概要
時代や場所、宗教などによって、認められる場合と認められない場合がある。
遺伝子数の多い哺乳類、分けてもヒトの近親婚は、遺伝上の多様性の欠如による免疫力の低下と、遺伝病の原因となる潜性遺伝子の発現率が高くなることから、生物学上奨励されない。
また、文化や福祉的な問題もあることから現代の国家では法的な制限が行われることが多い。
王族や皇族などの特別な身分の血統、あるいはその逆に奴隷などの被差別身分の血統では、非科学的な信仰等により、近親婚が敢えて繰り返されるケースがあるが、家系図を調べると途中で短命な代があったりする。
我々に身近な例だと日本の皇室が上げられる。大正天皇が病弱であられたことは有名だが、今上陛下が民間(平民)からご成婚あそばれたのは、政治的な問題以外にもこのような背景もあったともされる。
明治天皇のお子様は病弱で短命であられたが、この時代は科学や医学が現代ほど発展しておらず、生命力が弱い幼児が死亡することは特に異常ではない。例えば、史上初の感染症薬であるペニシリンが発見されたのは1929年(昭和4年)である。
なお、近親婚と、実際に性交を伴う近親相姦は、厳密には別の概念である。歴史上に伝えられる近親婚は、その民族の宗教や文化の一つの要素として、あくまで「血族の結束を固めるための儀式」として結婚という形態をとった物も含まれている。
フィクションの場合、事実婚の形で実質的な近親婚関係を結んでいる描写も散見される。
実在人物でこのような状態になっている人もいるのかもしれず、外国では稀にメディアで公表するケースもある。日本ではさすがにほとんど実名を公表してカムアウトする人物はおらず、事実かどうか不明な匿名掲示板の書き込みなどで語られるケースがたまにある程度である。
続柄
親子
親子間の婚姻は極めて強くタブー視されるもので、実例はごくわずかである。
古代エジプトの王であるラムセス2世は娘と親子婚を行ったという説がある。また、現代のイランの地に勃興したパルティア王国では、フラーテス4世の妃であったムサが、夫を殺害し、息子であるフラーテス5世と結婚したという伝承がある。
神話においてはエディプスコンプレックスの元となった、それとは知らずに母親を妻としたオイディプスが有名。
全血兄妹・姉弟
エジプト王家やインカ帝国王家など、王家では広い範囲で全血の兄妹・姉弟婚が見られた。エジプトでは兄妹・姉弟婚神話が著名なこともあり、一般市民にも広がっていた。
最近親婚を宗教的功徳「フヴァエトヴァダタ」と考えていたペルシャなどにも見られたようである。
半血兄妹・姉弟
スウェーデンでは裁判所の許可を得ることで結婚をすることが出来る。
古代から中世の日本においても半血の兄妹・姉弟婚はしばしば見られた。
叔姪
スペイン・ハプスブルク家に多く見られた。
いとこ
日本では法律上は婚姻可能であるが、一方で法律上も親族同士の婚姻となり近親婚であるとみなされると考えられる(法律上の親族=六親等以内の血族)。昭和の初めまでは農村地域ではいとこ婚は珍しくなかったとされ、現代でも地域によっては行われている。
イスラム圏においては、いとこ婚が一般的であり、特に父方平行いとこ婚はビント・アンム婚として好まれる。
イスラム法では夫の方が多く遺産が相続されるため、父方平行いとこ婚が財産を保存するにはもっとも適しているという事情も考えられるだろう。
中国、韓国、アメリカの一部の州など、法的にいとこ婚を禁止している国・地域も存在する。そのため日本の漫画やアニメでいとこ同士の恋愛が描かれると、海外掲示板で「日本ではいとこ同士で恋愛できるのか!?」と話題になることがある。文化の違いが見て取れる。
義理のきょうだい
戦後しばらくまでの日本では「逆縁婚」という習慣があった。これは夫が亡くなった場合、妻が夫の兄弟と再婚することである。このような「義理のきょうだいとの再婚」は現代でも法律上は問題ないが、心情的に受け入れられないことが多い。しかし当時の感覚ではあまり抵抗感はなく、再婚によって妻が家を離れることなく生活を続けられるとして肯定的に捉えられることも多かった。
昔の日本では妻が亡くなった後、夫が妻の姉妹と再婚することもあり、これは「順縁婚」という。
逆縁婚と順縁婚をあわせて俗にもらい婚という。かつては世界中で見られた習慣で現在でも一部地域に残っている。
これとは別に義理のきょうだいの婚姻としては、親が再婚した際の連れ子同士の例がある。現実では極めて稀だが、フィクションではたまに取り上げられる題材である。