが若くして亡くなる。温厚な人柄で妻の鶴姫を一途に愛し、死に際に「一人の女を思う気持ちで民を思え」と吉宗に言い残した。
- 徳川頼職(演:野口五郎)…光貞の三男、吉宗と折り合いが悪かったが、兄・綱教の死後、紀州藩主となる。しかし、兄と同じく早くして亡くなり、吉宗がその後を継ぐ。
徳川宗家
- 徳川綱吉(演:津川雅彦)…江戸幕府第5代征夷大将軍。目通りした紀州藩主・徳川光貞の四男・吉宗の器量を見抜いた最初の人物。甥である甲府宰相・徳川綱豊(後の徳川家宣)を嫌っていたが、死の直前、後継将軍に指名する。
- 徳川家宣(演:細川俊之)…江戸幕府第6代将軍。綱吉の養子として将軍職を継ぐ。新井白石を重用し、儒教に基づいた政治を心掛ける名君であったが、理詰めの政治を吉宗に嫌われる。
- 徳川家重(演:中村梅雀)…江戸幕府第9代将軍。脳性麻痺を患い言葉を明瞭に話す事が出来ない身体障碍者で本人もその事に引け目を感じていたが、長幼の序を重んじる吉宗に後継者に指名される。
- 徳川家治…(演:いしいすぐる)後の江戸幕府第10代将軍。幼少のころから英名の質で知られ、祖父・吉宗から将来を期待される。
関連タグ
伊達政宗 - 本作における吉宗の「宗」の字の由来となった
葵徳川三代 青天を衝け - いずれも本作と同様に、実在の歴史上の人物をナビゲーターに当てるという手法を取った大河ドラマ
べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ - 2025年放送予定の大河ドラマ。本作と同様に江戸中期が物語の舞台であり、その範囲は本作で描かれたそれと地続きの18世紀後半となっている
仲代達矢 - 番組の題字を担当