概要
近親者同士の恋愛関係を指すが、近親者同士の性行為を意味する近親相姦と違って、必ずしも性行為を伴うとは限らない。
恋愛感情が伴わない関係でも近親相姦は行われる可能性があるので、必ずしも全ての近親相姦が近親愛に含まれるとも限らない。
自分と似た者を愛するという点でナルシシズムと関係があるとも言われるが定かではない。
13世紀イタリアの神学者トマス・アクィナスは、キリスト教で近親婚が禁じられる理由について、「愛しすぎるから」と解釈している。
コンサングィナモリー
英語圏では合意の上での近親者間の性行為をコンサングィナモリーと呼び、より広い言葉のインセストと区別しようという動きがある。詳細はコンサングィナモリーの項目を参照。
フランスと近親愛
フランスはヨーロッパの中では近親者間の性交に関する刑法が撤廃されている国の一つであるが、これは18世紀から19世紀の皇帝ナポレオンの意向によるものである。ナポレオンは妹の一人ポーリーヌと非常に仲が良く、こうした政策は兄弟姉妹の仲の良さが背景にあったのかもしれない。
日本も近親者間の性交に関する刑法が生み出されていない国の一つであるが、これは明治時代に日本の法律顧問でナポレオン法典を修めたフランス人法学者ボアソナードの意向によるものである。
つまり、現在の日本で近親者間の性交に関する刑法が生み出されていないのは、19世紀初頭のフランスのナポレオンの意向が源流となっているということができるだろう。
フランスの作家マルキ・ド・サドは、著書の中で「恋愛感情が似た者同士の間で生まれる感情だとするならば、父娘、兄弟姉妹間の恋愛ほど完璧なものはない」と語っている。
現在の日本で、文学や娯楽などで近親者間の愛情が一つの人気のあるジャンルとして存在しているのは、遠く離れた異国の影響も少なからずあるのかもしれない。
芸術家のピエール・モリニエは姉妹に性愛的な感情を抱いていた人物であり、嗜好の対象として自分の脚を鑑賞することが多かったが、その理由を姉妹に聞かれた時は「お前の脚に似ているから」と答えた。
生物学
近親者と性的関係を持つことは、生物学的に間違いではなく、集団の中の一定数の個体に兄妹・姉弟等血縁が近い者同士の交配を行う性向が進化することは集団生物学的にあり得る可能性があるという研究がある。ウタスズメは意図的に近親交配をすることがあることが観察されている。
と同時に、人を対象にした調査では『先天的疾患との関連』や『あらゆる疾病のリスクが高まる』といった研究結果もあり、社会・保障、そして親として子に責を負わせるタブーである事も忘れてはいけない。