概要
2022年度NHK大河ドラマ、通算61作目。
鎌倉時代初期、鎌倉幕府初代将軍・源頼朝亡き後、19歳で将軍職を継いだ頼家は政治経験の足らなさから祖父・北条時政に実権を取り上げられ、時政を始めとした13人の御家人による集団指導体制が成立した。いわゆる「十三人の合議制」である。
その13人の一人で、時政の息子である北条義時。鎌倉幕府草創期に繰り広げられた権力闘争の中で、野心とは無縁だった若者がいかにして武士の頂点に上り詰めるか、その過程と鎌倉を舞台に繰り広げられるパワーゲームを描く大河ドラマである。
大河ドラマで、鎌倉北条氏がメインとなるのは『草燃える』(1979年)・『北条時宗』(2001年)に続き3作目。また源平合戦を除いた鎌倉時代が描かれるのは『草燃える』以降では『太平記』(1990年)や『北条時宗』に続き3作目となる。
脚本は『新選組!』(2004年)、『真田丸』(2016年)に続いて3度目の登板となる三谷幸喜が、演出は『サラリーマンNEO』シリーズや『あまちゃん』などの朝ドラを手掛けてきた吉田照幸がそれぞれ担当。また時代考証には坂井孝一、呉座勇一(※1)、木下竜馬といった、鎌倉時代や日本中世史の研究において第一線で活躍する面々を起用。新説を積極的に取り入れ、舞台となった時代の価値観を尊重しつつも、登場人物が一人一人活き活きと動き回る群像劇が志向される。
過去の大河ドラマでは、前半生が不明・活躍時期が比較的短く単独での主役としてはエピソードが足りない人物でも誕生時期からスタートするが(※2)、今回の主役である義時は鎌倉殿及び他の十二人+αのエピソードに深く関わっている上、新型コロナウイルスによって撮影スケジュールに影響が出ている為、通例では存在している場面が脚本の影響が出ない範囲で、可能な限り削られている模様(※3)。
なお、上記の通り歴史上で実際に発生した血を血で洗う権力闘争が物語の主軸となっていることもあり、三谷氏が脚本を手掛けた作品としては珍しく、シリアスで陰惨なエピソードの多い作風となっている(もちろん三谷作品お馴染みのコミカルなシーンがないわけではない)。
※1放送開始前に自身の不祥事もあり、降板となった
※2 例外は真田信繁や明智光秀。
※3 「源義経」「新・平家物語」「炎立つ(第3部)」「義経」といった過去作に相当する内容をほぼ20話で終わらせる超駆け足。その他、義時の関わってない篠原、宇治川、屋島の戦いや勧進帳などは極力排除。特に子供は「出来た」と言った次の回ないし回の終盤には既に生まれていたなどの扱いで、前話で子供だった人物が次の回では著しい成長をしたテロップを流すなどして、時間の流れに関わるエピソードをとにかく削っている。
備考
第一話から伊東祐親の事を義時・義村が『じさま』(お爺さん)と呼んでいる。
過去作ではこのような内容はスルーされているが、遺伝子の事が解らなかった時代、財産の分散を防止するなどの意味合いで近しい親族間での婚姻は珍しくなく、結婚可能な相手が身近に集中する場合、同地域内で血縁が重複するのは常識であり、義時と八重の結婚の際に『二人は叔母と甥の関係だけど、こういうのは昔だとよくある事だった』と説明を入れた。(現代では一定親等内の結婚は法的に不可能である事に対する配慮)
また、作中の移動範囲は鎌倉及び坂東が中心である為、ゲストを含めた登場人物もほぼ血縁関係。
八重と義時との関係は叔母と甥(義時の母親の異母妹)。現代風で言えば、甥っ子が叔母さんの事を追いかけている構図である。なお、年齢的にはそれほど離れてなく、2人は幼馴染の間柄。
北条義時と三浦義村は母親同士が姉妹なので従兄弟。
当時の家系図は男系で考えられていた為、女系での家系図は考慮されて居なかった(有名どころでは、孟子の子孫)。その為、義時と八重の関係にツッコミを入れる物はおらず、政子・義時・実衣の母方の従兄弟である曽我兄弟についても、「八重さんの甥っ子で、私達の遠い親戚」で済ませている。(義時達の母親と曽我兄弟の父親と八重は同じ父を持つきょうだい)
登場人物
※印が付記された人物は「十三人の合議制」のメンバー。
北条家
この物語の主人公。通称は小四郎、江間小四郎。良くも悪くもお人好しな性格で、あまり人の要求を断ることができない。その優柔不断な態度に怒った政子曰く、「田んぼのヒル」。父兄姉妹に継母や頼朝といった周囲に振り回されながらも、生き抜く道を模索していく。武芸に長じている兄と比べて、自分でも「米の数を数える方が好き」というほど裏方作業を好む性分ではあるが、それを逆手に取り国府に収められている年貢の量から各陣営の動員できる兵力を推測するなど、武芸一辺倒の兄とはまた違った方面の才能を有する。ただし智謀はあるが隠し事は苦手で、後々後悔するようなことも多い。父である時政に輪をかけた剛直者であり、自分に本心を明かしてくれた頼朝には強い忠誠を誓っている。
元々は理想に燃える若武者で、「平家に虐げられている民を救い、坂東を坂東武者のものにする」という兄・宗時の遺志を遂げることに燃えていたが、頼朝の支配者としての冷酷な一面を何度も見せつけられるにつけ、なまじ頭の回転が早いため、論理では理解できるが感情が追いつかないという状況に追い込まれがち。特に広常の一件では視聴者から闇堕ちを心配する声が多かったが義経の件でさらに心配されるようになった。一方で、特に平家が滅亡してから「坂東を坂東武者のものにする」「戦をなくし民に安寧をもたらす」という目的のためなら手段を選ばないようになりつつあり、義村に指摘されているように頼朝に近くなりつつある。中でも奥州に逃げた義経の一件では、口を滑らせたような格好で静御前の顛末を義経に話し彼の鎌倉への復讐心を煽り、なおかつ奥州藤原氏の棟梁・泰衡に対しては義経謀反の情報を与え不安を煽ったうえで企てに反発した泰衡の弟・頼衡を泰衡の目の前で善児に殺させ、なおかつ「もう後戻りはできない」と凄みを聞かせ、(頼朝が望んだ通りの)泰衡主導の義経追討を起こさせた。これには「(義経を)やっちゃいましょうか?」「寝首を搔くことことくらい造作もねえ」としれっと言っていた善児もドン引きだった。
幼馴染である八重のことを心から愛し、「もし振り向いていただけなくても私はその背中に誠を尽くす」と語るなど一途な想いを向けていたが、その想いが通じ無事に結ばれる。その後、頼朝の影響で冷酷な行動に傾きつつある自らを繋ぎ止めてくれる存在として今まで以上に大切に思っていた矢先、八重に先立たれ執務に顔を出せないほど失意のどん底に沈む。そんな中でも息子・金剛を男手一つで育て上げることを決心するなど、芯の強さを見せた。
通称は四郎。軽薄かつ平家の威光を恐れる小心なダメ親父…と思いきや一度頼朝をかくまうと決めれば決心を変えない剛直さがあり、武勇にも優れている。また、作中のほとんどの人物を出し抜いた後白河法皇と双六をしたときにはイカサマを見破って気に入られるなど、不思議な魅力を持つ。だがそれでも頼朝劣勢とみると鞍替えの道を考えようとしたり、なおも進軍を続けようとする頼朝を涙ながらの説得で思いとどまらせたり身内が罵倒された時にはたとえ頼朝であっても本気で怒るなど、良くも悪くも北条を第一に考える地方領主らしい人物。
通称は三郎。時政の嫡男で義時の兄。打倒平家に燃えており、平将門に憧れて物騒な発言をしたり、軽々しく行動を起こそうとするなど直情的な熱血漢。そのため後先考えずに突っ走り、義時にその尻拭いや無茶ぶりを要求するなど少し困ったところがある。石橋山の戦いで頼朝の北条館に置いていった本尊を取りに行くという依頼に応えるが、その道中で善児の襲撃を受け命を落とす。出発前には義時に「平家とか源氏とかどうでもいいんだ。坂東武者の世をつくり、そのてっぺんに北条が立つ」と頼朝に従っていた本当の理由を吐露していた。
義時の姉。居候になった頼朝に一目惚れし、その為に時には大胆な行動に出ることも。武家の娘としての肝が据わっているなど強気な性格ではあるが、一方で細かい気配りや洞察力も持ち合わせており、義時も頭が上がらない。頼朝が鎌倉に居を構えてからは源氏の棟梁の正室として礼儀作法や教養を厳しく教育されている。また、坂東武者だけに目をいきわたらせることのできない頼朝に代わって彼らの不満を聞いたりなだめたりすることで、頼朝の勢力統制に一役買っている。
頼朝の女好きさには頭を悩ませているが夫婦仲は良好であり、征夷大将軍に任命された際には夫婦ではしゃぎまくり、富士野の巻狩りで頼朝が襲撃を受け安否が不明となった際には無事鎌倉に帰還した頼朝に飛びついて無事を喜んだ。また、義時との姉弟仲も良好であり、八重を亡くし悲嘆に暮れる義時にわざわざ侍女のような質素な格好をして見舞いに行くなど、互いに幕府の重要な役職につきつつも伊豆の頃から変わらない関係を続けている。また、母親としての愛情も深く、万寿が巻狩で手柄を立てたことを比企能員夫妻から聞き(ただし御家人たちのお膳立て)、その時は「武士の子ならば当たり前」とそっけない態度をとったが、比企夫妻が帰ってからは大姫とともに「うんと褒めてやりましょう」とはしゃぐ様子を見せ、第24話では上洛した際の丹後局の「手荒い歓迎」により心が折れてしまい、そのまま病に臥せってしまった大姫の「好きに生きるということは、好きに死ぬということ」というセリフを聞き、「母を悲しませないで」と涙を見せた。
義時の歳の離れた弟。通称は五郎。初名は時連。佐介流と大仏流の祖。
第1話では乳母に抱き抱えられた赤ん坊として登場。年齢としては義時より泰時に近い(史実では時房が泰時の8歳年長)。
長いこと表舞台に登場していなかったが、21話で瀬戸が演じる成長した姿で登場。大姫から頼まれた魔除けの鰯を持って北条一族の集まりに参加した。その後、時政が創建した願成就院の阿弥陀如来像お披露目に義時と共に立ち会った。
史実においては義時亡きあと泰時と共に幕府を支えた名臣として知られているが、頼朝が病没する前後ではまだその切れ者っぷりを示す描写はなく、全体的に天然な若者として描かれている。あと、餅をうまく丸められないレベルの不器用でもある。
- 比奈(演:堀田真由)
その後、富士野の巻狩りで義時に再会(劇中では語られていないが、おそらく政子が不在の状態で頼朝の「お手つき」にさせようとしたか?)。翌日の狩りの陣立てを考える義時に対し、鹿の習性を教え狩場の下見の際に案内を務めるなどアクティブな一面を見せた。なお、この時点で比奈の心は頼朝から離れていたようだが、頼朝はまだ執着していたようで、そのことを利用して曽我兄弟の襲撃事件の際には頼朝を館から引き離す役割を担った。巻狩りから撤収する際には、義時からもう自分に付き合うことはないと言われるが、「私の方を見てくれなくても、私があなたを見ていられればそれでいい」と本心を打ち明けたことで義時もようやく彼女の想いを受け入れた。
24話からは義時の家に住み込んでおり、義時も頼朝から「決して離縁しません」という起請文を書かされたうえで彼女と夫婦になることを決意している。(早すぎないか?とは思ってる様子)
25話では正式に北条一族の一員になっており、比企をライバル視するりくにきつく当たられたり、未だに八重の面影が濃い北条一族の中でも明るく振る舞っている(流石に、無意識とはいえ八重と言い間違えた時政の失言には義時も「すまん」とジェスチャーで詫びている)。また、義理の息子である泰時には「義母上(ははうえ)って呼ばないで。姫でいいです」と答え、「いや流石にそれは...」と苦笑されるなど関係は良好である。
義時の長男(庶長子)で義時最愛の息子とされる。幼名は金剛。通称は太郎。初名は頼時。
のちの三代執権で御成敗式目の制定者として歴史に名を残す。
幼少期は父親が帰ってくるたびにお土産を催促していた。義時も暇を見つけては土産物を用意しているようで、あの血生臭い奥州での謀略から帰ってきた時も奥州土産を用意していた。
孤児たちにも愛情を注ぐ母・八重に対して「金剛だけでは足りませんか?」と問うなど不安を抱えていたが、八重が亡くなったことで父同様失意の底に沈むことになった。それでも「(八重が命と引き換えに助けた)鶴丸のことを恨んではならん」「北条の一員として相応の振る舞いをせよ」という父の教えを守ったり、いじめられた鶴丸を庇って安達弥九郎と喧嘩をしたり、庇ったことを義時に隠していたりと、父の下で成長している。
第23話では元服前で当時10歳の金剛(泰時)を、30歳の坂口が演じて『成長著しい金剛』という、大河の歴史に輝く神テロップと共に姿を現わした。
富士野の巻き狩りではなかなか獲物を仕留められない万寿の前で飛んでいる鳥を撃ち落とすなど若干の空気の読めなさを醸していたが、初めて仕留めた鹿を万寿のご機嫌取りに利用され愕然としながらも将来の主君である万寿との関係は良好であり、頼朝襲撃事件の際も万寿から自らの身辺警護を任されるなど信頼されている。
なお、元服前の身ながら貞観政要を読むなど、のちの名宰相っぷりへの布石が着々と描かれている。(これ疑惑もあるが)
義時の妹。阿野全成の妻かつ千幡の乳母。現実主義的な皮肉屋で、頼朝居候後にあたふたする兄達や姉、特に政子へ度々辛辣な言葉を吐いている。さらに継母のりくに対しても遠慮はなく物事を言う。一方で子供っぽい一面もあり、気に入らないことがあるとプンプン怒りながらどこかへ行ってしまう。口が軽く、落ち着きのない性格から陰で北条一家のトラブルメーカーになることもある。
それまで権力争いに汲々とする幕府内部を皮肉な目で眺めていたが、富士野の巻狩りの中で発生した曽我兄弟による襲撃事件にて頼朝と万寿の安否不明が伝わった際、権勢欲に抗えなかったのか「千幡を鎌倉殿に」「育ててきた甲斐があった」と零してしまい、全成にたしなめられる。
- 牧宗親(演:山崎一)
義時の異母妹の婿。比企尼の孫。平賀義信の次男。母は伊東祐清の元妻。
- 鶴丸(演:佐藤遙灯→きづき)
八重の死で心を閉ざしてしまったが、自分のことを守ってくれた金剛(泰時)に次第に心を開いてゆく。
- のえ(演:菊池凛子)
歴史を題材にしたドラマゆえ結末がわかってはいるとはいえ、彼女の存在が意味するものとは...
源氏
頼朝勢力
河内源氏の棟梁源義朝の三男。右兵衛佐に任官されていたことから「佐殿」と呼ばれる。平治の乱で敗れ、13歳の時から配流先である伊豆で過ごす。
飄々とした佇まいで、息子・千鶴丸の死にも淡々とした表情を見せるが、その黒幕となった伊東祐親を殺害するよう、ひそかに工藤祐経に命じている。大将としての器量自体はきちんと持っており、大局的な状況判断力や公務における統括力は優れるものの、普段はあまり肝が据わっておらず、混乱する状況の中では度々弱音を吐いたり駄々をこねたりする。基本的には合理的な人物で、目的のためには非情な決断を選ぶこともできるのだが、情を捨てきれずに人知れず煩悶するなど、複雑な人物である。
育った境遇からか極度に人間不信の一面があり、本心で向き合える人間は政子などごく僅かしかいない。坂東武者たちからは「頼朝は(彼の為に頑張っている)俺たちを見てくれない」という不満も出ていた。
また、女好きで度々女性問題を引き起こし、「亀の前事件」では政子や亀の前を始め義時、時政、実衣、りく、宗親、全成、範頼、義経、弁慶が絡む大騒動になってしまった。なお、女好きは征夷大将軍になっても変わらず、比奈が女官として出仕した際にもなんかスケベな本心が出てた気がしなくもない(本人は「義時の後妻としてどうかと...」と弁明していたが、今までのこともあって説得力はなかった)...そして23話ではやっぱり比奈に未練たらたらだったことが判明した。またかい。しかも女絡みのトラブルに巻き込まれることで、本当の危機から命拾いすることもしばしばあるのがまたタチが悪い。
富士川の戦い直後、勢いに乗って京の都まで攻め上ることを命じるが、兵糧がないこと、北の守りが疎かになっていることを豪族たちに知らされたうえ、頼りの義時にもいざとなったら北条を取らざるをえないことを知らされたことで、心から自らに従う味方がいないことを痛感する。
物語が進むにつれて徐々に冷酷な一面を見せるようになるが、これも心から信じる人間がいないことが一因であり、友人だった伊東祐清や頼りにしていた義経さえも最終的には謀殺している。一方で、上総広常を謀殺した後には自分の行為を正当化するような発言をするも、どこか後悔するような素振りを見せ、義経が討ち取られて首桶が届けられた際には「すまぬ…」と謝罪しながら首桶を抱きかかえて号泣する等、決して血も涙もない冷血漢というわけではない。
武士権力の頂点たる「武家の棟梁」の立場にある者として、甘さや弱みを見せればいつ誰に足下を掬われるかもわからず、後継者の頼家も十分育っていない現状で、仮に自分がいなくなってしまえば、後釜を狙う者達による権力闘争で収拾のつかない政治的混乱が起こることも明白であるため、どこか無理をして冷徹かつ強権的に振る舞っている節もある。
富士の巻き狩りでの曽我兄弟による謀反未遂では持ち前の悪運の強さで難を逃れたものの、かつてははっきりと感じられた天からの恩寵を感じられなくなったと語り、もはや自分になすべきことはないのかもしれないと義時に語る。その後は死期が近づいていることに焦り、朝廷との関係を盤石なものにするための入内工作を急ぎ、疑わしい人物にはなりふり構わぬ粛清を実行するなど、周囲の人物に対しても猜疑心を募らせて次第に精神のバランスを崩していく。
だが、相模川橋供養へ向かった際、巴への謝罪、義時やりく、時政、政子らとの対話などの紆余曲折を経たことで吹っ切れ、「人は定められた時を生きている。それに抗うことは無駄なこと」とという結論に至り、自分の運命を受け入れることを語った。橋供養から帰る道中、馬上で突然意識を喪って落馬、命を落とした(この際、呂律が回らなくなる・手の痺れが止まらなくなるなど、脳卒中を示唆する描写がなされている)。享年52。
そしてストッパーであった頼朝の死により、幕府内部に生じた政治的空白を巡り、ついに日本史上空前の権力バトルロワイアルの幕が上がることになる。
富士野の巻狩りで自らが次の鎌倉殿にふさわしいことを示そうと躍起になっているが、放った弓矢は思うように獲物に届かず、そのことでやるせない感情を抱えていた。なんとか彼に鹿を仕留めさせようと、頼朝や義時以下御家人一同は鹿の剥製をそれとなく狩場においておくことでお茶を濁そうとしたが、万寿にはバレバレであった。しかし、そのことに怒りつつも「いつかは弓の名手になる」と金剛に語るなど次期鎌倉殿としての気概を見せ、また頼朝襲撃の際には父頼朝の安否を確認するよう義時に命じたり混乱に乗じた鎌倉襲撃を危惧して配下の兵を鎌倉に急行させたりと毅然とした態度をとった。
父親に似て大の女子好き。「女好きは我が嫡男の証!」とか言ってるんじゃねーよ頼朝...。
頼朝と政子の次男。幼名は千幡。のちの鎌倉幕府三代将軍。柿澤は『平清盛』で以仁王を演じている。
頼朝と政子の長女。源氏同士の関係強化のため義仲の嫡男義高と婚約、大姫自身も義高のことを大変慕っており、義仲討伐後義高の立場が危うくなると「義高様を助けないなら、私も死にます!」と幼い身ながら必死の形相で父頼朝に直訴。頼朝はこれに折れ義高の命までは取らないことを約束するも時すでに遅く、義高の死は大姫の生涯に暗い影を落とすことになる。
成長してからはいくらか笑うようになったとはいえ、スピリチュアルに傾倒したりいきなり自らの名前を「葵」に変えると言い出したり(しかも全成の見立てでは、由来はよりにもよって「源氏物語」において生き霊により若くして亡くなる葵上)と突飛な行動が目立つようになり、周囲から心配されている。
頼朝は義高のことを忘れさせるため、そして幕府と朝廷の繋がりを緊密なものにするべく彼女を天皇の妃にしようと画策。強引すぎる入内工作に当初は乗り気ではなかった大姫も巴御前の励ましもあって前向きになったが、上洛した際の丹後局の「手荒い歓迎」により心が折れてしまい、そのまま病に臥せってしまう。
「自分で自由に選べるものは死に方だけ」だった大姫は、生きることそのものを拒んだかのように亡くなってしまった。享年20。
通称蒲冠者。頼朝の異母弟。頼朝挙兵を知り駆け付けるも道を間違え遅参した。頼朝の信頼厚く、のち義経と共に平家追討の陣頭指揮をとる。政治力とカリスマ性は頼朝に及ばず、軍略家としては義経に及ばず、源氏一門として能力的には中途半端な人物だが、生真面目ながらも朗らかで人当たりの良い性格で人望もあり、先走り気味な義経をうまく扱っていた。なお、意外にも剣の腕前はなかなかのもの。
義経亡き後も、頼朝に不満をもつ御家人たちをうまく押さえていたが、そのことを比企能員につけ入れられ「蒲殿が鎌倉殿であったら...」と焚き付けられていた。範頼本人は断固として拒否していたが、富士野の巻狩りでの頼朝襲撃の一報で、能員に押し切られる形で幕府内部の混乱を収めるべく空席となった鎌倉殿を継ぐ決意を固めた。だが、頼朝の信頼篤い彼が勝手に行動したことは頼朝に「野心あり」とみなされ、また焚き付けた張本人である能員にも見放され、広元からは「書状に鎌倉殿に仕えると言いながら署名に勝手に「源」姓を使っている」(一門とはいえ、朝廷から源姓を名乗ることを許されている頼朝やその子供たち以外が勝手に源姓を名乗るのはこの時代ご法度だった)ことを咎められ、追放されることになる。一度は死罪になりかけたが比企尼の説得もあり、命は助けられ伊豆修禅寺に幽閉されることになる。その後、現地の農民たちと畑仕事に精を出すなど穏やかに過ごしていたが、大姫が亡くなったことで悲嘆に暮れる頼朝に、「頼朝や源氏を呪っている首謀者」とみなされ、善児の手により刺殺される。
史実では大姫よりも4年早く死去している。迫田は『西郷どん』で千葉常胤の子孫・江藤新平を演じたことがある。
通称醍醐禅師。醍醐寺に預けられていた頼朝の異母弟。義円・義経の同母兄。幼名今若。後に実衣の夫となる。頼朝挙兵を知り兄弟中で真っ先に駆け付けた。特技は易であり、事あるごとに様々な相を占っているが、明らかに今後の不穏な展開が結果に出ているような気もする・・・。なお、本人曰く「私の易が当たるのは5割」であり、全部当たったり、逆に全く当たらなかったりするよりもよっぽど始末が悪いと悩んでいる様子。
実衣とは互いに好意を抱いての婚姻であり夫婦仲も良好。実衣曰く「何言ってるのかわからないところが好き」。
- 源義円(演:成河)
兄・頼朝のために手柄を立てようと志すが、嫉妬に駆られた同母弟・義経にそそのかされて叔父・行家と出陣、墨俣川で平家方に敗れて命を失う。
- 公暁(演:寛一郎)
- つつじ(演:北香那)
- せつ(演:山谷花純)
- 比企尼(演:草笛光子)
伊東祐親の娘(四女)で義時の叔母。頼朝の最初の妻となり、長男・千鶴丸を産むが...
義時の初恋の人でもあった。頼朝と離縁となってしまってからも、陰で何度も彼の危機を救っているが、そのせいで頼朝の現在の妻である政子からは目の敵にされていた。八重本人も当初こそ頼朝のことを慕い、顔は見えなくても役に立ちたいと御所仕えを願い出ていたが、亀の前の嫌がらせなどにより居場所をなくしていき、父や次兄の謀殺を知り完全に頼朝から心が離れる。その後、故郷である伊豆の江間を治める義時の館に移り住む。当初は欲しくもない土産物を持参する義時に難色を示していたが、彼の真心に触れ想いを受け入れた。なお、江間に移ってから一度、頼朝の訪問を受けたが言いよる彼の手に噛み付いて追い返した。
史実における離縁後の八重の人生については諸説あるが、本作では考証に参加している坂井孝一氏の唱える仮説(リンク先wikipedia記事参照)を採用して義時と結ばれる展開となり、長男泰時を産んだ。泰時誕生後は鎌倉に孤児が溢れていることに心を痛め、義時の了承の下屋敷で甥の曽我兄弟ら孤児たちの世話をしていた。奥州征伐後、義経を謀殺したことで気落ちする義時を励ますなど北条一族の中でも重要な支えとなっていたが、世話をしている孤児の鶴丸が川の中で身動きが取れず泣きじゃくっているのに亡き千鶴丸を重ね、単身救出に向かうも戻る最中川に流されこの世を去った。
- 千鶴丸(演:太田恵晴)
- 亀の前(演:江口のりこ)
それからは政子に気付かれぬまま鎌倉で頼朝の寵愛を受け、侍女として鎌倉にいた八重にも圧をかけるなど傍若無人の限りを尽くしていたが、その存在がやがて政子にバレてしまい、その後さまざまなアクシデントも加わって屋敷を焼き討ちされた。亀自身は義時の手配で事前に逃げ延びたが、かくまわれた先の上総広常にも色目を使っており、広常に閉口されている。後に政子が頼朝が再び亀の前のところへ行くと読んで匿われた先に乗り込んだが、そこで彼女に「彼(頼朝)の妻と見合うようにもっと学問や作法を身に付けなさい」と厳しくアドバイスした。
非頼朝・反頼朝勢力
頼朝の遠縁(頼朝の高祖父・義家と頼政の祖父・頼綱が又従兄弟)で源頼光を祖とする摂津源氏の長老。平治の乱以降、源氏でありながら平家の重鎮として重用されていた人物。以仁王を伴って平家打倒のために挙兵するが、以仁王共々平家に敗れ討ち取られる。
頼朝の従兄弟で信濃源氏の頭領。勇猛果敢で剛直ながら誠実な人柄、武将として優れた実力と統率力を持ち合わせ、部下たちからも慕われる英傑。二心を持たず、無意味な戦いを嫌う高潔で英雄然とした人物だが、それゆえに致命的なまでに政治力が欠けている上、都のしきたりや公家の作法・価値観も疎い「田舎侍」。同じ源氏である頼朝との戦を避けるため、盟約の証として嫡男・義高を鎌倉へ人質に出す。
倶利伽羅峠の戦いで平家を破って頼朝に先んじて京に上洛したものの、三種の神器を奪還したい朝廷の意図が理解できず、さらに末端の部下達の市中での狼藉行為を抑え込めなかったこともあり、後白河法皇に嫌われてしまう。
頼朝と法皇の策に振り回される中、頼朝の協力無しの単独での平家追討の命を受ける。しかし、備中で平家軍を相手に戦っている間、頼朝が法皇より信濃を含む東山道の支配権を任されたのを知って抗議のため都に戻るが、これを法皇に謀反と疑われてしまい、やむを得ず院御所を襲撃して法皇を幽閉。源氏側でありながら頼朝一派と対立する状況へ追い込まれてしまう。
源範頼・義経兄弟率いる討伐軍を迎え撃つが、兵を少なく偽る義経の軍略に翻弄され、宇治川の戦いで敗れる。逃れようとするも近江・粟津ヶ原で範頼軍に行く手を阻まれ、最期は額を矢で射抜かれて討死。
頼朝には政治力の差で破れる形になったが、それでも同じ源氏として最期まで彼のことを信じており、義高には頼朝へ反旗を翻さないよう諭す遺言を巴に託していた。
青木は『平清盛』では弁慶を演じている。
義仲の幼馴染。眉毛が繋がっている。『義経』では小池栄子が演じていた。鋭い目つきの通り気が強い女性で、自分を口説こうとした三浦義村を一喝した。
伝承などでもしばしば語られる怪力の持ち主ともとれる演出も存在する。
義仲が京から落ち延びる際、生き延びるよう命じられ1人頼朝軍の方に投降したが、和田義盛にその豪胆な性格を気に入られ、彼の庇護を受ける。
24話では久しぶりに登場し、義盛の館で穏やかに過ごしている様子が描かれ、徐々に薄れてゆく義高の面影に恐怖する大姫に対し、自分たちは前へ進むしかないというエールを送った。なお、義盛とは勝手に餅を食べたことに腹を立ててぶん投げる程度には仲がいい様子。とか思ってたら25回では義盛とキスする寸前までいってた(頼朝急死を義盛が察したので直前にキャンセルされたが)。なお、義盛の下に身を寄せてから眉間の部分の眉毛は剃られている。
- 源義高(演:八代目市川染五郎)
- 今井兼平(演:町田悠宇)
頼朝の遠縁で甲斐源氏の頭領。通称は太郎。石橋山の戦いに敗れた頼朝から援軍の要請を受けるも、自らが源氏の棟梁となる野望を秘めていることから、後白河法皇の密勅を差し出すよう要求してきた。しかし、最後は嫡子忠頼を討たれ自身も(内心はともあれ)起請文を書かされることとなり、「謀反とは何か!我々は頼朝の家臣ではないわ!」という恨み言を吐きつつも頼朝に屈服せざるを得なくなった。この起請文を書くよう命じた義時に「お前たちはおかしい。狂っておる!」と悲痛な叫び声を上げた。武田信虎・信玄・勝頼らの先祖。演者の八嶋は三谷大河第1作でも武田姓の人物を演じている。
- 一条忠頼(演:前原滉)
- 佐竹義政(演:平田広明)
通称は九郎。全成・義円の同母弟。幼名牛若。検非違使に叙任されてからは判官とも呼ばれる。
奥州藤原氏に庇護されていたが頼朝に合流するために出立した。頼朝とはまた違った方向で自由奔放な性格で周囲を振り回す。武芸に優れ、常識に捉われない型破りの発想の持ち主であり、また軍略に関しては自負心も非常に強い。初陣の佐竹攻めで優れた戦術眼で献策するも、披露する前に戦が終わるという憂き目に遭う(なお、史実の義経は佐竹攻めには従軍していない)。
劇中では獲物をめぐって猟師を射殺する・仮にも先輩格である広常ら坂東武士と口論になる・戦術を披露できなかった腹いせに模型の城を怒りのままに破壊する・同母兄の義円を口車に乗せ戦死に陥れるなど、その余りにも強烈なキャラ付けから、放送後のツイッターでのサジェストでは「義経 畜生」「義経 サイコパス」といった単語がトレンド入りしたほど。癇癪持ちで感情のままに行動しがちという点では過去に菅田が演じた『おんな城主直虎』の井伊直政と似ている部分がある。ついでながら、女癖の悪さは兄と同じ。後に比企能員の娘・里を正室とする。
破天荒な振る舞いが目立つ一方で、その行動原理は(基本的には)「兄上に喜んでもらいたい」という純粋な気持ちが根底にあり、「自分は戦でしか役に立たない」→「そのためには勝たねばならない」→「勝つためには見栄えや矜持なんて気にしてられるか」という本人なりの筋がある様子。そのため、平家討伐後に鎌倉に入るのを拒絶された際には「なぜだ?!」と嘆いたが、頼朝が帰京を促すと素直に引き下がるなど、どこまでも頼朝に対して忠実。また、かつて道案内をしてくれた地元の民・藤平太との約束を忘れず山盛りの里芋を振る舞ったり、一度は却下した平宗盛・清宗親子の最後の対面を許したり、当時外道とされていた船の漕ぎ手(非戦闘員とされていたので、当時の常識的には攻撃対象にならなかった)に対する攻撃で亡くなった敵方の漕ぎ手たちを手厚く埋葬するよう義時に命じたりと情も持ち合わせている。
壇ノ浦の戦いでは八面六臂の活躍で平家を滅ぼすも、「倒すべき敵」がいなくなったことで自分の先行きを憂うようになる。
都に凱旋後、頼朝を危険視し、朝廷の権力の維持を目論む後白河法皇により、頼朝の許可無しで官位を与えられたことで、その運命は暗転。一武将に過ぎない義経が法皇の恩賞を断れるはずも無く、かと言って頼朝も立場的にこれを許すわけにもいかず、お互いに望まぬまま兄弟で対立せざるを得ない状況に追い込まれてしまう。さらにその後も思い違い・行き違いが重なり、土佐坊昌俊の襲撃を頼朝の差し金だと誤解したことを切っ掛けに、法皇と行家に焚きつけられる形で遂に頼朝に対して謀反を起こすが、賛同する武士達は少なく、頼朝が鎌倉から大軍を率いて上洛する構えを見せると都を落ち、平泉に潜伏する。
鎌倉からの追手をかわすため、有力御家人の比企能員の娘である里を同行させて人質として逃亡に利用しようとの冷徹な計算を見せる。しかし、最終的に頼朝の命を受けた義時に炊きつけられた藤原泰衡の襲撃を受け、最後は義時とひと時対話した後、大量のトラップを仕掛けた隠れ家にて泰衡の軍勢を迎え撃ちながら戦死した。なお、自害する様子は直接描かれず、頼朝の元に義経の首が届けられ、それと対面するという形で表現された。
隠遁生活中にも鎌倉の襲撃プランを練っており、死の直前に館に招き入れた義時を通じてそれを梶原景時に届けさせた(ちなみにこの内容は後に新田義貞が鎌倉を攻め落とした時の計画そのままであった)。
義経の愛妾。京随一の白拍子。関西弁で喋り、里に対しても遠慮がない。奔放な発言が義経に良くも悪くも影響を与えていた。
義経と別れた後、鎌倉方に捕らえられ、道に侮辱された時の反応などを経て義経の側女であることが発覚、身ごもっていた男児を善児に殺され失意のうちに鎌倉を去った。その後の消息は定かではないが、美濃で彼女とよく似た遊女がいるという噂が立っていることが語られている。
ちなみに石橋静河の父の石橋凌は『麒麟がくる』で武田信義の末裔・信玄を、母の原田美枝子は『北条時宗』で義時の孫娘(名越時章の妹)である桔梗を演じた。
演者の父は中日ドラゴンズで活躍した名投手で「踊る守護神」と呼ばれた郭源治。このため父に倣って「義経の守護神」などと言われたりした。
坂東武士(源氏方)
比企尼の甥であり養子。性格は温厚で、押しの強い比企尼と妻に振り回される不憫な人…と思いきや頼朝側に付きつつも、彼に不満を持った坂東武者側にもつけるような準備もしたり派閥作りに励むなど養母や妻にも劣らぬしたたかな人物。基本的にはぼんやりとした人当たりのいいような態度をとっているが、頼朝への憎悪を激らせる曽我兄弟を一喝するなど、武家の棟梁としての力は十分にある。
頼朝暗殺事件の際には範頼を鎌倉殿に据えるため詰め寄るが、頼朝が生還すると一転して無関係を装った。(とはいえ、能員自身はかなり後ろめたさを覚えていたようで、道からの願いで見捨てることになった際には「蒲殿すまぬ」と呟いている)
脚本家の三谷(から話を聞いた演者の佐藤)曰く、「人のいい仮面を被ったマクベス」的な人物。
佐藤は『平清盛』で藤原家成を演じている。
- 道(比企局)(演:堀内敬子)
- 比企時員(演:成田瑛基)
大庭景親の一族。通称は平三。景親に従った石橋山の戦いで洞窟内に隠れていた頼朝を見逃した(本人曰く「頼朝の強運を目の当たりにして、こいつ手にかけたら神罰食うと思ったから」(超要約)らしい)かと思えば、広常を平家方にスカウトするなど不可解な行動を起こしている。広常以下坂東武者を傘下に入れた頼朝の軍勢が鎌倉に迫るなか、無茶な戦を仕掛けようとする景親を見限り、自分は家人ではない、と言い放ち袂を分つ。頼朝陣営に加わって以降は間者のような働きを見せ、義経の謀や鎌倉殿周辺の危機などを見破ったりしている。盆栽や和歌を嗜み、報告書の作成にも優れた手腕を見せる教養人であり、粗暴な人物は好まない。
「平家物語」等後世の作品では何かと義経を敵視する憎まれ役として描かれることが多い中、本作では一流の戦略・戦術をもつ軍奉行として平家追討に参加、突飛な義経の行動を諌めることはあれど、義経の策の合理性を理解し、自分には思いつかない奇策の数々に密かに嫉妬さえするという非常に人間臭い描写がなされている。また、義経の鬼神のような活躍には「八幡菩薩の化身だ」と最大級の賞賛を送っていた。義経も真正面から意見してくれる景時のことを信頼しており、軍議の場では対立することはあれど2人きりの時には「私のことを一番わかってくれるのはお主だ」と景時にこぼすほどだった。しかし、義経のことを一番理解しているが故に、義経と頼朝という天に選ばれた者2人は並び立てないということをも理解してしまい、義経への猜疑心に傾きつつある頼朝に対して義経のことを弁護はしなかった。
義経の死後は彼の遺した鎌倉攻めの構想をもとに鎌倉防衛網をさらに盤石にするよう努めているが、御家人たちからは義経を弁護しなかったことで後ろ指を刺されがち。景時自身も「兵法に優れた義経に対し、兵法を知らない景時」として自分が後世に残されることを予感している。また、巻狩りで思うように獲物が仕留められない万寿に対し「戦に作法などござらん。某は九郎義経殿からそれを学び申した」と語り、毒餌を用いることを勧めるなど今までにない一面を見せた。
また、頼朝には配下に刺客にできる人間がいることを知られているようで、謀略だけでなく(頼朝の利益にならない人物の)殺害に関することも任されているもよう。現に、範頼暗殺を決心した頼朝は景時を呼び出している。
- 梶原景季(演:柾木玲弥)
残念ながら佐々木高綱との宇治川の先陣争いや生田での奮戦は描かれなかった。
通称は藤九郎。比企尼の娘婿の1人。頼朝の伊豆流人時代からの側近。第十一回では八重に失恋して嘆き悲しみ、大泣きした義時を慰める心優しい一面を見せた。また頼朝から御家人たちの心が離れていることを憂慮しており、義高の一件ではそれとなく義高逃亡を手助けしていた。また、第23話では比奈のもとに夜這いに行こうとした頼朝を有無を言わさず「なりませぬ!」と一喝し、一度は断念させた(結局頼朝はこっそり比奈のもとに出向いたが)。
相模川での供養から鎌倉に戻る道すがら、頼朝の乗馬の轡をとったことで懐かしい日々を思い出し、「いざ語ろうとすると思い出せないものです」と穏やかに話していたが、突如頼朝の体調が急変し落馬。彼に駆け寄り、思わず「佐殿ー!!」とかつての呼び名で呼んだところで25回は幕を閉じた。
通称は弥九郎。盛長の嫡男。鶴丸に対し暴言を吐いたことで金剛と喧嘩になり、頬を殴られていた。北条時頼・時宗父子の側近として力を奮った安達泰盛の祖父。
通称は次郎。義明の次男。時政と同じく伊東祐親の娘婿で盟友。父の死後、三浦介を称し三浦党の頭領になる。
- 三浦義明(演:なし)
通称は平六。義澄の子。義時とは従兄弟同士であり盟友でもある。しかし考え方は必ずしも一致せず、また情にとらわれることなく損得を冷静に判断するため時として北条を裏切ってしまう行動に出ることもある。だがクールで理知的な一方、義時曰く「女(おなご)とみるとちょっかいをかけずにいられない」性格なため以下のように散々やらかしている。
- 義時と八重を取り合った際にはあまりにもあからさまに迫りすぎて堂々とフラれ、しかもやけ食いした古い草餅で食中毒を起こして戦に不参加になった。
- 亀の前を匿った際にもちょっかいをかけ「頼朝の女を俺のものにし、俺は頼朝を超える!」とキメ顔で断言し、「理解できん!」と義時に呆れられた。
- 義仲の下へ使者として派遣された際には巴御前にちょっかいかけて顰蹙を買って斬り殺されかけた(義時の取りなしでなんとかなった)。
- 静御前が鎌倉に連行された際には、静御前をこの目で見たいという野次馬根性から雅楽隊に立候補。なお義村当人は音曲の心得は全くなく、「テキトーに鳴らしておけばいいんだろ?」と抜かした結果、音曲に長けた重忠にマジギレされてしまった。
演者は当時45歳だが、初登場時の史実での義村は当時8歳であった。また山本は『平清盛』では九条兼実の叔父・藤原頼長を演じている。
- 初姫(演:福地桃子(成長後))
なお、のちの矢部禅尼ではとの声もあるが史実の矢部禅尼が誕生したのは藤原秀衡が亡くなった1187年である...と思われたが、泰時の最愛の妻であることが公式から明言された。
通称は小太郎。史実では三浦義明の長男・杉本義宗の子。義澄の甥。髭もじゃの暑苦しい顔に常に袖まくりというワイルドな格好をしている。その見た目に違わぬ熱血漢で、言葉よりも行動が先に出るという直情径行な振る舞いが目立つ。そのせいで周囲を振り回したり、騙されたりするなど作中でもコミカルな役回りが多い。厳つい容貌に似合わず素手でヒヨドリを捕まえてきてはしゃいだり、顔が怖いと泣きじゃくる子供(万寿、後の頼家)を必死にあやしたり、手柄を説明するために思わず吹き出してしまうほどのゆるゆるなイラストを描いたりとやっぱりコミカル。子孫に佐久間信盛や盛政らがいる。
木曽義仲敗死後、落ち延びようとする巴御前と遭遇、ひと目見て気に入ったため配下に生け捕るように命じる。敗兵であるからといって巴に対して粗野な扱いをしなかったため、巴もどっかの平六さんのときとは違っておとなしい態度であった。第24、25話では巴御前と結婚しており、仲睦まじい様子を見せる。
通称は次郎。母方の従兄弟の和田義盛とは対を成す存在で冷静かつ周囲の空気もしっかり読める涼やかな美男子。互いの祖父である三浦義明を討ったこともあってか義盛とは反りが合わないが、同じ従兄弟である三浦義村とも気質の違いから反りが合わない。勇猛な武人だが歌舞音曲に対して拘りがある。
演者の中川は『平清盛』では少年時代の源頼朝を演じている。史実の重忠は義村より4歳年上なのだが、中川は義村役の山本耕史より22歳も年下。
- ちえ(演:福田愛依)
- 稲毛重成(演:村上誠基)
- あき(演:尾碕真花)
通称は次郎。温泉郷の領主であり、義時とも顔見知り。地元の領主として石橋山の戦いで敗れた頼朝の脱出の手筈を整える。実直すぎる人柄で、一度は謀反に肩入れするも義時の詰問には嘘をつくことができなかった。また、御家人たちの不満が噴出すると「仲良く!仲良くじゃ!」と仲裁に奔走するなど、調和型の人物。(彼だけに限った話ではないが)かなりの悪筆。小早川家の遠祖でもあり血こそ繋がっていないが小早川隆景や秀秋らを輩出する。
通称は上総介、介八郎。房総最大の勢力を有す豪族で、配下は二万騎とも言われる。奥州とも繋がりがあり、そこからもたらされた砂金を「こういうときは遠慮せずにもらっとくもんだ」と躊躇なく義時にくれてやるなど豪快な振る舞いが目立つ。領地・富ともに手に入れた男であり、彼をなんとか自陣営に引き入れるため源平両陣営はあの手この手の工作を行うこととなる。史実かは不明だが千葉常胤や三浦義明と共に玉藻前退治を行い自らとどめを刺したことでも知られている。
頼朝の強運を信じて源氏方に付くが、それでも頼朝が大将の器ではなかった場合暗殺するつもりでいた。味方になった後もプライドが高く尊大な態度は変わらず、周囲はやや扱いに困っている。頼朝のことは「佐殿」「鎌倉坂東武者殿」とは呼ばずに「武衛」(義村に教えられた呼名で、佐殿よりも敬う呼び方だが広常はこのことを知らない)と呼んでおり、時折タメ口になる。
坂東武者が木曽義仲の討伐に反対して反乱を起こそうとしたときは、大江広元から入れ知恵を受けた義時の助言であえて坂東武者側について反乱を抑える活躍を見せた。騒動がひと段落した晩には頼朝と二人で杯を交わしたが、実はこれは源氏方で一際目立つ勢力であった広常を取り除くための頼朝と広元の策で、密命を受けた梶原景時によって双六の最中に殺害された。文字の読み書きに疎く、上洛までにまともな文筆ができるよう稽古をしていたが、その中には頼朝を非常に信頼していたととれる内容が記されていた。その書を読んだあと、頼朝は「あやつは謀反人じゃ」と言いながらその場を離れたが、どこか後悔するような素振りを見せていた。
彼の死の直後義時は子(泰時)を授かるが、彼の産声が広常の口癖であった「ぶえい(武衛)」に聞こえるという演出がなされている。
なお、佐藤は『武蔵坊弁慶』では木曽義仲を、『炎立つ』では源義家を演じている。
- 岡崎義実(演:たかお鷹)
曾我兄弟の一件では、彼らの養父である曽我祐信が幼馴染だった関係で彼らの仇討ちに賛同した。
その後、曽我事件への関与を疑われたことで出家させられ、沙汰を伝えにきた景時に「あんたが来たってことはそういうことか」と覚悟を決めるも、息子義忠の忠誠心に免じて死罪は免れたことを伝えられ、その沙汰に驚くと同時に「そんなこともあったな...」と呟き作中から退場した。
- 佐奈田義忠(演:なし)
頼朝の側近。自身も伊東祐親に所領を奪われた上に妻を離縁させられた恨みがあり祐親暗殺を狙うが失敗し息子の河津祐泰を誤って殺してしまっている。また一条忠頼暗殺をしくじるなど武芸はイマイチだが歌舞音曲特に鼓を得意する教養人である。頼朝が鎌倉殿になってから所領を取り戻したが、頼朝が将軍になった頃にかなり出世した。八重には祐泰の件で嫌われ彼女の甥でもある曽我兄弟からは恨まれていた。富士野の巻狩りでの頼朝襲撃では頼朝の身代わりとなる形で曽我兄弟に討ち取られ、彼の遺体が一時頼朝のものと誤認されていた。
史実では離別させられた前妻が土肥実平の息子・小早川遠平に再嫁し、後妻の子の伊東祐時が日向伊東家の祖となり子孫には天正遣欧少年使節の主席正使を務めた伊東マンショがいる。
義時と知り合いの坂東武者。通称は四郎。朗らかで実直な性格だが、腕は確かな武辺者で一条忠頼を斬っている。最初、名字の読みが同じため新田義貞の先祖と勘違いする視聴者が続出した。ちなみに忠常の本姓は藤原姓。また、演者である高岸の芸人時のトレードマークにあやかってか、着物は橙色になっている。なお、第22話ではついに義時のところにいる孤児たちに「やれば、できる!」と言った。が、その後すぐに普段の芸風とは真逆の「無理ですぅ~」と切実な表情で嘆いた。
富士野の巻狩りでは工藤祐経仇討ちに向かう曽我兄弟の軍勢に加わるも頼朝の寝所に向かおうとしていることに気づき曽我十郎と刃を交える。
伊豆の在郷武士。恐ろしいまでのフトッチョで、頼朝からもその体型を心配されたほど。宗時同様、善児の魔手に倒れる。史実では祐親や祐経の叔父。祐親や時政らを率いてかの源為朝を討伐している。通称は狩野介など。日本画の狩野派を興した狩野正信の先祖に当たる。
通称は千葉介。広常の又従兄弟。広常を「介八郎」呼ばわり出来る唯一の人物。年齢は頼朝挙兵時点で当時としてはもう老人である60過ぎの身でありながら、参陣ついでに平家方の国司の首級を挙げてくるなど血気盛んなおじいちゃん武将。義経死後、さらに老け込み酔っ払うと「それにしても九郎殿(義経)は強かった!」botと化すようになった。25回では久しぶりに登場し、自分達の訴訟を公平に裁いてくれた頼朝に感謝を述べに御所に参上するなど九郎殿botじゃない姿を久々に見せた。
子孫には相馬盛胤・義胤・新渡戸稲造らがいる。岡本は『草燃える』で藤原定家を、『平清盛』で藤原邦綱を演じている。
- 佐々木秀義(演:康すおん)
史実では伊藤忠清らが起こした「第一次三日平氏の乱」で戦死しており、第十八回では既に故人。佐々木道誉や尼子経久らの祖。
- 八田知家※(演:市原隼人)
史実では頼朝より3~5歳年長とされるが、演者の市原は頼朝役の大泉より14歳も年下である。
- 足立遠元※(演:大野泰広)
- 小山朝政(演:中村敦)
- 藤内光澄(演:長尾卓磨)
坂東武士(平家方)
宗時・義時・実衣・義村の母方の祖父で、祐泰・祐清・八重らの父。平家の後ろ盾で伊豆随一の豪族にのしあがった。孫の千鶴丸のことなどから頼朝とは互いに憎み合うことになり、頼朝挙兵後は平家方に加担し石橋山では実の孫である宗時を暗殺したりしている(実行犯は善児)。一方で、自らの命で暗殺した千鶴丸を弔うため、立派な墓を建てるなど冷血一辺倒の人物ではない。政子の口からは、幼少期の義時や政子の遊び相手をするなど、「優しいおじいちゃん」であったことが語られていた。史実では備中岡田藩主になった尾張伊東家の遠祖に当たる。後に頼朝に捕縛されるも、政子の懐妊によって恩赦が下りる。この頃から、険しい顔付きから好々爺のような柔らかい顔つきになっている。そうして親子3人で暮らすことを夢見ている矢先、祐清ともどもかつての従者である善児の手にかかる。なお、史実では自分の行いを恥じるという名目で自害している。
- 河津祐泰(演:山口祥行)
- 曽我十郎(演:大藤瑛史→田邊和也)
祐泰・祐親・祐清の死後、叔母の八重の下に身を寄せた。成人後は時政の家人となり、仕えている。父の仇である祐経への仇討ちを時政に願い出る。弟と違い策士タイプの人物。時政には伏せていたが「祖父・祐親の恩を仇で返した」「文官ばかり登用する」「平家の時代と全く変わらない」として、頼朝を手にかけることを画策する。
頼朝襲撃の際には、異変に気づいた忠常を相手取り、五郎以下他の同志たちを頼朝の寝所に向かわせる時間を稼いだ。なお、討たれた描写はないが、頼朝の前に引っ立てられたのが五郎だけだったため史実同様に忠常に討ち取られたと思われる。
- 曽我五郎(演:加賀谷光輝→田中俊介)
頼朝襲撃の際には館に飛び込み、寝所にいた男の首を取った。五郎自身はこれを頼朝だと思っていたが、実際は頼朝は比奈に会いに夜這いをかけていたため不在で、討ったのは奇しくも父の仇である工藤祐経であった。その後、梶原景時から頼朝が無事であることを聞き驚愕する。
だが、もしも頼朝が曽我兄弟の襲撃を自分への謀反であったことを認めてしまえば、騙されたとはいえ仇討ちの許可を出して手勢まで貸し出した時政をも罰しなくてはならなくなる上、征夷大将軍としての体面(=幕府の内部統制)にまで悪影響を及ぼす事態になりかねない。そこで義時と頼朝は一計を案じ、襲撃を「最初から工藤祐経だけが主目標だった」とすり替えることで、曽我兄弟を「自分達の命と引き換えに父の仇を討った果報者」に仕立て上げることを画策。
五郎は本当の敵を討ち果たせなかったばかりか、自分達の本当の怒りや尊厳が踏みにじられ、嘘塗れの茶番じみた「美談」にされてしまったことに絶望しながら下人に連れて行かれた。その後、斬首され、首は鎌倉で晒し者にされたことが語られた。
『曽我兄弟の仇討ち』はその後、武士社会における「仇討ちの模範」とされ、後世においても「日本三大仇討ち」の一つに数えられ、様々な芸能や英雄譚の中で「美談」として語り継がれているのは、多くの人々の知るところである。
- 伊東祐清(演:竹財輝之助)
通称は三郎。大庭・梶原一族ら鎌倉党の頭領。相模随一の大豪族であり、伊豆のドンである伊東氏に対抗できる武士として三浦親子からの情報リークを受け伊東氏の包囲する北条館に急行、「身内同士の争いなんざ見れたもんじゃねえぞ」と両者を取りなす。その後頼朝が挙兵した際には石橋山において時政を挑発して先手を打たせ自分にとって有利な平野部に誘い出し圧勝。しかし、その後再起したうえに更なる大軍勢に成長した頼朝勢には数では圧倒的に劣り、景時にも見切りをつけられたのもあって一戦もせず鎌倉を頼朝に明け渡す。景時に「粗暴な男」と評されるが、演者の重厚な演技によりそうは見えない。
頼朝が勢力を盛り返していくなか、平家への忠誠を守り誇り高く広常に首を討たれ、梟首される。だが死の間際、広常に「あの時頼朝を殺しておけばと思う時が来るかもしれんの」と言い遺した(そして、上記の通り彼のこの発言は最悪の形で的中することになった)。
史実では娘が秀義の五男・義清(子孫に乃木希典がいる)に嫁いでいる。國村は『平清盛』では九条兼実の祖父・藤原忠実を演じていた。
- 山木兼隆(演:川原勝利)
- 堤信遠(演:吉見一豊)
- 山内首藤経俊(演:山口馬木也)
- 江間次郎(演:芹澤興人)
祐親に仕える家人。八重を娶ることを祐親に命じられた。しかし頼朝を想い続ける八重に苦労させられたものの、本人は八重を愛しており祐親から八重を暗殺するよう命じられたが「俺にはあなたを殺せない。急いでお逃げください」と最後は八重を守って善児の手に掛かった。
普段は伊東家の雑務をこなしているが、祐親の命令とあれば相手が子どもであろうと、まるでちょっと物をどかすかのように何の感情も無く淡々と人を殺す。千鶴丸・宗時・茂光・江間・八重(未遂)の殺害に北条の監視などを行っている。
鎌倉方に捕らわれて後、かつての主人である祐親・祐清父子の殺害を梶原景時に命じられて行い、以後、彼の配下になる。
また、広常粛清の際には小者に扮し広常にわざとぶつかり彼の帯刀を密かに没収。景時に襲撃された際に広常が抵抗できないようにした。
義時が奥州へと出かけた際には、従者として彼に同行した。この時は珍しく自分から口を開き、義経の暗殺を提案したが、義時は違う形で覚悟を決めていたため却下された。また、ここでの義時との会話から、彼が以前は農民であったことが判明する。
曽我事件の際には、能員に仲間になるよう接触した曽我兄弟の話を盗み聞き、その企てを景時に通達するという活躍を見せた。
大姫が亡くなった際には、伊豆の修善寺に幽閉されていた範頼が呪詛を行ったと考えた頼朝が梶原景時に範頼の暗殺を命じ、梶原が善児に実行させている。このとき善児は範頼と語らっていた農民の夫婦を殺害し、範頼も刺し殺す。それを見ていた村娘(下記参照)に小刀を向け脅したが、村娘が自分に鎌を突き出して来たため、殺すことを思いとどまって自分の娘として育てることにする。
そのアサシンっぷりから、オープニングのキャストに善児の名前があると誰かが悲劇の最期を遂げる合図であるとファンからは恐れられている。
因みに善児の演者の名前は「かじわら」ではなく「かじはら」。梶原は『平清盛』では平頼盛の家人の平宗清を演じておりこちらでは頼朝を捕らえている。
あの善児に育てられた孤児。偶然善児による範頼暗殺の現場に居合わせてしまい恐怖で足がすくんでしまうが、迫ってくる善児に手に持った鎌を突き出しなんとか抵抗しようとする。それゆえか何かを思った善児により殺されることを免れ、彼のもとに引き取られることとなる。「静かな覚悟を抱きながら、志を受け継ぐ」とのことだが...?
※ドラマ本編ではテロップなどでこの村娘がトウであることは明示されていないが、公式ガイド本のシナリオ集にて明記されている
幕府官僚
頼朝に京で起きたことを知らせる下級貴族。頼朝の乳母(比企尼か山内尼かは不明)の妹の子。
頼朝にとって重要な情報源になっているが、あわて者でもあるため誤報であることも多い。19話でようやく鎌倉に下向し、義時たちと合流。以後は御家人同士の諍いの仲裁を担当している。
頼朝襲撃の際には、肝心の頼朝の安否が不明の時点であるにも関わらず朝廷に頼朝の訃報を送ってしまうという早とちりを犯してしまい、騒動をさらに大きなものにしてしまうことに…。
また、正直すぎうえに慌て者であるがゆえに割を食っている感が否めなく、全体的に演者が同じの前作の三谷大河におけるこの方っぽい感じが出ている。
鎌倉幕府草創期髄一の能吏と言われ、上総広常誅殺や義経排除などの計略を捻り出すなど、あらゆる謀略にも関与するため、視聴者に「鎌倉のオーベルシュタイン」と言われる。一方で、上洛の際の御家人の酒宴で「鎌倉に来たのは頭の硬い京の公家に愛想尽かしたから」「坂東武者の皆さんのおかげで下向の時『都落ち』と揶揄した公家連中を見返せた」と熱い胸中を語り、あの和田義盛にも気に入られるなど他の御家人との関係も良好。
冷静沈着かつ理性的な性格であり、頼朝襲撃の第一報が舞い込んだ際にも「安否が不明なうちは早まった行動をしてはならない」と範頼や他の文官たちを諌めていたが、聞き入れてもらえなかった。
子孫には毛利元就・輝元、上杉謙信などに仕えた北条高広らがいる。
- 中原親能※(演:川島潤哉)
- 二階堂行政※(演:野仲イサオ)
平家
入道相国・平相国とも呼ばれる朝廷すら意のままに操る程の絶大な権力を持った平家の棟梁。頼朝にとっては父の仇であり、宿敵である。
頼朝が平家打倒の兵をあげたことに激怒し追討軍を派遣するも、富士川において戦わずして潰走、これを知った清盛は自ら軍勢を率いて出陣しようとするが、直後に謎の熱病にかかり死去する。ネット上には「文覚と後白河法皇の呪いが天に通じたのでは?」という声もある。
松平はTBS大型時代劇『平清盛』でも清盛を演じ、『草燃える』では本作の主人公である北条義時を演じており、『義経』では弁慶を演じている。また『平清盛』では松山ケンイチが演じたため松ケンからマツケンとネタにされた。また松平は『おんな城主直虎』で武田信義の子孫・信玄を演じている。
- 平重盛(演:なし)
清盛の三男。平家の次期棟梁。小泉は『義経』で甥の平資盛を演じている。
父・清盛亡き後、器量のなさを露呈するが、幼帝・安徳天皇と一門の行く末を守るため、必死の思いで源氏の追跡に立ち向かう。
壇ノ浦の戦いで平家が大敗した際には死にきれず、捕虜として鎌倉に連行された。その際には嫡男清宗のことを案じていたり、頼朝に対する弁明状(のちの腰越状と思われる)を代筆したりと非常に人間臭い側面を見せた。また、長兄の平重盛に関しても言及しており、「兄がいれば平家はこのようなことにはならなかったものを」「(兄弟関係について)互いに心のうちを開いたことはなかったが、互いに信じ合っていた。兄弟とはそのようなものにござる」と語っており、兄弟仲はそれなりに良かった様子。
- 平知盛(演:岩男海吏)
- 平清宗(演:島田裕仁)
重盛の嫡男。宗盛の甥。
富士川の戦いで鳥の羽ばたく音を敵襲と間違えて敗走する失態を犯してしまう。
- 二位尼(平時子)(演:大谷恭子)
奥州藤原氏
通称は次郎。奥州藤原氏当主。平泉を本拠とする北方の覇者。鎌倉を追われた義経を将軍に建てて、いずれは鎌倉に攻め入ろうという野心を抱いていたが、その野望を目前に病死する。義経や泰衡からは「御館(みたち)」と呼ばれているが、義経の一代記『義経記』にはすでに「御館(みたち)」と呼ばれており、この記述に準じたものである。
通称は太郎。秀衡の次男で後継者。義時の策略で義経を討った。
- 藤原頼衡(演:川並淳一)
- 河田次郎(演:小林博)
朝廷
清盛とは当初蜜月の仲であったが、後に対立。現在は清盛によって幽閉されており、幽閉の身でありながらも度々頼朝の夢の中に生霊として現れては彼に(パワハラ紛いの行動も交えて)助けを求めてくる。平家滅亡後、義経に前例のない検非違使と伊予守を兼任させて兄・頼朝との仲を裂く策謀家としての本領を発揮、「日本一の大天狗」と称される通り、なかなか食えない人物。
平家、木曽義仲、源義経よりもコントロールがきかない源頼朝が武家の頂点に立ったことをおそれて「平家、なぜ滅びた」と嘆き、ともに平家打倒の策を練った平知康に「おまえが悪い、下がれ」と怒りの矛先を向ける身勝手さを見せる。
頼朝上洛からしばらくして病に倒れ、「ワシは朝廷を守りきったぞ...」と呟き、後鳥羽天皇にあとを託し崩御した。
西田は『新・平家物語』(1972年)では本作の主人公である北条義時を演じている。
- 丹後局(演:鈴木京香)
女性の身でありながら謀略に長けており、後白河法皇に対して謀略の献策もする切れ者。ただし、木曽義仲が都を離れる際には義仲のことを少し可愛そうに思う素振りを見せた。
「平家、なぜ滅びた」と嘆き、ともに平家打倒の策を練った平知康に「おまえが悪い、下がれ」と怒りの矛先を向ける身勝手さを見せた法皇に同調し「出ていけ!」とヒステリックに叫んだ。
後白河法皇の亡き後は落飾している。
大姫と北条政子が後鳥羽天皇への入内のため、御所を訪れたときにこれを出迎えるが、都の女として生まれたその瞬間から権力獲得の道具として政争の中で生きてきた丹後局にとって、政子達(及びその背後にいる頼朝)の認識は甘過ぎるにも程があり、二人に対してねちねちと嫌味を言い、散々に貶す。これにより、大姫はショックを受けてしまい……
後白河法皇の第三皇子。父の法皇を幽閉するなど専横を極める平家を倒すべく、諸国の源氏に「平家追討」の令旨を送り、源頼政を伴って決起した。しかし、清盛に鎮圧され、奈良へ逃亡するも討ち取られる。
演者はダイジェストのナレーションも務めている。
- 安徳天皇(演:相澤智咲)
後白河法皇の孫で、高倉天皇の第四皇子。安徳天皇の異母弟。壇ノ浦の戦いののち剣が見つからなかったため、三種の神器が欠けた状態で即位することとなった。また、後白河法皇崩御の際には朝廷を守り抜くことを法皇に約束した。のちに鎌倉幕府に対して承久の乱を引き起こし、義時の前にラスボスとして立ちはだかる。子息に土御門天皇や順徳天皇がいる。
- 平知康(演:矢柴俊博)
後白河法皇、丹後局とともに平家打倒の策を練り、木曽義仲追放や源義経の破滅に関与したことが、むしろ法皇の怒りを買い、「おまえが悪い、下がれ」と叱責され、不興を買ってしまう。
朝廷で摂政・関白・太政大臣を歴任した実力者・藤原忠通の六男。
自身もまた、朝廷の実力者として平家や源氏とまみえていく。
義経に検非違使と伊予守を兼任させる前例のない後白河法皇の命令に不快感をもっており、法皇に対し命令を何度も聞き返して不満を表明する。
後白河法皇の在世中から法皇を見限っており、上洛した頼朝と手を結ぶ。
曾孫・頼経は鎌倉幕府第4代将軍、玄孫・頼嗣は第5代将軍。
- 一条高能(演:木戸邑弥)
兼実のライバルである公家。娘を入内させている兼実に対抗して自らも養女を入内させている。頼朝を嫌いながらも贈り物は受け取るという曲者ぶりを発揮する。
- 藤原兼子(演:シルビア・グラブ)
後鳥羽天皇の側近の1人。歴史書「愚管抄」の作者として知られる中世随一の名僧。ちなみに九条兼実の同母弟である。
- 源仲章(演:生田斗真)
その他
- 文覚(演:市川猿之助)
頼朝に挙兵を促した僧侶。頼朝の父・源義朝の骸骨を抱えていると称しているが…?
人を呪い殺す術をもつ怪僧。
後白河法皇に近く、頼朝にも(半ば嫌々)重用されるが、煩悩が多くあるように描かれており、御家人たちが起こそうとして失敗した「頼朝排除の謀反」にも深くかかわる。
猿之助は『風林火山』で信義の末裔・武田晴信(信玄)を演じている。
北条家との縁は時政が建立した伊豆の願成就院に納める仏像を製作したことから始まった。願成就院の本尊である阿弥陀如来像を披露する際に時政と意気投合、そのまま仏前で酒盛りを始めるなど破天荒な行動が目立ったが、時政が泥酔した際にも「仏様の御前だから酒に口は付けてねえ」と仏道に関わるものとして毅然とした態度を見せつけた。「薄明かりでこそ俺の仏様は輝く」と語っており、彼の手による阿弥陀如来像はどうしても「誰か」に似てしまうという。義時はそこに愛する妻であり子供たちを慈愛に満ちた視線で見守る八重を見出した。それを聞いた運慶は「誰か」というのが自身の母親であることを義時と時房に伝えた。
相島は『平清盛』で九条兼実を演じている。
- 願成就院住職(演:緒方賢一)
- 小六(演:中村大輝)
- 土佐坊昌俊(演:村上和成)
余談
キャスト・スタッフ
主人公・北条義時を演じる小栗旬は、本作と同様に平安末期~鎌倉初期を舞台とした『義経』(2005年)で梶原景季を演じたが、子役だった頃より度々大河ドラマへの出演経験があり、8度目の出演となる本作にて初主演を務める事となった。
ほかにも三谷幸喜恒例の出演者や、『義経』と同じく平安末期~鎌倉初期を舞台にした『平清盛』(2012年)からも複数の俳優が役を変えて出演している。
また例年行われていた、報道陣を前に十数名前後のキャストを一同に会しての発表が、新型コロナウイルス流行の影響で行い辛くなったのを逆手に取り、本作では2020年11月16日~20日の5日間にかけて、Twitterの番組公式アカウントにて脚本の三谷幸喜自らが一人ずつ小出しに発表するという異例のスタイルが取られた。
発表に先立って11月13日には、主演以外の24名を空欄とした人物相関図も公開されており、これによりファンによるキャスト予想も盛り上がった他、番組公式アカウントのフォロワー数も放送開始まで1年余り前の段階にして5.3万人(20日16時時点、当時放送中の『麒麟がくる』公式アカウントの1/3に相当する)に登るなど、「キャスト発表をSNSを通じたイベントにしよう」という制作陣の意図は一定の成果を上げた。
その後も第〇次出演者発表という形で出演前の新たな登場人物をクローズアップする企画は続けられている。
出番を終えた演者へのインタビュー企画「かまコメ」も公式ツイッターで公開されている。
異例の配役としては、安徳天皇を演じる相澤智咲、幼年期の後鳥羽天皇を演じる尾上凛は、両者とも女性である。
OP・ナレーション
- 真田丸と同じく、オープニングの終わりにナレーションであらすじが読まれる形式を採用している。
- ナレーションを務める長澤まさみは「登場人物たちの隣の部屋で囁いているような風に」という要望を受け、静かめに読む方式を取っている。
各話・関連ネタ
- 第一話はコミカルなやり取りが途中で一変、シリアスなえげつない描写が差し込まれる、終了直前に流れた音楽が鎌倉時代とはかけ離れたドヴォルザークの『新世界より』が流れるなど、大河ドラマとは思えない挑戦的な演出が注目された。
- ちなみに作中では他にも様々な有名な楽曲が使われており、義経出立のシーンでは同じくドヴォルザークの『家路』が、政子を中心とした女性同士の戦いではヴィヴァルディの『四季』のうち第4曲『冬』流れた。
- なお、本作の作曲を担当するエバン・コール氏は「戦姫絶唱シンフォギア」(アニメ2期「G」および3期「GX」)や「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」(アニメ版・劇場版ともに)などアニメ作品の音楽も多く手がけたことがあることもあって話題となった
- この他にも初登場する人物には一瞬映像を止めて名前を紹介したり、各回の終了付近で裏方スタッフ表記が行われるという民放ドラマのような演出も使われている。
- ちなみに松平健と西田敏行は『暴れん坊将軍』(テレビ朝日)と『八代将軍吉宗』(1995年大河)で徳川吉宗を演じたことから「吉宗対決」とネタにされてるが、実は二人とも先述の通り過去の大河ドラマで義時を演じている。また山本耕史もBS朝日の『紀州藩主徳川吉宗』(2019年)で吉宗を演じ、佐藤B作は『暴れん坊将軍Ⅲ』で吉宗と関わり深いめ組の小頭・半次郎を演じている。さらに尾上松也は『八代将軍吉宗』少年時代の吉宗こと松平新之助(暴れん坊将軍における徳田新之助の元ネタ)を演じている。
- 第一回で女装して逃亡する頼朝の衣装は、『草燃える』で北条政子を演じた岩下志麻が着ていた衣装と同じ柄である。
- ここ最近恒例となっている声優の顔出し出演枠は木村昴、平田広明、緒方賢一、関智一、山寺宏一と例年に比べても多めである。木村はテレビ朝日版『ドラえもん』の二代目ジャイアンとしても有名なせいか、SNSでは「ジャイアン王」、「周囲を無理矢理挙兵に参加させたのでは?」、「歌えば勝てたんじゃないか?」→「マツケンサンバ相手では分が悪い」などジャイアンネタで盛り上がった。他にも「(和歌も韻を踏むので)ラップバトルなら勝てたんじゃないか」という声もあった。また、アニメ『平家物語』にも平知盛役で出演しており、「自分(以仁王)が、自分(平知盛)の一族を討て」と命令し、返り討ちにあっていることが話題になった。
- 第十回に登場した平田も『ONEPIECE』のサンジなどで有名なため当然のようにサンジネタなどが出た。出番はほぼ一瞬であったが、公式インタビューによれば「時代劇で切られ役をやるのが夢だった」と語っており、充実した時間を送れたそうである。
- 第七次出演者発表にて土御門通親役として関智一の出演が発表されると「ジャイアンに続いてスネ夫も参戦か」と話題になった。また土御門(つちみかど)は「土門(どもん)」と読めることから、そちらのネタでも盛り上がりを見せた。ちなみに登場時に対面していた九条兼実を演じていたのは本職はお笑い芸人であるココリコの田中直樹で、ドラマらしからぬ異色の競演に驚いた視聴者も多かった。
- さらに、第七次出演者発表では後鳥羽上皇の側近である慈円役として山寺宏一の出演が発表。発表時には、twitterのトレンドになるほど話題となった。なお、発表の際のコメントによると山寺の小学生の頃のあだ名は「和尚さん」だったらしい。
- お笑い芸人の出演者も比較的出番が多く、目立つ活躍を見せている。
- 仁田忠常を演じるティモンディの高岸は序盤から出演し、ドラマ初出演でありながら伝令役や殺陣のシーンといった見せ場があり、視聴者たちを驚かせた。
- ココリコの田中も朝廷側の重鎮である九条兼実を演じる。ただし、後白河法皇に振り回され気味な場面もあったせいか、「タイキックを申し付けられそう」とネタにされた。
- 第三回に登場した源頼政は審神者の間で話題となった。彼は鵺退治の伝説でも知られ、その褒賞で朝廷から下賜されたのが太刀の「獅子王」である。ちなみに、『刀剣乱舞』に登場するこの剣がモデルになったキャラクター獅子王のいう「じっちゃん」とはこの頼政を指す。
- 一方、三谷作品のファンには西田敏行が演じる後白河法皇が頼朝の夢の中で現れるシーンは『ステキな金縛り』の落ち武者幽霊を彷彿させると話題にされた。
- 1月22日、金曜ロードショーで『新解釈・三国志』を地上波初放送、劉備=源頼朝⇒大泉洋、曹操=北条義時⇒小栗旬、董卓=比企能員⇒佐藤二朗、蘇我宗光(語り部)=後白河法皇⇒西田敏行、というキャストとコミカルな演出が話題になった。
- 第五回ではついに頼朝が「目指すは鎌倉!」と力強く宣言。多数のどうでしょう藩士が歓喜した。
- 石橋山の戦いで勝敗を分けることになってしまった酒匂川の氾濫だが、この河川由来の軽巡洋艦を知る提督たちからは「三浦勢をぴゃーっと足止め」「酒匂に足止めされたら義澄も小四郎(義時)、すまんと言うしかない」と話題になった。なお、この時代はまだ酒匂川ではなく、「まりこ(鞠子または丸子)川」と呼ばれていたようである。その後義経の平宗盛護送時にも酒匂に関係する地名が登場している。
- 第六回で頼朝を裏切り降参することを考えるも、頼朝と再会時に掌を返して無事を喜んだ時政に義時は冷ややかな視線を向けていた。
- 下記の項目に詳しいが、頼朝を演じる大泉洋は『水曜どうでしょう』の企画で鶴岡八幡宮を訪れており、第八回「いざ、鎌倉」ではその鶴岡八幡宮を建てる側になるという不思議な縁になった。また、この回が放送された2月27日は近年大泉の代表的ネタ(?)となっている「またしても何も知らない大泉洋さん」が誕生した日でもある。
- 頼朝の弟である義経を演じる菅田将暉は実写版『銀魂』2作で小栗旬演じる万事屋のリーダーの相棒兼ツッコミのメガネを快演したこともあって、本格的に登場するまでは「周囲に振り回されがちな義時を支える貴重なツッコミ役になるのでは?」と囁かれていたが、登場した義経は別ベクトルでツッコまれる側の人間だったことが判明した。義時の苦難は続く。
- またTBS日曜劇場『半沢直樹』シリーズに登場する演者も多いが、特に伊佐山泰二役の市川猿之助や黒崎駿一役の片岡愛之助はその方面でもネタにされている。
- 第九回「決戦前夜」における富士川の戦いはまさかの展開で難を逃れる形になったが、当時の記録である『吾妻鏡』で奇襲をしようとした平家軍が水鳥が一斉に飛び立った羽音で慌てて撤退した史実を基にしており、ちゃんと時代考証がなされた結果である。ただ、その水鳥が飛び立った原因が義澄と時政の喧嘩だったため、「じじいのピタゴラスイッチ」と視聴者にネタにされた。
- 大泉は自身が出演するローカル番組『おにぎりあたためますか』にて、山わさびチャーシュー丼を食べてリアクションを求められた時「俺、源頼朝やってるんだぜ…」と扱いが悪いことをぼやき、更にその後「俺が大河ドラマやってると真面目に見られないって人が続出してる」と前作真田丸同様の現象を認知していることを告白した。
- 第十回では佐竹攻めの映像にカメラマンが映ってしまうハプニングが発生。ごく僅かであったが、「タイムスクープハンターの取材班?」とTwitter上で話題に。なお再放送時には修正されている。
- 大泉洋と浅野和之は同年4月の月9『元彼の遺言状』でも共演しており、ネプリーグに番宣で出演した時に2人揃ってネタにされた。
- 第十五回は頼朝の鎌倉奪還に一役買い、その後も何かと義時や頼朝の力になった上総広常が頼朝に謀殺されるという衝撃かつ非常に重い話であるが、少し前にインタビューにて義時演じる小栗旬の「全部大泉のせい」と書かれたマスクはこの伏線だったのかと再び蒸し返された。また、この謀殺直前に広常は双六をしていた。
- あまりにも存在感があった為か、この放送の後はSNSやpixivでも彼の死を悔やむ声が多く、「#上総介を偲ぶ会」といったハッシュタグも使われている。
- 第十六回では土肥実平・和田義盛・北条義時・梶原景時・源義経の5人が木曾義仲との合戦の様子を自ら手書きの報告書にしたためて京都から鎌倉の頼朝へ送ったが、その紹介が大江広元による報告書の悪い見本・良い見本のレクチャーになっていた。
- 同じNHK系列で、比企能員演じる佐藤二朗が司会を務める歴史番組「歴史探偵」でも大河ドラマとタイアップして義経の素顔や壇ノ浦の戦いの真相に迫る放送回を設置。また、ゲストとして範頼役の迫田孝也が出演した。
- なお、義経の素顔に迫る回で記録に残る義経像から新たに義経の姿を描き起こすという企画の一環として佐藤演じる能員と迫田演じる範頼の姿がイラスト化されたのだが、能員のイラストがそのまんま佐藤二朗だったので、スタジオで総ツッコミを食らっていた。
- 後に北条政子を扱った回も放送され、小池栄子がVTR出演した。政子の周囲の人物には大河ドラマにおける演者の顔写真を使う演出が成された。
- 一ノ谷の戦いと壇ノ浦の戦いは合戦シーンがあったが、屋島の戦いは第十八回のナレーションで済まされてしまい、那須与一の扇の的も無かった。
- ドラマの展開は概ね『吾妻鏡』を第一資料としている節があり、そこに記載のなかった与一はあえてクローズアップしなかったとも考えられる。
- 三浦義村役の山本耕史氏は、同時期に劇場公開された『シン・ウルトラマン』にてメフィラス役を務めている(撮影時期的には本作の方が後である)。義村は後の研究にて「不可解な人物」と評されており、ドラマ内でも飄々としたどこか読めない言動が目立つが、メフィラスもまた飄々とした態度の裏で遠大な策謀を巡らせる策士として描かれている等共通点が多かったことから、両作品を視聴したファンからは「平安時代からメフィラスは地球に潜伏してたのか」「マジでメフィラスにしか見えない」という声が散見されている。
- 鎌倉殿制作チーム間でも話題となっているようで、三谷も「メフィラス最高」と絶賛しているとの事。朝日新聞に連載しているコラムにもその思いの丈を綴っている。
- おまけに上記の山寺の出演発表によって「この頃から既にとある外星人にマークされていたのでは?」というオチ(?)までつけられた。
- ウルトラシリーズ関連では、他にもトウ役の山本千尋が『ウルトラマンジード』でメインヒロインの鳥羽ライハを演じていたことが記憶に新しい。また、主演の小栗旬もデビューして間もない頃『ウルトラマンティガ』の玩具のCMに出演していたことがあったりする。
- 24話では大姫との対話の中で、「人は己の幸せのために生きる。当たり前のことです。」というメフィラス構文を彷彿とさせる発言が飛び出したため、ファンをさらに沸かせることになった。
- 義経の最後のシーンは外で弁慶が戦っている様子を壁の穴から覗き見しながら歓声をあげるというもので、直接の死亡シーンは描かれなかった。同様に、弁慶も有名な立ち往生のシーンは今作では描写されずに終わっている。ただ、義経はともかく、弁慶と言えば立ち往生の逸話があまりにも有名であることもあり、この演出には残念がる声も相次いだ。
- 時房役の瀬戸と全成役の新納は、かつて仮面ライダーキバで瀬戸が主人公の紅渡を、新納が敵組織の首領であるキングを演じていた。また同時期に放送された上記の歴史探偵には渡の父・音也を演じた武田航平が平知盛役で出演している。
- 上記の2人以外では伊東一族の大半が仮面ライダーシリーズで主要人物を演じており、他にも菅田将暉や山本耕史といったライダー俳優が多数出演している。→仮面ライダー大河
- 第23回ではついに金剛(のちの泰時)の演者が子役から坂口に変わったのだが、第22回との作中での時間経過は1年にも満たない。まあこの辺は大河ドラマではよくあることではあるのだが、本作では急激な外見の変化を「成長著しい金剛」のテロップ一つで済ましたため、視聴者は腹筋を試されることとなった。
- 第25回は、頼朝の体調が急変し、落馬したところで放送が終了する。この落馬直前の描写は先述の通り、脳卒中と思わしき描写が多いのだが、それに関連してか同エピソードでは見返すと同じく脳卒中の症状なのでは?という描写が見られる。
- 眠れない頼朝:脳血管障害の症状の一つとして睡眠障害がある
- 比企一族との謁見を済ませた際にふらつく:脳卒中の初期症状に足のもつれがある
- 餅を喉に詰まらせる:脳卒中の初期症状の一つとして嚥下能力の低下がある
- ちなみに公式ガイドブックのコラムでは、征夷大将軍就任後の頼朝が贅沢な生活のせいで糖尿病を患っていた可能性について解説されていた。糖尿病は当時の貴族階級ではよく見られる病気であり、あの藤原道長も糖尿病を患っていたとされる。もっといえば、道長は「第15回国際糖尿病会議」の記念切手に印刷されている。糖尿病になると血液がドロドロになり、それにより生じた血栓が脳卒中を引き起こすともされているため、頼朝が糖尿病だったとしたら脳卒中を発症してしまうことも筋が通っている。
史実の合戦や事件の展開について
三谷作品ではよくあることだが、大事な場面での秘策が誰かの大ミスで台無しになったり、逆に作戦的に見ればどうでもいいはずの行動が逆転や危機回避のきっかけになったりするなど、何とも締まらないが野村克也の名言「勝ちに不思議の勝ちあり」を地で行く変なところでリアルかつ予測不可能な展開が多い。そんなこともあって常時周囲に振り回されっぱなしという立ち位置にいる本作の主人公義時は、ある意味視聴者の気持ちを代弁しているともいえる。
そして最終的に、【吾妻鏡】の作者である何某達は、【吾妻鏡】に書いてある内容での編集作業に追われる日々を送ると言う事が確定している。
鎌倉殿どうでしょう
- 大泉洋が頼朝役で出演ということもあって、ネットでは彼の映画やドラマではない代表作から「いざ鎌倉」という台詞が掘り返され、以後も真田丸のように似たシチュエーションがないか視聴者が探すという動きがみられる。
- なお、第23回の富士野の巻狩りでは、獲物がシカだったり、インチキを仕込んだりと、いつも以上に鎌倉殿どうでしょうに繋がるようなネタが満載だった。無論TLは祭り状態となった。
王様のレストラン
登場人物の名前がこの時代の人物から取られており、染五郎の祖父である松本白鸚(当時は幸四郎)が主演を務め、鈴木京香・梶原善・野仲イサオ(当時の芸名は野仲功)が出演していた。
他の大河ドラマなどとのつながり
- 骨太な内容から今なお多くのファンを抱える大河ドラマ「平清盛」は、終盤の時代がちょうど「鎌倉殿の13人」の前編(頼朝挙兵〜平家滅亡)と重なる。そのため、「平清盛」ファン(通称「海の底の民」)が両作に出演しているキャストについて盛り上がることもあれば、ちょっとした作中の言動から「平清盛」を思い出して盛り上がるということが頻繁に起きる。
- 後白河法皇が双六をした際はもちろん海の底の民は大興奮。そのうえで、「あやつ(行家)と双六をしても面白うないわ」とぼやく法皇に対して、「そりゃゴッシーの相手はあの人しかいないもんね」と深く頷く海の底の民が続出した。
- 義経が義時に披露した鎌倉攻略作戦について「太平記」第22回の「鎌倉炎上」や漫画「逃げ上手の若君」の冒頭を想起する視聴者が続出した。しかも放映された5月22日は新田義貞による鎌倉攻めで義時の子孫である北条高時らが切腹し鎌倉幕府が滅んだ日(旧暦)でもある。
- 弥九郎こと安達景盛は『北条時宗』第1回でも描かれた宝治合戦(北条時頼の項目参照)のトリガーになった人物だが、彼が初めて登場した6月5日は奇しくも宝治合戦が発生した日(旧暦)でもある。
退場者リスト
()内は死亡ないしは退場の原因、及び殺害などの犯人。※は推定
<第1話> 千鶴丸(善児)
<第5話> 堤信遠(北条宗時)、山木兼隆(※北条宗時)、工藤茂光、北条宗時(いずれも善児)
<第7話>長狭常伴(※三浦義村)
<第9話>江間次郎(善児)
<第10話>大庭景親(上総広常)、山内首藤経俊(釈放。史実では政子の亡くなった1225年まで生存している)、佐竹義政(上総広常)
<第11話>平清盛(病死※後白河法皇&文覚の呪い)、義円(平盛綱※源義経の教唆)、伊東祐親・祐清(いずれも善児)
<第15話>上総広常(実行犯は梶原景時、善児は殺人ほう助)
<第16話>木曽義仲(源範頼軍)、今井兼平(※源範頼軍)
<第17話>源義高(斬殺。藤内光澄)、一条忠頼(斬殺。仁田忠常)、藤内光澄(斬首。源頼朝の御家人、北条義時が立ち会い)
<第18話>安徳天皇(壇ノ浦の戦い、入水)、平宗盛・清宗(史実では斬首だが、本作品では親子の対面を果たしたあとひっそり退場)
<第19話>源行家(「鎌倉方に捕まり、首をはねられるのは、これより少し後のこと」)
<第20話>藤原秀衡(※病死)、藤原頼衡(善児)、里とその娘(源義経)、源義経(※藤原泰衡軍、自害)、弁慶(※藤原泰衡軍)
<第21話>八重(鶴丸救出も川に流される)
<第22話>後白河法皇(※病死)、河津祐泰(工藤祐経による襲撃。時期で言えば第2話にあたる)
<第23話>工藤祐経(曽我五郎)、曽我十郎(※仁田忠常)、曽我五郎(梶原景時による斬首宣告)
<第24話>岡崎義実(出家)、大姫(病死)、源範頼(善児)、源範頼と畑仕事をしていた農民の夫婦(善児)
<第25話>源頼朝(落馬)
関連タグ
大河ドラマ 平安時代 鎌倉時代
本作と描かれる時代がほぼ同じ何らか関係のあるNHKのドラマなど
源義経(1966年大河)
新・平家物語(1972年大河)
草燃える(1979年大河)
武蔵坊弁慶(1986年新大型時代劇)
炎立つ第三部(1993~94年大河)
人形劇スペクタクル 平家物語(1993~95年)
北条時宗(2001年大河)
義経(2005年大河)
平清盛(2012年大河)
ネタ
一番頼りにしているのは実はお前なのだ 鎌倉のオーベルシュタイン 鎌倉は恐ろしい所です
こんばんは、後白河法皇です サイコパス義経 成長著しい金剛 善児被害者の会
全部大泉のせい 真似をしてはいけない